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第三章 ずっとあなたと友達でいたい

タイムリミット(1)

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「柊くん……あの……」
「……ああ」

 柊は息が荒く、辛そうだった。凶悪だと言っていいほど、どっしりしたものが小春の腹でじっと暴れるのを耐えている。

 最初の十七日、小春はよく受け入れられたと思う。だってあの時、小春は初めてだったのだ。長さは筆箱に入れる定規くらいの長さだろうか。本当にこれが自分の中に入っていたのかと、小春は戦慄した。

 このまま許してしまっても、大丈夫だろうか。

 しかしここで駄目と言うのは柊に悪いと思ってしまう。

 ――今、何時なんだろう。

 恋人ごっこを始めてから、それなりに時間は経っているはずだ。

 小春は時計を確認したかった。体感的には二十三時を過ぎているように感じるが、実際どうなのか。ベッドで横になった状態では見えないまま、小春は選択を迫られた。

「……う」

 苦々しく呻く柊は、小春の返答を待っている。

「今って、何時かな?」
「ああ……十一時半だな。眠いか?」

 柊は小春の頭上を見たらしい。そこに時計があったのだろう。

「ううん、気になっただけ」

 残り三十分。ここでできないと答えたら、どうなるのだろうか。きっと柊は、小春の前で自慰をしないだろう。どこか別の……トイレや浴室に移動して済ませるはずだ。それはどれくらいかかるだろう。日付が変わる前に帰ってくるだろうか。もし帰ってこなかったら、小春は一人きりで十七日の朝に巻き戻ることになるかもしれない。帰ってきたとしても、柊はもうベッドに入らない気がした。

 小春は朝に巻き戻ってしまうギリギリまで柊のそばにいたかった。

 もしかすると、柊はこの恋愛ごっこをやめるつもりで小春の腹にそれを乗せたのかもしれない。そばにいる方法ばかり考えて、大事な部分を見逃していた。

 だったら「やっぱり、やめておこうか」と言うべきだ。分かっている。それなのに言えなかった。

 気づいたら朝に戻っていて、柊はまた別の行動を取っているかもしれないのだ。

「……いいよ」
「大丈夫か?」
「……こういう機会でもない限り、無縁だと思うから」
「無縁って、そんなことはないだろ。小春なら自然と誰かと付き合って結婚しそうだ」
「難易度が高いよ」

 小春は同性の友達を作ることすら難しかった。

 柊と友達になった後、ちらほらと友人らしき存在はできた小春だったが、大学を卒業してからはパタリと連絡が途絶えた。薄々気づいてはいたが、中途半端な時期に小春に近づいてきたのはたぶん柊との繋がりを持つためだ。柊が魅力的なのだから、それは仕方ないと思う。とはいえ小春は、柊の個人的な情報を本人がいない場で語ることはしなかった。普段は押しに弱いが、大事な友達に関係することとなれば断れる。彼女たちもこれ以上、小春と繋がっていても意味がないと思ったのだろう。

 そのことを柊に伝えるつもりはない。近づいてきた同性の子と関わると決めたのは小春だし、彼女たちの目的が柊だとしてもそこから仲良くなることだってできたはずだ。

「無理だって思えばいつでも言ってくれ」

 柊は安心したようだった。小春の唇に吸いつき、パジャマのボタンを上から一個一個外していく。

「やっぱり、何も身に着けてなかったか」
「……だめだった?」

 ボタンをすべて外され、小春の胸が露わになる。肌着すら着ていなかった。

「だめじゃないけど……抱きしめた時、がさ」

 向かい合って抱きしめた時、小春が柊の下半身を意識したように、彼も胸の膨らみに意識が向いていたのだろう。

「あ……気づかなかった」
「小春のことだから、そうだろうなと思ったよ」

 柊は小春の脇腹を躊躇いがちに掴んだ。

「今から小春の体、たくさん触るけど……大丈夫?」
「う、ん」
「なら続けるから」

 小春はすぐに直接的な行為が始まると思っていた。服をすべて脱がされて、秘裂に柊の劣情が埋まってしまうのだと想像していたのだ。前戯ならキスだけでも充分だ。柊だって、余裕がないはずだから。

