上 下
60 / 109
第2部

第20話「予定外の取引場所にヴィクトールが苛立つ顛末」

しおりを挟む
 降り積もった雪がネオンカラーを反射し、夜のドールストリートを極彩色に彩る。その景色を見下ろしながら、窓際のベッドでサチを犯し続ける。
 電脳セックスは不思議なもので、快楽だけでなく、すべての感覚を共有するから、ぼくはサチをみつめながら、同時に自分自身をみつめていて、自分の喘ぎ声が、まるで他人の声にきこえて、豊満な乳房がピストンに揺れるのを感じ、子宮を突くたびに感じたことのない快感が衝撃波のように全身に響く。

「あっ、あっ、あっ、サチ……、また、イクっ」
「いいよ、出して、リオ……我慢しないで、あたしの中に、あっ、ぐっ」
「出るっ、くはーっ」

 びじゅーっ、びじゅーっ、びじゅーっ、精を噴射する感覚とそれを受け止める感覚が同時に殺到し、同期したサチはつられて絶頂する。もう四時間以上、休みなく愚行を繰り返し、溢れた精液がシーツの上に大きな水たまりを作って、突くたびにちゃぷちゃぷ、ぐちょぐちょと爛れた音を響かせ、映り込んだネオンの造形が乱暴に揺れる。
 ぼくの精液の匂いに混じって、サチの身体からの甘い香りが漂う。

「ねえ、サチ……これでも、ハルトが好き?」
「いまは……リオが、好きだよ」
「いまだけ?」
「いま……だけに、して……」
「サチ、あいしてる」
「あたしも、あいしてる……リオ、キスして」

 サチがぼくを抱き寄せる。舌を絡め合う。お互いの舌をお互いの唇に出し入れする。セックスするみたいに、ちゅるちゅる、くちゃくちゃ。抱き合ったまま濡れたシーツの上を転がって、上下を入れ替わる。
 下からサチを突き上げる。サチの乳房を両手で包んで、乳首を指先で摘む。サチもぼくの乳首を摘む。乳首が二重にきもちよくて、お互い肩を震わせる。

「リオ、アンタあたしがヤった中で、一番きもちいい男だよ」
「クスリのお陰?」
「ラックレスでファックしたときから、あんたのちんぽみてると子宮が疼くんだ。あんときから、リオのことが頭から離れないよ」
「ぼくは、もっと前からだよ」
「もっと前?」
「コクーンで襲撃失敗してハルトが撃たれたとき、ヌクイのデータをコピーするために、サチが直に有線したでしょ」
「そうだっけ?」
「あれから、サチの……ことを、意識すっ、するようになって……」
「あっ、あっ、いっ、リオ、我慢しないで」

 再びぼくはサチに精を噴射する。溢れた精液が股間からお腹に流れる。サチの膣がぼくの陰茎で乳搾りするように蠕動する。
 ネムやライラ、ユリアたちのような圧迫の快感じゃなくて、サチはぼくを吸い尽くそうと吸引するサキュバスのような女だから、ぼくは短い間隔でなんどもなんども絶頂する。サチにならすべて絞り尽くされても構わない。

 * * *

「デンバーじゃねえの!?」

 電脳通信するヴィクトールが大声を上げる。
 ぼくはサチの車の運転席でバイザーをかけて、交渉の結果を伝える。車は自動運転のまま、止まない雪のバイパスをゲリラのキャンプに向かって飛ぶ。助手席のライラはタブレットに眼を落として、教会のマップをぐるぐる回す。後部座席のサチは朝までぼくとセックスに溺れて、ヘトヘトに疲れ果てて、寝息を立てている。

「デンバーが遠いから、エンライ本社近くのユリシナ教会を指定されたんだ。普通の取引なのにゴネると怪しまれちゃうよ」
「教会? どのへん?」
「いま、マップ送る。はい」
「エンライビルの隣じゃん」
「そう言ったよ」
「建物の外で取引するの? それとも中?」
「それは聞いてない」

 ライラが顔を上げる。タブレットをぼくに向ける。教会周辺の地図は、ごちゃごちゃした貧民街と狭い一方通行だらけの道ばかり。五十年も経ってるのに、東京の道は何も変わっていない。

「教会は問題ないけど、万が一揉めたら、逃げるの難しいね」とライラがぼやく。
「揉めずに取引できればいいんだけど」
「危ない取引だから、ハ式の二人を連れてきたほうがいいね。居るだけで相手も撃つの躊躇うから」
「ベツとボリス?」
「そう、アタシとリオはまた狙撃でサポート」

 またあの狙撃の緊張を思い出す。車が交差点右折待ちで停車する。大雪でも車通りは変わらない。
 ほんの半年前まで発表会で弾く曲で悩んでいたのに、いまは対物狙撃銃を構えて凍てつく空気の中、岩のように固まっていなければならないあの鬱々とした時間のことを悩んでいる。

 映画やアニメやゲームと違って、実際の銃は恐ろしく重いし、撃ったときの爆音も衝撃もすごいし、硝煙の臭いもキツくて全然かっこいいものではなかった。初めて銃を撃ったときはドローンを撃墜したけれど、二度目は人を殺した。
 あっさりと人の命を奪ったことよりも、それだけ簡単に自分も殺されるかもしれないという事実に気づいて、心底畏れた。できれば銃なんか握りたくない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

処理中です...