亡国の草笛

うらたきよひこ

文字の大きさ
上 下
107 / 236
第三章 黒い狼

第百七話 黒い狼(6)

しおりを挟む
 それからは確かに面倒なことになっていった。
 オズバルはシェイルを自身の邸宅に連れ帰りたがったが、何がしかの圧力により許可が出なかったようだ。
 ゴルドローグ指揮官が噛んでいるに違いない。確認したところ案の定というべきか、エイミア王女の親族であった。すでにラヴォートはエイミアに目の敵にされている恐れがある。大袈裟に鼻で笑われたこを思い出すと何度でも腹が煮えた。今後ことあるごとに引き合いに出され揶揄されることになるだろう。
 しかしオズバルとてエイミアやゴルドローグ指揮官に負けず軍部での影響力ははかりしれない。それに二人にはない人望もある。運がなかったのは今が戦時であることだ。
 シェイルを捕虜としてすぐオズバルが軍のお偉方を集めて陛下に話を通したがっていたのもそのためだった。先手を取ってしまわなければ、そんないわくつき捕虜の待遇などを相談する時間は取れないと方々に切り捨てられる。「帝国軍の子供の捕虜」と話題になっており、関係者が再度戦地に赴く前、このタイミングでしか事態は動かせないとオズバルはしっかりと見極めていたのだ。
 何ごともなければ陛下はロイで起こった事態を耳にして生き残ったロイの王族に対し何らかの判断をしたはずである。オズバルが直接陛下と話すことができていれば、おそらくシェイルにとって悪くない待遇――オズバルに一時的に引き取られる――という可能性もあっただろう。
 あのくだらない喧嘩によりすべてを台無しにしてしまった。
 だが、オズバスの目論見こそ白紙に帰したものの、ラヴォートにとって今の状況が悪いとは言い切れなかった。
 例のルーヴィックお手製の兵士の制服を着こむとラヴォートは自室の窓からそっと抜け出す。城の敷地内にある牢よりもずっと近い。もともとは国王陛下の祖母にあたる人物が隠居するために作らせたこぢんまりとした離れである。そこはわざわざ訪れようとしなければ立ち寄れないような場所にあり、警備しやすく他国の王族を住まわせておいて後々問題になるようなひどいところでもない。
 ただし、いわゆる軟禁である。帝国軍に所属していたという事実は否定できず、レジス軍の目の前で多くの帝国軍を殺害したことはかなりの衝撃を与えていた。軍部では危険視する声も多い。しかし戦時でありすぐにどうするかは決められず、議論は棚上げということに落ち着いたのだ。
 その建物は王族の居住する王城の最も奥まった場所と執務室の並ぶその手前の棟の間に広がる広大な庭、中の間の一角にあった。
 当然、警備兵はいるが早くもラヴォートは寝室の小窓のひとつから侵入できることを確認していた。小窓は身長よりもはるかに高い位置にあるが、ラヴォートの身体能力をもってすれば容易に侵入できる。
「何を読んでいる?」
 シェイルは彼の体に対して大きすぎる寝台に身を横たえ、本のページを繰っていた。灯りの揺れに合わせその白い頰の陰影も揺れ動く。勝手に侵入することに対して文句も言わないが、気が乗らなければこのように無視をする。
 ラヴォートは小窓に腰かけたまましばらくシェイルの様子をながめていた。
「怪我の具合はどうだ?」
 みつろうの灯心がたてるわずかな音さえ聞こえそうな静寂である。後はときおり本のページがめくられる音がするだけだ。
「今夜は満月だぞ」
 窓の外は浩々と月明りが降りそそいでいる。もしかしたら室内よりも明るいのではないだろうか。
「満月?」
 シェイルはようやく顔をあげてラヴォートの方を見た。それから寝台をおりてラヴォートが座っている小窓の下まで来る。ラヴォートが邪魔になって月は見えないだろう。しばらく無為に見つめ合っていたが、おもむろにシェイルが口を開く。
「そこをどいてください。月が見えません」
「外の方がよく見える」
 ラヴォートは小窓から外へと飛び降りた。しばらく待ってみたが中から小窓にのぼろうとしている気配がしない。そういえば怪我をしているのだったと思い出し、声をかけようとしたところで、シェイルが窓から顔をのぞかせた。そのまま危なげなく外に出るとラヴォートの隣に立って空を見上げる。静かに降る月明かりに目を細め何かに聞き入るように月を見ていた。
「怪我はいいのか?」
 シェイルは無言で空を見上げたまま、寝巻きのような長衣の肩口をぐっとひっぱって見せた。ラヴォートが強くつかんで悪化させてしまった右肩だが、驚いたことにあんなに深く傷ついていたはずがすでに新しい桃色の皮膚が張り治ったといっても差し支えない状態になっている。あれから五日――いや、最後にあのひどい状態の傷を見てからは四日しか経っていない。
 言葉を失っているラヴォートに、シェイルはこともなげに「体は丈夫なんです」と言うが、丈夫だとかそういう問題ではないだろう。
「これがフィル・ロイットという一族の体です」
 ラヴォートがあんまりにも会得がいかない顔をしていたためか、シェイルは仕方ないとでもいうように補足する。
「昼にルーヴィック様が来ました」
「ルゥが? 何でだ?」
「わたしが牢に入った夜から毎晩こっそり来ていたんですよ。それが今日はきちんと許可をとって明るいうちに入口から来ました」
「毎晩? 何のために?」
 肝心の内容を言わないのでラヴォート徐々にいら立ってくる。
「毎晩、詩を一編読んでくれるんです」
「――詩?」
 ルーヴィックはあらゆる方向に博識だが、詩というのは意外だった。
「今日、五編目の詩を読んでくれました」
 そういって先ほどまで読んでいた本をラヴォートに見せる。
「詩はあまり詳しくないのだが」
 ブライスが文学などの教養も王族には必須であるといって有名な詩歌はひとしきり暗唱させられたのだ。だがそれ以上自ら探して読むようなことはなかった。
「狼の遠吠えで月が砂漠に落ちるんです。それをいろんな動物や人間が切り取って持ってゆくと最後には真っ暗になります」
