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第3部

第2話「ルシアが助けを求める顛末」

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 五月七日、ぼくが五十年後の東京という異世界で目覚めてからちょうど一年が過ぎた。

 その日も朝からレダの店『キャッシー』は客がいっぱい。白いボディケージを着た若くて綺麗な女たちが二階席のギャラリーを歩き回り、黒いボディケージのキャストたちとそこかしこで交わる。

 ギャラリー北側のブースは巨大な真珠貝の形をしたベッドになっていて、客のルナが十二歳のセイラを抱いて、ぼくは二人の割れ目に交互に巨根を沈めて突き下ろす。十歳のミサと十一歳のハルカがぼくの両脇に抱きついて、乳首をつるつる舐める。ふたなりの女のミリアがぼくのお尻にペニスを挿入して、腰をしゃくりあげてぼくの胎内を衝く。少女と女たちは有線で感覚をリンクさせ、五人が同時にぼくの陰茎とお尻を楽しむ。ぼくは全方位から女の肉に圧搾されて、されるがまま快楽に身を委ねて前後に揺れる。

「あーっ、リオ……奥に、あたる……」とルナが喘ぐ。
「こうするのと、こーするの、どっちがきもちいい?」と腰の回転を変えながら訊く。
「ぐうっ、あっ、それ……それそれ、あーきもちいい、かたぁい」

 ルナが開いた股間をぼくにこすりつけるように上下にスナップさせる。ミリアがぼくを突きながら切ない声を漏らし、ブルブル震えてリズムを崩す。ぼくは陰茎を引き抜き、セイラに挿れる。十一インチの陰茎は半分ちょっとで限界に達し、突き上げるたびに有線したルナとミリアが「おっきい、おっきい」と悲鳴をあげる。

 * * *

 ぼくたちは三ヶ月前にエゼキエルの隠しスタジオを出た。二ヶ月以上もエゼキエルに匿ってもらったけれど、警察も治安維持軍もぼくたちの追跡を突然中止したのだから、隠れ家に居座り続けるのもきまりが悪い。

 ユリアとエレナの口利きで、サギノミヤにあるレダの店で、いわゆるキャストとしてお世話になることになった。飲み物を作ったり清掃したりするようなスタッフではなく、二階のギャラリーで限られた有料会員の客とセックスするのがお仕事だ。ユリアとエレナは慣れた仕事だけど、ライラは初めてなのに一人でギャラリーを歩き回り、積極的に客に声をかけていく。三日くらいで他のキャストの女たちとも馴染んで、ぼくにはわからない女子トークで盛り上がっている。

 以前、イスカリオテのメンバーと接触するために体験入店したことがあるから、何をするかはわかっていたけれど、ほんの数時間体験するのと、毎日朝から晩までシフトでローテーションしながら無数の女とにゅるにゅる、ぬちゅぬちゅ乱交を繰り返すのは全然違って、途方もなくハードな仕事だと実感した。シフトは自分で自由に時間を入れられるけれど、なるべく長く働かないとお金も稼げない。

 高校時代までは親の金で好きなものを買って飲み食いして、五十年後の東京で目覚めてからルツのメンバーとして睡眠薬売買の泡銭あぶくぜにに慣れきったぼくにとって、ほんの千クレジットを稼ぐため何人もの女と別け隔てなくファックするのは凄まじい凋落に違いなかった。
 ただ、少なくともぼくはセックスが好きな方だったし、超高級店のレダの店を訪れる上客に嫌な女はいないのが救い。みんなワンオフの高級バイオユニットで、完璧な女ばかりだったから、ぼくは毎日朝から日勤組と一緒に店に出て、夜勤組が上がるまで積極的に客を取る。ユリアが数えていたのだけど、この三ヶ月で七百人以上の女と交わったらしい。具体的な人数を聞くとおそろしくなる。

 セイラ、ハルカ、ミサの少女三人は、ぼくたちがエゼキエルの隠れ家を出るときに、連絡係のイゴールと交渉して安価で引き取った。俗悪なユタニのラックレスと違って、エロいけれどフェミニンでキラキラしたレダの店と美しいキャストたちは、少女三人の眼にはファッションの延長線に映ったのか、ギャラリーに出たいと言いだした。

 まだ幼いセイラたちをショーやサービスに使うことに難色を示したレダだったが、三人が実際にギャラリーに出ると、リザリアでキマった未熟な少女たちの生身は意外にも女たちの人気を呼び、レダは喜んでギャラを積んできた。少女たちはぼくについて回って、客の女が望めばぼくとファックして有線し、小さな生膣でサイズオーバーの巨根を受け入れる未体験ゾーンを提供する。一度公安が嗅ぎつけたけれど、レダが賄賂を握らせて追い払った。低俗な風俗店と違って、レダの店は上流の市民も常連に抱える聖域だ。

 * * *

 ぐったりしたルナの身体をミサとハルカが舐めるのを眺めながら、ぼくを跨いだミリアを突き上げる。ふたなりの女は陰茎はあるけど陰嚢が無いモデルがほとんどで、膣に挿入すると勃起したペニスから透明の体液が溢れ出す。ミリアの子宮をぼくが突き、ミリアのペニスをセイラが飲み込む。ルナの乳首を愛撫する快感がミリアにも伝わり、ふたりとも喘ぐことを忘れて身体を引き攣らせる。

