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第2部

第7話「ライラが逃げ込んでくる顛末」

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「アンタがリオ?」

 不意に声をかけられて跳ね起きる。知らない女がベッド脇に立っている。気配がなかった。

 紐状のボディスーツを着た球体関節人形のような美しい女が、黒いバイザーを脱いでベッドに投げる。アッシュグレーの髪がふわりと甘い芳香をく。
 紐状のチューブブラの胸元の紐を解いて、乳房を顕にする。テディを脱ぎ捨てる。ハイソックスだけになった女はベッドを這って、ぼくの身体の上に覆いかぶさる。クラブで乱交してから勃起が収まらない陰茎に舌を這わせる。

「誰?」
「アタシ、ライラって言うの」
「……ネムの?」
「そう、元恋人」
「どうして、ここに……」
「ここ、アタシん家なんだけど」
「ライラ、ぼくは……はあっ、はーっ」

 みちゅるるるっとハッキリ濡れた音を立てて、ライラのつるつるの割れ目がぼくの陰茎を飲み込んでしまう。下腹部に描かれた淫紋いんもんのデジタルタトゥーはネムのものと同じデザインで、膣部分が拡張し、子宮部分を押し上げるようにモーフィングする。左右に開いた卵巣の翼が、鱗粉を散らすエフェクトではばたき、白い肌を茜色に染める。
 恍惚の表情でぼくを見下ろすライラの口元から、ネムと同じ長い犬歯が覗く。

「はあーっ、あっ、フェラーレのちんぽって……こんなにスゲーんだ」
「ぼくのこと、知ってるの?」
「ネム経由でオンラインセックスしたよ、言ったじゃん」
「そうだっけ?」
「ユリアも、あたしにキャストしてくれるから、リオのことは、よく知ってる……あーっ、硬い……」
「ユリアも知ってるの?」
「あんた、ボリスより性欲すごいよね? キャンプの女達を、まとめて……一人で、めっ、あっ、面倒みてるじゃん」
「ライラ……きもちいい……」
「アハハ、なに泣いてんのさ」
「ネムに、そっくりだよ」
「あたしのヴァギナ、ネムと同じフェラーレのワンオフだから、同じじゃないけどね……あん」

 ぼくはライラを抱き寄せて舌を絡め、リズムをあわせて突き上げる。無毛の股間がぶつかりあう、ぶちゃっ、ぶちゃっ、という卑猥な音が寝室の壁に反響する。
 丸くて大きめの子宮頸しきゅうけいにぶつかるたび、肉厚な膣がぼくをぎゅっと抱きしめる。リズムを無視して、めちゃくちゃに突き上げる。

「あっ、あっ、あっ、ひっ、リオ、すごっ……、くっ、くは……待って、まっ、まってまって」
 ぼくはピストンの回転を落とす。代わりに先端から根元までの大きなストロークで、ライラのヴァギナを満遍なく味わう。
「あー、ライラ……、柔らかい」
「はーっ、はーっ、ふーっ、リオ……」
「あーっ、いくっ、ネム……」

 ライラの胎内に今日一番の大量射精。びじゅーっ、びじゅーっ、びじゅーっ、と非常識な量を噴射して、ぼくたちの股間に精液がドバっと溢れる。
 ライラの子宮頸がぎゅっと引き攣り、アッシュグレーの髪を振り乱し、ネムとは違う薄い色の瞳が潤んで、冷たくぼくをみつめる。絶頂にガクガク震える間も、ぼくから目を逸らさない。瞬きもしない。突き上げた股間から、泡を吹いた精液がドロリと腹の上を流れて、ぼくのみぞおちに溜まる。
 ライラが力尽きて、ぼくの胸に倒れ込む。豊満な乳房をおしつける。

「あたしをネムだと思ってファックしてるの?」
「だって、ライラに……面影が……」
「マジでネムのこと、愛してたんだね」
「うん……」
「あたしまで好きになったら、だめだよ」
「手遅れかも……」
「だーめだって」
「ライラ、もっとしよう……」

 ぼくはライラを抱きしめて、精液で満たされた膣を突き上げる。キスをする。舌を絡め合い、唇を擦り合わせる。
 熟れたイチゴにミルクと砂糖をまぶして潰したような味と香り。右目がわずかに大きく、左目が眠い非対称の顔は、ダイバーネットで知り合った造顔師のロアンヌが「もともとの顔のまま」だと言っていた。ネムと同じ冷たい目つきが、黒ずんだハートに穿たれた穴にフィットする。大勢の女と日夜セックスに励んでも満たされなかった心と身体に、ライラの温もりが染み込んでくる。

「は……、あっあっあっうっ……ね、ねえ、リオ」
「な……に?」
「ネムと、おんなじこと、してやろうか」
「どんなこと?」
「これだよ」

 ライラが腰を浮かす。陰茎が抜けそうになって、ライラがゆっくり腰を沈める。子宮頸が亀頭に押し付けられ、ぐーっと圧迫される。痛いくらい強く、全体重がのしかかり、ぬりゅっと子宮頸が先端を飲み込んでしまう。

「あーっ、ライラ……すご……、あ……」
「はあーっ、は……あ……、あんた、ちんぽ、デカイよ……。初めて挿れたけど、ヤバイね、これ、また、あーまた、いき、いくっ」

 ライラがガクガク痙攣する。子宮頸が収縮して、咥えた陰茎をずるりと飲み込むように蠕動する。子宮深く引っ張られて、得も言われぬコリコリした子宮内膜の感触に圧迫される。
 ライラの下腹部のデジタルタトゥーも子宮口が開き、ぼくを最深部まで迎え入れる形にぬるりと変形する。意外と狭い。卵程度のサイズの子宮が拳大に拡張されて、ビクン、ビクン、と脈打つ。その鼓動を感じながら、恍惚の眼差しでぼくをみつめるライラの瞳に吸い込まれる。

「う……、はぁ、はぁ、マジで、ネムって……こんなデカイの挿れて」
「ライラ……きもちい……」
「やっ、やばっ、また……、あーっ、いくっ、あっ」

 さっきよりも激しく膣と子宮が蠕動して、硬く締め付ける子宮頸がぼくを咥えて、別の生き物みたいにちゅっかちゅっかと吸い上げる。へその上まで突き上げられた淫紋タトゥーが鱗粉を散らす。
 きもちよすぎて、がまんできない。
 ライラの子宮に直接精を噴射する。子宮を膨らまして、逆流した精液が結ばれた肉から、ぶじゃっ、ぶじゃっ、と下品な音を立てて噴き出す。ライラはぼくから目を逸らさない。瞬きもせず、快感に溢れた涙が頬を伝う。

 ライラが一瞬白目を剥いて、ぼくの胸に崩れ落ちる。つながったまま、ぶるぶる震える。汗の匂いが混じったライラのフェロモンが蔓延する。
 外から挿し込むオレンジの光が薄暗い天井に流れる。ライラを抱きしめたまま、女という最高のドラッグに耽溺する。
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