51 / 85
九話 進化
一
しおりを挟む
わかってた……ママもパパも帰って来ないって。でももしかしたら、お家でまってたら帰って来るかもしれないって思ったの。カミサマにおねがいすれば会わせてくれるかもって。でもダメだったみたいーー
「んん……こほっこほっ」
瞼が重くひりひり痛い。泣いたことで喉が嗄れて痛み、声はかすれてしまっている。しかし気持ちは大分落ち着いたようで冷静になれている。ゆっくりと開眼し体を起こした。
「オハヨウゴザイマス」
「え……ーーーーッ!? ぅうわああああっ!?」
「ワァアアアアアアアアッッ!!?」
目の前には知らない人がいた。そもそも人かも分からなかった。
体は上半身裸で筋肉質であり黄色がかった肌の色、下半身は白い毛並みに覆われて太い脚は鳥そのもの。そして顔は右向きのニワトリの頭巾を被っている。身長もかなり高く伯父や祖父よりも高い。
まったく理解が追いつかず叫んでしまったが、自分の叫び声よりよっぽど大きな声で叫んだ相手。わけがわからない。
逃げたいのに力が入らず立ち上がることが出来ない。ビクビクと震える手を床につき後退りながらも相手をよく観察する。
「ハアアアアァァ…………ビックリシマシタ……」
「……だ、だれ……?」
わなわなと恐怖で全身を震わせながらも声を絞り出して聞いてみる。
そのニワトリは首……頭巾を傾げてから両手を挙げて高らかに笑う。
「HAHAHA! 主は面白いコトを言いマスネ! ワタシ、クックデース!」
「…………!?」
『クック』と名前を出されて床中を見渡した。眠ってしまう前は確かに床を駆け回っていたはずのクックがいないことに気付く。
「クックさん……クックさんどこ!?」
「デスカラ、クックはワタシデス」
「クックさんはもっと小さいもん!」
「ソウデシタが、ワタシは進化シタノデスヨ」
「しんか……?」
そう言われると妙に冷静になってきた。進化がかなり遅れていた為、いつ進化してもおかしくはなかった。しかし目の前にいる得体の知れない相手をクックと信じるにはまだ情報が足りなすぎる。
「クック、さん……?」
「ハイ!」
「わたしの名前……しってる?」
「主の名前はココロデース! ワタシはクックデース!」
愉快なテンションについていけないでいる。目を泳がせてなんとかもっと情報がないかと見ていると、脚首に巻かれている紺色のベルトを見て指差す。
「それくびわ!」
「アッ、ハイ。首に巻イテイタラ苦シカッタノデ脚に巻イテミマシタ。常磐のオバアチャンが脚に巻イテミテモイイと言ッテイタノデ」
「ときわのおばあちゃんしってるの?」
「ハイ。常磐のオバアチャンにモラッタ首輪デス。主、言ッテクレマシタ。ワタシの目と一緒で似合ッテルト」
常磐の老婆を知っていることや首輪をもらったこと。首輪を脚に巻いてみてもいいと言われたことは自分と凛々華しか知らない。目の色と一緒で似合ってると言ったこと。それは自分と、言った相手であるクックしか知らないはずだ。
「……クックさんの目の色……何色かしってる?」
通常のピヨの目の色は黒か茶色だ。しかしクックは何故か青い目をしていた。
「知リマセン。デモ、主が教エテクレマシタ。トッテモキレイな目と。生マレタ時、ソウ教エテクレマシタネ」
『……とってもキレイな目』
そう言ったことを確かに覚えている。クックの特徴は正に目の色だ。自分と同じ、青い目。
「……その頭にかぶってるのとれる?」
「クエッ!? ココッコレは取レマセンッ! 恥ズカシイデス!」
慌てた様子で頭巾の両端を掴んで下に引っ張っている。
「はずかしい? でもとれるの?」
「取レマスが取レマセン!」
「あ……」
自分が小学一年生の時、似たようなことがあったことを思い出した。髪や目の色をクラスメートにバカにされてから帽子を目深に被っている時期があった。またバカにされるのではないかと恥ずかしい思いをしていた。
しかし幼なじみのある言葉で吹っ切れたのだ。
「……それがお前なんだから、かくすことないだろ」
「エ?」
「親からもらったものだから、はずかしいものじゃないだろ。……って、言われたことあって、わたしはそれで大丈夫だったけど……はずかしいって思ってるのにむりやりとるのはわるいことだから、いまはやめとく」
「主……」
「クックさん、なんだよね?」
「ハイ、クックデース!」
小雛の姿からはあまりにもかけ離れた、まるで人間のような姿。しかし明らかに作り物ではない鳥の脚。下腿の毛並みはよく見れば細かい羽毛である。頭巾は作り物のように見える。きっとその下に本当の顔があるのだろう。分からないことだらけの謎の生物だが、ピヨという存在自体まだ謎だらけだ。初めは恐怖を感じたが今はもう怖くはなかった。
