忘れていた初恋の結末

東雲さき

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その後①(本編から10年後)

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ちなみに私の人に見せられなかった自己満足で済ませていた趣味は長い年月を経てようやくSNSに載せても恥ずかしくないくらいになっていた。

「ちょっと彩香さん、今度の衣装とっても私好みでステキよ!私の事分かってるぅー♪」

そう声を掛けてくださったのは歌手でオネエ様のキヨカさん。
もうじき始まるコンサートの衣装の最終チェックのために、私は彼女のスタジオに訪問中だったりする。

「もともと繊細で上品なドレスを作る人だとは思っていたけれど、最近ますます腕を上げてるわねえ。私の専属になってほしいのにこれじゃあ競争率高すぎじゃない?」

パンツドレスを着る自分を鏡に映し全身を確認しながら惚れ惚れと呟いている。

「キヨカさんありがとうございます。私の腕が上がっているとしたらそれはきっとキヨカさんのおかげです。キヨカさんに似合うものを!と思うとどんどんイメージがわいてくるんです。なのでそのドレスは私がキヨカさんに対して抱いている思いの形の現れなんですよ。」

「彩香さん!!泣」

私の言葉に感極まったキヨカさんが感激して号泣した。


そう。
私の趣味はドレス製作なのだ。
きっかけはとあるゲームのキャラクター。
可愛いキャラが可愛いドレスを着て、かっこいいキャラが王子様のような姿をして、推しのキャラは騎士の姿で剣を握っている。
初めのうちは見るだけで満足していたけれど、ゲームのイベントへ行きコスプレイヤーを目の当たりにしてからドレスなどの衣装に対する意識が変わった。
ファンタジー要素のある衣装はもちろんのこと、芸能人がドレスアップした姿もチェックするようになった。
ファビュラスな姉妹のセクシーなドレス姿、レッドカーペットを優雅に歩く俳優のエレガントなドレス姿、アイドルの個々に合わせたステージ衣装。
もともと小物作りが好きだったこともあり、それが推しのぬいぐるみの衣装を縫うようになり、満を持して等身大のドレスを手掛けるまでになった。
ほぼ独学苦節15年。
小さい頃から針をもって布を縫っていたから、もっと長い期間になるのかもしれないけど。
これまでは友人の結婚式で着る自分の為のドレスや、従姉や姪の為のドレスを主に製作してきた。
人の目に触れても恥ずかしくないと自負できるものだったのでSNSに載せてみたらありがたいことに徐々に閲覧数が増えていった。
ちなみにこのためだけに新しいアカウントを作った。
ドレスの製作過程だったり気分転換で作ったコサージュだったり。時々お着物のコーディネートを載せることもあった。お着物に関しては、知人に和裁師で着付けの先生がいらっしゃるので、せっかくなので和装もアップしてみた結果意外にも着物好きの女性からの反応が良かったのでそのままアップし続けている。

それを偶然見つけたのがキヨカさんだった。
彼女に声を掛けていただけたのも本当に幸運なことだったのだ。

「ねえ彩香さん。私のコンサート初日なんだけれど、席を取っておくからぜひ見に来て!関係者席になっちゃうけどあなたのドレスを着た私をじっくり見てほしいの!」

そう懇願されてしまえば行くしかない。

ステージに立つキヨカさんはとても美しかった。
圧巻の一言に尽きた。


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