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3章 王宮魔法使い

22.手紙 8/5改稿

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屋敷から馬車で1時間ほどの見渡す限りの大高原。
ここには新しい杖の性能テストに来ていた。
お供には、領主様とガドがついてきている。

「ではいきます」
杖を持つ左手と右手を上げて祈るように構える。
発生させるのは水魔法と光魔法の混合魔法『雷撃』だ。属性には雷は存在しないが、光属性の派生属性だと俺の中では解釈している。どうにも光系統の魔法は雷っぽいのが多いのだ。
それはさておき、高そうな杖の威力はどのほどか。

「雷撃!」
魔力がぐわっと吸い取られるーーーーが、あれ?こんなものか?
目の前にガガンッ、とえぐるような音を出して雷が落ちるが威力もさして変わらない。

「あれ?変わんない?」
「え?そうなのか?今のでも恐ろしい威力だが。」
うーん。微妙だな。
ちょっと出力を上げてみよう。

「雷撃!」
今度はいつもと同じぐらい魔力が吸い取られた。

「あ。」
呟きがもれた。
さっきのとは威力が段違いの雷撃が目の前にけたたましい音を立てて落ちる。

「ええええええ!」
領主様が驚きの声を上げた。
......まあ目の前がクレーターみたいになっているからな。やりすぎた。
だがこの杖の仕組みがわかった。
ようは5倍ぐらいになるのだ。
威力を同じにした時は、魔力消費が5倍少なくなる。
魔力消費を同じにすると威力は5倍あがるような感じだ。

正直言って使いにくい。
大きな魔法ならいいがこれ小さいやつ出すとき超不便なんだが.....。
まあ慣れか。
杖持ってると魔法使いっぽいし。

「ま、こんなものですね。」
「すごいな。想像以上だ。」
「ほんと、ガドもう勝てないんじゃない?」
「む....!」
領主の煽りはともかく全属性超級まで行ったからか、そろそろ負ける気がしなくなってきた。
あ、これ負けフラグか。

「だが10歳でこれなら7大列強もいずれ倒せるんじゃないか?」
「7大列強?」
「ああ。7大列強とは世界で強い7人の総称だ。これにランクインすることが大体の戦士の夢になっている。」
世界で強い7人。
たぶん魔法も剣術もなんでもありなこの世界では恐ろしい強さなんだろな。
絶対戦いたくない。

「そういえば世界で1番強いのは誰なんですか?」
世界最強。男のロマンである。
「世界最強.....か。諸説あるんだが7大列強1位の龍神か、伝説のアーサー王か、他にも強い奴は多すぎてわからん。」
まさかの世界最強の席の欠如......。
もう天下一武道会とかやって決めちまえよ。

「そういう人に一度ぐらい会ってみたいですね。」
「まあ世界最強ぐらいの人物は人生では会えんだろうな。だが7大列強の1人はアリア王国にいるぞ。」
「えっ?」
いんの?そんな有名人!

「王国の食客として滞在している。確か、6位の水神アルクヌスだったはずだ。」
アルクヌス.....言いにくっ!
だが6位ってことは超強い。しかも強い奴は大体変な奴って決まってる。

「ハッハッハー!ようやく見つけたぞ!レイ・スペルガー!」
こんな奴みたいに。

「..........えっ?」

「幸運だなレイ・スペルガー!王宮で待っているぞ!ではな!」
「えっ?いや、え?」
空を飛ぶでっかい鷲に乗った謎の男は颯爽と去って行った。
なんだあいつ。

「えーっと?今のは?」
「あー、今のがアルクヌスだ。」

..........ん?

「今なんと?」
「あいつが6位の水神アルクヌスだ。」

「ええええええぇ!!!」

あれ!?あれがアルクヌス?超変なやつじゃん!
しかも何言ってるか全然わからん!
見つけたぞ!と待ってるぞ!しか言われてないぞ!
なんなんだあいつは!

ハァハァ。
ちょっと一旦落ち着こう。
整理するんだ。さっきどうなった?
えーっと、いきなり現れた。見つけたぞ!と言われた。待ってるぞ!と言われた。どっかいった。
うん。わからん。

「あ、手紙だ。」
「手紙?」
手を空に向ける領主の視線をたどると、ヒラヒラと舞い降りる一枚の紙が落ちてきていた。ヤツが落としていったっぽい。
タイミングよくジャンプして掴み取ると、それは確かに手紙のように封筒に包まれていた。

「お!宛先君じゃん!」
領主に言われた通り、裏にはレイ・スペルガー様、となっている。
さっきのアレといい、面倒な予感しかしない。

綺麗に封をされている封筒を開けると、折りたたまれた紙が二枚入っていた。

まずは一枚目。
「通過証。」
それだけだ。いや、隅には王様の名前が書いてある。
通過証を持ってどこに通過するのかはわからんが面倒なことだけはわかる。

「.....ふぅ。」
先に二枚目を見ていた領主がため息を漏らす。
「はい、どうぞ。」
そう言う領主の顔は少し引きつって見える。

「..........レイ・スペルガー殿。貴方をアリア王国第3王宮魔法使いとして招く.....。」
はあ。たぶん拒否権はないんだろう。
ずっとここでほのぼの生活しときたかったな。

中世ものの王宮と言えばあれだ、欲にまみれた貴族たち、傀儡にされた王様とか私利私欲を尽くす王様、厄介ごとに巻き込まれる毎日。
はあ。確かに転生ものではよくあるけど実際行くとなると行きたくない。

「ほう。すごいではないか。」
ガドが驚いたように言う。
確かにすごいけど!俺はここで平和的に暮らしたいんだっ!
「ガド、王宮はそんなに良いところではないよ。」
領主は何かを思い出したのか、はぁーとため息をついた。

「まあだけどいい経験もできると思うよ。魔法も帝級以上使える人いると思うしね。」
.....まあポジティブに行くか。
アルクヌスみたいなやつも一握りだけだろう。

「それに王宮魔法使いとかそうなれるものじゃないし、それに10歳だからね。権力も金も今後使い放題になるかもしれない。」
よくあるテンプレ的な展開だけに見返りもすごい、か。
これは良いかもしれない。
だが、うーん。迷う。



ーーーーーーーーーーーーーーー
なかなか話が進みませんね、頑張ります。
感想の方ですが、確かにおかしいので21歳→23歳と変えさせて頂きます。
申し訳ありませんm(__)m
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