「んん……こほっこほっ」
瞼が重くひりひり痛い。泣いたことで喉が嗄れて痛み、声はかすれてしまっている。しかし気持ちは大分落ち着いたようで冷静になれている。ゆっくりと開眼し体を起こした。
「オハヨウゴザイマス」
「え……ーーーーッ!? ぅうわああああっ!?」
「ワァアアアアアアアアッッ!!?」
目の前には知らない人がいた。そもそも人かも分からなかった。
体は上半身裸で筋肉質であり黄色がかった肌の色、下半身は白い毛並みに覆われて太い脚は鳥そのもの。そして顔は右向きのニワトリの頭巾を被っている。身長もかなり高く伯父や祖父よりも高い。
まったく理解が追いつかず叫んでしまったが、自分の叫び声よりよっぽど大きな声で叫んだ相手。わけがわからない。
逃げたいのに力が入らず立ち上がることが出来ない。ビクビクと震える手を床につき後退りながらも相手をよく観察する。
「ハアアアアァァ…………ビックリシマシタ……」
「……だ、だれ……?」
わなわなと恐怖で全身を震わせながらも声を絞り出して聞いてみる。
そのニワトリは首……頭巾を傾げてから両手を挙げて高らかに笑う。
「HAHAHA! 主は面白いコトを言いマスネ! ワタシ、クックデース!」
「…………!?」
『クック』と名前を出されて床中を見渡した。眠ってしまう前は確かに床を駆け回っていたはずのクックがいないことに気付く。
「クックさん……クックさんどこ!?」
「デスカラ、クックはワタシデス」
「クックさんはもっと小さいもん!」
「ソウデシタが、ワタシは進化シタノデスヨ」
「しんか……?」
そう言われると妙に冷静になってきた。進化がかなり遅れていた為、いつ進化してもおかしくはなかった。しかし目の前にいる得体の知れない相手をクックと信じるにはまだ情報が足りなすぎる。
「クック、さん……?」
「ハイ!」
「わたしの名前……しってる?」
「主の名前はココロデース! ワタシはクックデース!」
愉快なテンションについていけないでいる。目を泳がせてなんとかもっと情報がないかと見ていると、脚首に巻かれている紺色のベルトを見て指差す。
「それくびわ!」
「アッ、ハイ。首に巻イテイタラ苦シカッタノデ脚に巻イテミマシタ。常磐のオバアチャンが脚に巻イテミテモイイと言ッテイタノデ」
「ときわのおばあちゃんしってるの?」
「ハイ。常磐のオバアチャンにモラッタ首輪デス。主、言ッテクレマシタ。ワタシの目と一緒で似合ッテルト」
常磐の老婆を知っていることや首輪をもらったこと。首輪を脚に巻いてみてもいいと言われたことは自分と凛々華しか知らない。目の色と一緒で似合ってると言ったこと。それは自分と、言った相手であるクックしか知らないはずだ。
「……クックさんの目の色……何色かしってる?」
通常のピヨの目の色は黒か茶色だ。しかしクックは何故か青い目をしていた。
「知リマセン。デモ、主が教エテクレマシタ。トッテモキレイな目と。生マレタ時、ソウ教エテクレマシタネ」
『……とってもキレイな目』
そう言ったことを確かに覚えている。クックの特徴は正に目の色だ。自分と同じ、青い目。
「……その頭にかぶってるのとれる?」
「クエッ!? ココッコレは取レマセンッ! 恥ズカシイデス!」
慌てた様子で頭巾の両端を掴んで下に引っ張っている。
「はずかしい? でもとれるの?」
「取レマスが取レマセン!」
「あ……」
自分が小学一年生の時、似たようなことがあったことを思い出した。髪や目の色をクラスメートにバカにされてから帽子を目深に被っている時期があった。またバカにされるのではないかと恥ずかしい思いをしていた。
しかし幼なじみのある言葉で吹っ切れたのだ。
「……それがお前なんだから、かくすことないだろ」
「エ?」
「親からもらったものだから、はずかしいものじゃないだろ。……って、言われたことあって、わたしはそれで大丈夫だったけど……はずかしいって思ってるのにむりやりとるのはわるいことだから、いまはやめとく」
「主……」
「クックさん、なんだよね?」
「ハイ、クックデース!」
小雛の姿からはあまりにもかけ離れた、まるで人間のような姿。しかし明らかに作り物ではない鳥の脚。下腿の毛並みはよく見れば細かい羽毛である。頭巾は作り物のように見える。きっとその下に本当の顔があるのだろう。分からないことだらけの謎の生物だが、ピヨという存在自体まだ謎だらけだ。初めは恐怖を感じたが今はもう怖くはなかった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる