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ピスタチオと水(美咲SIDE)

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袴田との会食に出かける前、冴子には今日も遅くなる旨メッセージだけ送った。
さすがに何も知らせないのはルール違反な気がして。

袴田に連れて来られたのは、カジュアルなスペイン料理の店だった。
偶然なのか、生のホワイトアスパラなど私の好物がたくさんあって少し気持ちが上がる。

「この店よく使ってるの?」
「ちょっと勝負の時、とかですかね」
「…」

女を口説く際の鉄板ルートをいくつか持っていそうな男だとは思うが、あけすけに言うあたりは、一概にそのレールに乗せたいという意図でここへ来たわけではない事を伺わせる。

「あ、でもこの後もっと勝負っぽい店にもお連れしますので、どちらかと言うとそちらを楽しんでいただけたらと」
「……」

せっかくのお店なのに、だんだん気が重くなってきた。
袴田が言うところの「もっと勝負っぽい」というのがどういう店だかあまり想像がつかない。
と言うか、「もっと」と「っぽい」という言葉の組み合わせは変だろう、と思う。

普段なら億劫なのでいちいち突っ込みを入れる事はしないけど、ここは職場でないのでそれを指摘した。
そして私自身気がゆるんで、ついついこの店に好みの料理が多い、などという話もしてしまう。

「実際にスペインへ行った事は、まだないんだけどね」
「そうなんですか?意外ですね、すごく行ってそうですけど」

ワインはほんの少ししか口にしなかったが、しんどい精神状態の所においしい料理が出てきて救われたような思いがした。
そんな事も影響してか、普段から会話の際に張っている注意力はかなり緩み、とりとめもない事も含めたくさん話をしてしまった。
相手が袴田だと言うのにこうなるのは、自分としても微妙に不本意だったけど。

「いや心配しましたよ、朝早く出てきた割にはへこんだ感じでいらしてたから」
「そう……」
「彼氏に振られたとか?」

冗談っぽく尋ねてくるが、私は少し緊張した。
多分袴田は、私が他に思っている人物がいるのを知って、あえて身を引いているというスタンスではなかったか。

「その、つけこみたいとかいう訳じゃなく…いや、つけこみたい事はつけこみたいんですが、それよりも、多少なりとも励ます事ができればなと思っただけです」

袴田は見た目、仕事ぶり、家柄、どれを取っても女性には魅力的な要素にあふれている。
そんな彼だが、以前と比べればだいぶ俺様キャラが引っ込んだような気がしていた。
一度きっぱりと恋愛関係については断った経緯があるから、そこで少し認識を改めたのかもしれない。

「…それとも、つけこめる状況だったりします?」
「それを言葉で聞いちゃうセンスがね」

昨夜からずっと、自宅でも気を張っていなければならなかったから、せめて今ぐらいはそれを緩めておきたかった。
それにあたり袴田を伴う必要性があったかと言うと、全くそうではないので、今になってから他の方法もあったはずなのにと後悔する。

「まあ俺は長期戦で考えてますので、ご安心を」

全く安心できない。
食事を終え、袴田の希望により店を変えた。
次に連れて来られたのは、いかにもというムードたっぷりのジャズバーである。
本人が先ほど「勝負っぽい店」と表現していた所にあたるのだが、びっくりするほど王道である。
ただ、雰囲気としては落ち着いている系で、袴田のイメージにしては質素な感じがした。
なんとなく、イメージ的にもっと煌びやかな店を選びそうに思ったから。

「ホテルのラウンジにでも連れて行かれるのかと思ったけど、少し安心した」
「…そっちの方が良かったですか?」
「…良くない
「冗談ですって」

袴田曰く「ホテルのラウンジは豪華で素敵だけど、勝負で使うのは自分の趣味ではない」との事。

「なんか、露骨じゃないですか、ホテルには申し訳ないですけど」

こういう所が独特である。

「俺が女性だったらやっぱり身構えちゃうし、嫌なら断るとか逃げればいいとは言っても、やっぱりそこにくっついて行ってしまった自分の整合性というか…流れができちゃってる所を断ち切るのって、特に日本人には難しいじゃないですか」
「まあ、そうね」

逆に私は、そういう状況の方が気楽に逃げられるタイプだが、一般的には袴田の考え通りだろう。

「これから押し倒しますって空気で押せ押せモードはちょっとね、モテる男のやる事としてはあさましいですよ」
「自分でモテると思ってるんだ?」
「…実態がどうかに関係なく、それを目指すべきですから」
「なるほどね」