 なのに柊は小春の胸やお腹、腰を撫でた。途中で嫌がる可能性を考えているのか、焦れったいくらい乳房をふわふわと擦られる。

 小春は小さな鈴の音のように喉を鳴らした。下腹に柊の屹立が当たっているからか、秘所がじんわりと熱くなる。

「んっんん……っ」
「小春……好きだよ」
「柊……く……ンぅ」

 この調子では挿入する前に、朝に戻ってしまいそうだ。その場合、小春の育ってしまった性欲はどうなるのだろう。たぶん、くすぶったままだ。それも一人では処理できないほど、深く体に残るだろう。

「柊く……あ、あぅ……も、もう挿れていいよ」
「初めてなんだろ、ならまだ挿れない方がいい」
「ちょっと痛いくらいは平気だよ。それに柊くん、辛いでしょう?」
「だめだ。好きな人にそんなことできるわけないだろ」
「……でも、本当に好きな人でもないんだし。そこまでしなくても私は大丈夫だから」
「大丈夫なわけないだろ。俺は小春を便利に使いたいわけじゃない。時々、心配になる。いつか小春がとんでもないクズ男に引っかからないか……本当に、心配だ」
「そんなことにはならないと思うけど」
「だといいな」

 小春の下腹を圧迫していたものがようやく離れる。柊は四つん這いのまま数歩、下がった。頭は小春の胸の辺りに近づき、手はパジャマの上から小春の秘裂に触れる。

「ん――っ」
「挿入は小春がたくさん気持ちよくなってからしよう」
「あ、あぅう、んぃ……っ」

 胸の先端が柊にちゅっと吸われ、小春は息を荒くする。もう充分、蕩けてしまいそうなのに柊の手は小春の小さな膨らみを探し当て、いたわるようにさすった。ピリピリと敏感になった可哀想な部分は柊のせいでさらに辛くなる。もっと強く、潰してしまうくらい触れて欲しくなるのだ。

「小春、可愛い」
「う……うぁ……っン」

 その快感はイッてしまうほどではなかった。けれど、小春は声を抑えることはできないし、腰がふるふると震えてしまう。

「柊くん、ここまでしなくても……」
「何言ってるの、小春。まだ足りないよ。でもそんなに挿れたいなら……分かった」

 柊は小春が着ているパジャマもショーツもすべて脱がすと、両足を掴んで左右に広げる。

 部屋の明かりは消しているとはいえ、恥ずかしい体勢に小春は顔を背けて目を瞑った。もう挿入するのだろうか。まさか人生で二度、破瓜の痛みを経験することになるなんて――それも、同じ人に。小春はその時をじっと待った。

「……へ」

 そんな小春の秘所は何かに吸われた。途端、背筋に甘い痺れが走り、逃げ出しそうになる。

 目を開けて下半身を確認すると、小春の股に顔を埋めている柊の姿があった。

「な、何、あ、え……柊く……っ」

 羞恥のあまり、小春は気が動転して声が大きくなる。何をされたのか、すぐには理解できなかった。

「すぐに挿れたいなら、ちゃんと濡らさないと」
「ひっ――んぅう、あ、あぅ……は……ひぇ……」

 小春の股の間から、チロチロと水音がする。彼の手によって何度も擦られた小さな突起が、舌でなぶられていた。

「そんなところ……な、ねぇ……なめちゃ……ぅう……ンッ、あぅ、イ……く……」
「ん……じゃあ吸ってあげようか」
「へ? ……んぅう――~~ッ!」

 じゅるじゅると音を立てて突起を吸われた小春は、声にならない声をあげた。頭の中が一瞬で真っ白になる。は、は、と声を出しながら呼吸をしても、小春はイクのがとまらない。何故なら柊が吸うのをやめないからだ。

