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第四章 楽師の長い旅
楽師の長い旅(5)
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「ほ、ほんとうですか!」
リシャルドはシハルの手を取って声をあげる。
「――ですが、命の危険を感じたら逃げさせていただきますね」
負ける気はしないが、可能であれば楽器を破壊せずにすませた方がいいだろう。
「ええ、それは仕方のないことです」
リシャルドは少し声を落として神妙な顔をする。
あの楽器がどのような手段で襲いかかってくるのか観察してみる価値はある。神の加護に頼れない今、シハルに必要なのはそういった経験だ。
「それと勝負がつくまでということでお願いします」
「勝負?」
リシャルドはシハルの手を取ったままぼんやりと虚空を見つめる。
「恋人になった場合、あの楽器と一戦交えることになると思いますが、ぎりぎりまで生き残れる方法を探りたいと思います。何が起こっているのかわかればリシャルドさんも今後手の打ちようがあるのではないですか」
リシャルドはしばし黙った後、「ははぁ」と感嘆のような悲嘆のような曖昧な音で息を吐いた。
「ちなみにシハルさんは恋人というのがどういうものかご存知ですか?」
「ええ、大丈夫です。任せてください」
胸を張るシハルにリシャルドはやはり微妙に冴えない顔をする。
「ええと、ではシハルさんの考えている恋人同士とはどういうものか教えていただけないでしょうか」
「……」
シハルはしばし考えた。男女が一緒にいるのはよく見かける。動物のつがいと一緒である。何よりシハルは何度も村で神に婚姻の許しを請う儀式を執り行っていた。そのときに見た花嫁たちがみな美しく幸せそうでシハルはずっとうらやましかったのだ。だが恋人というのはその前段階である。わかっているつもりだったが、曖昧なイメージしかないことに気づく。思い浮かぶのはにこにことほほ笑む花嫁の姿ばかりだ。
「こんな感じです」
仕方なくシハルはにっこりとリシャルドにほほ笑みかけた。リシャルドはハッとしたようにシハルを見つめる。
「……そうですね。その通りです。間違いないです」
ヴァルダが不自然なほど静かだと思ったら縛られたまま大あくびをしていた。
「では今から恋人ということにしましょう。よろしくお願いします」
リシャルドはシハルの手を取り、そっと身を寄せた。
「おい、近づくんじゃねぇよ。殺すぞ」
眠そうだったヴァルダがまたピンと耳を立てて騒ぎを始める。
その時、どこからかあの楽器の弦が大きくはじかれたような音が響いた。その音の振動が消える前にザッと雨が降る出す音に包まれる。まだ夜も早い時間なので外にいる人々があわてて走り出すような気配がした。この宿屋の一階の食堂にも雨宿りに来たらしい人々が立て続けに来店しているのが声や物音からわかる。
「急にきたな」
「おおい、何か拭くものはないか」
「また来やがったのか。今度は何もないといいが」
「すごい降りだよ」
「誰か、様子見てこいよ」
「冗談じゃねぇ」
安い部屋だからか階下の人々の声が切れ切れながらしっかりと聞こえてくる。それを聞くともなく聞いていたが、ただ雨に降られただけの会話にしては少し妙だ。
「今の音、さっそくですがアレが来ているようです」
「え? 何ですか?」
シハルは無言でドアの方を見る。その視線の意味をはかりかねたのか腑に落ちない表情のままリシャルドはドアノブに手をかけて引いた。するとドアの向こうに立てかけてあった何かが倒れるような音がする。見なくとも気配でわかる。あの楽器だ。
「おや、僕のギタアがある。不思議ですね。部屋に置いてきたんですよ。おかしいな。僕の勘違いでここまで持ってきたんでしたっけ」
リシャルドがここに来たとき、片手にチーズがのった大皿、もう一方の手にカップ二つと葡萄酒の瓶を器用に持って現れた。楽器を持って来られるはずがない。
リシャルドはそのまま楽器を部屋に引きいれた。雨の音がより激しくなる。シハルはじっと楽器を見つめた。
「ひとりぼっちでさみしくなっちゃったんでしょうか」
ヴァルダがフンッと小馬鹿にしたように鼻息をもらす。
「シハルさん、どうですか。何か感じますか?」
敵意しか感じない。ヴァルダのように口がないので物理的には話しかけてはこないが、こちらを害そうとしているのは容易に理解できた。言葉ではないイメージで害意がダイレクトに突き刺さってくる。
なぜ女を殺したいのか。敵意以外の何のイメージも伝わってこない。言葉ではないが、言葉に直すとすれば「殺す、殺す」と終わりなくつぶやいているような状態だ。