そうは言うけれど、このジャズバーだって十分に空気としてはそういう部類に該当していると思う。
袴田なりのこだわりはあるのだろうが、非常にわかりにくかった。
普段なら何とも思わないのだが、こういう環境でおつまみとして出された殻の付いたピスタチオを見ていると、女性器を連想してしまうのは私だけだろうか。
ちょっと殻が開いているあの角度についても、変な所を想像してしまう。

妙な感慨を振り払う意味も込めて、勢いよく殻を真っ二つにに割り中身をつまんで口に運ぶ。

「おいしいですよね、ピスタチオ」

袴田がピスタチオという名前を口にしたので、感慨を悟られたのかと思ってどきりとした。

「そうだね」
「あの、それで…本当に何か悩んでいるなら、話してもらえませんか」
「…今?」
「…無理にとは言わないですけど」

質問を質問で返してごまかすのも、今となってはお手の物だ。
年齢を重ねると、ごまかす事だけは何の躊躇もなくできるものだと思う。

「…相手として俺が適任でないのは理解してますけど」
「あら、そうなんだ」
「そりゃわかってますよ、いくら何でも」

冷たくしすぎただろうか、と反省の意を込めつつ私は声を出して笑った。

「失礼を承知で言いますけど…ポジション高くなればなるほど、パートナーって大事じゃないですか、強いストレスにも晒されるわけですし、家庭持ちの方ならそこは安心材料になるけど、そうでないと…本音の部分で話せる相手って限られてくると思うし」
「…自分事として考えたりしちゃった?」
「そういう訳じゃないですけど」

袴田にもおそらく、次期開発部長の件は知らされているだろう。
だからその前提で考えれば、彼がそんな想像をするのもわかる気がする。

「俺、てっきりこれからも松浦さんと一緒に仕事できるんだと思ってました」
「それって、私が降格するって話になるじゃない」
「それはその、だから…よく考えたらおかしいんだけど、何かあれば松浦さんを頼ればいいやぐらいに思ってて」

ところが実際に来た話は開発部長の席である。
ある程度気心の知れたメンバーとは切り離されて、単身乗り込んでいく事になるのだ。

「ほんっと、進藤さんを追い出してあなたがそこに行くなんて、びっくりだわ」
「…松浦さんって、進藤部長と付き合ってた事ありますか?」
「は?」

あまりに唐突な質問に、素っ頓狂な声が出てしまう。

「…仲が良いって聞いてるから」
「仲はいいけど、あの人既婚者だし、こっちだってそういう目で見た事なんてないわよ」
「そうですか、でも…本気になっちゃうとそういうの関係なくなるから」
「ご心配なく、それだけは絶対ないから」
「良かった」

そこまで話をして、袴田の意図が読めたような気がした。
黙っていると、私が進藤さんを誘って食事や飲みに行くかもしれないと危惧したのだろう。
それで慌てて誘ってきたのかもしれない。
…袴田の推測は外れていて、私は進藤さんと飲むなんて事、思い付きもしていなかった。
袴田と飲んでいる今になってようやく、「まだ進藤さんとの方がましだった」とは思ったけれど。

「大丈夫、進藤さんの部下はみんなしっかりしてるわよ」
「…そうですよね、松浦さんも元部下ですしね」
「そうそう」

お互いに笑って、私はジントニックに口をつけた。
なぜか、私がグラスを傾けている時にばかり袴田の視線が強く感じられて、違和感を覚える。
既に何度かその感じはあったので、間違いなく袴田は私が何か飲む時の仕草に注目しているのだろう。

「何、さっきから」
「…いえ」

袴田の反応で、言葉にするのは憚られる想像をしているのだと察しがついた。
…そろそろお開きにするのが良いだろう、と思う。
時計を見ると22時を回っていた。

「俺が悩み相談したみたいになっちゃったじゃないですか」
「…そうね」
「本当は俺が上がった後も、色々教えてくださいって言いたいけど、色よい返事はもらえなさそうですね」
「内容による、としか言えないな」
「じゃ、内容を吟味した上でご相談します」

多分袴田は今日、私が素直に打ち明け話などする事はないだろうとわかった上でこれをセッティングしたのだなと思った。
だからそれ以上無理に話を引き出そうとはしない態度に、彼の成長を感じる。

