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至福の時間(美咲SIDE)
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「……っ、ん…ふぅ」
執務室の壁に押さえ付けられるような恰好で、冴子にキスされている。
ついでに冴子の豊かな胸が密着しておりその感触で、つい身体の内側が反応してしまう。
日の高いこんな時間にまずい、と内心思っているのだが、冴子を押しのける事もできずにいる自分は弱いと思う。
状況的にはいかにも獰猛に唇を奪われているような感じだけど、実際に唇に与えられる刺激はそれとは真逆と言って良く、冴子の舌は実に理性的な動きで私の唇を左右になぞり、わずかな隙間からさりげなく口内に割り入って来ている。
それから互いの舌先を触れ合わせた瞬間、二人して力が抜けたような吐息を漏らしていた。
執務室の扉には「打合せ中」と表示できるような札が用意されており、おそらく冴子はそれを扉に提げておいてこの行為に及んでいる。
冴子の仕事の段取りが磨かれて持て余す時間が増えたからなのか、冴子の中で攻めブームが起きているからなのか、またはその両方か--要因については不明だが、この所日中に執務室で迫られる頻度が増えている。
私も私で、されるがまま受け入れてしまっているのは問題だなと思いながらも、現実逃避したいような気持を見透かされているのか、ふと気持ちが沈みかける瞬間を狙いすましたかのように襲われてしまうので、強く拒絶する事もできないままだ。
それでも今日はなぜだか冴子の胸に直接触れたくなったので、向かい合っている冴子の身体を半身だけ離し、回転させるようにして向きを変えさせる。
右手は冴子の背後から脇の下を通し、左手はそのまま自然に冴子の胸にもっていく。
半分だけ身体を重ねたようなバックハグ状態になり、キスを再開させる為には冴子の顔をこちらに向けさせる必要があるのだけれど、私の掌や指が冴子の胸をやわやわと揉みしだく動作に冴子が反応し、冴子の顔が自然に上を向いた。
ごく小さな声で「冴子」と囁くそれだけで、冴子の顎は導かれるようにこちら側を向き、さほどの苦もなく唇が重なった。
「……」
冴子の胸は張りがあるように見えるのに、触るととても柔らかい。揉み心地はマシュマロのようで、大切に優しく扱いたいはずなのに、気が付くとけっこうな激しさで揉みしだいてしまったりしている。
多少の事では冴子は痛がる素振りを見せないからなのだろうか。
それに。
攻守交替した後でも、今の冴子はされるがままになろうとはせず、こちらの動きに身を任せながらも攻めを完全停止する事はない。
その証拠に、今の冴子は手探りで私の履いている膝丈のセミフレアスカートの裾をたくし上げようと動いていた。
その手は大胆にスカートの裾をめくり上げたかと思うと、躊躇なくショーツの中へと滑り込んでくる。
一気に濡れた花弁の割れ目に指先を到達させ、そこから掬い取った濃厚な淫蜜を、まだ勃ち上がっていないはずの秘粒に塗り込めるように擦り付けてきた。
はぁっと大きな息が漏れ、こちらも左手を動かし冴子のタイトスカートの裾をまさぐる。
ここ最近は、別に相談も約束もしていないのだけれど、私も冴子もガーターストッキングを身に着けるようになった。
こういう場面でショーツだけを脱いで行為に及ぶ事を想定しているみたいでいやらしいと言われればその通りなのだけれど、事実実用的でもある。
ストッキングが破れたりする心配も少ないし、仮にショーツを汚しても、替えのショーツに履き替えてしまえば表面上は何事もない。
今だって、ストッキングに与えるダメージはほとんど気にする事もなく、ショーツを履いたままで大胆に愛撫し合う事ができている。
「ん……はぁ」
「…お姉さま」
「?」
「声…聞こえちゃうかも」
下半身への愛撫が始まり、なるべく喘がないよう、呼吸に混ぜる形でどうにか耐えているつもりだったけど、あまり上手くいっていなかったようではっとした。
「じゃ…冴子が何とかして……っ」
「……」
冴子の唇がいっそう強く密着し、舌まで絡め取られそうなぐらいに口内をぐちゃぐちゃに侵食される。
息苦しいほどの濃厚なキスに気が遠くなりかけて、同時に得も言われぬ恍惚とした気分に陥る。
こちらも必死で冴子の身体を掻き抱くようにしながら右手では胸をまさぐり、左手では最短ルートで冴子の日常着である所のTバックショーツのクロッチを押しのけるようにずらして、露出した花弁の間に指を差し込んだ。
冴子は大きな反応を示す事はなかったけど、花弁の内側がびしょ濡れで、思いのほか指が勢い良く秘穴に吸い込まれてしまい、ほんの一瞬だけ動揺する。
しかしながらこちらも冴子の指による刺激を蜜穴の中層部まで感じており、動きの細部まできちんと制御できない。
「ん…っん」
まるでうめくように互いの喘ぎ声をキスで塞ぎ、指先では互いを激しく求めあうような愛撫を施し合う。
ここは執務室だ。早く達してしまいたいといような焦りの気持ちもある。
だけど、今この瞬間を至福と感じてしまっている。
多少貞操観念は希薄だが、それでも冴子本人が許した相手にしか好きに触らせない胸に、秘部に好きなだけ触る事ができる。それはある意味特権のように感じられるのだ。
そして冴子の持つ性欲の大半は私に向けられているのだという優越感のような感情。
…だから?こうして受け入れてしまうのだろうか。
いや、優越感とは誰に対するものなのか。
逆に遅れを取りたくないという焦りがあるのではないか。
でも、そういった小さいながらもネガティブな感情は、この愉悦の波に押し流されていく。