「そろそろ……時間、だね、あっあっあっあン、すごい密度だよ、リオ、マジでセクターいっ、いち、あっ、イクっ……」
「ぼくも、ぼくもイク、出っ、あぐっ」

 ミリアの身体を突き上げて、胎内に精を注ぐ。持ち上げた腰からダラダラと溢れた精液が流れ落ちる。天井からぶら下がるモニタにフリータイムの表示が踊る。これが出たら五分でシャワーを浴びて、五分で別の客を取る合図だけど、みんなあんまり守っていない。

 射精が収まるとミリアから引き抜く。セイラとミサが陰茎をしゃぶる。ぼくは起き上がったルナとキスをして、濡れた割れ目に指を出し入れする。

「ぼくたちシャワー浴びに行くね、またしようね」
「ああ、リオ……あんた最高だったよ、次はいつが空いてるの?」
「今週はもう埋まってるから、来週かな。スタッフに聞いてみて」

 そう言って、ぼくたちは二人に手を振ってブースを後にする。中央のバーカウンターの脇を通るとき、常連のロアンヌがぼくの手首を掴み、勃起した陰茎をちゅるりと飲み込んで、じゅるじゅると卑しい音を立てて啜る。「ミリアの味がするね」と言ってくすくす笑い、手を振って離れていく。ぼくたちは時間毎に客の指名が入っている。ぼくの今週の予約はいっぱい。

 ギャラリーを出て、キャスト用のシャワーボックスにセイラたちと一緒に入る。狭いボックス内で少女三人とひしめき合ってシャワーを浴びる。体液を洗い流して、こんどは乾燥。ボックスの下から風が噴き出し、水滴を吹き飛ばして天井へ巻き上げる。ボックスのアクリル板をライラがノックする。何か言っているけど聞こえない。ライラは階下の楽屋を指差す。ぼくは親指を立てる。

 シャワーボックスから出て、薄いガウンを羽織って階段を降りる。楽屋に入ると、褐色の肌に黒いボディスーツを着たルシアの後ろ姿が飛び込んできた。ユリアとなにか喋っている。ライラとエレナがソファに座り、紫の大きなスカーフを肩にかけたレダが杖をついてぼくに視線を向ける。ルシアが振り返る。

「ルシア、どうしたの?」
「リオ! 大変だよ、スタジオが襲われたんだ」
「スタジオって、ぼくたちが匿われてた隠れ家?」
「そう、イスカリオテのチンピラが武装して襲ってきた。イゴールが怪我をしていま闇医者のところだよ。あいつら、リオを探してる」
「イゴールは無事なの?」
「怪我はたいしたことないよ。奴らに捕まって、リオとライラの行き先を尋問されたんだ。イゴールはネリマに行ったって嘘ついたんだけど、こっからそう遠くないからみつかっちまうよ」

 レダがボディケージの女たちの間を歩いて、丸椅子に腰掛ける。ネオスポラを咥えると、裸の女が火を点ける。

「モナリザたちはSKF狩りを始めてるみたいだね」とレダが言う。
「SKF? ぼくは兵隊ではありませんよ」
「リオはイ式だろ? 生まれながらにSKFさ。理由はわからないけど、モナリザはあんたたちを狙ってる。先週、デンバーとコーエン、ツェムナヤ・ドリナでSKFらしき男女が四人、イスカリオテの武装集団に殺された。軍隊から逃亡した奴だけでなく、退役した奴でさえ手にかけてる。見境なく襲って、アンタたちとのつながりを血眼で追いかけてるね」
「なんでアタシたちが狙われるのさ」とライラが不機嫌そうに言う。
「知らないよ、漬物にして食べるわけじゃなさそうだ。イスカリオテはエゼキエルと大規模な抗争を始めていて、ANP通信がしきりに報道してるね。そんな危険な中、その子は恩義のあるアンタにそのことを知らせにきたんだよ」
「ルシアは一人で来たの?」とぼくが訊く。ルシアは頷く。
「あんたたちだけじゃなくて、その子の身も危険だよ。どこかに隠れな。こんな都心が近いところじゃなくて、ずっと田舎のセクターエッジに」
「だけど、レダ、ぼくたち指名が……」
「そんなこと気にしてる場合かね。リオ、あんたも男だろ。ライラとルシアを守ってやりな」
「勿論です」
「いい子だね」
「セイラたちは無関係です。ここに置いてもらってもいいですか?」
「構わないよ、ウチの目玉キャストだからね、アンタたちの分もうんと働いてもらうよ。それにあの人形、レピタと言ったかね。あの子は足手まといになるから置いて行くといい。ユリア、エレナ、あんたたちはリオのパートナーだろ、ついていきな」
「言われなくても」とユリアが答える。
「レダ……ぼくたちは車で」
「行き先は教えないでおくれ。生きて帰れたらまた店に来な」

 そう言ってレダはネオスポラの火を消す。灰皿から電脳煙草の燃えさしが煙を一筋ゆらりと立てる。杖をついて立ち上がる。ぼくはレダを抱きしめる。
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