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二人のメイド(容子SIDE)

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「容子様、お帰りなさいませ」

都内の高級住宅地、区画あたりの広さは勿論一般の住宅街のそれとは比べ物にならないほど広いけれど、その中でも私の住まいは大きい方だと思う。
いわゆる洋館といった風情の、世間一般からすれば「お屋敷」と呼べるような家、それが私の帰る場所だ。

そこには私の他に二人の娘が暮らしている。
彼女らは、こんな風にメイドとして私を出迎えてはいるけれども、実は私の養子なのだ。

年頃はちょうど、冴子ちゃんと近い。二人とも富豪の家に生まれたが、それぞれに事故なりその他の事情で両親を亡くした所で、諸々あって私が彼女らを引き取る事にしたのだ。

二人とも、引き取ったタイミングも違うし互いに面識はなかったが、年も近く、また私を慕う気持ちが通じ合ったのかすぐに仲良くなり、その上頼みもしないのに、当時この屋敷の世話をしてくれていた年配の家政婦の真似をしだして、結果私の養子であるにも関わらず、二人して私とこの屋敷に仕えるような形になってしまっている。

昔から居た家政婦も、二人の娘の成長と共に「これで安心して容子様の下からお暇できます」などと言い残してこの屋敷を去っていった。
だから、今は私とこの二人の娘だけがこの屋敷の住人なのである。

二人左右に分かれて私の荷物やアウターコートを受け取りながら、私に笑顔を向けてくる。

片方はまるでフランス人形のように愛らしい顔立ちの、ウェーブのかかった長い金髪に翡翠色の瞳を持つ娘、山元梨々香(りりか)。
見た目の通り外国人だが、養子として引き取るにあたりこの「梨々香」という名前を付けてやった。
幼くして飛行機事故により両親を亡くした娘だったが、私と彼女の両親がとても親しくしていたのもあり、彼女は私に懐いていたし、このまま故郷の地で辛い思い出と共に暮らすよりも、環境をがらりと変え手しまう方が良いかもしれないと、彼女の親族も最大限に彼女の幸せを考え、遠い日本の地で暮らす私に、梨々香を任せてくれた。

梨々香は私を大変に慕っていて、家族として引き取る際にも互いに躊躇は感じなかった。
幼い梨々香は、両親を失った悲しみを、他の場所では見せる事なく気丈に振舞っていたようだったが、私が駆け付けた時には本心を吐露するように、私の前では泣いた。

もう一人の娘は山元愛美(まなみ)、こちらは純日本人の涼やかな顔立ちを持つ娘だ。こちらは日本人形…と言うよりもっと現代的な、すらりとした長身と、顔や身体のラインもシャープな感じに育っている。
意志の強そうな黒い瞳を持ち、何故か髪だけは黒髪だが少しくせがあって柔らかい。
短くすると跳ねて面倒だからと、愛美も髪は長く伸ばしているものの、日中メイド姿の時にはお団子にまとめてすっきりさせている。

彼女はこの屋敷の近隣に住む、とある富豪の娘だったが彼女の両親には様々な問題があった。羽振りの良さの裏側には多額の借金も抱えていて、彼女は家族と過ごす時間をいつも緊張しながら過ごしていたらしい。

ある夜偶然、屋敷の庭に出た所で小さくすすり泣くような声を認め出所を探してみると、道端に幼い愛美が居た。
その晩は私の屋敷に泊めてやり、近所の付き合いでもあるから彼女の家に電話をした所、彼女の母親は「それなら安心です、今晩はご厄介になりますが宜しくお願いします」と朗らかに礼を述べたけど、翌朝彼女を家に帰す為に再び電話をした所、誰も出なかった。

…どういう思考でそうなったかは知らないが、彼女の両親はどうやら前夜に自死したようだった。と言うか私がその第一発見者となってしまった訳なのだけれど。
かろうじて愛美にはその現場を見せる事なくやり過ごす事はできたけど、それでもその家の娘なのだから、関わらない訳にもいかず、やはり愛美は警察や病院とのやり取りを気丈にこなした後、私の腕の中で泣いた。

愛美の方は引き取り手についてむしろすんなり進んで、彼女の両親が親族から嫌われていた事が伺えた。
既に梨々香を引き取っていたから、私の身内もあれこれ言うかもしれないと思ったが、こういう境遇の子を一人で置くより二人にして育てた方が良いような気もして、できるかどうかもわからないのに私が次の親の役を買って出たという経緯である。

