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第2章︙魔法都市編
採集任務
しおりを挟む「一応ここが採集場所だけど……お前、本当にアンブロシアを探すつもりか?」
心配しかないというような表情でそう確認してくるレオンに、俺は胸を張って大きく頷いた。
「いーか、ぼーけんしゃというものは、ふかのーをかのーにするのだ!!」
「いや、違うだろ」
「チッチッ……レオンくん。きみはわかっておらんな。すこーしむずかしーにんむでも、おれにかかればちょちょいのちょいだ!!」
しかも今回は採集任務。てっきり討伐任務かと思ったが、どうやらここ魔法都市付近には結界のおかげで魔物があまりいないらしく、平和だとか。
漫画みたいに魔物の襲撃なんてものがあっても瞬殺できるほどの戦力があるらしいので、格好良く魔物を追い払って英雄に、なんてことは絶対にないんだと少し落ち込んだのは内緒だ。
まあ、平和でなによりということだな。
「そもそもアンブロシアなんて絶対にないだろ。神話にも傲慢の悪魔により食い尽くされたって書いてあったんだから」
「むむ……ごーまんのあくま……」
まさかだけど、あの俺たちを攻撃してきた悪者の親玉じゃないよな。
神話とかいうすごいものに、精霊さんたちにボコボコにされていたあの悪者が登場するなんて馬鹿な話があるわけないか!!
それにレオン曰く、神話は何千年も前の話らしいし、あり得ないあり得ない。
「ごーまんのあくま……なまえまでニセモノとか、もうダメダメだな」
「……何いってんだお前?」
とにかく、傲慢の悪魔に食い尽くされたかなんだか知らないけれど、俺には必殺技があるのだ。
「なんだ?突然本なんか出して」
「これはな、グリモアといって、かみさまとくべつせーのやつだ。なんでもわかるんだぞ」
俺はグリモアを開いてアンブロシアの載っているところを注視した。
極彩色の仄かに光り輝く透明な、中心に核のようなものがある不思議な樹の実がおそらくアンブロシアだろう。
問題はまだ存在するかしないかだが、俺は横に書いてある説明文を見て目を見開いた。
【大自然の秘宝】
魔力果実の一種。
摂取すると魔力量の大幅な増幅、質の向上が見込める。
また、稀に魔法属性が増えることがある。
千年前、精霊、悪魔などが乱獲したことにより現在では大幅に減少し伝説の果実となっている。
極限に魔力濃度が高まった場所でしか生成されないため、非常に希少価値が高く神の奇跡とも言われている。
………魔力が高まった所でしか生成されないって、もしかしてこれ、人工的に作れちゃう?
条件さえ整った環境なら生成される。生成されるのだ。
元の世界で野菜を作るとしたら水をあげ、陽の光を浴びせ、害虫を駆除し、様々な面での世話を欠かさずにしても、完璧な野菜というものができるのはあり得ない。
何処かしら歪んだりしてしまうものなのだ。遺伝子改良された品種なら話は別かもしれないが、普通の種で作るとどうしても少し形の歪んだ野菜になってしまう。
そんなところも含めて手作りした野菜はとても美味しいから別に支障はないが……
つまり、普通植物は育てるもので、生成されるものではないのだ。
育てるなんて考えもしなかったけど、まさか生み出せられるとは……これはやるしかないな!!
俺はニヤリと口角を上げてまたもやグリモアを開くと、やはりグリさんは期待を裏切らなかった。
【大自然の秘宝の生成条件】
アンブロシア周囲の魔力濃度が二千を上回る環境下であること。
温暖な気候、清浄な空間であること。
『奇跡』を与えること。
これは……いけるか?
魔力濃度はいいとして、清浄な空間?はどう選別していいか分からないな。
そして最後の条件である『奇跡』。
これはもうなにがなんだか分からないな。
「おい。さっきから本を覗き込んでブツブツ言ってるけど、どうした?まさか見つけるためにここ一帯更地にするとかなんて言わないよな。その従魔ならできそうだけどやめておいたほうが……」
「あんしんしろ。これからつくろーって、おもってただけだ」
「なんだ。なら良かっ………は!?」
何をそんなに驚いているんだ。多分探してもないなら作るしかないのは常識だろ。
「そんなことより、まりょくのーどって、なんだ?」
とりあえず今はアンブロシアを作れるのか作れないのかはっきりさせないとだな。
「あー、魔力濃度は、その空間にある魔力量の密度だな。例えば、俺の宿の部屋に漂う魔力の総量が百だとすると、俺の部屋の魔力濃度は百というようになるというわけだな……で?ナニを作るって?」
ふーん。なら植物の周りの魔力濃度が二千を超えればいいわけだ。
アンブロシアが現れる周辺だけ二千以上の魔力量で常時包めてあげればいいわけだな。
確か俺の魔力量は一万超えだから余裕だろう。
そして次の難関である、清浄な空間。
これはもう雰囲気で探すしかない……ま、清浄だっていうから、森の中でどこか綺麗そうな雰囲気の場所でも探すか!!
そして最後の奇跡。
………まあ、『奇跡は起こるものではない。起こすものだ』って誰か偉い人も言ってたし、これも大丈夫……かな?
「レオン。おれ、アンブロシアつくる!!だから……いまからたんけん、いくぞ!!」
「……さっきのは聞き間違いじゃなかったか。中々に意味のわからんことを言ってるけど……まあ、さすがのお前でも伝説の果実なんて作れないか。ほどほどでやめろよ」
まるで相手にしないかのようなレオンの態度。
今に見てろ。俺が華麗にアンブロシアを作って畏敬の目で見てくるようになるだろう。
そしてついでにあのムカつくギルド長のハイエルフから別館も貰ってやる!!
俺はおー!!とシルと一緒に拳を突き上げた。
「みず、よし!!おひさま、よし!!おはな、よし!!つちはやわらかい!よし!!」
暫く散策して、湖の畔にやってきた俺達はアンブロシアを生成する場所を決めた。
水もあり、日光もさんさんと浴びるこの場所は、まさに清浄って感じだろう。
シルも喜んでいるみたいだし、大丈夫な場所だと思うから、ここで生成することにした。
「ここでアンブロシアなんて生成できるわけないだろ。魔物が来たら一瞬で荒らされるに決まってる」
……ハッ!!確かにそれはありそう!!
「よっし!!きょーはここで、おとまりするぞ!」
俺はテントを出しながらレオンにそう告げた。
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いつも読んでくださりありがとうございます!
誤字っ……あったらご報告してくれたら嬉しいです……。面目ないですが宜しくお願いしますm(_ _)m
次の次の次にクロス視点の話に移りますので楽しみにしてくれると嬉しいです。
いつもありがとうございます!!
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