うるさいがヴァルダとは違ったうるささである。ヴァルダは「黙れ」といえばたまには聞くこともあるし、機嫌を損ねるとむしろ黙っている。だがこの楽器に「黙れ」は通用しそうにない。夜通しこの敵意にさらされていたら頭がおかしくなりそうだ。シハルは楽器自身から何かを探る方法を早々にあきらめた。
結局、声を聞いても正体も何もわからないわけだ。それには少しがっかりする。世の中には理屈の通用しないものがあることは感覚的にわかっていたが、それを目の当たりにするとなんだか承服しかねる。
どういう由来の物でなぜ女を殺めるのか。はっきりとした答えがあればすっきりするのだが、よく考えればそういうことがはっきりとわかるものの方が少ないのである。
シハルが村で神に仕えていたときも、何だかわからないが邪悪な気がするので処分してくれとか、由来はわからないが気味が悪いので封じてくれといったいわくつきの物品を預かることも多々あった。あの村では村の神の息がかかったもの以外で力の強いものはすべて邪悪であると判断されるので非常にわかりやすい。ただ神の名のもとに封じるなり打ち壊すなりすればいいのだ。シハルが何かを考える必要などなかった。
「うーん」
シハルは額の紋様の辺りに触れる。しばらくリシャルドの恋人としてふるまいどんな不幸に見舞われるのか様子を見るほかないだろう。正体はわからなくとも何か対策法はあるのかもしれない。
「そういえば被害に遭われた女性はみんなリシャルドさんがそばにいないときに亡くなったんでしたよね」
「ええ、そうなんです。だから何があったのかまったくわからないんですよ」
「では、リシャルドさんから離れなければよいかもしれませんね」
「しかしいくら恋人同士だからといって四六時中行動をともにするのは現実的ではないですよ」
それはもっともである。もっと実現可能な対策を見つけ出さなければならない。
雨が強くなってきた。寝るだけという態の部屋に窓はない。シハルは寝台の端の壁際に寄ってみた。叩きつけるような豪雨が壁板一枚向こうに感じられる。体を動かすと、くくりつけてあるヴァルダの手足がぷらぷらと揺れた。
「逆にリシャルドさんの体にあの楽器をくくりつけて行動したらどうでしょう」
「それは……さすがに重いのですが」
確かに。ヴァルダも子犬サイズとはいえずっとこのままだと考えると不自由である。どうしたものかと首をひねっていたそのとき、どこかでひどい雷鳴がとどろいた。建物が軽く揺れるほどの大きさである。
「落ちたんでしょうか。すごい音でしたね」
リシャルドも大きく目を見開いてシハルを見た。
「それにこの雨の量は尋常ではないです」
シハルの村であれば、神の力でなんとかしろと村人が駆けこんでくるほどの事態である。そういえば宿中が比較的静かだ。この村ではこの規模の大雨はよくある事なのか。
「階下に様子を見に行ってみましょうか」
リシャルドがいうのでシハルはうなずいた。
「このままだ」
すかさずヴァルダがシハルに命じる。腹にくくりつけたままにしろというのだろう。
「はいはい」
シハルは腹にくっついているヴァルダの体をぽんぽんと軽く叩く。
一階の食堂には大勢の客がいた。宿の客たちが大雨に不安になりシハルたち同様に降りてきたのかもしれないが、中には雨に降られて駆け込んできたらしき町の住人たちもいる。みな食事というよりは、酒を飲みつつ雨の音に耳をすませているかのように小声で話していた。
「さっきは葡萄酒をありがとうございました。すごい雨ですね」
リシャルドは洗い終わった皿を拭いている大柄な男に声をかけた。この人が店主だろうか。
「いや、こちらこそ。ずいぶん分け前をもらっちまった。まぁ、座んな」
場所を貸しただけであの投げ銭の二割をもらったというなら機嫌も良くなるだろう。男は拭き終えた皿を棚にしまうと、シハルを見た。
「僕の恋人です」
すかさずリシャルドがシハルを紹介してくれるが、店主らしき男は不思議そうな顔のままだ。たぶんシハルを男性だと思っている。式服で長身、秘密裏に兄の代わりとして躾けられてきたシハルをすぐに女性だと気づく人は少ない。リシャルドの方がめずらしいのだ。
「あんたも座んな」
まだ腑に落ちない顔のままだが、シハルにも席をすすめてくれる。リシャルドが慣れた様子で聞いたこともない長い名前の何かを注文した。飲み物だろうか。
「いい酒を頼むじゃねぇか。さすが景気がいいね。おまけしとくよ」
言いながらシハルの前にチーズを盛った小皿を出してくれる。
「ハムでチーズを巻くのが好きなんですよね。ハムもたのみましょう」
リシャルドが追加でハムをたのんでくれる。さっそくシハルが手をつけようとしたところ、また雷鳴がとどろいた。店内がわずかにざわつく。
「雨がなぁ、どうにもならないんだよ」
