碧よりも青く

ハセベマサカズ

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碧よりも青く ➆

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授業風景の中、黒板の横にカレンダーが見える。
卒業までの日にちを指折り数えてみる。
早く終わればいい。だけど周りを見ると少しだけ焦りと感じる。
終わってみて私には何が残ってるんだろう。
まだ届く。もう追いつけない。
見えないから距離が分からない。どのくらい差があるんだろう。
私が他人より劣ってるのはどの部分なんだろう。

「いつも何してるんだ?」
帰宅時に私のカバンを持ってくれるお節介なヘイタは痛い質問をする。
何をしてる、と。私は何かしているんだろうか。
終わるとすぐ帰宅、あんまり学校に関わろうとしてないから他の事で忙しいのかな、と。
ヘイタは不思議そうに聞いてくる。余計なお世話と言うやつだ。
お前のように忙しく充実した人生を歩んでれば良いが、
世の中には持て余した暇を抱えるだけしか出来ない人種だっているのだ。
「別に、何も」と言ってみたものの、本当に何もなくて悲しくなった。
授業中にぼんやり巻変えてた劣等感が思い出されて足取りさえ重くなった。

「モデルのバイトしてるって聞いたけど?」とヘイタは言うが、
私のどこにそのような華やかさがある?身長をディスってるのか?でかい女は全部モデルか?
そんな訳はない。今の不機嫌を可能な限り前面に出して否定してみた。
「そ、そうか」
押されたヘイタは引き気味に下がった。
人に言えないこともあるかなら、とヘイタは自分の独り言に勝手に納得してるようだ。
勝手なイメージを作らないでくれ。本当の私が悲しくなる。
もしかしたら人間関係ってのは、こんな風な誤解の積み重ねなのか。
私が羨んでる人種も、実はくだらない人生を浪費してるんだろうか。
聞いてみたって答えは出ない。言葉は嘘をつくものだから。
言葉の発明により人の理解ってのは一層難しくなってるんじゃないだろうか。
それとも、浅はかな嘘に酔ってた方が楽しい人生を送れるんだろうか。
何かが圧し掛かってくるような感覚で私の足取りは更に重くなっていた。
「どうした、足が痛むか?」
屈託ないヘイタの笑顔に殺意を抱いた。この世の中に私の理解者はいない。

自室に戻ってベッドに体を投げ出す。
目に留まるのは机の上の参考書だ。
買ってから、まだ開かれてもない状態でいる。テスト前に用意して、そのままテストは終わった。
やろうと思っても気持ちが続かない。ずっとずっと変わらないままでいる。
私はずっとダメなままなのかな。
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