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お使い編
第2話 確認しました
しおりを挟むフェル村へと入っていくエルドとサイファ。
村というほど寂れているわけでもなくかと言って町ではない。
通りが整備されているのもあるが、商店や屋台などもあるからだ。
それなりに人通りもあるし、馬車も行き交っている。
中途半端に栄えている。
そういう印象を持ったエルドはサイファに問いかけた。
「サイファ、ここは村でいいと思います?」
「フェル村という名前なのだから村で良いだろ。
エルド、そろそろ目的地じゃないか?」
村の中心通りと言ってもいい道を進む1人と1頭は
瓶と六角形の形を模した木の看板を見つけた。
(ここがネルスラニーラさんの店か。看板からして薬と…アクセサリー?)
「じゃあ、サイファはここで待っていて下さい。」
「あぁ、オレじゃあ店の中に入れても苦労しそうだからな。行ってこいよ。」
入り口の側で寝るような姿勢で座り込むサイファを見て
ギィ…と木の扉を開けると、歓迎の声色で
「いらっしゃい、何をお求めかな?」
そこに居たのは素敵な女性だった。
目鼻立ちが整い、優しさが、落ち着いた雰囲気が
かの女性を語っていた。
若葉を思わせるような、ほんの少しだけ光を反射する薄緑色の髪。
ほっそりとした手足も彼女の美しさの一因だろう。
「貴方がネルスラニーラさんですか?
師匠のカーマに言われて参りました、エルドと申します。」
年上であろうエルフの女性に対して見た目の幼さにそぐわない挨拶をしたエルド。
少し驚いたような様子を見せたネルスラニーラ。
「あの子を師匠としているにしてはきちんとしたお弟子さんね。
お姉さん、ちょっとビックリしちゃったわ。」
「まぁ、あぁいう人ですから…。仕方ないですね。
それで、頼み事というのは?」
苦笑しながら、答えるエルドは用件を尋ねた。
そうね、先に済ませましょうと、言いながらエルドに椅子を出すネルスラニーラ。
「頼みというのは、森の様子がおかしいからそれの偵察とこれを採取してきて欲しいの。」
カウンターの上に出された本に描かれた絵には“玉石草(ぎょくせきそう)”と書かれていた。
「これは玉石草。咲き終わったら、夜にもう1度咲く花よ。その花弁を採ってきてほしいの。取る人によってその花弁の色が変わる特徴があるのよ。」
そう言って、カウンターの下から木箱を取り出すネルスラニーラ。
その中には緑や赤、黄色のクリスタルのように光るアクセサリーがあった。
「なんで採取する人によって色が変わるかは諸説あるけど、有力なのは2つ。玉石草がその人の好きな色を読み取るのではないか、もう1つはその人の魔力、魔法を使うときに使う源の色になるのではないかと言われているの。正解は未だに分かってないけどね。」
「珍しい草もあるんですね、初めて知りましたよ。そして、キレイですね。」
興味深そうに挿絵を見て、そして木箱のアクセサリーを顎に手を当てて眺めているエルド。
「もちろん、報酬は支払うわ。エルド君にね。何かは楽しみにしておいて。バラしちゃうと楽しみが減っちゃうでしょ?ちゃんと店先でお利口にしている従魔君の分もあるからね。」
ネルスラニーラはフフフっと、にこやかに少しイタズラっぽい笑みを浮かべ楽しそうにしている。
その笑顔を受けて報酬に期待を少しだけ寄せそうになるエルド。
(過度な期待は厳禁だな、アクセサリーを作って売買しているなら、その系統だろうな。サイファの分も用意してくれるみたいだし…)
と、少しだけ自分を戒めて、必要な情報を得ようと話を切り出した。
「分かりました。では、どこに生えているか、採取の仕方など教えて頂けますか?」
「採取の仕方は簡単なの。夜に咲いている花弁を千切るだけ。千切るというよりは折っていると感じるでしょうね。私は魔力を指に込めてやっているわ。たまに質がいい時があるの。常時じゃないのは先の原因の1つかもね。もしくはただ運がいいかのか。」
彼女の話を聞いて、エルドは考え込んだ。
自分もそのようにすべきと分かっているが、できれば質の良い物を渡したかったからだ。
「どれくらい込めればいいのでしょう?生活魔法ぐらいでいいのでしょうか?それとも…?」
「生活魔法より少ないぐらいでいいわ。試しに結構な量を指に込めてみたけど質がすごく向上するということはなかったわ。無駄というわけではないのでしょうけど、方法が確立されてないしねぇ。まぁ、良い物取れますようにっていうお祈りみたいなものかしら。」
「分かりました…。程々に込めながら採取してきます。それとこれの買い取りお願いできますか?手持ちがなくて…。」
と、申し訳なさそうな顔をしてフェル村で向かう道中で狩った魔物の毛皮や牙をカウンターの上に置いていくエルド。
キレイに洗われている牙や傷のない1枚ものの毛皮を見てネルスラニーラは
「あら、良い状態ね。これならちょっと上乗せできるわ。これだけ?まだあるかしら?」
「本当ですか!良かったです、まだまだあります。どれくらい出しましょうか?」
「そうね…。9ずつもらおうかしら。それで丁度10個ずつになるし。にしても、その魔道具はカーマがくれたのかしら?」
呆れた顔をしながら、エルドに尋ねると
「はい、昔行ったダンジョンで拾ったからやるって言われ、なんか血を塗りつけて魔力を流せてと言われ、ちなみに2度と外れないからと悪い顔して言われました。」
はぁ~、と深いため息をとあのバカ娘は…と零したネルスラニーラはエルドに忠告した。
「その手の魔道具は売り出されているのもあるのだけれど、腕輪型は貴重なの。それこそ、王族や貴族が欲しがる位には。あの子、そんなことも言ってなかったでしょう?」
「はい??そんなに貴重なんですか…。全く教えてもらっていませんでした…。」
(あんのバカ師匠、やりやがったな!!)
「まぁ、カーマだし。説明は二の次なんでしょうね。良い物を上げたかったんでしょう。エルド君のこと思ってね。だから、そんな顔をしないで頂戴、ね?」
知らず、不機嫌な不愉快な顔になっていたことを感じたエルドは
「申し訳ありません。人前でするような顔ではなかったですね。それに師匠なりの思いやりとして大切にします。」
「ありがとう。それで、その腕輪の説明はしてるかしら?カーマは?」
「はい。容量は程々に、時間経過は特になく、そこら中にあるものと…。」
2度目の溜息が深く溢れ出した。
「それはカーマには手に入れる機会は沢山あったでしょうけど、“普通は”そうではないわ。そこは理解しておいてね。普段はポーチか袋から出すように気をつけなさいね。」
「はい、分かりました。やっぱり、貴重だったんですね…。」
(この子も薄々は勘付いていたのね。)
少し不憫に思いつつも頭の回転は悪くないとそう判断したネルスラニーラ話を進めていく。
「はい、これがさっきの買い取り金額ね。知り合い価格も含めて金貨5枚。じゃあ、どこら辺に生えているか。そして、森の調査の件も含めて話を進めるわね?」
エルドは頷いて、話を聞いていくのだった。
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