冴子は私の事をずっと「お姉さま」と呼んでいるけれど、そんな風に呼ばれ始めた当初と今は、私達の関係性、と言うかパワーバランス的なものはほとんど対等に変化した気がして、それがどういう訳だか心地良いのだ。
年齢こそ私が大きく上回っているが、今思えばそれに捕らわれるように上下関係を意識する必要も別になかったのだ。
けれども私も冴子も、それが自然な関係性だと思っていたしそれで居心地は悪くなかったのだと思う。
今は--勿論年齢も、社会的な立場も違うには違うままだけど、私も冴子に甘えるし、冴子も私に完璧を求めようとはしていない。
なんとなく、そうやってお互いに求められる役割を演じるような事からは解放されたような気がしている。私にとってはそれが心地良さに繋がっている気がするのだ。
いつの間にか冴子の身体が私の身体を押さえつけるように重なっている。
秘穴への刺激に耐えかねて私の身体が震え、顔を横に振ってしまいたくなる生理現象を、冴子が強引に押しとどめているかのようだ。
精神的な心地良さとは程遠い、窮屈で息苦しいような、とても性急な交わりなのに、それが至福と思うのだから私も変わったものだ。
「ん、く……っんん」
くぐもった声と、下半身から微かに響く粘着質な水音。
それらが、遠く壁の向こうから聞こえるわずかな電話の音や打合せの話声、複合機の動作音などと重なって聞こえてくる。
そして、どこにも隠れる場所などない、明るい執務室。
それら全ては背徳感を増幅させ、身体の中心部のみに集約されていくかのように、蓄積して弾ける瞬間に向かって止まる事なく流れていく。
あ…私こんな場所で、冴子に指でイかされる。
その状況を脳内で言語化した瞬間に、蓄積したものが弾けた。
冴子の掌では受け止め切れなかった、溢れ出した淫蜜がストッキング越しに自分の内腿に垂れていく。
どうにか身体を支えながら、それでも自分の指先に冴子の膣肉の収縮を感じ、冴子の到達も近いのだと理解する。
ぎこちない動きではあるが、クロッチをずらしてほとんど露出した冴子の花弁を大胆に弄り、二本の指をその中心に突き入れる。掌まですっぽり密着させ、指先を小刻みに動かしながら、掌で包皮を剥がすように動かすと、冴子も身体をびくつかせて淫らな熱を放出させた。
「あ、……ん」
ほとんど喘ぎ声を出していなかった冴子がその瞬間だけ、甘く気怠い吐息を漏らす。
私の腕の中で、身体を震わせて絶頂する冴子。
冴子の絶頂する姿は過去と今とでは一線を画すほどの違いがある。その瞬間だけは、恐ろしく無防備で艶めかしい。これを見る為にならばどんな攻めにも堪えられる、そんな錯覚さえ引き起こす程なのだ。
性欲の強い冴子にとっては一度の絶頂など取るに足らない事象なのかもしれないが、それを目撃する者にとってはそんな風には思えない。
現に達したばかりの私の身体の内側には、再び何とも表現し難い熱が沸き始めている気がする。
そんな冴子の唇に、当たり前のようにキスをする。
軽く舌を触れ合わせながら、ほんの少しの間だけ絶頂の余韻に浸るのだ。
ゆっくりと顔を離すと、冴子の方はもう割と平常時の表情に近いくらいまで落ち着いていた。
私の方は…どうだろうか、あまり自信がない。
二人ともイっちゃったね、と小声で囁き合いながら、もう少しだけと戯れるように唇を啄み合う。
キス自体は軽いものだけれど、唇を離す時には少しだけ、唾液の糸が引いていやらしさを感じた。
その後私はおそらく酷く鈍重な動きで、どうにか窓を開けるだけして、それから身体を預けるようにハイバックチェアに座った。
ショーツを替えたいけど、少しだけ身体を休めてからにする。
冴子の方は「札はもう少しこのままにしておきます」と言い置いてポーチを片手に部屋を出て行ってしまった。おそらく化粧室にでも向かったのだろう。
「……」
何かこういう所に年齢差を実感してしまうけれど、さすがに冴子はまだまだ余裕と言った所か。むしろこれからとでも言いたげな感じがしたけれど、執務室ではさすがに本気のセックスまでは求めて来る事はない。
自分としてはこんな、ただれたような態度についてゆゆしき事だと思うのだが、どういう訳だか容子と顔を合わせると、やたらと「いい感じじゃない?」と意味不明な言葉をかけられている。
まあ容子も、執務室だから何をするなと人に言える立場ではないのだけれども。
*-*-*-*-*-
仕事の手際については、冴子の方は淫靡な時間がそれを加速させるようだが私はそうでもなく。
行き詰っている案件もいつだって皆無と言う訳ではないし、その日定時で帰宅した冴子よりも大幅に、私の帰宅は遅れた。
途中で容子に気を使われ、「残り物だけど」とどこからかの差し入れらしきドーナツの箱を渡されて、それに手を付けてからしばらくの間、残務処理をした。
承認を必要とする書類や進行の芳しくないプロジェクトの報告書など、目を通すものは挙げればきりがない。
私はいわば執行役員のようなポジションではあるけれども、役員の仕事の大半は、「承認」業務である。現場感覚が薄れていく日々に感じているのは恐怖心だが、それを表には出せない。
それなのに、あたかも全ての会議に同席し、現場に立ち会ったかの如く瞬時の判断を求められるし、それは正しいものでなければならないという暗黙のプレッシャーがある。
ほとんどギャンブルのようなものではないか、というのが本音なのだが。
…そう、過程を知らずに責任だけを取る、それが経営者なのだろうか、それともそれは私の力不足が原因なのかと思い悩む事も一度や二度ではない。
容子からは「そのうち慣れる」と言われているけれど。
昼間冴子と身体を重ねている時間がなかったら、もっと沈んだ気持ちだったかもしれない…などと思いつつ、自宅マンションの玄関扉を開くと、「お帰りなさい」と声だけで冴子が応じた。
まだ寝ていなかったのか、と思いながらとりあえず洗面所へ向かい、着替える前に手を洗っていると、背後に冴子の気配を感じた。
何かあるのかな、と思いながらも特に気にする事なくタオルで手を拭いていると、冴子の手がいきなり私の腰に触れてくる。
その手がやけにゆっくりとお尻の方まで撫で下ろされ、そのままスカートをめくられた。
思わず洗面台に両手をついて身体を支えるが、昼間冴子と交わった後に履き替えたショーツが丸見えになる。
…別にショーツを見られるの自体はどうという事もないのだけれど、その内側の秘部は、昼間冴子の指で弄られ、はしたなく淫蜜をこぼしたまま、さっと拭き取った程度の始末しかできていない。
もしかするとガーターストッキングにも少しは淫蜜の跡が残っているかもしれないと思うと、あまり見られたくない気分だった。
思わず鏡越しに冴子の恰好を確かめると、黒のシンプルなキャミソールタイプのロングワンピースを着ている。
胸の大きい冴子は部屋ではビスチェタイプのブラは着けないから、ワンピースの肩紐以外の紐が認められない所からして、おそらくノーブラなのだろう。
身体のラインがあまり露骨にならないよう、かなりたっぷりとギャザーの入ったデザインで、ぱっと見で胸の形がわかる程ではないが、問題はそこではない。
「ちょっと、それ」
ノーブラなのも別にどうと言うものではない。けれども冴子の下腹部には明らかに、ワンピースの布地をそうとわかるぐらいに持ち上げている偽竿の存在が見て取れた。
「……え」
「お姉さま、続き…したいです」
これが自宅でなければ、そして冴子の姿形でなければまるっきり痴漢だろうと思う間もなく、剥き出しになった、それでもまだショーツを履いたままのお尻に、冴子がその物を擦り付けてくる。
直接ではなくワンピースの布越しにそれを擦り付けられているので、むしろ本物の男根と似たような感触で、一気に卑猥な雰囲気に包まれるような気がした。
「ガーターって便利ですよね」
呟く冴子の声にあまり感情が読み取れない。表情もどちらかと言うといかにも興奮してますといった風情は読み取れない。
でも、と言うかそれは当たり前の事なのだが、冴子の表面上に現れている昂りの程度には関係なく、装着された偽竿はいきり立っており、もう挿入したくて仕方ないとでも言われているかのような気分になるのだから、本能というものは恐ろしいと思った。
「できれば…シャワーを浴びてから…」
「今、したいです」
鏡越しに視線が交錯する。
私は冴子の欲望を、それでも心のどこかで感じ取り、受け止めようとしている。
ショーツと、冴子の着ているワンピース越しにではあるが、ちょうどお尻の割れ目にあたる場所に、偽竿が上下に擦り付けられている。そして冴子の両手は、私の腰から太腿を撫で下ろし、スカートの前側までめくり上げようとしていた。
ゆっくりとした手つきなのに、凄くいやらしく感じてしまう。
「会社では最後までするのは難しいし、でも…どうしてもその先がしたくて堪らなくて」
「……」
それはわかるけど、と言おうとして辞めた。
冴子はあれでも自制していたのだと理解する。
「今なら、ほとんど会社にいる時と同じように、お姉さまを犯せると思って」
と言いつつ自分は部屋着じゃないかと反論したくなる。
…でも。
実際に普段の冴子は部屋着としてあまり選ばない、黒のワンピース。
黒は、殊更冴子の色気を際立たせる色だと私は思う。
だから、今も冴子の言葉に突っ込む事もせず、もじもじと黙ってされるがままになっているのだ。
正直私が、冴子の恰好に驚きつつも見とれていて、それでつい冴子の欲望を受け止める形になってしまっているのも認めざるを得ない。
「いいですか…いきなり、入れたいんですけど」
「……」
拒否しないのは承諾の意味と理解したのか、冴子はするすると私のショーツを引き下ろし、足首からも抜き取った。
それから自身のワンピースの裾を持ち上げ、いよいよ偽竿を露出させる形でその前裾を偽竿の根本に引っ掛けるようにする。
それによって冴子の下半身が丸見えになり、私は見てはいけないものを見てしまったかのような気がした。あまりにも卑猥だったから。
そのままするのかと尋ねる前に、もう冴子が腰を進めて、いきなり偽竿の先端が私の花弁を割り開く。
ズブズブと中に侵入してくる偽竿の感触と共に、内部に溜まった密度の濃い淫汁が溢れる感覚があった。おそらく昼間交わった名残のようなものだろう。
「あ……っん」
貫かれる瞬間に出た嬌声は思いのほか大きく、自分でもびっくりした。そしてここが自宅で良かったと、なぜかほっとしている。
「お姉さま、声…我慢しないで聞かせてください」
「…っんん、あん」
「そう…凄い、いやらしいです」
何故だろう。
まだ帰宅して3分も経っていない。着替えもシャワーも済ませていなくて、コンディションとしては全然、万全とは程遠いのに。
そして洗面所という狭い空間で、立ったまま後ろから挿入されるという、屈辱的な交わり方なのに、私は酷く昂っている。
冴子の偽竿はまだ、奥へと進んだだけで、ピストン運動を始めてはいない。
それなのに、これだけでもう膣壁が自分でもわかるくらいにきゅんきゅんと収縮し、偽竿を離すまいとすがりついているかのようだ。
「さ、冴子…」
お尻の両側を開くように持ち上げられると、それにつられて私の身体は背中を反らし、冴子に向かってお尻を突き出すように上向けてしまう。身体が前傾し、したくもないのに鏡に自分の顔が接近してしまう。
「お姉さま、ほんと…可愛いです…」
冴子がようやく、ゆるゆるとピストン運動を開始する。その動きは、冴子自身が自分を抑制するかのように、とてもゆっくりでもどかしい。
それでも偽竿の先端が最奥まで到達する時には、それなりの衝撃があって私は軽い悲鳴をあげてしまう。
「は、あんっ、冴子…っ」
「…お姉さま、凄い…乱れてる感じで」
「……だって」