 シェイルが本の最後のページを開いて見せる。真っ黒にインクで塗りつぶされたページだ。面白い趣向だが、そんな詩のどこがいいのか、いまいち分からない。
「それが詩の内容か?」
 シェイルはこくりとうなずく。
「何の暗喩だ、それは」
「何の暗喩でもありません。そのままです。
 ――ろう、ろう、ろうと 狼の遠吠えをきく
 月そう、そう、そうと 光ちらし落ちゆけば――と、冒頭はこうです。声に出して読みあげたときの音がおもしろいのです」
 異国の人間の顔つきでそんなことを言う。レジスの詩歌まで読みこなすのか。
「それで――? まったく話が見えない」
「この詩は全部で五編、今日でおしまいです。実はわたしも詩はそこまで詳しくはなかったのですが、ルーヴィック様は読むのが上手なので毎晩楽しみにしていたのです。しかし今日で最後だと言われて少しがっかりしました」
 やはり話が見えない。ルーヴィックは黒い狼を自分のものにするといいながら何を仕掛けていたのだろう。詩を読んで手懐けるつもりだったのか。話を聞いているとそこそこ成功していたようにも思うが。
「今日、五編目の詩を読んだ後に、『ボクのものにならないか』と言われました。命以外のものなら何でもくれてやるから、と」
 ラヴォートはそのまま気が遠くなりそうになった。方法が婉曲的なのか直接的なのかわからない。連日詩を読んでやって心を開こうとしたところまでは納得いかなくもないが、その後の展開が直球すぎておかしい。やはりルーヴィックは生粋の奇人だ。それに自分のものにすると豪語したわりに何でもくれてやると申し出るとは、完全に入れ込み過ぎの領域ではないか。
「なのでわたしも欲しいものを申し上げましたが、ないものはやれないと逆に断られてしまいました」
 ラヴォートはこちらも何を言い出したのかすぐに理解できなかった。ルーヴィックは王族である。「命以外何でも」と本気で腹をくくれば本当に何でも準備できる立場だ。
「お前、何をふっかけた?」
 シェイルはしばらく黙る。また無視かとラヴォートは小さくため息をついた。
「――ラヴォート様がそれをわたしにくださいませんか」
 何かを考えている風だったシェイルは唐突に口を開いた。
「ルゥが持っていないものはたぶん俺も持っていない」
「いいえ。ルーヴィック様はラヴォート様なら持っているとおっしゃっていました」
 今度はラヴォートの方が黙った。何のことか皆目見当がつかない。
「それを俺が持っていたとして、お前にやったら、お前は俺のものになるのか」
 シェイルはゆっくりと口角をあげた。笑ったのだろうか。月明かりに濡れたような黒い目がまた獣のような気配を帯び光りはじめる。
「いいですよ」
 何だか高くつきそうな取引だ。あの強引で目的のためには手段を選ばないルーヴィックが無理だといったほどのものだ。
「それで、ルゥは俺が何を持っているって?」
 シェイルは何かを見極めるようにラヴォートの目をのぞきこむ。それから少し間をおいてからようやく口を開いた。
「王の器」
 しばし沈黙が降りる。
 そう、そう、そうと月の光の音を表現した先ほどの詩をなぜか思い出した。月明かりだけが二人の間に降りそそいでいる。
「ラヴォート様がこの国の王になり、わたしに少しばかりレジスをください。ロイの民はもはや大昔のように旅をしながら暮らすことが難しくなりました。一つの土地に長くとどまり過ぎましたし、今や多くの国が国境を設け部外者を差別し排除します。余所者として頭をさげて土地から土地を流れるような暮らしは不可能でなくとも不自由なんです」
「な、何を言っているんだ?」
 喉がからからに乾いていた。「レジスをくれ」だと?
「やはりだめですか」
 シェイルはさして残念ではなさそうにそういうと、寝室への小窓のふちに手をかける。
 ラヴォートはその背後からシェイルの長衣の裾をつかんだ。
「待て」
 ラヴォートの中で様々な感情がうずまいていた。兄弟姉妹の顔を順に思い起こしてゆくと、王の器というべきものを持つのは確かに自分だけではないのか。ルーヴィックは端からその気がない。エイミアは議会でギャンギャン喚き散らすばかりで人望がない。さらに他の王子、王女もみな何か欠けている。惜しいと思わせる者もいるが、ラヴォートを超えているかというと正直疑問だ。だが、そもそも自分自身も客観的に自分が見えているのか。
 ロイという国のことはよくはわからないがオズバルによると多くの民が生き残っているという。やがて難民の問題に発展するだろう。もちろんそれを解決すべきは現レジス王であるのだが、ここにロイの王の血筋の者が残っている。ラヴォートがこの黒い狼を自身のものにすれば、ロイの民をうまくまとめ上げることも可能ではないか。子供のラヴォート自身にそれができなくとも国王陛下に提言することはできる。
 レジスとロイの双方の利害が一致すれば、悪くない結果になる。いや、それこそ今後の反乱や謀反につながる要素になりはしないか。
「眠いので放してください」
 小窓に手をかけたまま、シェイルはうんざりしたようにラヴォートを見ている。
「ちょっと待て。黙っていろ」
 ラヴォートは目を閉じて、再度頭を整理する。目を閉じていても月の明かりが降りそそぐ気配が濃厚に漂っていた。この黒い狼を手に入れたとしておとなしく足元に座らせておくことなど自分にできるのか。
 シェイルはいつの間にかラヴォートの手を逃れ、小窓に腰かけてこちらを見下ろしている。強い月の光で表情は見えない。黒髪が金色の生糸のように輝いていた。
 欲しい。これが欲しい。
 はるか遠く、狼の遠吠えを聞く。それは幻聴かもしれない。
「わかった。俺がレジスの王になろう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Archaic Almanac 群雄流星群

