ほっかいどいんこ！

ほっかい豆いんこ（いんこ小噺集）

ユニット名は「いっぱいんこ」

　ある音源が、巷で話題になっている。

　ユニット名「いっぱいんこ」の音源「不協和音」だ。一切顔出しNGのこのグループ「いっぱいんこ」の「不協和音」はインコとオウムが好き勝手に鳴きまくるだけの内容である。
　それだけの内容なのに話題になったポイントがあるのだ。それは聞く度に音が違うことだ。二度と聞けないという希少性を求め、音源から耳を離せない中毒性が話題になり、口コミで人気が広がったのである。
　日中は割りと元気いっぱいな旋律だが、朝早すぎると「ギギョ、ギ……ギョギョ～～～」と寝ぼけた鳴き声しか
聞こえてこなかったりするらしい。らしいというのは、しつこいが再現性がないため、聞いた人の証言しかないためだ。
　そんなに再現性ないなら、録音すればいいじゃないかと普通は思うものだ。しかし、自動で録音しておくと機器が壊れてしまうのだという噂もあるのだ。
　機械壊してしまう可能性あるという噂がたったせいで、誰も録音しようとする者もいなくなった。

　あやしい噂がつきまとう再現性がない音源ということで話題になった「不協和音」をとある深夜のラジオ番組がつい、出来心で流してしまった。スタッフの中にインコを飼っている人間がいればこの事態は起こるはずがなかった。残念ながら、インコ飼いがいない中でこの音源に手を出したのは、大きな間違いだったのだ。
　音源をスタートしてから約１分半……ラジオは無音状態で放送されてしまったのである。そうである、真夜中に音源をスタートさせたのが、そもそもの間違いだったのだ。番組スタッフが凍り付き、そして１分半後――
「ギョリ……」
ただ一言、音源は音を放った。いんこの寝言であった……。
　放送事故を起こしたラジオ番組は始末書を提出するハメになった――それすらも都市伝説化して噂は尾ひれがついて更に加速し増長した。

　「不協和音」のメンバーの情報は一切伏せられた状態だったので、中毒状態と化したファンサイトが様々な情報の発信源になっていった。
　そのサイト管理者である不和不和（フワフワと読む）さんの証言。

　「いっぱいんこ」のメインボーカル――つまり日中ほぼ途切れることなく歌っているインコはセキセイインコとコザクラインコまたはボタンインコである。
　サブボーカルにオカメインコとウロコインコ――日中、メインの途中に割って入ってくる存在が確認されている。
また、タイハクオウムの絶叫がいきなりメインボーカルとサブボーカルの存在をかき消して乱入。おそらく、バランスのとれない音量のため録音機器が壊れるという噂がたったのではないか。
「でもね」
　不和不和さんは、言う。
録音機器が壊れるという噂が本当なら、音源を発生させている機器の耐久性はどうなるのだ？　音として取り込み発信に成功している以上、録音機器が壊れるというのは都市伝説だろう。
「でも、私は録音して聞きたいとは思いませんね、今だって新しい不協和音が流れているのですから！」
　更に不和不和さんは続けた。
　「いっぱいんこ」の正体に迫る鍵はヨウムの存在である。いきなり覆面がとれかねない個人＆個鳥情報とおぼしき内容を突然べらべら話始めるのだ。聞き漏らしていけない鳴き声である！　ヨウムのしゃべりが確認されたことで、「いっぱいんこ」特定班は活気づいている。
　しかし、いまだに「いっぱいんこ」の素性はベールに包まれたままだ。ヨウムが日本語をマネしているので日本が発信源であることは間違いなさそうだが、それとて確証がとれたわけではない。
　どうやら、覆面プロデューサーが、ヨウムを数羽混ぜ込んで情報のかく乱を計っているのではないかと思われる。

　以上が、「いっぱいんこ」ファンサイト管理人の不和不和さんの証言である。

　今日もまた、二度ときくことが出来ない「不協和音」を求める中毒状態のファン、「いっぱいんこ」の特定班などが入り乱れ、カオス状態の社会現象と化した音源が独り歩きを続けている。

　その音源がどこにあるのか？　そこから、探求は始まるのだ、さあ出発だ。「不協和音」を奏でる「いっぱいんこ」の謎を求め、旅立つ時間が来た！


※この話はフィクションです‼　真に受けて探さないように(笑)