「もっと、乱れてください」
「ん、でも……服が」
偽竿が最奥まで収納される時、私のお尻と冴子の下腹部が密着して、私の蜜と混じり合った独特の接触音を放つ。
偽竿の根本にはワンピースの前裾がかかっており、そこを挟むような感触もあった。
別に部屋着なのだから汚す事には問題はないのかもしれないけれど。
「…擦れますか、これ」
「……」
そうだ。汚すと言うよりも摩擦が気になっている。
冴子は冴子でガーターベルトに腿が当たって擦れているのかもしれないけど。
ワンピースの前裾は結合部にかかっている。
「…じゃこんな感じで」
腰の動きを少しずつ速めながら、冴子は器用にその布を持ち上げて、自分の大きな胸に引っ掛けた。
冴子自身が少し身体を反らして腰を使う分には、大きな胸に引っかかって布は落ちて来ないようである。
私はぎょっとして鏡を凝視する。
自分の表情こそ目前にあるけれども、背後の冴子は下半身のみならず上半身もほとんど丸見えの状態で私の秘部を突いている。
「あ、……ん」
腰の動きがどんどん速くなり、私は言葉としての発声が難しくなっていた。
かろうじて、それでも凄く見たいので、必死に鏡に顔を向けて、冴子の姿を見つめている。
身体はがくがくと揺れていて、焦点は定まらないのだけれど。
「…お姉さま」
「それ、ダメ…ああっ」
「…いいですか?これ」
わかってるくせにと言いたくなるが、その言葉も愉悦に押し流されていく。
冴子の偽竿が奥で小刻みに動き、私の感じる場所に微弱な振動刺激を与えてくるのだ。
「んっ、き、気持ちいい…っ」
「…ですよね」
しかし小刻みな動きによって、冴子の胸に引っかかっていたワンピースの前裾が下に落ちてくる。
揺れる冴子の胸が見えなくなってしまい、それから私の腰あたりに布がかぶさる感触があった。
よほど私が残念そうな顔をしてしまったのか、冴子は思いついたように、その布地を口に咥える。
これなら胸も見えるでしょ、と言わんばかりに目を細めて微笑しつつ、言葉もなく--それは冴子が布地を咥えているので無理な話なのだが--ピストン運動が再開される。
「あ、冴子っ、あ…っ、あぁん」
冴子は少し粗く鼻息を漏らす程度で、自分一人がうるさく喘いでいるのがとても恥ずかしい。
けれども冴子の動きは緩む事なく、私の最奥を小刻みに穿つ動きと、ねっとりと竿全体を出し入れしつつ、膣前壁をズリズリと擦るような動きを繰り返していて、私は何度か小さな絶頂感に襲われていた。
そして、いつからそうしているのかわからないが、私も腰を前後に、あるいは軽く左右に振りながら冴子の偽竿を積極的に受け入れてしまっている。
「………」
冴子は何も言わない。何か言うとワンピースの前裾を離してしまうからだろう。
私は一人で嬌声をあげ、この行為のもたらす愉悦の程度や、絶頂を迎えた事を何度も何度も申告した。冴子の名前も、何度も呼んだと思う。
「あっ、あんっ、冴子……また…いっちゃう…」
そんな事はいちいち言葉で伝えなくても、おそらく私の秘部から溢れ出る淫蜜の量と濃さを見れば、冴子にだってわかる事なのだけれど。
それでも、伝えなければならないと思った。
腰が、身体が震えて、はしたないぐらいに淫蜜が内腿を伝う。そこへ更に偽竿を挿入されるので、膣内に収まり切らない蜜は押し出されて花弁の外まで溢れ出る。
それが冴子の下腹部や腿を濡らして、気持ちの悪いべたべたとした感覚が、肌を触れ合わせる旅に感じられる。
そう、私がいかに濡らして、こぼしているか再認識させられるのだ。
それを見られたくない、知られたくないという羞恥心が、今度は自分に嬌声をあげさせる。
声に注目して、その場所からは気を散らして欲しいと思ってしまうから。
「お姉さま」
いつしかろくに鏡も見られなくなって、冴子がどうなっているのかもわからなくなった頃、冴子が言葉を発した。
同時に再びワンピースの布地に身体を包まれる。
「もう少しだけ…させてください」
「……っ、んっ、あはぁ」
偽竿を介して交わっているので、冴子の膣内がどうなっているのか、私にはわからない。
でも、まだ達してはいないのかもしれないなと思った。
「冴子は…気持ちいい…?」
振り返る事なく、でも鏡を見上げる事はできなくて、誰にともなく尋ねているかのような調子になる。
「気持ち…いいです、もう倒れそうなぐらい」
「……」
冴子は、偽竿のパーツのどこかに自身のクリトリスを擦り付けているようだった。
冴子の声が少し震えて、それから猛烈だったピストン運動が急に緩慢になる。
それでも、刺さっているのは偽竿だから、その強直は一切萎える事などない。
冴子がゆっくりと、それを引き抜いて、それから私の背中に覆いかぶさるように抱き起された。
そのまま身体を反転させられ、向かい合って濃厚なキスを交わす。
その時ようやく、私は眼鏡をかけたままだという事に気づいた。冴子がそっと眼鏡を外してくれ、それから再び思いきり唇を密着させる。
「ん…んふ…っ」
私の身体は洗面台と冴子の間に挟まれるような状態で、あまり身動きが取れない。
互いの呼吸が落ち着くまで、キスは続いた。
「…仕事モードのお姉さまを、犯しちゃいました」
「……」
どう返せば良いのかわからず黙っていると、また唇を求められる。
ねだられるままにキスに応じていると、冴子が何かに気付いたように呟いた。
「お菓子食べたんですか」
「あ……ドーナツ、もらったから」
「なるほどその味でしたか」
「コーヒーも、飲んだと思うけど…」
何か、口内に残ったドーナツの欠片までもキスで探られたのかと思うと、恥ずかしい思いがする。
そう言えば今日はもう、梨々香は帰宅しているのだろうが、これだけ欲望を溜め込んでいる冴子は彼女にそれをぶつけなかったのだろうか。
疑問ではあるがいちいち尋ねる必要もないだろう。