「デビューは誰でも経験するものだし、きっと大丈夫よ」
「そうだと良いんですけどね」
「うん」
「でも部長になると秘書が付くって言うから、それはちょっと楽しみです」
「っ……」

思わず、息が止まりそうになる。

なぜなら、袴田の言葉でやっと気が付いたからだ。
冴子は現在、開発部長の秘書だ。
進藤さんの異動後もそちらをわざわざ外れはしないだろうが、部門業務をわかっているアドバンテージがあるから、そのまま袴田も担当する事になるかもしれない。
…なんで、今の今まで思いつかなかったんだろう、と自分を呪いたくなる。

「…どうかしましたか?」
「あ、何でもない」
「…明らかにどうかしてますけど」

額に手を当て狼狽しているのだから、心配されても仕方ない。
それとも袴田に引っかけられたろうか。それも今更だ。

「…やっぱり、あの子でしたか」
「……」
「喧嘩でもしましたか」
「まあ…」

袴田はあえてこちらを見ないようにしつつ、少しずつ話しかけてくる。
さっき私がお酒を飲む時には無遠慮に見てきたくせに、今は真逆で一切こちらを見るものかと決め込んでいるぐらいの勢いだ。

「なら、苦労しそうだなあ、…俺の方がはるかに楽だと思いますよ」

そう言いながら袴田は微かに笑った。

「そうかもね」
「認めるんだ」
「苦労、してるから」

私も袴田の顔は見ないように正面を、厳密にはややうつむいて言葉を返す。
そうすると、小皿に載ったピスタチオと、汗をかいたジントニックのグラスが同時に目に入った。

「…できる事は少ないかもしれませんけど、俺もできる限り協力します」
「…なんで?」

思わず聞き返してしまう。

「そんな、器の小さい男じゃないですから、俺は」
「…」
「それに、松浦さんのパフォーマンスを下げる要因はなるべく取り除きたいし」

それは私が女だからプライベートの好不調が仕事に影響しやすいと思っての発言なのか、それとも実体験に基づく発言なのか、どちらなのかすぐには測りかねた。

私が黙っていると、「俺もそういうタイプですし」という言葉が続く。
…実体験に基づいた発言だったのか。
だとしたら申し訳ない事をした張本人は私という事になるだろう。

「そりゃ失礼しました」
「…超形式的」

袴田はこらえきれないといった風情で笑う。

「でも、多少気が紛れたなら何よりです」
「うん、ありがとう」

帰りましょうか、と袴田から切り出されて私たちは店を出た。
それぞれ別のタクシーを拾い帰路に就く。

タクシーに乗り行き先を伝えてから、やる事がなくなるとにわかに胸がざわつき始めた。
果たして冴子はあの部屋で、私の帰りを待っているだろうか。
ひょっとすると、居なくなっているかもしれない。

怖くて確認していなかったメッセージを、アプリを立ち上げ確認してみると、冴子からのメッセージが未読のまま残っている。
おそるおそる開いてみると、「今日は中野に帰る」という旨の内容が表示されていた。
安堵感と寂しさが同時にやって来て、自分がどうしたいのかわからなくなる。
わかっているのは、なんとなく…時間薬にお互い頼ろうとしている事、ぐらいだろうか。

冴子としてもいたたまれなくなり逃げたつもりかもしれないが、それよりも私自身が逃げた、という罪悪感が強い。
昨夜から今朝にかけて、冴子に謝罪の機会を与える事なく来てしまった。

私は袴田の言う「器の小さい」女だと落胆した。
でも、それは事実として受け止めるより他にない。
昨日は少し感情的になってしまったけど、一年間も「大人なお姉さん」のイメージを壊さずやって来られただけでも上出来ではないか。
様子を見てまた冴子に「戻っておいで」と連絡すればいいだけの事だ、と軽く受け止める事にして、タクシーの窓外に目を向ける。

その時、私はブティックホテルに手を繋いで入ろうとする、女の子同士のカップルに目が留まった。
全然知らない人たちだけど、一目で女子会ではない、もっと濃い交わりを目的としてホテルに入ろうとしているのが感じ取れた。
身体を寄せ合って何事か囁き合いながら、期待に満ちた表情と笑顔を浮かべる女の子たち。
そんな姿を眺めて純粋に「いいなあ」と思った。

実は冴子に苛立ちをぶつけた昨夜、あのムービーの女の子みたいなのが冴子の周りにごろごろいるのであれば、これはもう到底太刀打ちできないと気持ちが沈んだ。
自分の容姿がダメだとは思わないけれど、冴子もあの子もまだ若く、その上容姿は人並み外れていると言える部類だ。

若いだけならともかく、あらゆる優位性を兼ね備えた女の子同士が交わる姿は、想像するのが怖いぐらいに完璧で、自分は部外者のように置いていかれるような焦燥感を覚えた。
そんなはずはないとわかっているのに、コンプレックスがそんな思考を増殖させ、支配しようとするのだから困ったものである。

さっきの、仲睦まじくホテルへ入っていった女の子たちを見て、そんなもやもやが少し薄れたような気がする。
どういう容姿であれ、年齢であれ、シンプルに相手を求めて惹かれ合って、身体を重ねる。
本質的にはそういう単純な話なのに、情報が増えてそれを見失っていたかもしれない。

冴子が孤独ではないなんて事はないし、あのムービーの子が幸福かどうかも、誰にもわからない事だ。
工夫を凝らして作り込んだ自撮り動画を、冴子によこすぐらいに溜め込んだものがあるのだから。

そんな事を考えていると、スマホがメッセージの着信を振動で知らせてくる。
見ると冴子から「ごめんなさい、やっぱり話がしたいです」というメッセージが届いた所だった。

タクシーに乗っていなければ電話する所だが、「自分の部屋にいるの?」とメッセージで返す。

冴子「はい、でも今からお話ができるなら、そちらに伺います」
美咲「ならまだ移動中だから、そっちへ行くね」

ややあってから、冴子より「わかりました」という返信が届く。
私はタクシーの運転手に詫びつつ、行き先の変更をお願いした。

*-*-*-*-*-

冴子の部屋へ行くのは二度目になる。
週に一度は冴子をそちらに帰らせるようにしているが、そうは言っても長く部屋を空けていれば汚れもするだろうし家賃ももったいないと感じる事だろう。

でもこういう事が起きた時に、逃げるべき場所があるのとないのとでは心持が全く違うから、面倒でもそうさせておいて良かったと思った。

冴子の部屋のインターホンを鳴らすと、ばたばたという足音に続いて勢い良く玄関ドアが開いた。
冴子が何か言う前に、私は「飲んでたから、酔ってたらごめん」と先に詫びる。

そして冴子の服装に軽く驚き二度見してしまった。
冴子には珍しく、グレーのスウェット上下を着ていたからだ。
髪も無造作に後ろで結んでいて、いわゆるリラックスタイムを過ごす恰好とはえらく違うな、と思う。

「…部屋の掃除をしてました」
「…そうなんだ」

お邪魔するね、と言いつつ靴を脱いで室内に入る。
冴子は若干緊張した様子で私を迎え入れた。

お茶の用意があるはずなのに、なぜか冴子はミネラルウォーターを継いだコップを供してくる。
私が不思議に思って出されたそれを見ていると、冴子は小さな声で「顔にかけられるかもしれないので」と言った。

「……」

まあ言わんとしている事はわかる。
そういう仕打ちを受けるかもしれない話をするから、自分はともかく部屋のファブリックにぶちまけても被害の少ない水にしたという事なのだろうが、発想が独特すぎて可笑しくなってくる。
私が怒って冴子に水をぶっかけるのは割と決定事項という認定らしい。

「いえその、万一そうなった場合にという事で、なければないで…いいかなと思って」

見透かしたように冴子が慌ててフォローするが、私は本当に可笑しくて笑いをこらえきれなかった。

「むしろかけられたいのかと思っちゃった」
「一応その覚悟はありますけど…」

冴子は改まった様子で、ローテーブルから一歩下がった所に正座し頭を下げてくる。

「嫌な思いをさせてしまって、申し訳ありませんでした」
「……」

私はぼんやりと冴子の頭頂部を見つめる。
ほどけば綺麗に広がって触りたくなるのを我慢できない黒髪が、ただ結んであるだけなのに、服装と相まって生活感いっぱいで似合わないと思った。

…私が冴子をこんな風にさせてしまったのかと思うと、そんな自分に悲しくなってくる。
私は指先だけで冴子の肩に触れて、頭を上げさせた。
顔を上げかけた冴子は泣きそうなのをこらえているようだった。

