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僕らの放課後 ⑥
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授業が終わるとアオを家まで送る。
松葉杖での歩行も慣れてきたようだ。
駅前の人通り多い遊歩道でも人の波の中を泳いで行けるまでになった。
これなら転倒を心配して後ろから見守る必要もないのかも知れない。
ふと、姉に言われた台詞を思い出した。
アオの隣に並び車道側に位置を取った。
すると、
「ありがとう」
ふいにアオの声が聞こえた。
信じられない所か何があったのか把握さえ出来ず
驚いた表情のまま固まってしまった。
「お礼を言うのがそんなに意外だった?」
困ったような照れたような複雑な表情だった。
美人がこんな顔すると凄まじく可愛いな。
こんな顔されたら誰でも男は惚れるよなあ。
まあ俺などからしたら手の届かない存在である事に変わりはなく
現実を見据えながら冷静を取り戻して答えた。
「ずっと怒っているのかと思ってた」
からかうでなく、素直な感想だった。
「そりゃ、怒るでしょう」
この時、やっとアオの言葉を聞けた気がした。
同時に緊張がほどけ笑ってしまった。
「すまなかった」
そう言うと、
「何度も聞いたから、もういいわ」
とアオの表情も緩んだ。
こちらは笑ってしまったことを詫びたのだが。
その食い違いも可笑しくて、また笑いがこみ上げた。
「人が怒ってるのに笑ってるって違わない?」
冷たい言葉と裏腹に表情にはその冷たさはなかった。
「いや、本当にすまない。松葉杖も慣れたみたいだな」
こちらも安心して会話が出来るようになった。
「お蔭さまでね」
睨むような顔をして目の間にシワを作った。
それでも口元の表情はほころんだままだった。
「一般人じゃないんだから力の加減しないと」
とアオはこちらのことを知ってる素振りだった。
「柔道やってたって知ってたの?」
俺が聞くと、
「入学の時から有名だったじゃない」
とあきれた声を出した。
「中学で大会に出る度にあなたの名前の横断幕が掲げられてたって」
言われて、その頃を懐かしく思い出した。
「ああ、前はね」
答えに詰まった俺を見て
「あ、ごめんなさい」
と今度は明るい表情が消えた。
「謝る事じゃないさ」
自分の言葉に引きずられるように、
その瞬間、過去は過去と受け止められた。
事故で落ち込んでた時期も通り過ぎてたように感じた。
「また違う事で頑張るだけだ」
なんの気なしに口から出た言葉だった。
だけど、そうだよなと自分で強く納得させられてた。
松葉杖での歩行も慣れてきたようだ。
駅前の人通り多い遊歩道でも人の波の中を泳いで行けるまでになった。
これなら転倒を心配して後ろから見守る必要もないのかも知れない。
ふと、姉に言われた台詞を思い出した。
アオの隣に並び車道側に位置を取った。
すると、
「ありがとう」
ふいにアオの声が聞こえた。
信じられない所か何があったのか把握さえ出来ず
驚いた表情のまま固まってしまった。
「お礼を言うのがそんなに意外だった?」
困ったような照れたような複雑な表情だった。
美人がこんな顔すると凄まじく可愛いな。
こんな顔されたら誰でも男は惚れるよなあ。
まあ俺などからしたら手の届かない存在である事に変わりはなく
現実を見据えながら冷静を取り戻して答えた。
「ずっと怒っているのかと思ってた」
からかうでなく、素直な感想だった。
「そりゃ、怒るでしょう」
この時、やっとアオの言葉を聞けた気がした。
同時に緊張がほどけ笑ってしまった。
「すまなかった」
そう言うと、
「何度も聞いたから、もういいわ」
とアオの表情も緩んだ。
こちらは笑ってしまったことを詫びたのだが。
その食い違いも可笑しくて、また笑いがこみ上げた。
「人が怒ってるのに笑ってるって違わない?」
冷たい言葉と裏腹に表情にはその冷たさはなかった。
「いや、本当にすまない。松葉杖も慣れたみたいだな」
こちらも安心して会話が出来るようになった。
「お蔭さまでね」
睨むような顔をして目の間にシワを作った。
それでも口元の表情はほころんだままだった。
「一般人じゃないんだから力の加減しないと」
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「柔道やってたって知ってたの?」
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「謝る事じゃないさ」
自分の言葉に引きずられるように、
その瞬間、過去は過去と受け止められた。
事故で落ち込んでた時期も通り過ぎてたように感じた。
「また違う事で頑張るだけだ」
なんの気なしに口から出た言葉だった。
だけど、そうだよなと自分で強く納得させられてた。
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