梨々香と愛美は、いつも一緒に勉強をして学校へ通い、互いに励まし合いながら成長していった。
私がやれた事は、経済的に不自由させないというぐらいの事だったけど、二人は私を命の恩人だと言い、家族になっても感謝を忘れる事はなかった。
びっくりするほど二人は手のかからない子で、気が付くと家政婦の真似ごとを始めていたし、何故か当たり前のように今はメイドとしてこの屋敷の世話をしてくれている。

彼女らがいつも言うのは「容子様のお役に立ちたい、それに関わる事なら何でも、一生をかけて尽くす」という事だ。
年頃になれば二人とも、それなりの男性に嫁がせる事になるのだろうと思っていたのに、彼女らは一切と言っていいほど男に興味を示さなかった。
自分たちの命は私の為だけに消費すると誓ったと、頼んでもいないのに言い出す始末で、まあそれが幸せだと言うのならそのままにしておこう、として今に至っている。

「容子様、少しお疲れですか?」

波打つ金髪を後ろで一つに束ねたメイド姿の梨々香が尋ねてくる。

「そうね」

今日は美咲さんとあんな事になってしまった。
男女問わず適当な相手と一戦交えてから帰宅するなど日常茶飯事であり、梨々香も愛美もそこは心得ている。
それどころか彼女らは、私の性欲処理まで買って出てくれるものだから、身体を投げ出せば二人が自動的に私を官能の高みまで導いてくれるのだ。

「中途半端に身体が火照ってるの、だからすぐに来て」
「かしこまりました」

二人は声を揃えて丁寧に返事をする。
私は気だるい身体をソファに沈めて二人を待った。
瞳を閉じて、二人がいつものように施してくれる愛撫を先に想像し、じわりと秘部が熱くなるのを感じる。

「容子様」

はっとして目を開くと、目の前に先ほどと同じメイド服姿の二人が立っていた。
二人はにこにこと、爽やかな笑顔で私を見つめている。

「いつもみたいに…してくれる?」

私は恥ずかしさをこらえてそう呟いた。
彼女らは、私が命じない限り自分たちから勝手に私の身体に触れる事は絶対にしない。

「はい」

鈴の転がるような可愛らしい声で素直にそう返事する二人。
そして当たり前のように梨々香は私の足元に跪き、愛美は私を後ろから抱き込むようにしながらソファに滑り込んだ。

あとはもう一本道、服と下着を乱され、いやらしい部分のみ露出させられ彼女らの唇や指で私の身体は弄り回される。
梨々香の手によりストッキングとショーツは膝下まで下ろされて、剥き出しになった秘部に梨々香の顔が躊躇なく埋められる。
愛美の方は鮮やかな手つきでワンピースの背中のファスナーを下ろして腕の半分くらいまでそれを脱がせた所で、器用にブラジャーの隙間に手を潜り込ませやわやわと胸を揉み始めた。

「あ、あっ…あんっ」

切れ切れに、吐息のような喘ぎ声がこぼれる。
二人は静かに私の肌に指を這わせ、性感帯を的確に刺激してきた。

「容子様、今日もとてもお美しいです」

もう、この歳になるとそんな褒め言葉はうさんくさく聞こえるというのに、梨々香も愛美も本気で普通にそういう言葉を口にする。

「…容子様、私、とても幸せです…容子様の大事な所をこんなに、舐めさせてもらえるなんて」

梨々香は口淫を止めずして言葉を話す事ができるようなのだが、どういう技術なのかはさっぱりわからない。
理論上舌が物理的に二枚ないと、それは無理な芸当のはずなのに。

「あ、あんっ、梨々香…貴女ほんとに上手なのね」
「…本当ですか?」

嬉しい、という気持ちをめいっぱい表現するように、梨々香は夢中で私の秘部をしゃぶり続ける。

そんな私と梨々香の様子に軽く嫉妬するように、愛美の指が私の乳首をつまみ上げた。

「あぁっ、あ…愛美ったら…っふん…」
「ああ…容子様、その声…素敵です」
「あんっ、あだめっ、あ……っ!」

泣きたいような快感に襲われつい愛美の顔を見ると、すかさず愛美の綺麗な唇が私の唇を塞いだ。
薄い唇と舌がスムーズに蠢いてあっという間に私の口内を蹂躙し始める。

「んんっ、んふ…っ」

キスと乳首への愛撫、それから口淫という三点攻めに長時間耐えられるはずもなく、私は二人の手によって深く深く絶頂した。

二人から、いくつもの賛美の言葉を浴びながら。

*-*-*-*-*-

彼女らと暮らしてもう10年以上になる。
その頃私は30歳そこそこで、まだ今のように経営者として進む道もあまり見えていなかった。
今は梨々香が22歳、愛美が23歳で、二人とも同じ女子大に通い愛美の方は今年卒業した。