しゅーげつ
ファンタジー
【Remarks】 人々の歴史を残したいと、漠然と心に秘めた思いを初めて人に打ち明けた――あの日、 私はまだ若く、様々な可能性に満ち溢れていた。 職を辞し各地を巡り、そして自身のルーツに辿り着き、河畔の草庵で羽筆を手に取るまでの幾年月、 数多の人と出会い、別れ、交わり、違えて、やがて祖国は無くなった。 人との関わりを極限まで減らし、多くの部下を扱う立場にありながら、 まるで小鳥のように流れていく積日を傍らから景色として眺めていた、 あの未熟でちっぽけだった私の後の人生を、 強く儚く淡く濃く、輝く星々は眩むほどに魅了し、決定付けた。 王国の興亡を、史書では無く物語として綴る決心をしたのは、 ひとえにその輝きが放つ熱に当てられたからだが、中心にこの人を置いた理由は今でも分からない。 その人は《リコ》といった。 旧王都フランシアの南に広がるレインフォール大森林の奥地で生を受けたという彼の人物は、 大瀑布から供給される清水、肥沃する大地と大樹の守護に抱かれ、 自然を朋輩に、動物たちを先達に幼少期を過ごしたという。 森の奥、名も無き湖に鎮座する石柱を――ただ見守る日々を。 全てを遡り縁を紐解くと、緩やかに死んでいく生を打ち破った、あの時に帰結するのだろう。 数多の群星が輝きを増し、命を燃やし、互いに心を削り合う、騒乱の時代が幕を開けた初夏。 だからこそ私は、この人を物語の冒頭に据えた。 リコ・ヴァレンティ、後のミッドランド初代皇帝、その人である。 【Notes】 異世界やゲーム物、転生でも転移でもありません。 クロスオーバーに挑戦し数多のキャラクターが活躍する そんなリアルファンタジーを目指しているので、あくまで現世の延長線上の物語です。 以前キャラ文芸として応募した物の続編更新ですが、ファンタジーカテゴリに変更してます。 ※更新は不定期ですが半年から1年の間に1章進むペースで書いてます。 ※5000文字で統一しています。およそ5ページです。 ※文字数を揃えていますので、表示は(小)を推奨します。 ※挿絵にAI画像を使い始めましたが、あくまでイメージ画像としてです。 -読み方- Archaic Almanac (アルカイクxアルマナク) ぐんゆうりゅうせいぐん

