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6章 吸血鬼と魔法使い
69.同調
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「魔装!」
最初掛けてあった魔装に加え、新たに魔装を重ねる。それを見て守護者が目を見開いた。
【なんと!まだ全開ではないのか!
......面白い】
面白くなんてねえよ。確かに魔装は体を強化できる強化魔法だ。しかしその分負担もかかる。短期決戦用なのは間違いないだろう。
だから単純に身体能力が高いハクリの方が燃費が良いし、強い。
魔力があれば最強!とならない所、この世界は上手く出来ている。俺としては上手く出来ていないが。
「魔槍!」
先制攻撃として帝級程度の魔槍を守護者に飛ばし、さらに波状攻撃で氷槍を数十本放った。その槍槍が空気を振動させて守護者に飛ぶーーーが届くことはない。あの膜に当たると消えてしまうのだ。
だがそれも予想済み。目眩しだ。
魔槍と氷槍によって僅かに守護者に死角ができる。それ逃さず"転移"で守護者の後ろに回り込み、魔装を腕に集中させる。
【むっ.....!】
守護者が振り返るも、もう遅い。俺は振りかぶっていた腕を勢いよく振り下ろしたーーーと、その時俺はあることに気づく。俺の戦闘を根本から覆すことに。守護者の膜は俺の想像以上に厄介なものだった。
ペチリ
俺が守護者を殴りつけた音は弱々しく頬を打ったような音だった。先ほどまで魔力でみなぎっていた俺の体は急激な脱力感に襲われ、守護者の背中に触れている拳からは攻撃が自分に跳ね返ってきたような痛みを訴えていた。
「な、ま、魔力が......」
魔力が消えた。
俺の魔装の解除はもちろん周りに纏っていた全ての魔力が消えた。俺の中にはまだ魔力は残っているが、それを纏おうとすると即座に消える。
突然魔力が使えなくなれば俺は守護者の足元にも及ばないわけで、それはこの状況での死を意味する。
魔力が消えたとしても、使えなくなったとしても、目の前の敵は待ってくれないのだ。
「......あ......」
周りがスローモーションになる。守護者がゆっくりとーー実際には素早くーー後ろを向き、冷徹な目を俺と合わした。そこからさらに守護者は振りかぶっていた腕を振り下ろした。
距離は間近、威力は神級ほどーーー避けられない。.......死ぬ。
「風波!」
その瞬間、スローモーションだった景色が通常に戻り、俺の吹っ飛ばされた。
が、それは守護者にではない。ハクリにだ。
「あ、ありがとう....」
転げ回って激突した壁を背にハクリを見るとなぜか親指を突き出している。グッジョブってか。
ならもう少し優しくして欲しい。一応俺生身だよ?死ぬよ?
