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君とともに歩む未来(ヤマト編)
14話 ドライブに行こう
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若い二人は次の日も互いを貪りあった。体力と熱は、しかし永遠に続くものではない。
まる一日、セックスに明け暮れた二人はリビングで夕食の準備を始めていた。さすがに栄養食に飽きてきたのだ。
具だくさんのスープとサラダを作り、パンとともにテーブルに並べる。互いに向きあって食事をするいつもの風景なのに、二人は少しぎこちなかった。
「改めて向き合うのって恥ずかしい」
アデルが言うと、ヤマトも同意するしかなかった。
「なんだかね」
アデルの言葉にうなずく。
むき出しの本心をぶつけあうことで、二人は距離間が縮まったことを感じていた。
しばしの沈黙の後、ヤマトが切り出した。
「明日さ、どこか行かない?」
「どこか?」
アデルが大きく首を傾げた。
「ドライブ」
途端にアデルは下を向いて、スープをかき混ぜ始めた。
「札幌に行きたいなら、一人で行きなよ」
「札幌じゃない。海」
「海?」
ヤマトが言うと、アデルは再び顔を上げた。すねていたかと思うと、あっという間に目をキラキラ輝かせる。表情がコロコロ変わって忙しいなと、ヤマトは笑った。
「苫小牧から室蘭方面行ってみないか? 海沿いをドライブしたいな」
「海なら、小樽方面もあるし、日高方面も考えられるけど」
「だから、今回は札幌方面は行かないってば」
ヤマトは繰り返す。アデルがヤマトを試しているのがわかって、不機嫌な気持ちが湧いてきたのだ。察したアデルは慌てて、更に尋ねた。
「じゃ、じゃあ、日高方面は?」
「道路の整備状況が悪い。日高方面に分散型コロニーはないから」
「そっか、人がいない所の道路は整備されていないか」
分散型コロニーが存在する場所に向かう幹線道路沿いしか、自動運転車は走行できない。千歳区から出発して海に向かいたいなら、苫小牧から室蘭方面に行く選択肢に絞られるのだ。
「僕は、飛行機でここに来るとき海を見下ろしたのが、初めての海だから」
「オーストラリアで見たことなかったの?」
「キャンベラ区は内陸だから」
「そっか、私は海沿いのタウンだったから」
アデルはウキウキとし始める。
「千歳は、海沿いで育った私には、ちょっと潮のそよぎがないのが寂しかった」
「潮のそよぎ⁇」
今度はヤマトが首をひねった。
「明日、わかるって」
アデルが笑って、さらに続けた。
「今日は、一人で寝て明日の備える、海だぁ!」
そんなに「海」ってテンションあがるのかな? ヤマトにはわからない。でもいい提案だったのは確かだったようだ。
二人は食事が終わるとものすごいスピードで片付けを始めた。というか、アデルがいつも倍の速さで物事をテキパキ進めていく。
「明日の準備もしなくしゃ。栄養食だけじゃ嫌だよね。何か作って持っていく? サンドイッチは? 洋服も作業着でないのがいいな!」
すさまじいスピードで手順を決めていくアデルを、ヤマトは止めにはいる。
「ねぇ、そんなに興奮したら眠れないんじゃ?」
ヤマトは言う。
「からだの疲れとるのが目的の作業停止命令なのに、僕たち疲れてばかりじゃ、まずいって」
いきなりアデルの動きが止まる。
「た、確かに。その指摘は正しい。落ち着こう、私」
それでもアデルから翌日のドライブへの期待は滲み出ていた。
(つづく)
まる一日、セックスに明け暮れた二人はリビングで夕食の準備を始めていた。さすがに栄養食に飽きてきたのだ。
具だくさんのスープとサラダを作り、パンとともにテーブルに並べる。互いに向きあって食事をするいつもの風景なのに、二人は少しぎこちなかった。
「改めて向き合うのって恥ずかしい」
アデルが言うと、ヤマトも同意するしかなかった。
「なんだかね」
アデルの言葉にうなずく。
むき出しの本心をぶつけあうことで、二人は距離間が縮まったことを感じていた。
しばしの沈黙の後、ヤマトが切り出した。
「明日さ、どこか行かない?」
「どこか?」
アデルが大きく首を傾げた。
「ドライブ」
途端にアデルは下を向いて、スープをかき混ぜ始めた。
「札幌に行きたいなら、一人で行きなよ」
「札幌じゃない。海」
「海?」
ヤマトが言うと、アデルは再び顔を上げた。すねていたかと思うと、あっという間に目をキラキラ輝かせる。表情がコロコロ変わって忙しいなと、ヤマトは笑った。
「苫小牧から室蘭方面行ってみないか? 海沿いをドライブしたいな」
「海なら、小樽方面もあるし、日高方面も考えられるけど」
「だから、今回は札幌方面は行かないってば」
ヤマトは繰り返す。アデルがヤマトを試しているのがわかって、不機嫌な気持ちが湧いてきたのだ。察したアデルは慌てて、更に尋ねた。
「じゃ、じゃあ、日高方面は?」
「道路の整備状況が悪い。日高方面に分散型コロニーはないから」
「そっか、人がいない所の道路は整備されていないか」
分散型コロニーが存在する場所に向かう幹線道路沿いしか、自動運転車は走行できない。千歳区から出発して海に向かいたいなら、苫小牧から室蘭方面に行く選択肢に絞られるのだ。
「僕は、飛行機でここに来るとき海を見下ろしたのが、初めての海だから」
「オーストラリアで見たことなかったの?」
「キャンベラ区は内陸だから」
「そっか、私は海沿いのタウンだったから」
アデルはウキウキとし始める。
「千歳は、海沿いで育った私には、ちょっと潮のそよぎがないのが寂しかった」
「潮のそよぎ⁇」
今度はヤマトが首をひねった。
「明日、わかるって」
アデルが笑って、さらに続けた。
「今日は、一人で寝て明日の備える、海だぁ!」
そんなに「海」ってテンションあがるのかな? ヤマトにはわからない。でもいい提案だったのは確かだったようだ。
二人は食事が終わるとものすごいスピードで片付けを始めた。というか、アデルがいつも倍の速さで物事をテキパキ進めていく。
「明日の準備もしなくしゃ。栄養食だけじゃ嫌だよね。何か作って持っていく? サンドイッチは? 洋服も作業着でないのがいいな!」
すさまじいスピードで手順を決めていくアデルを、ヤマトは止めにはいる。
「ねぇ、そんなに興奮したら眠れないんじゃ?」
ヤマトは言う。
「からだの疲れとるのが目的の作業停止命令なのに、僕たち疲れてばかりじゃ、まずいって」
いきなりアデルの動きが止まる。
「た、確かに。その指摘は正しい。落ち着こう、私」
それでもアデルから翌日のドライブへの期待は滲み出ていた。
(つづく)
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