「…聞きたいかどうか、にもよりますが…全部話しますから、それで許せるかどうか決めてもらわないと、と思って」
「…ふむ」

ちょうど私も考えている所だった。
どちらかが気まずいと思ううちはわざわざ同居せずとも、しばらくそれぞれの部屋へ帰ればいい。
私としては鍵を返せと言うつもりもないし、もとより何を聞かされても許すつもりになっていた。

但し条件があって、それは冴子がもしも私に後ろめたいような誰かとの接触があった場合に、その全貌を詳細に語って必ずそれを上回るぐらいに冴子にいやらしい仕置きを施す事を徹底する、というものである。
文字通り冴子の全部を受け止める事になるような、自分にとっても重たい話だから、そうするべきか、できるのかを考えていた。

だが今冴子が言ったように、「わからない、知らない」状態が不安を拡大させるのであれば、むしろ全てを掌握してしまう方がそれ以上の心配はないわけで、理屈としてはそちらの方がましなようにも思う。
いわば妻のセフレを公認する夫のようなものだ。
その条件を成立させるためには、私以外との行為は恋愛と切り離されたものであるというのが前提になるけれど。

「じゃ、まずは話を聞くって事ね」
「…いいですか」
「勿論、そのために来たんだし」

内心こちらもドキドキしているけれど、更に緊張しているであろう冴子の前であまり動揺している態度は見せられないと思ったので、とりあえず「かけられる」予定らしい飲み水を一口含んでから、冴子の言葉を待った。

「まず、あのスマホの人ですが」
「あの子、WSアプリのモデルの子でしょ」
「…モデルは、副業でして、本業はアプリやインテリアなんかのデザイナーをしています」
「デザイナー…」
「お姉さまと、行った事のあるホテルの部屋…あの部屋ではないですが、もう一方の洋風の部屋をデザインした人で、事前の内覧会で知り合いました」

ただの「もでる」「絶世の美少女」という記号から、冴子の言葉によって彼女の人物像が明らかになっていく。
今回に関しては記号のままでいるよりも、そういうディテールを知る事によって、私は嫉妬の対象たりうる人物に少しずつ情が移っていくような感じがしてほっとした。

感情的になって怒りをぶつけるばかりでは、本来の自分とも、冴子との関係性における自分の立場とも、違う気がしていたから。

「…開発担当者なの?その子」
「はい、大学に通いながら…ですが」

つまり光江の所の子なのか。
光江とはしばらく会っていないし、近況もよく知らない。
あの女の子が、光江のチームメンバーなのかと思うと、不思議な感慨が芽生えた。

「あと、晴香ちゃん…あ、そのモデルの子ですけど、私の同期入社の、友紀の妹さんなんです」
「…受付で一緒だった?」
「はい」

佐藤友紀の話は以前よりよく聞いている。
冴子の話によるとミス・キャンパスにも選ばれた事があるらしいとか、要領が良くて羨ましくて、よく仕事のやり方を教わったとか、そんな事を話していた。
受付の頃は一緒にランチしたりもして、おそらく社内で冴子と一番仲良しと呼べる娘だろう。

確か彼女は営業部へ異動して、冴子も秘書課へ異動となって、それ以降はなかなか共に過ごす機会を作れていないのか、あまり話題には上がらなくなっている。
…彼女の妹が、あれか。
言われてみれば顔の造りは似ていると思えるが、何しろ初対面がオナニー動画なので、そんな事思うような状況になかった。

「……」
「あの、大丈夫ですか?」

光江との事なども思い出してしまっていたのでぼんやりしていたが、冴子に声をかけられ「大丈夫」と返す。

「その…状況的には、晴香ちゃんが一方的にと言うか、やけに私に好感を持ってくれてるみたいで…」
「それで、流されちゃったって事?」
「まあ…あれだけ可愛い子なのでその…」
「何回ぐらい会った?」

一応「会った」に置き換えたが、聞きたいのは「した」回数の方だ。

「会ったのは数回…その、そういう事は2回ぐらいです」
「ふうん」
「すみません」
「いや…」

行為自体は、いちいち謝るような事ではないのだ。
でも今日は趣旨が違うから、あまり明確に「謝罪は不要」とも言わないでおく。

「それで、どうだった?」
「どうだった、とは…」
「…した感想」
「え……その」

冴子が姿勢を正したので、私は思い出して正座は崩して良いと伝える。

「ちょっと、気になる」
「…ですよね」

セックスを比べるのは良くないなんて言うけれど、そんなのはきれいごとと言うやつだ。
心の中では誰でも、忘れられないセックスの記憶や思い出があるものだし、相手が変われば自然と違いは際立つものだ。
ただ、冴子が彼女とのセックスを良く言っても悪く言っても、後味としてはあまり変わらないようにも想像できる。