それがあったにせよなかったにせよ、冴子と交わる時間こそ、私にとっては至福なのだから。
執務室の壁に押さえ付けられるような恰好で、冴子にキスされている。
ついでに冴子の豊かな胸が密着しておりその感触で、つい身体の内側が反応してしまう。
日の高いこんな時間にまずい、と内心思っているのだが、冴子を押しのける事もできずにいる自分は弱いと思う。
状況的にはいかにも獰猛に唇を奪われているような感じだけど、実際に唇に与えられる刺激はそれとは真逆と言って良く、冴子の舌は実に理性的な動きで私の唇を左右になぞり、わずかな隙間からさりげなく口内に割り入って来ている。
それから互いの舌先を触れ合わせた瞬間、二人して力が抜けたような吐息を漏らしていた。
執務室の扉には「打合せ中」と表示できるような札が用意されており、おそらく冴子はそれを扉に提げておいてこの行為に及んでいる。
冴子の仕事の段取りが磨かれて持て余す時間が増えたからなのか、冴子の中で攻めブームが起きているからなのか、またはその両方か--要因については不明だが、この所日中に執務室で迫られる頻度が増えている。
私も私で、されるがまま受け入れてしまっているのは問題だなと思いながらも、現実逃避したいような気持を見透かされているのか、ふと気持ちが沈みかける瞬間を狙いすましたかのように襲われてしまうので、強く拒絶する事もできないままだ。
それでも今日はなぜだか冴子の胸に直接触れたくなったので、向かい合っている冴子の身体を半身だけ離し、回転させるようにして向きを変えさせる。
右手は冴子の背後から脇の下を通し、左手はそのまま自然に冴子の胸にもっていく。
半分だけ身体を重ねたようなバックハグ状態になり、キスを再開させる為には冴子の顔をこちらに向けさせる必要があるのだけれど、私の掌や指が冴子の胸をやわやわと揉みしだく動作に冴子が反応し、冴子の顔が自然に上を向いた。
ごく小さな声で「冴子」と囁くそれだけで、冴子の顎は導かれるようにこちら側を向き、さほどの苦もなく唇が重なった。
「……」
冴子の胸は張りがあるように見えるのに、触るととても柔らかい。揉み心地はマシュマロのようで、大切に優しく扱いたいはずなのに、気が付くとけっこうな激しさで揉みしだいてしまったりしている。
多少の事では冴子は痛がる素振りを見せないからなのだろうか。
それに。
攻守交替した後でも、今の冴子はされるがままになろうとはせず、こちらの動きに身を任せながらも攻めを完全停止する事はない。
その証拠に、今の冴子は手探りで私の履いている膝丈のセミフレアスカートの裾をたくし上げようと動いていた。
その手は大胆にスカートの裾をめくり上げたかと思うと、躊躇なくショーツの中へと滑り込んでくる。
一気に濡れた花弁の割れ目に指先を到達させ、そこから掬い取った濃厚な淫蜜を、まだ勃ち上がっていないはずの秘粒に塗り込めるように擦り付けてきた。
はぁっと大きな息が漏れ、こちらも左手を動かし冴子のタイトスカートの裾をまさぐる。
ここ最近は、別に相談も約束もしていないのだけれど、私も冴子もガーターストッキングを身に着けるようになった。
こういう場面でショーツだけを脱いで行為に及ぶ事を想定しているみたいでいやらしいと言われればその通りなのだけれど、事実実用的でもある。
ストッキングが破れたりする心配も少ないし、仮にショーツを汚しても、替えのショーツに履き替えてしまえば表面上は何事もない。
今だって、ストッキングに与えるダメージはほとんど気にする事もなく、ショーツを履いたままで大胆に愛撫し合う事ができている。
「ん……はぁ」
「…お姉さま」
「?」
「声…聞こえちゃうかも」
下半身への愛撫が始まり、なるべく喘がないよう、呼吸に混ぜる形でどうにか耐えているつもりだったけど、あまり上手くいっていなかったようではっとした。
「じゃ…冴子が何とかして……っ」
「……」
冴子の唇がいっそう強く密着し、舌まで絡め取られそうなぐらいに口内をぐちゃぐちゃに侵食される。
息苦しいほどの濃厚なキスに気が遠くなりかけて、同時に得も言われぬ恍惚とした気分に陥る。
こちらも必死で冴子の身体を掻き抱くようにしながら右手では胸をまさぐり、左手では最短ルートで冴子の日常着である所のTバックショーツのクロッチを押しのけるようにずらして、露出した花弁の間に指を差し込んだ。
冴子は大きな反応を示す事はなかったけど、花弁の内側がびしょ濡れで、思いのほか指が勢い良く秘穴に吸い込まれてしまい、ほんの一瞬だけ動揺する。
しかしながらこちらも冴子の指による刺激を蜜穴の中層部まで感じており、動きの細部まできちんと制御できない。
「ん…っん」
まるでうめくように互いの喘ぎ声をキスで塞ぎ、指先では互いを激しく求めあうような愛撫を施し合う。
ここは執務室だ。早く達してしまいたいといような焦りの気持ちもある。
だけど、今この瞬間を至福と感じてしまっている。
多少貞操観念は希薄だが、それでも冴子本人が許した相手にしか好きに触らせない胸に、秘部に好きなだけ触る事ができる。それはある意味特権のように感じられるのだ。
そして冴子の持つ性欲の大半は私に向けられているのだという優越感のような感情。
…だから?こうして受け入れてしまうのだろうか。
いや、優越感とは誰に対するものなのか。
逆に遅れを取りたくないという焦りがあるのではないか。
でも、そういった小さいながらもネガティブな感情は、この愉悦の波に押し流されていく。
冴子は私の事をずっと「お姉さま」と呼んでいるけれど、そんな風に呼ばれ始めた当初と今は、私達の関係性、と言うかパワーバランス的なものはほとんど対等に変化した気がして、それがどういう訳だか心地良いのだ。
年齢こそ私が大きく上回っているが、今思えばそれに捕らわれるように上下関係を意識する必要も別になかったのだ。
