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第1章︙精霊編

傲慢の悪魔2

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傲慢の悪魔、アスモデウス。
原初の悪魔の一柱であり、原初の悪魔である七柱のなかでも上位の実力を誇る悪魔。


「わるものめ!!シルをとろーったって、おれがゆるさんぞ!!おまえなんてイチコロだからな!!」

「キャンッ!!」



……………なんだこれは。


いや、そもそも初対面なのに嫌われているのもそうだが、何故神話の中でしか出てこないような伝説の生き物がいるのだ。どうやらあの幼子を飼い主と定めているらしく、あの幼子には己を可愛く見せる反面、私には容赦なく威嚇してくるのだ。
それに守るとはなんだ。どう見ても幼子が守られている側だろう。大体アレを守る必要性が感じられない。

目の前の光景をうまく処理できないアスモデウスを尻目に、精霊達は着々とアクアの誘導により結界の内側に避難していく。


「ほら主!!結界の中でじっとしていてね!くれぐれも外へ出ようなんて思わないこと!」


「むむ!おれだってつよいぞ!!」


(………なんだ。自分からノコノコと出てきたではないか。頭が足りないのか?まあいい。あの生き物と精霊王さえ処理すれば、あとは魔族達が少しの間足止めしている間にあの幼子を拐ってやればいいことだ)

案外簡単に終わりそうだと考えていたアスモデウスがこちらへと向かってくる。


 
「ほら主!!中に入って!」

「おれだってたーかえるもん!まほうだって、いまのおれならやれるんだぞ!!」

「やれない!やれないから!!確かに主の魔法なら倒せるかもしれないけど、その頃には僕達も死んでるから!!」

「ええい、ごちゃごちゃと喚くな!!」

またもや女のほうの魔族が魔法を放ってきた。どうやらとても短気な性格をしているらしい。

「あんたの声のほうがうるさいわよ」

しかし、アクアの氷の壁により難なく防がれてしまったことをよりさらに火をつけてしまったらしい。

「雑魚のくせに、さっさと投降しなさい!!」

今度は魔法陣が形成され、巨大で真っ黒な炎がこちらに迫ってきた。
しかし、炎を選ぶなんて悪手だったな。俺は今さっき水魔法をマスターした男なのだよ。


「シル!主を守って!掠り傷一つないように慎重に守………ちょ、待って主!!」

「ウォーターハント!!」



……………フッ

どうやら今回は溺れることはなかったな。二度の失敗という言葉は俺の辞書に存在しない。
それにしても、俺の周囲だけ水が避けているからか、周りがよく見えない。全て水に覆われていて、かろうじてあの悪者達がいるのがわかるが何をしているのか分からないな。

「危な!!シルのお陰で主の魔法に手綱がついたのが幸いだったよ。また溺れてしまうんじゃないかって思ったけど、杞憂だったね」

「ちがーう!!シルじゃなくて、おれがやったの!!」

「キャンッ!」

「そんなことどうでもいいじゃない。そんなことよりあの魔族共、どうする?」


むむ……悪者の処遇を決めるなんてことはしたことがないな。しかし、悪いことをしたのだから罰は与えてやらないといけないし……


「………あ」

違うことを考えていたせいか魔法が解除されてしまった。

「ハァッ………ハァ……ふ、巫山戯るのも大概にしろ。年端もいかないガキのくせして盾突くな!!」


大人の俺に向かって年端のいかないガキだと?…………あら?あらあら?もしかしてお怒りモード?
俺の強力な攻撃にタジタジになってたくせによくそんな大口叩けるな。まあ、最強の俺に盾突く勇気だけは褒めてあげるぞ。

「そのガキにまけてんだぞ!バーカ!!」

俺は腕を組んでビシッと言い放つと、フードが取れて素顔を晒した悪者たちが顔を真っ赤にしてプルプル震えている。

「こ、この餓鬼がっ!!」

「死ね!!」


悪者が今度は魔法を使わないで直接飛びかかってくるが、クロスに難なくあしらわれる始末。
クロスは俺の契約精霊であり、偶に助手にもなる有能なやつだからな。こんな手下程度簡単に倒せて当たり前だ。

「……あのボスはなんでそらにいるんだ?もしかして、おれのつよさにおそれいったか!!」

「いや、多分主の魔法から逃れるために空中に避難したんじゃないかな?悪魔といえども主の魔法には手も足も出なさそうだし」

「つまり、おれにおそれいったってことか!!」

「うん?今の話聞いてた?」

それにしても部下を置いて自分だけ避難するなんて……なんて奴だ。流石は悪者を束ねる悪者。意地の悪さに磨きがかかっているな。

「そんな軟な攻撃じゃ意味がないよ。相手は腐っても精霊なんだからね。それも精霊の中で頂点に位置する者達なのだから、殺るなら徹底的に殺らないと」

………あ、なんかお空がゴロゴロしてきた。

「精霊は魔力との親和性が馬鹿にならないから生半可な攻撃じゃあ意味がない。なら、精霊でも耐えられない攻撃をすればいいだけだ」

雲が渦を描き出し、アスモデウスの頭上に何重もの巨大魔法陣が生成される。


神雷ケラウノス


物凄い轟音と共に視界が真っ白になり、俺はあまりの眩しさに目を覆った。
ようやく耳鳴りが治まってきた頃に恐る恐る目を開けると、俺達の周辺が真っ黒な焦土と化していた。

「ふうー。流石にあれだけ強い魔法を出されて、僕が作った時空結界が貫かれるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」

どうやらクロスが守ってくれたらしい。のんびりとした口調の裏腹に状況はとてもまずいことになっている気がするのだが、大丈夫か?
このままじゃあ、さっきの雷で森が火の海になる可能性が……


「ハハッ、流石にこの程度じゃあ、もしかしてと期待してたけど、やはり精霊王の鉄壁は突破することは出来なかったか。でも、本命はこっちだからね」


そう言って指先を上に向け光を放つ。
しばらくすると、たくさんの何かが向かってくるのが遠目からぼんやりと見えてきた。
あれは………悪者の仲間か!?凄い数だぞ!!


「本番はこれからだよ。流石に精霊王もいて、さらには伝説上の生き物を相手に手間を掛けたくはないんでね。それに……もう、君たちの負けは決まったようなものだし」

「ハッ、馬鹿なこと言わないで!貴方が私達に勝てるなんて千年早いわよ!」

「そーだそーだ!!おまえ、さっきはゴロゴローってやって、ピカーッてやっただけだろ!!」

大体俺達に掠り傷一つついていないじゃないか。

「だから、君達を狙ったわけじゃないんだよ。万が一そこの幼子に死なれたら困るし。僕の本命は、こっち」

悪者が視線を俺達の後方に向ける。まさか……と思い俺はバッと背後を振り返った。



、これで存分に殺りあえる。だから………精々魔族達から足掻いてみせてね」





----------------
いつも読んでくださりありがとうございます!!


今日は……やはり自分の好きなゲームのイベントがありましてですね……。
ええ、それはもう盛り上がりましたけれども、始めて1年しない自分は一体もキャラを持っていない……どうすればいいのか。
少し虚しくなりながらも楽しませていただきましたのですが、投稿をすっぽかしておりました。すみませんm(_ _)m

そしていいねやエールをしてくださる方、いつも感謝です!!
また数日後か投稿させていただくので、よろしくお願いします!!
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