異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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8章 勇者の国

85.やむごとなき婚約者

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 「やー!待たせたな!!」

 夜、王城近くの「アキザケ亭」のとある一角にズカズカバーニングがやってきた。
 いつも通り能天気である。

 「お待たせした.......ってっ!???」

 どうやらトールストンの方は気づいたようである。

 ーーーーこの微妙な空気に.......。

 「な、何があったんだ?」
 「まーちょっと色々な」

 俺が疲れた顔をしてそう返すと、トールストンは何かを察したのか黙りとする。
 しかし隣の熱血男と、俺=タクシー幼女はそれに気づかず、ベラベラと大声で喋るわ喋るわ。
 アンなんか「腹減ったー」の一点張りである。ちなみに机には大量の空皿が置いてある。もちろん料理が食べられた後の.....。

 「で、お前らはどこ行ってたんだ?」
 「ふむ、聞きたいか聞きたいか?」
 「氷結アイシクル

 少しムカついたのでバーニングを半身凍らす。

 「な、なにをする!?」
 「さあさあ早くバーニングしろよ?」
 「なにを言ってるんだ!???」
 「チッ、なんでもねえよ」

 俺が氷を解くと、バーニングは懲りたのか素直に話し始める。

 「今日は王城へ行っていたのだ。少し用があってな。お前らにはそのうち話す。
 んでまあ、俺の話をする前に......」

 さすがに鈍感熱血バーニングも気づいたのか、机の隅にちらりと目線をやった。

 「な、なにがあったんだ?」

 そこには机に突っ伏すカルナの姿。
 
 「それはなーーーー








 「だからさ、婚約ってことでどうだ?」

 俺がそう切り出したのは、カルナの熱意に負けたからでも、俺も好き!となったわけでもない。
 ぶっちゃけ妥協したのだ。

 と、言い方は悪いが、俺は考えたわけである。

 このまま俺が断ってカルナが落ち込む→これから道中気まずくなる→楽しくない→俺の心が死ぬ
 と。

 つまり、取り敢えず保留しておいて、道中俺のダメ部分を晒け出し、向こうにげんなりさせる作戦である。

 かなり最低な作戦だが、今の関係を壊さず、それでいてこの場を乗り切れる方法はこれしかない。俺はこの空気、この雰囲気を壊したくないのだ。
 それに、婚約なら破棄しようと思えば破棄できる。しかし結婚ともなれば、傷つくのは向こうなのだ。
 俺の気持ちがない以上、結婚なんてするのは許せない。

 と、俺は考えたわけだ。

 「・・・妾はそういうお主の部分嫌いじゃよ」

 少なからず、俺の意思を読み取ったようだったハクリには強い嫌悪感を示されたが。

 どうやら、言いたいことははっきり言うべし!がハクリのモットーなようだ。
 ちなみに俺は言いたいことを言えない日本で生きてきたので、虚偽をちょいちょい入れていくスタイルであるが。

 取り敢えず、これが今の最善策だ。




 「ーーーと、まあこんなことがあった」

 取り敢えず婚約についてだけ話しておく。

 「きゅ、急だな.....。だがおめでとう」
 「ありがとう」

 バーニングはぎこちなく笑う。そういう仲だと思っていなかったのだろう。
 ・・・いや、年齢的な部分もあるか。最近、背はめきめき伸びてきたが、まだ160ちょっとしかない。全然大人には見えないはずだ。童顔だし。

 「んで、なんでその彼女は突っ伏してんだ?」
 「ん?ああ、それは後悔してんだとよ」
 「え、こ、婚約を?」
 「違う、街中で暴走したことをだ」

 つまり、今更恥じているのである。 
 近くへ寄って耳をすませば、「私なんてことしたんだろう.....」とか、「穴があったら隠れたい....」とかブツブツ聞こえる。
 相当な黒歴史になったようだ。

 「しかしお前みたいな子供がこんな可愛子ちゃんとねぇ.....。俺はてっきりーーー」

 チラリとアンを見る。
 うん、言いたいことはわかるよ?歳相当ってやつだよね。

 「・・・コイツはまだ子供だから」
 「いやお前もな?」
 「はぁ....早く人間になりたーい」
 「じゃあお前今なんなんだよ!?」

 妖怪の人間ネタは通じなかったようだ。

 「いいよなぁ....お前んとこはそんなに美人美女揃いで」
 「・・・格好はな」

 中身は違う。300と100だ。
 しかし、バーニングんとこにも美女はいたはずだ。あのトールストンといい雰囲気になってた人。

 「そういえば馬車の女性は?」
 「おいおい、早速他の女にも手ェだすのかよ」
 「いや違....」
 「え?レイさん?」

 冗談めかしたバーニングの言葉にカルナが反応し、真意を確かめようと俺にズイズイ近づいてくる。
 め、目が怖いです.....。

 「だ、出さない出さない!」
 「本当ですか?」
 「出すわけないじゃん、ほら、俺にはカルナがいるし」

 我ながらクサイセリフ言うなぁ、くぅーー!!
 そういうと、カルナはあからさまにほっとして俺に抱きつく。

 「もー、そんなこと言っても誤魔化されないんですからねー♪」
 「はいはい」

 思いっきり誤魔化されてますよ?
 まあそんなことは無視して、俺は優しくカルナの髪をなでる。ふんわりとした香りが俺の鼻をくすぐり、抱きつくカルナの体ももちもちだ。
 これ、思ったよりいいかもしれない。

 だが、その時俺はバーニングの口パクに凍りついた。

 そ い つ ま ち が い な く や む ぞ

 つまり、

 「そいつ、間違いなく病むぞ」

 「ま、マジですか.....」
 「え、どうしたんですか?うふふ」

 にっこりと笑うカルナ。
 俺は一体これからどうなるのだろう.....。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、結局こう落ち着きました。
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