けれども私も冴子も、それが自然な関係性だと思っていたしそれで居心地は悪くなかったのだと思う。
今は--勿論年齢も、社会的な立場も違うには違うままだけど、私も冴子に甘えるし、冴子も私に完璧を求めようとはしていない。
なんとなく、そうやってお互いに求められる役割を演じるような事からは解放されたような気がしている。私にとってはそれが心地良さに繋がっている気がするのだ。
いつの間にか冴子の身体が私の身体を押さえつけるように重なっている。
秘穴への刺激に耐えかねて私の身体が震え、顔を横に振ってしまいたくなる生理現象を、冴子が強引に押しとどめているかのようだ。
精神的な心地良さとは程遠い、窮屈で息苦しいような、とても性急な交わりなのに、それが至福と思うのだから私も変わったものだ。
「ん、く……っんん」
くぐもった声と、下半身から微かに響く粘着質な水音。
それらが、遠く壁の向こうから聞こえるわずかな電話の音や打合せの話声、複合機の動作音などと重なって聞こえてくる。
そして、どこにも隠れる場所などない、明るい執務室。
それら全ては背徳感を増幅させ、身体の中心部のみに集約されていくかのように、蓄積して弾ける瞬間に向かって止まる事なく流れていく。
あ…私こんな場所で、冴子に指でイかされる。
その状況を脳内で言語化した瞬間に、蓄積したものが弾けた。
冴子の掌では受け止め切れなかった、溢れ出した淫蜜がストッキング越しに自分の内腿に垂れていく。
どうにか身体を支えながら、それでも自分の指先に冴子の膣肉の収縮を感じ、冴子の到達も近いのだと理解する。
ぎこちない動きではあるが、クロッチをずらしてほとんど露出した冴子の花弁を大胆に弄り、二本の指をその中心に突き入れる。掌まですっぽり密着させ、指先を小刻みに動かしながら、掌で包皮を剥がすように動かすと、冴子も身体をびくつかせて淫らな熱を放出させた。
「あ、……ん」
ほとんど喘ぎ声を出していなかった冴子がその瞬間だけ、甘く気怠い吐息を漏らす。
私の腕の中で、身体を震わせて絶頂する冴子。
冴子の絶頂する姿は過去と今とでは一線を画すほどの違いがある。その瞬間だけは、恐ろしく無防備で艶めかしい。これを見る為にならばどんな攻めにも堪えられる、そんな錯覚さえ引き起こす程なのだ。
性欲の強い冴子にとっては一度の絶頂など取るに足らない事象なのかもしれないが、それを目撃する者にとってはそんな風には思えない。
現に達したばかりの私の身体の内側には、再び何とも表現し難い熱が沸き始めている気がする。
そんな冴子の唇に、当たり前のようにキスをする。
軽く舌を触れ合わせながら、ほんの少しの間だけ絶頂の余韻に浸るのだ。
ゆっくりと顔を離すと、冴子の方はもう割と平常時の表情に近いくらいまで落ち着いていた。
私の方は…どうだろうか、あまり自信がない。
二人ともイっちゃったね、と小声で囁き合いながら、もう少しだけと戯れるように唇を啄み合う。
キス自体は軽いものだけれど、唇を離す時には少しだけ、唾液の糸が引いていやらしさを感じた。
その後私はおそらく酷く鈍重な動きで、どうにか窓を開けるだけして、それから身体を預けるようにハイバックチェアに座った。
ショーツを替えたいけど、少しだけ身体を休めてからにする。
冴子の方は「札はもう少しこのままにしておきます」と言い置いてポーチを片手に部屋を出て行ってしまった。おそらく化粧室にでも向かったのだろう。
「……」
何かこういう所に年齢差を実感してしまうけれど、さすがに冴子はまだまだ余裕と言った所か。むしろこれからとでも言いたげな感じがしたけれど、執務室ではさすがに本気のセックスまでは求めて来る事はない。
自分としてはこんな、ただれたような態度についてゆゆしき事だと思うのだが、どういう訳だか容子と顔を合わせると、やたらと「いい感じじゃない?」と意味不明な言葉をかけられている。
まあ容子も、執務室だから何をするなと人に言える立場ではないのだけれども。
*-*-*-*-*-
仕事の手際については、冴子の方は淫靡な時間がそれを加速させるようだが私はそうでもなく。
行き詰っている案件もいつだって皆無と言う訳ではないし、その日定時で帰宅した冴子よりも大幅に、私の帰宅は遅れた。
途中で容子に気を使われ、「残り物だけど」とどこからかの差し入れらしきドーナツの箱を渡されて、それに手を付けてからしばらくの間、残務処理をした。
承認を必要とする書類や進行の芳しくないプロジェクトの報告書など、目を通すものは挙げればきりがない。
私はいわば執行役員のようなポジションではあるけれども、役員の仕事の大半は、「承認」業務である。現場感覚が薄れていく日々に感じているのは恐怖心だが、それを表には出せない。
それなのに、あたかも全ての会議に同席し、現場に立ち会ったかの如く瞬時の判断を求められるし、それは正しいものでなければならないという暗黙のプレッシャーがある。
ほとんどギャンブルのようなものではないか、というのが本音なのだが。
…そう、過程を知らずに責任だけを取る、それが経営者なのだろうか、それともそれは私の力不足が原因なのかと思い悩む事も一度や二度ではない。
容子からは「そのうち慣れる」と言われているけれど。
昼間冴子と身体を重ねている時間がなかったら、もっと沈んだ気持ちだったかもしれない…などと思いつつ、自宅マンションの玄関扉を開くと、「お帰りなさい」と声だけで冴子が応じた。
まだ寝ていなかったのか、と思いながらとりあえず洗面所へ向かい、着替える前に手を洗っていると、背後に冴子の気配を感じた。
何かあるのかな、と思いながらも特に気にする事なくタオルで手を拭いていると、冴子の手がいきなり私の腰に触れてくる。