「あれだけのビジュアルですから、それは…興奮はしましたけど」
「…けど?」
「疲れました」
「疲れた?」
「…はい」

冴子は底無しに近い性エネルギーを持っているし、何なら私から吸収しているのではないかというぐらい、している最中にますます元気になる要素さえ持ち合わせているのに、そんな冴子が疲れる内容とは。謎だ。

「その、言い方が難しいですが…未熟ゆえと言うか、覚えたての事だったようで、かなり思う存分消費された感が」
「あ、そう…」

映像で見る限り、自慰に関してはこなれた様子だったけど、交わりとなれば違うのか。
さながら若者ライクなセックスのありがちなパターンとでも言う所かもしれない。

けれども冴子だってどちらかと言えばそちらの年代なのに、そんなセックスが「疲れる」という感想を抱いたのは新鮮だ。
比較対象が私なのだから、そこを基準にして考えているとなれば相対的にそういう評価になるのかもしれないけど。

「ただ、晴香ちゃんは、私とお姉さまの関係をわかっていて、それを邪魔したくないといつも言ってました…だから、私が断れない性格なのをわかっていて、それから晴香ちゃん自身が私と繋がりたい気持ちも強くて、だからあんな風にエッチな画像とか、動画とか、送ってくるようになって」
「うん」
「晴香ちゃんなりに、一応私の罪悪感がなるべく小さくなるように、という事は気にしてくれてました…」

そこまで話して、冴子はふーっと息を吐く。
この告白は相当消耗するのだろう。
自分自身が欲望に負けた時の話を振り返って喋らされているのだから、疲労もひとしおだろう。

「わかった、で…次は?」
「え…」
「それで終わりなの?」
「あ…あの…ありますが」

冴子は困惑したように口をもごもごさせている。
私が、最後の部分を尋ねなかったからだろう。
普通、浮気したパートナーには「で、どうするの?」という話を向けるのだろうが、私は別に今後の行動制限をかける権利もないし、そのつもりもない。
連絡するなとか、バレたと知らせろとか、そんな事はそれこそ「器の小さい女」のする事だ、という自分なりのポリシーがある。
配偶者ならまだしも、冴子とは将来を約束している関係性でもないのだから。

出会ったあの時冴子に告げた通り、自由に、好きにやってそれでも同じ相手を選べばそれだけの事である。
…自信を失って、私がそれを崩しかけてしまったけど。

「あるんなら、そっちも教えて」
「…それはお姉さまが警戒してた人です」
「秘書課の子?」
「小田さんです」
「あー…あの子ね」

元気のいい筋肉質な体形のあの秘書課員か。それは割とたやすく想像できる。

「本人もあまり隠していないので構わないと思いますが…梢さんは女の子大好きな人で、しかも身体は相当緩い人でして」
「なるほど」
「身体のむらむら解消のためなら、割と誰にでも許してしまう人で、と言うか求めていく感じになる日に、たまたま二人になってしまって」
「まさか、会社でしちゃったわけ?」
「…その、更衣室で」
「……」

まあこちらも、会議室だの非常階段だの、社外ではビュッフェレストランのトイレだのといった所でやる事をやっているだけに、他者のそれを責める言われはないのだけれど。

「…ただ、梢さんは私に触れてくる事はありませんでした」
「……?」
「一度、その…真帆さんにそれの解消をしてもらっている所を目撃した事があって、それからひと月ぐらい経った時に、業務中二人きりになってしまって、梢さんに誘われて我慢できなくなって、梢さんの身体に触りました」

冴子は、顔を真っ赤にしてうなだれつつ話している。無理もないだろう。

「そっちは完全に、性欲に任せてと言いますか…お互い特別な感情はなくて、そういう事に興味があるというだけの事で、私が触って梢さんをすっきりさせて、それで終わりました」

小田梢という人物は、仕事に関しては非常に優秀という評判だ。
何しろ身体能力が高いらしく、それが一見すると秘書業務には関係なさそうなのだけれど、確か出先で役員が提示すべき重要なデータの入ったディスクがエラーした時、彼女はシミュレーションの結果それが最速と判断して自ら自転車を駆りその取引先までスペアを届けたという逸話が残っている。