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

虐げられた武闘派伯爵令嬢は辺境伯と憧れのスローライフ目指して魔獣狩りに勤しみます!~実家から追放されましたが、今最高に幸せです!~

雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
「戦う」伯爵令嬢はお好きですか――? 私は、継母が作った借金のせいで、売られる形でこれから辺境伯に嫁ぐことになったそうです。 「お前の居場所なんてない」と継母に実家を追放された伯爵令嬢コーデリア。 多額の借金の肩代わりをしてくれた「魔獣」と怖れられている辺境伯カイルに身売り同然で嫁ぐことに。実母の死、実父の病によって継母と義妹に虐げられて育った彼女には、とある秘密があった。 そんなコーデリアに待ち受けていたのは、聖女に見捨てられた荒廃した領地と魔獣の脅威、そして最凶と恐れられる夫との悲惨な生活――、ではなく。 「今日もひと狩り行こうぜ」的なノリで親しく話しかけてくる朗らかな領民と、彼らに慕われるたくましくも心優しい「旦那様」で?? ――義母が放置してくれたおかげで伸び伸びこっそりひっそり、自分で剣と魔法の腕を磨いていてよかったです。 騎士団も唸る腕前を見せる「武闘派」伯爵元令嬢は、辺境伯夫人として、夫婦二人で仲良く楽しく魔獣を狩りながら領地開拓!今日も楽しく脅威を退けながら、スローライフをまったり楽しみま…す? ーーーーーーーーーーーー 1/13 HOT 42位 ありがとうございました!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...