男が大きくため息をつきなら、琥珀色の酒が入ったグラスをリシャルドとシハルの前に置いた。
リシャルドはシハルの手を取って声をあげる。
「――ですが、命の危険を感じたら逃げさせていただきますね」
負ける気はしないが、可能であれば楽器を破壊せずにすませた方がいいだろう。
「ええ、それは仕方のないことです」
リシャルドは少し声を落として神妙な顔をする。
あの楽器がどのような手段で襲いかかってくるのか観察してみる価値はある。神の加護に頼れない今、シハルに必要なのはそういった経験だ。
「それと勝負がつくまでということでお願いします」
「勝負?」
リシャルドはシハルの手を取ったままぼんやりと虚空を見つめる。
「恋人になった場合、あの楽器と一戦交えることになると思いますが、ぎりぎりまで生き残れる方法を探りたいと思います。何が起こっているのかわかればリシャルドさんも今後手の打ちようがあるのではないですか」
リシャルドはしばし黙った後、「ははぁ」と感嘆のような悲嘆のような曖昧な音で息を吐いた。
「ちなみにシハルさんは恋人というのがどういうものかご存知ですか?」
「ええ、大丈夫です。任せてください」
胸を張るシハルにリシャルドはやはり微妙に冴えない顔をする。
「ええと、ではシハルさんの考えている恋人同士とはどういうものか教えていただけないでしょうか」
「……」
シハルはしばし考えた。男女が一緒にいるのはよく見かける。動物のつがいと一緒である。何よりシハルは何度も村で神に婚姻の許しを請う儀式を執り行っていた。そのときに見た花嫁たちがみな美しく幸せそうでシハルはずっとうらやましかったのだ。だが恋人というのはその前段階である。わかっているつもりだったが、曖昧なイメージしかないことに気づく。思い浮かぶのはにこにことほほ笑む花嫁の姿ばかりだ。
「こんな感じです」
仕方なくシハルはにっこりとリシャルドにほほ笑みかけた。リシャルドはハッとしたようにシハルを見つめる。
「……そうですね。その通りです。間違いないです」
ヴァルダが不自然なほど静かだと思ったら縛られたまま大あくびをしていた。
「では今から恋人ということにしましょう。よろしくお願いします」
リシャルドはシハルの手を取り、そっと身を寄せた。
「おい、近づくんじゃねぇよ。殺すぞ」
眠そうだったヴァルダがまたピンと耳を立てて騒ぎを始める。
その時、どこからかあの楽器の弦が大きくはじかれたような音が響いた。その音の振動が消える前にザッと雨が降る出す音に包まれる。まだ夜も早い時間なので外にいる人々があわてて走り出すような気配がした。この宿屋の一階の食堂にも雨宿りに来たらしい人々が立て続けに来店しているのが声や物音からわかる。
「急にきたな」
「おおい、何か拭くものはないか」
「また来やがったのか。今度は何もないといいが」
「すごい降りだよ」
「誰か、様子見てこいよ」
「冗談じゃねぇ」
安い部屋だからか階下の人々の声が切れ切れながらしっかりと聞こえてくる。それを聞くともなく聞いていたが、ただ雨に降られただけの会話にしては少し妙だ。
「今の音、さっそくですがアレが来ているようです」
「え? 何ですか?」
シハルは無言でドアの方を見る。その視線の意味をはかりかねたのか腑に落ちない表情のままリシャルドはドアノブに手をかけて引いた。するとドアの向こうに立てかけてあった何かが倒れるような音がする。見なくとも気配でわかる。あの楽器だ。
「おや、僕のギタアがある。不思議ですね。部屋に置いてきたんですよ。おかしいな。僕の勘違いでここまで持ってきたんでしたっけ」
リシャルドがここに来たとき、片手にチーズがのった大皿、もう一方の手にカップ二つと葡萄酒の瓶を器用に持って現れた。楽器を持って来られるはずがない。
リシャルドはそのまま楽器を部屋に引きいれた。雨の音がより激しくなる。シハルはじっと楽器を見つめた。
「ひとりぼっちでさみしくなっちゃったんでしょうか」
ヴァルダがフンッと小馬鹿にしたように鼻息をもらす。
「シハルさん、どうですか。何か感じますか?」
敵意しか感じない。ヴァルダのように口がないので物理的には話しかけてはこないが、こちらを害そうとしているのは容易に理解できた。言葉ではないイメージで害意がダイレクトに突き刺さってくる。
なぜ女を殺したいのか。敵意以外の何のイメージも伝わってこない。言葉ではないが、言葉に直すとすれば「殺す、殺す」と終わりなくつぶやいているような状態だ。
うるさいがヴァルダとは違ったうるささである。ヴァルダは「黙れ」といえばたまには聞くこともあるし、機嫌を損ねるとむしろ黙っている。だがこの楽器に「黙れ」は通用しそうにない。夜通しこの敵意にさらされていたら頭がおかしくなりそうだ。シハルは楽器自身から何かを探る方法を早々にあきらめた。