その手がやけにゆっくりとお尻の方まで撫で下ろされ、そのままスカートをめくられた。
思わず洗面台に両手をついて身体を支えるが、昼間冴子と交わった後に履き替えたショーツが丸見えになる。
…別にショーツを見られるの自体はどうという事もないのだけれど、その内側の秘部は、昼間冴子の指で弄られ、はしたなく淫蜜をこぼしたまま、さっと拭き取った程度の始末しかできていない。
もしかするとガーターストッキングにも少しは淫蜜の跡が残っているかもしれないと思うと、あまり見られたくない気分だった。
思わず鏡越しに冴子の恰好を確かめると、黒のシンプルなキャミソールタイプのロングワンピースを着ている。
胸の大きい冴子は部屋ではビスチェタイプのブラは着けないから、ワンピースの肩紐以外の紐が認められない所からして、おそらくノーブラなのだろう。
身体のラインがあまり露骨にならないよう、かなりたっぷりとギャザーの入ったデザインで、ぱっと見で胸の形がわかる程ではないが、問題はそこではない。
「ちょっと、それ」
ノーブラなのも別にどうと言うものではない。けれども冴子の下腹部には明らかに、ワンピースの布地をそうとわかるぐらいに持ち上げている偽竿の存在が見て取れた。
「……え」
「お姉さま、続き…したいです」
これが自宅でなければ、そして冴子の姿形でなければまるっきり痴漢だろうと思う間もなく、剥き出しになった、それでもまだショーツを履いたままのお尻に、冴子がその物を擦り付けてくる。
直接ではなくワンピースの布越しにそれを擦り付けられているので、むしろ本物の男根と似たような感触で、一気に卑猥な雰囲気に包まれるような気がした。
「ガーターって便利ですよね」
呟く冴子の声にあまり感情が読み取れない。表情もどちらかと言うといかにも興奮してますといった風情は読み取れない。
でも、と言うかそれは当たり前の事なのだが、冴子の表面上に現れている昂りの程度には関係なく、装着された偽竿はいきり立っており、もう挿入したくて仕方ないとでも言われているかのような気分になるのだから、本能というものは恐ろしいと思った。
「できれば…シャワーを浴びてから…」
「今、したいです」
鏡越しに視線が交錯する。
私は冴子の欲望を、それでも心のどこかで感じ取り、受け止めようとしている。
ショーツと、冴子の着ているワンピース越しにではあるが、ちょうどお尻の割れ目にあたる場所に、偽竿が上下に擦り付けられている。そして冴子の両手は、私の腰から太腿を撫で下ろし、スカートの前側までめくり上げようとしていた。
ゆっくりとした手つきなのに、凄くいやらしく感じてしまう。
「会社では最後までするのは難しいし、でも…どうしてもその先がしたくて堪らなくて」
「……」
それはわかるけど、と言おうとして辞めた。
冴子はあれでも自制していたのだと理解する。
「今なら、ほとんど会社にいる時と同じように、お姉さまを犯せると思って」
と言いつつ自分は部屋着じゃないかと反論したくなる。
…でも。
実際に普段の冴子は部屋着としてあまり選ばない、黒のワンピース。
黒は、殊更冴子の色気を際立たせる色だと私は思う。
だから、今も冴子の言葉に突っ込む事もせず、もじもじと黙ってされるがままになっているのだ。
正直私が、冴子の恰好に驚きつつも見とれていて、それでつい冴子の欲望を受け止める形になってしまっているのも認めざるを得ない。
「いいですか…いきなり、入れたいんですけど」
「……」
拒否しないのは承諾の意味と理解したのか、冴子はするすると私のショーツを引き下ろし、足首からも抜き取った。
それから自身のワンピースの裾を持ち上げ、いよいよ偽竿を露出させる形でその前裾を偽竿の根本に引っ掛けるようにする。
それによって冴子の下半身が丸見えになり、私は見てはいけないものを見てしまったかのような気がした。あまりにも卑猥だったから。
そのままするのかと尋ねる前に、もう冴子が腰を進めて、いきなり偽竿の先端が私の花弁を割り開く。
ズブズブと中に侵入してくる偽竿の感触と共に、内部に溜まった密度の濃い淫汁が溢れる感覚があった。おそらく昼間交わった名残のようなものだろう。
「あ……っん」
貫かれる瞬間に出た嬌声は思いのほか大きく、自分でもびっくりした。そしてここが自宅で良かったと、なぜかほっとしている。
「お姉さま、声…我慢しないで聞かせてください」
「…っんん、あん」
「そう…凄い、いやらしいです」
何故だろう。
まだ帰宅して3分も経っていない。着替えもシャワーも済ませていなくて、コンディションとしては全然、万全とは程遠いのに。
そして洗面所という狭い空間で、立ったまま後ろから挿入されるという、屈辱的な交わり方なのに、私は酷く昂っている。
冴子の偽竿はまだ、奥へと進んだだけで、ピストン運動を始めてはいない。
それなのに、これだけでもう膣壁が自分でもわかるくらいにきゅんきゅんと収縮し、偽竿を離すまいとすがりついているかのようだ。
「さ、冴子…」
お尻の両側を開くように持ち上げられると、それにつられて私の身体は背中を反らし、冴子に向かってお尻を突き出すように上向けてしまう。身体が前傾し、したくもないのに鏡に自分の顔が接近してしまう。
「お姉さま、ほんと…可愛いです…」
冴子がようやく、ゆるゆるとピストン運動を開始する。その動きは、冴子自身が自分を抑制するかのように、とてもゆっくりでもどかしい。
それでも偽竿の先端が最奥まで到達する時には、それなりの衝撃があって私は軽い悲鳴をあげてしまう。
「は、あんっ、冴子…っ」
「…お姉さま、凄い…乱れてる感じで」
「……だって」
「もっと、乱れてください」
「ん、でも……服が」
偽竿が最奥まで収納される時、私のお尻と冴子の下腹部が密着して、私の蜜と混じり合った独特の接触音を放つ。
