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2章 魔法使いと戦争

18.超級魔法使いVS極級剣士

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 「俺の名はバルドル。シリル公国の第3将軍。極級の剣闘流剣士だ」

 わざわざ自己紹介してくれたが、嫌なことを知ってしまった。
 極級。
 それは俺が一度も勝てていないガドより強いということ。
 1人で1000人を相手に出来ると言われるレベルだ。
 間違いなく強い。今までとは比べものにならないくらい強い。
 A級と呼ばれる大蛇でさえ極級には届かないだろう。

 「ガキのくせに中々強いじゃないか。その強さは認めよう。だがな、俺の配下に手を出したのは許さん。覚悟するがいい」

 ええ。どちらかと言えば配下を無碍に扱ったのはお前じゃないか。
 とんだ言いがかりである。
 だがコイツは強い。言いがかりが通じる程に、普通にやったら負けるだろう。
 だが俺もガドとの戦いで何も剣士対策を考えなかったわけじゃない。

 いくぜ!剣士対策その1!空に逃げる!

 「岩石塔トーレロック!!」

 ズブズブ、と俺の足元が盛り上がり、土が塔となって俺を10m程度の高さまで持ち上げる。

 「ほう。空へ逃げるか。だが射程範囲だ。」

 バルドルが右手の剣を一振りする。その途端、塔の半分ぐらいのところが真っ二つになった。

 「は?」

 岩石だぞ?
 真っ二つにするにも限度があるだろうが。
 バランスを崩した塔はそのまま流れるように落ちていく。
 さっきのは斬撃だろうか。
 ガドもたまに飛ばしていた。
 しかしアレはレベルが違う。
 まともにやれば勝機はない。

 「白霧ホワイトミスト!!」

 落ちながら地面に真っ白の霧を発生させる。

 「む。霧か!」

 これが剣士対策その2!
 相手の視界を奪い、その間に範囲魔法で攻撃するのだ。
 俺はそのまま水で着地した。

 「そこだ!」

 瞬間、その着地音を聞いたのかバルドルの声とともに
 ブゥオン、と横1mぐらいのところがえぐれた。
 身体が凍りついた。少しの油断も命取りだ。

 “大雨!“
 位置バレを防ぐため無詠唱で大雨を唱える。

 「雨.....?」

 さらに見通しが悪くなった。これでどちらも姿など全く見えないはずだ。

 “硬石岩アダマント!“

 俺の周りをなるべく硬くした石で囲む。右左上後ろを囲み、前だけ開けて呼吸を整えた。
 やるしかない。水蒸気が舞うこの状況。もう魔力はそんなに残っていない。一撃でヤツを倒すような範囲魔法は無理だ。
 だが魔法でなければ良い。

 「太陽炎プロミネンス!!」
 「噴水ファウンテン!!」
 「硬石岩アダマント!!」

 3つの魔法を連続して唱えた。
 それぞれは中級程度の魔法だが、状況次第ではそれ以上に化ける。
 超高熱の太陽炎はかなり前方に、噴水は目の前に、そして硬石岩で完全に自分を囲んだ。完全にふさいだせいで視界が真っ暗になる。

 そして真っ暗な硬石岩の中でその時を待った。

 ヒュウウゥーーーーーー

 風の吸い込まれるような音が聞こえる。
 まだか?まさか失敗した....?
 知識だけでは無理があるか———

 バアーーーアアァーーーン

 その時、鼓膜が破れるような爆発音が鳴り響いた。
 かなり近くだ。だが俺は生きている。作戦成功だ。
 俺が狙ったのは水蒸気爆発。多量の水を高熱の炎にぶつけると蒸発による気体の膨らみで爆発する反応。
 その威力は大量の水と超高熱の炎で作ったんだからものすごいものだろう。
 少ない魔力でも強い威力は生み出せる。
 暇な時に考えた技だ。

 勝った。
 そう思い、硬石岩を解除した。
 目の前に設置したはずの噴水は跡形もなく消えていた。爆発を暖和する役割だったからナイスな働きだ。
 霧もすっかり晴れ、数々の陣が張ってあった場所には大穴があき、焼け野原になっていた。

 これで生きているのは無理だろう。ここにいた兵士たちは骨すら残らず消し飛んだはずだ。
 何人、いや何十人何百人が死んだんだろうな。

 後ろを振り返るとちゃんと硬石岩で守ってあげた領主が驚いた顔で俺を見つめていた。
 違った。俺の後ろを見つめていた・・・・・・・・・

 「!?」
 
 恐怖を感じ、後ろを振り返ると、そこにはーーーーーーー倒したはずのバルドルがいた。

 「やってくれるじゃねえか」

 バルドルはやはり傷だらけの身体で恨めしそうに俺を見つめる。

 「なっ!」

 どうやったらコイツは死ぬんだ!?

 「もうお前を侮ることはやめる。本気で、殺す!!」

 バルドルが目にも止まらぬ早さで突っ込んできた。

 「.....ッ!」

 動転し、強すぎる風を体にぶち当てた。
 転がって体が痛かったがそんなこと言ってる場合じゃない。
 俺の元いた場所を見ると、そこにはバルドルの姿がーーーーーもういなかった。

 「死ね」
 「くっ!!」

 後ろを振り返らず俺は再び風で自分を吹っ飛ばす。
 ギュオンッ、と風切り音が聞こえて背中に壮絶な痛みが突き刺さった。

 「あああ!」

 痛みに悶え、吹っ飛びながらも噴水を無詠唱で唱えた。
 下から制御無視の噴水が湧き出てくる。
 それに再び吹っ飛ばされ空中に投げ飛ばされた。

 「そこは射程範囲と言ったはずだ」

 バルドルは剣を一振りする。
 斬撃だ。だがバルドルも先ほどのダメージがあるのか今回は遅い。
 斬撃が、見える。

 「風刃ウインドエッジ!!」
 
 風波ラフの一段階上の風の刃を作り出し、斬撃をレジストする———つもりが弱まっただけだった。
 威力を弱めた斬撃は空中の俺を捉え、切り裂いた。しかしそれでもバラバラになるほどじゃない。
 肉が少し切られ露出した程度だ。
 アドレナリンが出ているのか痛みなど感じなかった。

 落ちながらも俺は反撃の一手を繰り出す。

 「氷柱雨アイシクルレイン!」

 氷柱の雨をバルドルに降り注いだ。だがこの程度で倒せるとは思えない。
 実際、かなりの速さ、威力の氷柱雨をバルドルは軽く受け流していた。
 バルドルの体に氷柱雨の水しぶきが飛び上がる。目にも止まらぬ速さで粉砕されているのだ。

 しかし、それを俺は待っていた。

 「小細工もいい加減にしろ。もう終わりだ」

 バルドルが剣を構えた。力の入れようから今度の斬撃はもう見えないだろう。
 その剣を振るえば俺は確実に死ぬだろう。
 だが、俺もコレで終わらせる!

 「死ねっ!」
 「雷撃トニトルスストローク!!」
 
 俺とバルドルの声が重なる。

 太陽も沈んでしまった薄暗い空の中、光り輝く雷と目にも止まらぬ鋭利な斬撃が放たれた———
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