結局、声を聞いても正体も何もわからないわけだ。それには少しがっかりする。世の中には理屈の通用しないものがあることは感覚的にわかっていたが、それを目の当たりにするとなんだか承服しかねる。
どういう由来の物でなぜ女を殺めるのか。はっきりとした答えがあればすっきりするのだが、よく考えればそういうことがはっきりとわかるものの方が少ないのである。
シハルが村で神に仕えていたときも、何だかわからないが邪悪な気がするので処分してくれとか、由来はわからないが気味が悪いので封じてくれといったいわくつきの物品を預かることも多々あった。あの村では村の神の息がかかったもの以外で力の強いものはすべて邪悪であると判断されるので非常にわかりやすい。ただ神の名のもとに封じるなり打ち壊すなりすればいいのだ。シハルが何かを考える必要などなかった。
「うーん」
シハルは額の紋様の辺りに触れる。しばらくリシャルドの恋人としてふるまいどんな不幸に見舞われるのか様子を見るほかないだろう。正体はわからなくとも何か対策法はあるのかもしれない。
「そういえば被害に遭われた女性はみんなリシャルドさんがそばにいないときに亡くなったんでしたよね」
「ええ、そうなんです。だから何があったのかまったくわからないんですよ」
「では、リシャルドさんから離れなければよいかもしれませんね」
「しかしいくら恋人同士だからといって四六時中行動をともにするのは現実的ではないですよ」
それはもっともである。もっと実現可能な対策を見つけ出さなければならない。
雨が強くなってきた。寝るだけという態の部屋に窓はない。シハルは寝台の端の壁際に寄ってみた。叩きつけるような豪雨が壁板一枚向こうに感じられる。体を動かすと、くくりつけてあるヴァルダの手足がぷらぷらと揺れた。
「逆にリシャルドさんの体にあの楽器をくくりつけて行動したらどうでしょう」
「それは……さすがに重いのですが」
確かに。ヴァルダも子犬サイズとはいえずっとこのままだと考えると不自由である。どうしたものかと首をひねっていたそのとき、どこかでひどい雷鳴がとどろいた。建物が軽く揺れるほどの大きさである。
「落ちたんでしょうか。すごい音でしたね」
リシャルドも大きく目を見開いてシハルを見た。
「それにこの雨の量は尋常ではないです」
シハルの村であれば、神の力でなんとかしろと村人が駆けこんでくるほどの事態である。そういえば宿中が比較的静かだ。この村ではこの規模の大雨はよくある事なのか。
「階下に様子を見に行ってみましょうか」
リシャルドがいうのでシハルはうなずいた。
「このままだ」
すかさずヴァルダがシハルに命じる。腹にくくりつけたままにしろというのだろう。
「はいはい」
シハルは腹にくっついているヴァルダの体をぽんぽんと軽く叩く。
一階の食堂には大勢の客がいた。宿の客たちが大雨に不安になりシハルたち同様に降りてきたのかもしれないが、中には雨に降られて駆け込んできたらしき町の住人たちもいる。みな食事というよりは、酒を飲みつつ雨の音に耳をすませているかのように小声で話していた。
「さっきは葡萄酒をありがとうございました。すごい雨ですね」
リシャルドは洗い終わった皿を拭いている大柄な男に声をかけた。この人が店主だろうか。
「いや、こちらこそ。ずいぶん分け前をもらっちまった。まぁ、座んな」
場所を貸しただけであの投げ銭の二割をもらったというなら機嫌も良くなるだろう。男は拭き終えた皿を棚にしまうと、シハルを見た。
「僕の恋人です」
すかさずリシャルドがシハルを紹介してくれるが、店主らしき男は不思議そうな顔のままだ。たぶんシハルを男性だと思っている。式服で長身、秘密裏に兄の代わりとして躾けられてきたシハルをすぐに女性だと気づく人は少ない。リシャルドの方がめずらしいのだ。
「あんたも座んな」
まだ腑に落ちない顔のままだが、シハルにも席をすすめてくれる。リシャルドが慣れた様子で聞いたこともない長い名前の何かを注文した。飲み物だろうか。
「いい酒を頼むじゃねぇか。さすが景気がいいね。おまけしとくよ」
言いながらシハルの前にチーズを盛った小皿を出してくれる。
「ハムでチーズを巻くのが好きなんですよね。ハムもたのみましょう」
リシャルドが追加でハムをたのんでくれる。さっそくシハルが手をつけようとしたところ、また雷鳴がとどろいた。店内がわずかにざわつく。
「雨がなぁ、どうにもならないんだよ」
男が大きくため息をつきなら、琥珀色の酒が入ったグラスをリシャルドとシハルの前に置いた。
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