あの頃から比べればすっかり大人になった二人が、一生を私の為に使うと言うのがほんの少し重たいようにも感じるけれど、私と二人の繋がりはそれだけの物ではなくなっている。

始まりは梨々香の20歳の誕生日にまでさかのぼる。

私は二人に対してあまり隠し事はしていない。
性的にオープンで、したいように相手を変え手は事に及んでいる事も、かつて居た家政婦はよく知っている事だった。
そしてその事はなんとなく、梨々香と愛美にも引き継がれているらしい事も知った。

多分私は早熟だったろうし、相手に事欠く事など一切なくここまで来ている。
気にするべきは経営者としての自分の立場だけど、特定のパートナーを持っていない今は、もはややりたい放題と言って良い状況でもあった。
特に私の場合、相手が男でも女でも同じように楽しめるし同時進行も全く良心が痛む事なく継続できる。

何年か前にある交流会で知り合った、木下光江という女性が居た。
私は彼女とも何度か身体を重ねた事がある。
当時の彼女は大きすぎる野心と、男に消費され傷ついた心を抱えていた。

私に対して家柄というアドバンテージを羨む気持ちと悔しい気持ちを抱えて、それまでと同じ--数々の男にそうしてきたように、下心を持って接近されたのはこちらもはっきりと感じ取る事ができた。

そういう目で見られる事には慣れていたけど、私は彼女をほんの少し可愛そうに思った。
だから彼女と寝た時に、「セックスで自分を消費するな、相手を消費すれば良い」という事を教えてやりたい気になり、何故か何度も彼女を誘ってしまっていた。
でも本当は、単に身体の相性がいいような気がしたから、離れ難い気になっていたのだと思う。

彼女をこの屋敷にも呼んで肌を重ねた事もあったし、その中でふと「私のような女でも安心して出会う事のできるツールがあれば良いのに」という言葉をヒントにしたかどうかは知らないが、光江は後に女性専用のマッチングアプリを世に送り出しちょっとした話題を巻き起こす存在となったのだ。

梨々香も、愛美も、そういう私の奔放な所は良くわかっていて、誰かを屋敷に連れ込む時には姿を見せないようにどこかに引っ込んでいるようだった。
悪いなとは思いながらも私はそれに甘えていたのだと思う。

そんな中で迎えた梨々香の20歳の誕生日。
愛美と三人で、でも梨々香と愛美が作ったご馳走で梨々香の誕生日を祝った。

「容子様、少しご相談があるのですが」

改まって梨々香が居住まいを質す。

「どうしたの?…何か欲しい物でもあったかな?」
「いえ、そういう事ではないんです」

梨々香と愛美が顔を見合わせる。

「私たち、二人とも成人しました」
「そうね」

何だろう、二人してこの屋敷から出ていきたいとでも言うつもりなのだろうか…それならそれで応援してあげようなどと考えていたが、二人が口にしたのはとんでもない言葉だった。

「その、容子様の…性のお役に立ちたいんです」

声を揃えて言われた瞬間、私は口にしていたワインを吹き出しそうになった。

「何バカな事言ってるの…」
「私たちは、本気です」

睨むような勢いで私を見る梨々香と愛美。
今は食事中だから二人は頭の飾りとエプロンを外した、黒いスカートワンピース姿で食卓に就いているのだけれど。

「…え、どうして?」

困惑しながら問い返すと、二人はこう言い添える。

「大和田さんからずっと前に聞いていて…それにいけないとは思いましたが、最近よくおこしになる木の下様と容子様の、その…ほんの少し覗き見してしまいまして」
「うん…」

大和田とは以前ここに務めていた家政婦の事だ。
聞いているというのは多分、まあ大和田さんの言葉がないにせよわかる事だが、私が性的に奔放で、そういう行為が大好きなのだという事だろう。
それを見下すのではなく真面目に引き継ぐあたりの神経は普通とだいぶ違うけど。

