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4章 ラグナロクの大迷宮

42.順調な滑り出し

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迷宮も第3層に入り、出現する魔物に蟻型ではなくダンゴムシが出てくるようになった。
ふざけてなどいない。ダンゴムシが出てくるようになったのだ。
ただ、ダンゴムシというには大きすぎるダンゴムシが。

「然属性の魔物、コウカクムシだね。全長1mを超えるその体は甲殻のような硬い殻に包まれていて、攻撃時には丸まって突進してくる魔物だ」
ルカクさんが説明してくれた。
まあダンゴムシのデカイ版だろう。相変わらず迷宮の魔物はキモい。

だが3層でも2層目とあまり変わらず苦戦もしていない。
ガーリスが守護魔法を張り、魔法使い勢が火魔法で片付ける。
前衛は完全に手持ち無沙汰状態だ。

「聖なる守護の精霊よ、守りの力を我に授けよ『守壁』!」
「火炎球!」

ボォォオオ
バリアと魔法のコンビネーションで数匹のトゥレントが塵となる。

「三層も相変わらず弱いのう」
「本当にここで騎士団は全滅したのか?だとしたら弱すぎるが」
「ま、まあフレッドもエーミールさんも。油断してたら危ないですよ」

フレッドとエーミールを諌めるルカクさん。
......もうルカクさんがリーダーで良くね?エーミールの爺さんなんもしてないし。
「・・・もうルカクがリーダーすればいい」
エーミールの爺さんに聞こえるようにフウが呟いた。ナイスだっ!
それに反応してエーミールがピクリとフウを見る。

「わしも別に油断しているわけじゃないぞ。ただずっと気を張り詰めてもダメじゃから自ら和やかな雰囲気を出してるだけじゃ。だから決して油断などしていないのだ」
言い訳くさい言葉をペラペラ喋るエーミール。もう口閉じといたほうがいいよアンタ。

「まあ百戦錬磨のわしが油断なぞするわけないじゃろうが。のう?」
爺さんがニヤリと笑い、壁にもたれかかる。
「しかもこの個性あふれる面子を抑えられるのはわしだけじゃよ。だからリーダーは間違いなくわしーーーー」

突如ひたすら自己アピールをしていたエーミールの体がガクンと下がる。
よく見ると壁がガコンと動いていた。

「.....ん?」

エーミールが間抜けな声を出した次の瞬間、闇に包まれた通路の先から無数の矢の嵐が吹き込んできた。

「トラップだ!ガーリス!」
咄嗟にルカクさんが指示を出す。
「聖なる守護の精霊よ、守りの力を我に授けよ『守壁』!」
キイィィィーーン
とかん高い音がし、矢はなんとかバリアで防がれた。

「「「・・・・・・・・・」」」

だが場にはなんとも言えぬ雰囲気が流れている。
みんな、もうルカクがリーダーで良くね?って思っていることだろう。

「.....ゴホンッ。ワザとじゃよ!君らを試したのじゃ!断じてトラップに引っかかったわけではないっ!断じて!」

.....エーミール.....。お前の百戦錬磨どこいった。爺さんのドジっ子属性とか誰得だよ。

「.....ルカク。もうお前リーダーやれ」
「ああ。フレッドの言う通りだ。僕も君になら従ってもいい」
「そうね。ルカクがやるべきよ」
「・・・エーミールはリーダー失格」
口々に口を揃えルカクを推し始めた。
ふとエーミールを見ると、な....なんじゃと...と言いながら口をピクピクさせていた。
いい気味だ爺さん。
てかやっと騎士団の副団長だった意味がわかったわ。こりゃ団長なれないはずだ...。

「気持ちは嬉しいけど止めておくよ。エーミールさんの方が経験も豊富だろうしね」
遠慮がちに断るルカクにエーミールが瞬時に復活し、ルカクの手を握った。
「わかっておる!お主中々わかっておるよルカク!」
握った手をブンブン振り回すエーミール。

そんなエーミールを一同冷めた目で見ていた。
「なんじゃよ!もうさっさと先行くぞ!ここは迷宮じゃ。それを忘れてはいかん」

いや、さっき忘れてたの誰だよ。
コイツほんとに大丈夫か.....?



 ーーーーーーーーーーーーーーーー



エーミールへの冷たい目は解消されないまま先へ進むと、広場のような大きな空洞へ出た。

「ここは......」

今まで一番大きな空洞に違和感を覚える。
ダンゴムシもトゥレントも今まで狭いところでしか出てこなかったんだよな。広くても魔法の餌食になるだけだからだと思っていたがそうでもないのか?

「ルカクさん。ここってーーー」

"ギイイィィィィイ!!!!!"

一番物知りそうなルカクさんに尋ねようとした時、複数のかん高い音が空洞に響いた。

「.....!間違いない!ここは魔の部屋だ」
「魔の部屋.....?」
「魔物が大量発生する部屋だよ。見たところここで騎士団は全滅したらしいね」
ルカクさんの視線の先には血だらけの鎧が転がっていた。本体は魔物に食われたのか定かではないが周囲には見当たらない。

「ほら、噂をすればなんとやら」

目線を壁に向けるとさっきはいなかった魔物がズラッと並んでいた。
「「「ギィイィィィィイ!!!」」」

「なっ!後ろにも!」
いつの間にか後ろにもダンゴムシが並んでいた。ものすごく気持ち悪い。
「囲まれているぞ!」
どうやら誘い出されたらしい。入ってきた入り口にも大量の魔物だらけだ。
まあこの程度ならどうにでもなると思うが。

「任せて。火炎渦!」
早速シルクが入り口付近の魔物を掃討しようと範囲魔法を唱えた。
燃え上がる渦はそのまま魔物を消し炭にしようとしてーーーー

ギィイィインン

かん高い音で弾かれた。
「.....?守護魔法!?」
魔物の前にはガーリスが使える守壁と同じものが張られていた。

「なぜ魔物に守護魔法が......?」
確か魔物は属性魔法しか使えなかったはずだ。特殊魔法である守護魔法など使えるはずがない。

「グウゥルルルアァァァ!!!」

突然真上から唸り声が聞こえ、反射的に見上げる。

「なんでこんな奴が迷宮にいるんだよ!!!」

アドルフが思わず怒鳴る。

そこにいたのは、赤い鱗にギラギラとした牙、大きな図体で空を飛ぶ魔物ーーーードラゴンだった。
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