偽竿の根本にはワンピースの前裾がかかっており、そこを挟むような感触もあった。
別に部屋着なのだから汚す事には問題はないのかもしれないけれど。
「…擦れますか、これ」
「……」
そうだ。汚すと言うよりも摩擦が気になっている。
冴子は冴子でガーターベルトに腿が当たって擦れているのかもしれないけど。
ワンピースの前裾は結合部にかかっている。
「…じゃこんな感じで」
腰の動きを少しずつ速めながら、冴子は器用にその布を持ち上げて、自分の大きな胸に引っ掛けた。
冴子自身が少し身体を反らして腰を使う分には、大きな胸に引っかかって布は落ちて来ないようである。
私はぎょっとして鏡を凝視する。
自分の表情こそ目前にあるけれども、背後の冴子は下半身のみならず上半身もほとんど丸見えの状態で私の秘部を突いている。
「あ、……ん」
腰の動きがどんどん速くなり、私は言葉としての発声が難しくなっていた。
かろうじて、それでも凄く見たいので、必死に鏡に顔を向けて、冴子の姿を見つめている。
身体はがくがくと揺れていて、焦点は定まらないのだけれど。
「…お姉さま」
「それ、ダメ…ああっ」
「…いいですか?これ」
わかってるくせにと言いたくなるが、その言葉も愉悦に押し流されていく。
冴子の偽竿が奥で小刻みに動き、私の感じる場所に微弱な振動刺激を与えてくるのだ。
「んっ、き、気持ちいい…っ」
「…ですよね」
しかし小刻みな動きによって、冴子の胸に引っかかっていたワンピースの前裾が下に落ちてくる。
揺れる冴子の胸が見えなくなってしまい、それから私の腰あたりに布がかぶさる感触があった。
よほど私が残念そうな顔をしてしまったのか、冴子は思いついたように、その布地を口に咥える。
これなら胸も見えるでしょ、と言わんばかりに目を細めて微笑しつつ、言葉もなく--それは冴子が布地を咥えているので無理な話なのだが--ピストン運動が再開される。
「あ、冴子っ、あ…っ、あぁん」
冴子は少し粗く鼻息を漏らす程度で、自分一人がうるさく喘いでいるのがとても恥ずかしい。
けれども冴子の動きは緩む事なく、私の最奥を小刻みに穿つ動きと、ねっとりと竿全体を出し入れしつつ、膣前壁をズリズリと擦るような動きを繰り返していて、私は何度か小さな絶頂感に襲われていた。
そして、いつからそうしているのかわからないが、私も腰を前後に、あるいは軽く左右に振りながら冴子の偽竿を積極的に受け入れてしまっている。
「………」
冴子は何も言わない。何か言うとワンピースの前裾を離してしまうからだろう。
私は一人で嬌声をあげ、この行為のもたらす愉悦の程度や、絶頂を迎えた事を何度も何度も申告した。冴子の名前も、何度も呼んだと思う。
「あっ、あんっ、冴子……また…いっちゃう…」
そんな事はいちいち言葉で伝えなくても、おそらく私の秘部から溢れ出る淫蜜の量と濃さを見れば、冴子にだってわかる事なのだけれど。
それでも、伝えなければならないと思った。
腰が、身体が震えて、はしたないぐらいに淫蜜が内腿を伝う。そこへ更に偽竿を挿入されるので、膣内に収まり切らない蜜は押し出されて花弁の外まで溢れ出る。
それが冴子の下腹部や腿を濡らして、気持ちの悪いべたべたとした感覚が、肌を触れ合わせる旅に感じられる。
そう、私がいかに濡らして、こぼしているか再認識させられるのだ。
それを見られたくない、知られたくないという羞恥心が、今度は自分に嬌声をあげさせる。
声に注目して、その場所からは気を散らして欲しいと思ってしまうから。
「お姉さま」
いつしかろくに鏡も見られなくなって、冴子がどうなっているのかもわからなくなった頃、冴子が言葉を発した。
同時に再びワンピースの布地に身体を包まれる。
「もう少しだけ…させてください」
「……っ、んっ、あはぁ」
偽竿を介して交わっているので、冴子の膣内がどうなっているのか、私にはわからない。
でも、まだ達してはいないのかもしれないなと思った。
「冴子は…気持ちいい…?」
振り返る事なく、でも鏡を見上げる事はできなくて、誰にともなく尋ねているかのような調子になる。
「気持ち…いいです、もう倒れそうなぐらい」
「……」
冴子は、偽竿のパーツのどこかに自身のクリトリスを擦り付けているようだった。
冴子の声が少し震えて、それから猛烈だったピストン運動が急に緩慢になる。
それでも、刺さっているのは偽竿だから、その強直は一切萎える事などない。
冴子がゆっくりと、それを引き抜いて、それから私の背中に覆いかぶさるように抱き起された。
そのまま身体を反転させられ、向かい合って濃厚なキスを交わす。
その時ようやく、私は眼鏡をかけたままだという事に気づいた。冴子がそっと眼鏡を外してくれ、それから再び思いきり唇を密着させる。
「ん…んふ…っ」
私の身体は洗面台と冴子の間に挟まれるような状態で、あまり身動きが取れない。
互いの呼吸が落ち着くまで、キスは続いた。
「…仕事モードのお姉さまを、犯しちゃいました」
「……」
どう返せば良いのかわからず黙っていると、また唇を求められる。
ねだられるままにキスに応じていると、冴子が何かに気付いたように呟いた。
「お菓子食べたんですか」
「あ……ドーナツ、もらったから」
「なるほどその味でしたか」
「コーヒーも、飲んだと思うけど…」
何か、口内に残ったドーナツの欠片までもキスで探られたのかと思うと、恥ずかしい思いがする。
そう言えば今日はもう、梨々香は帰宅しているのだろうが、これだけ欲望を溜め込んでいる冴子は彼女にそれをぶつけなかったのだろうか。
疑問ではあるがいちいち尋ねる必要もないだろう。
それがあったにせよなかったにせよ、冴子と交わる時間こそ、私にとっては至福なのだから。
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