行為を覗かれるのは別に構わない。外でしない私が悪いのだから。

「それで…愛美と相談して、二人とも成人したら、容子様のそういう面でもお役に立てるようになろうって、決めたんです」
「……」

更に愛美が言葉を添える。

「容子様がいつもどういう風にしてるのか、それが知りたいのもあって…木下様とご一緒の所をほんの少し見て、それをもとに二人で…れ、練習もしました」
「練習って貴女経ち…」
「未熟な女では容子様の癒しにはならないですから…」

忠誠心も度を超すと、こういう異常な思考になるのだろうか。
私はほんの少し視線を落として考える。
客観的に見てもこの二人は実に美しく、健やかに成長し、教養も品格も十分と言えるほど、どこに出しても恥ずかしくない娘にまで育っている。

けれども、彼女らは多分、よほど気が変わらない限り、または私の恩を忘れない限り、この家から出る事もしないだろうし、他の誰かと家庭を築く事もしないだろう。

それに彼女らにとって家族とは負のイメージなのである。
どんなに新たに幸せな家庭を築いても、失う恐ろしさを知っている。
それでも踏み出すべきだと、私の口からは到底言えないのだ。
だから今あるこの小さな、母娘三人だけの暮らしを大切にしようとしているし、二人は私の為なら本当に死ぬのもいとわないだろう。

それでも私は覚悟の度合を測りたかった。
義理とは言え、そして互いに女性としての性的魅力を存分に感じ取っているとは言え、それでも一線を越えるという事にはそれなりの意味がある。
他人ではない、形だけでも身内同士で身体を重ねる事には、いくら私でも抵抗がない訳ではなかった。

私は彼女らに、わかっているという前提で自分の素を曝け出すつもりで尋ねた。

「それは二人とも、大事な処女を私に捧げて構わないという意味で、いいのよね」

答えはスムーズどころか、それを想定しないような馬鹿な娘だと思うなと揶揄するような口調だった。

「勿論です、その為に、弄る事はしてもきちんと残してありますから」
「……」

私の指向性を理解し尽くしていると言えばそうなるのだが、あまりにそこ合わせなのはかえって萎えてきそうだ。
まるで、チェックリストのように山元容子の性的趣向がリストアップされているかのようで。

ご丁寧に、ギリギリ膣内の快感追求はしつつも処女喪失に至るほどの行為には手を出していないと言いたいのだろうが、律儀過ぎてかえって手を出す気が失せてきそうになる。

梨々香が顔を真っ赤にして、泣きそうになりながら訴える。

「私たち二人でなら…容子様がそれなりに満足する程度には、できるのではないかと思うのですが…」
「…それを確かめてくれと言うワケね」
「はい」

養子でありメイドの娘二人と暮らしているのも十分異常だが、更にその上彼女らとセックスするのか、と思うとさすがに私も頭がぐらぐらする思いがした。

…でも。
純粋に、義理の母と娘という関係でなかったら。
単に通いのメイドなら、と思うと、これほど魅力的な誘いがあるのだろうかと思ってしまうほど、梨々香と愛美の身体も顔も、私好みに成長しているのは事実である。

「主をセックスに誘うメイドって…あはは」

思わず声に出して笑ってしまった。
真剣な表情の二人が弾かれたようにうつむいてしまう。

「でもいいわ、こんな面白い提案、人生でそうそうある訳じゃないしね」
「あの、本気で考えていただけるんですか」
「…だってそれが二人の望みなんでしょ?私とセックスするのが二人の幸せなんでしょ?」
「…は、はい、多分」
「弱気ね…それも初々しくて良いけど」

私はこう思う事にしたのだ。
もし二人が誰とも恋愛も結婚もせず、ただ私に仕えるだけで人生を追えるのだとしたら、それはつまり性の悦びを知らずに人生を追える事となる。
あるいは梨々香と愛美が互いを慰めるように睦み合う事はあるかもしれないが、それは多分純粋な性の悦びとは違う、ただの慰めでしかないように思えた。

彼女らの親として、それはやっぱり一般的には異常と罵られる事かもしれないが、それでも私にできる事で彼女らがもっと女としての魅力を磨く事ができたなら、それはそれで良いじゃないかと思う。
それによって男の味を知りたくなって家を飛び出しても、その時はその時だ。ある意味健全ではないかとさえ思う。

私にはわかっていた。わかっているから養子にまでしたのだ。
梨々香も愛美も私を家族として慕う以上に、女としての憧れを抱き尊敬の念を持ち、命をかけて私の役に立とうとしてくれている。
むしろ私と彼女らは惹かれ合ったからこそ、同じ家に住まわせる事までしようと思ったし、二人もそれに従ったのだ。
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