「や……やぁ……イッたの……イッた……柊くん……あ……ふぁ……っ」

 さらに強く吸われた小春は、弱々しい鳴き声をあげた。気持ちいいのと苦しいのが複雑に絡み合い、小春を悩ませる。柊の唇で優しく挟まれ、そのままちゅうちゅうと吸われ、切なく甘い快楽が腹の底に溜まっていく。あまりに強い刺激だ。くせになったらどうすればいいのだろう、と不安になるほど小春は感じていた。

「柊くんぅう……も、もう……いいって……ぅう……すごくヒリヒリするの。だから……あ、ちが、舐めないでぇ……」

 小春の小さな芽は、柊の唇に挟まれたまま舌先で弄られてしまう。そうしてすこし落ち着くと、また柊に吸われてしまうのだ。これほどイッているのに、小春の情欲は膨らみ続ける一方だった。弄ってもらえていない秘裂が熱く脈打っている。割れ目から液体が漏れ出ていないものの、その内側が潤っていることを小春は知っていた。それがあまりにも辛すぎて、涙が出そうになる。初めて柊とした時の記憶が鮮明に蘇っていた。膣壁の一番奥を抉られた時の心地のいい酩酊感。今の体は知らないはずなのに、腹の内側はきゅうきゅうと疼いている。

「小春、大丈夫?」

 大丈夫なわけがない。小春はどうにか首を横に振る。

「……ひぅ……下の方……つら……く、て……」
「こっち?」
「そ……そう……ンっ」

 未熟な秘裂に柊の指が触れた。恥ずかしくてたまらない場所なのに、早く欲しいと言わんばかりに肉の洞がドクドクと脈打っている。指で細い割れ目を押すと、小春の柔肌が小さく抵抗した。けれどその抵抗がなくなると、するりと柊を受け入れてしまう。

「……あ」
「痛い?」
「ううん、大丈夫……」

 小春が想像していた痛みはなかった。まだ指の先端が挿っただけだからだろう。それなのに、すごく気持ちがよかった。膣壁が柊の指に吸いつき、むにむにとうごめいている。

「……こんなに濡れてたら辛かっただろ、すこしかいた方がいいよな」
「えっ……――アアアっ」

 指がすりすりと浅い場所を撫でる。指先を前後に揺らしただけなのに、小春はたまらず喘いでいた。体の奥から蕩けた蜜がじわりとあふれ、柊の指をさらに汚してしまう。思わず腰をひきかけた小春だったが、柊は逃がさなかった。そのまま空気に触れてツンと尖った小さな芽に舌を這わせる。

「ひぅ……――っ! あ、あう、あ……だめ……どっちも、は……」

 足を閉じてしまいたい。けれどそんなことをしたら、柊の頭を太股で殴ってしまう。どうにか足を開いたまま耐えるが、小春はたちまち絶頂を迎えて泣きたくなる。たっぷりと潤っているのに、未熟な割れ目はどんどん柊の指を覚えていった。そのせいで広がった秘裂からはとろとろと蜜が漏れていく。

「小春は敏感だね。可愛い……吸いながらの方が、よく解れるよ」
「う……う……だめ……ここまでしなくていいよ……」
「俺はしたいから」
「う……あぁ――……」

 柊は小春の肉芽を吸いながら、緩慢な動作で指を動かした。

 小春の内側はぎゅうっと柊の指に強くすがりつく。もっと奥に来るよう促すように収縮を繰り返すこともあった。こんなに何度も絶頂を迎えていたら、体がもたない。今、何時だろう。そろそろ、朝に戻るはずだ。まだ三十分、経っていないのだろうか。時間を確認したかった。けれど小春は為す術なく柊の指と舌でイッてしまう。今の状態で朝に戻りたくない。こんなにも快楽を求め、ぐしゃぐしゃになっているのに満たされなかったら……小春は理性を保てそうになかった。
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