【むぅ、チームプレイか】
「お主は防御は出来ても攻撃はショボいようじゃのぅ、守護者さんよ」
【私を煽るか蛮族の族長めが。では私も攻撃するとしよう。すぐに死なないでくれよ?】
「誰がお主の攻撃などで死ぬか」
【「・・・・・・」】
辺りは一瞬即発の雰囲気に飲み込まれ、守護者とハクリは無言で見つめ合い続ける。
ただ、ハクリの魔力が徐々に引き出されていっているのがなんとなくわかった、対する守護者は生身だ。
魔力の使い方や魔装だけではハクリが勝つ。しかし守護者の、あの膜が鍵だ。おそらく魔力を分散させ、無力化するであろう膜。
簡単な話だ。その膜を攻略できれば俺たちが勝つ。出来なければ俺たちは死ぬ。それだけの話。
それをハクリもわかっているのか、魔力を己の体だけでなく守護者の周りにも漂わせ始めた。
あれであの膜が魔力にどう干渉するのか突き止めるのだろう。
が、それは無駄に終わる。
【「ふっ!」】
2人の声が重なり、一息遅れて洞窟の中央部、先ほどまで端と端にいたはずの2人が拳を重ね合わせていた。
音をも超えた移動速度のおかげで周囲にソニックブームが発生し、風が吹き荒れる。
そんな中、俺は一心不乱にその戦いを見続けた。
あまりにも守護者が強かった場合、最後まで粘って、それでも倒せないと判断した時のために最大の秘策があった。
しかし、それは秘策と言っては確率が低く、なお危険性が高すぎる、言わば賭け。
それを使うタイミングを俺は見極めなければならない。少しでも遅く、ハクリが死んではそれこそ詰みだ。
だからこそ、その戦いが音を超えていようと俺は音を見ないといけないのだ。
だが、流石にちょっと無理だ。早すぎる。
ちょっと飛び交う銃弾を想像して欲しい。それこそ銃弾が縦横無尽に駆け回る戦場をだ。
その玉を全て見極めろ、という話だ。
無理に決まってる。
そんなわけで俺は戦場で飛び交う銃弾をただ見続ける変な人へと化しているわけである。
「うぐっ!.......レイよ!準備をっ....!」
そんな中、息絶え絶えにそんな声が聞こえてきた。
ついに来たのだ。アレを使う時が。
一歩間違えれば死が、成功すれば絶大な力を発揮する。それを、使うしかなくなる。
覚悟するしかない。
徐々に俺は残っている魔力を引き出していき、その時に備える。
そして段々とハクリが押されてきているのが俺の目にも見えてきた。幾度の攻防が、ハクリが少しずつ力負けしてきている。
あと少しするうちにハクリは押し切られる。
その前が勝負だ。
俺はゆっくりと手を前に構えた。
その前では見えない攻防が続いている。
そしてーーーーとうとうその時が来た。
「ぬうっ!」
ハクリがいきなり全魔力を放出し、守護者がそれに驚き、一瞬、ほんの一瞬動きを止める。
そして俺は俺の魔力を放った。
ーーーーハクリに向かって。
「同調!」
最初掛けてあった魔装に加え、新たに魔装を重ねる。それを見て守護者が目を見開いた。
【なんと!まだ全開ではないのか!
......面白い】
面白くなんてねえよ。確かに魔装は体を強化できる強化魔法だ。しかしその分負担もかかる。短期決戦用なのは間違いないだろう。
だから単純に身体能力が高いハクリの方が燃費が良いし、強い。
魔力があれば最強!とならない所、この世界は上手く出来ている。俺としては上手く出来ていないが。
「魔槍!」
先制攻撃として帝級程度の魔槍を守護者に飛ばし、さらに波状攻撃で氷槍を数十本放った。その槍槍が空気を振動させて守護者に飛ぶーーーが届くことはない。あの膜に当たると消えてしまうのだ。
だがそれも予想済み。目眩しだ。
魔槍と氷槍によって僅かに守護者に死角ができる。それ逃さず"転移"で守護者の後ろに回り込み、魔装を腕に集中させる。
【むっ.....!】
守護者が振り返るも、もう遅い。俺は振りかぶっていた腕を勢いよく振り下ろしたーーーと、その時俺はあることに気づく。俺の戦闘を根本から覆すことに。守護者の膜は俺の想像以上に厄介なものだった。
ペチリ
俺が守護者を殴りつけた音は弱々しく頬を打ったような音だった。先ほどまで魔力でみなぎっていた俺の体は急激な脱力感に襲われ、守護者の背中に触れている拳からは攻撃が自分に跳ね返ってきたような痛みを訴えていた。
「な、ま、魔力が......」
魔力が消えた。
俺の魔装の解除はもちろん周りに纏っていた全ての魔力が消えた。俺の中にはまだ魔力は残っているが、それを纏おうとすると即座に消える。
突然魔力が使えなくなれば俺は守護者の足元にも及ばないわけで、それはこの状況での死を意味する。
魔力が消えたとしても、使えなくなったとしても、目の前の敵は待ってくれないのだ。
「......あ......」
周りがスローモーションになる。守護者がゆっくりとーー実際には素早くーー後ろを向き、冷徹な目を俺と合わした。そこからさらに守護者は振りかぶっていた腕を振り下ろした。
距離は間近、威力は神級ほどーーー避けられない。.......死ぬ。
「風波!」
その瞬間、スローモーションだった景色が通常に戻り、俺の吹っ飛ばされた。
が、それは守護者にではない。ハクリにだ。
「あ、ありがとう....」
転げ回って激突した壁を背にハクリを見るとなぜか親指を突き出している。グッジョブってか。
ならもう少し優しくして欲しい。一応俺生身だよ?死ぬよ?