それもそこそこの距離のある場所だっただけに、役職者の間ではちょっとした噂になったものだ。
…優秀な人間は、どこか頭のねじが一つ外れている事もありがちだけど、あのアスリート秘書が、持て余す性欲を自由に発散する様は、なんとなくしっくり来る感じがする。

「梢さん、誰にでもさせちゃうみたいで…」
「誰にでも、ねぇ…」

含みのある言い回しに引っ掛かったけど、個人的には小田梢に関してはそこまで心配ないと思った。
彼女の場合、文字通り性欲解消の相手が欲しいという事なのだろうから。
それに思考の中心は自分であって、それが満たされれば納得、という所もわかりやすい。

「…以上です」

業務報告を追えるように、だが随分と弱弱しく冴子は言った。

「以上?終わり?」
「…はい」

もっとあって欲しいのか、という表情が冴子の顔に少し見え隠れする。
私は「そういう事じゃないけど」と言葉にして付け加えた。

「…だけど、心配かけたり、嫌な思いをさせてしまいました、私だってお姉さまの何番目でもいいと思っていても、現在進行形で具体的な誰かを知ってしまえば、やっぱり複雑な気持ちには…なりますし」
「…なるんだ?」
「なりますよ…そりゃ」
「ふぅん」

冴子の顔に今度は「あるのか」という表情が浮かぶ。今回ははっきりとわかるぐらい、隠し切れてはいない。

「…あったとしたら、それ話した方がいい?」
「…わ、わかりません」

冴子は混乱したようでまた下を向いた。

「そうだよね…私もよくわからない」
「?」
「知ってどうする、腹が立つだけじゃないのかって思ってたけど、開き直って受け止めようと思ったら、案外大丈夫だっただけ…どうなるかなんてわからないまま聞き始めたのよ?」
「……」
「良かったわね、水かけられなくて」
「はい……」

おかしな想定をわざとらしくからかうと、冴子はもう責めないでくれというように表情を歪めた。

「もとより私は、冴子を苦しめたいわけじゃなくて、大人げなかったって謝るつもりでここへ来たの」
「そう、なんですか?」
「うん…すごい年上だし、自分でそれ気にしてるし、それであんな可愛い子が出てくるしでむかっと来たけど、だけど冴子がしたいようにすれば良いってのは、本当にそう思ってるから」
「…なんで、そんなに優しくしてくれるんですか」
「優しい?私が?」
「だって…そうじゃないですか」

冴子は歪んだ表情を更に崩して、涙目になっている。

「優しいのかな?逃げたきゃ逃げろって言ってるのよ?」
「そこも…含めてです」
「ちょっと感情的になっただけで、猛烈な近寄るなオーラ出して、拒絶してるんだから優しいとは思えないな」
「そんな事ないです」

冴子は思わず私に向かって手を伸ばそうと少し動いたけれど、あえてそれを我慢するように姿勢を戻した。
このままだと「一緒に帰りたい」と言い出しそうな気がしたので、申し訳ないけれど冴子のコンディションの為に先手を打たせてもらう。

「……まあ、疲れたでしょ、今日はこのままここで寝なさい、私は帰るから」
「はい…」

まだ、少し酔いも残っていたのでグラスの水をもう何口か飲んでから「これ、ありがとうね」と言うと、冴子はまた水の話を蒸し返されたと思ったのか「やめてください」とかぶせてきた。

私は「はは」と笑ってから、ふいに思いついて冴子に近づきぐっとハグをする。
ギクシャクする前なら、こうすると冴子の身体から力が抜けて、いい感じに体重を預けてきてくれていたけど、今の冴子の身体は硬直していた。

「じゃあね、おやすみ」

ハグを解いて冴子の唇にキスをする。
ほんの少しだけ、舌を絡めて冴子の口内を味わってから、顔を離した。

「お、おやすみなさい」
「見送りはいいから」

呆けている冴子をそのままにして、私は冴子の部屋を後にする。
…結局、こんな風にマーキングじみた事をして、冴子にとって居心地のいい相手である事をアピールしたりなんかして、やっぱり自分はあさましい。

冴子の気持ちを独占するために手段を択ばない側面がちらちら現れる度に、自制しなければならないと思うのだけど。

それでも仕方ないのだ。
冴子に触れている間、私は心も身体も満たされてしまうのだから。
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