【むぅ、チームプレイか】
「お主は防御は出来ても攻撃はショボいようじゃのぅ、守護者さんよ」
【私を煽るか蛮族の族長めが。では私も攻撃するとしよう。すぐに死なないでくれよ?】
「誰がお主の攻撃などで死ぬか」
【「・・・・・・」】
辺りは一瞬即発の雰囲気に飲み込まれ、守護者とハクリは無言で見つめ合い続ける。
ただ、ハクリの魔力が徐々に引き出されていっているのがなんとなくわかった、対する守護者は生身だ。
魔力の使い方や魔装だけではハクリが勝つ。しかし守護者の、あの膜が鍵だ。おそらく魔力を分散させ、無力化するであろう膜。
簡単な話だ。その膜を攻略できれば俺たちが勝つ。出来なければ俺たちは死ぬ。それだけの話。
それをハクリもわかっているのか、魔力を己の体だけでなく守護者の周りにも漂わせ始めた。
あれであの膜が魔力にどう干渉するのか突き止めるのだろう。
が、それは無駄に終わる。
【「ふっ!」】
2人の声が重なり、一息遅れて洞窟の中央部、先ほどまで端と端にいたはずの2人が拳を重ね合わせていた。
音をも超えた移動速度のおかげで周囲にソニックブームが発生し、風が吹き荒れる。
そんな中、俺は一心不乱にその戦いを見続けた。
あまりにも守護者が強かった場合、最後まで粘って、それでも倒せないと判断した時のために最大の秘策があった。
しかし、それは秘策と言っては確率が低く、なお危険性が高すぎる、言わば賭け。
それを使うタイミングを俺は見極めなければならない。少しでも遅く、ハクリが死んではそれこそ詰みだ。
だからこそ、その戦いが音を超えていようと俺は音を見ないといけないのだ。
だが、流石にちょっと無理だ。早すぎる。
ちょっと飛び交う銃弾を想像して欲しい。それこそ銃弾が縦横無尽に駆け回る戦場をだ。
その玉を全て見極めろ、という話だ。
無理に決まってる。
そんなわけで俺は戦場で飛び交う銃弾をただ見続ける変な人へと化しているわけである。
「うぐっ!.......レイよ!準備をっ....!」
そんな中、息絶え絶えにそんな声が聞こえてきた。
ついに来たのだ。アレを使う時が。
一歩間違えれば死が、成功すれば絶大な力を発揮する。それを、使うしかなくなる。
覚悟するしかない。
徐々に俺は残っている魔力を引き出していき、その時に備える。
そして段々とハクリが押されてきているのが俺の目にも見えてきた。幾度の攻防が、ハクリが少しずつ力負けしてきている。
あと少しするうちにハクリは押し切られる。
その前が勝負だ。
俺はゆっくりと手を前に構えた。
その前では見えない攻防が続いている。
そしてーーーーとうとうその時が来た。
「ぬうっ!」
ハクリがいきなり全魔力を放出し、守護者がそれに驚き、一瞬、ほんの一瞬動きを止める。
そして俺は俺の魔力を放った。
ーーーーハクリに向かって。
「同調!」
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