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第2章︙モスタニア連合国編
総ギルド戦7
しおりを挟む「シアとサリーが意識を失った。おそらくトールギルドの連中はシア達を人質にとってリタイアするように脅迫する筈だ。今すぐ助けに行くぞ!」
試合会場の中にある崖の上で一連の様子を見ていたアレスは、暫くの間、突如豹変したシアの無類の強さに呆然としていたが、ハッと我に返ると合流していたアロとセイズに通達をする。
どうやってシアがあれほどの魔法を扱えたのかは疑問だが、今は総ギルド戦。少しの躊躇が敗因に繋がることになりかねない。
シアについては一応頭の片隅において、早速行動を開始するアレス達は、大きなクレーターの中央へと向かっていく。
「団長。アリス達とまだ合流できていませんが勝手に行動してもいいのでしょうか。まずはアリス達と合流して戦力を蓄えてから万全の状態で救出するべきです」
「そんな呑気なこと言っている間に奴らに回収されるわ。それに、アリス達も今頃事の様子に気づいて救出しようと動くはずだ」
もしそうだとしたら必然的に合流できるから大丈夫だとアレスが告げると、急に無言になり走るスピードを上げる。
同時にとある魔力を感知したセイズも表情が強張る。
そしてその様子を怪訝に見つめていたアロは嫌な予感がして、剣に魔力をため始める。
しばらくの間緊張した雰囲気の中、やっとシア達の所にたどり着いたアレス達は安堵した。
辺りに誰もいない事を確認し、シア達を安全な場所まで運ぼうとしたアレス達の目の前をとてつもない速さで迫ってきた矢が地面を突き刺す。
「……!!」
即座に身構える三人の前に、大勢の人達が現れた。
剣に盾、槍に魔法の杖を持った様々な冒険者たちが三人を囲んで追い詰めていく。
「……おい。これって俺達まんまと罠にはめられたってことだよな」
「……そういうこと」
互いに背中合わせになり戦闘準備に入ろうとするも、近くにいるシア達を傷つけかねないので攻撃はできない。
そうしてしばらくの間の膠着状態は突如終わりを告げる。
「久しぶり、アレス。お前ならやっぱり仲間を見捨てないで助けに来ると思ったよ」
ニヤニヤと笑いながら姿を現したのは、白髪で細身の冒険者だった。
背中には細身の身体では到底扱えそうにない大剣がある。
「お前と俺は別に久しぶりなんて言う関係じゃないと思うんだかな、そんなに仲良くなりたいならこいつ等をどうにかしてくれると助かる」
「残念ながらその頼みは承諾しかねる。あのキルケを倒したその女を今のうちに封じるべきだからな。後々目が覚めて戦う羽目になるなんてごめんだね」
気軽に言葉を交わす二人の間にはピリピリするほどの緊張感が漂っていた。
「それに、そういえばうちのギルド員がお前のギルドに入りたいと訪問したとき、ボロボロになって帰ってきたがあれはどういうことだ?」
「そんなの知らん。ヒュノ達に聞けよ。俺はなにもしとらんからな。…………じゃあ、お前は俺たちとやり合うことでいいってことだよな」
アレスが取り出した槍から火花が散り始める。そこに込められた膨大な魔力を警戒し一気に緊張が高まり始めた。
「今回も戦うことになるのか……とても残念だ」
そういいながらも今にも笑い声を上げそうな笑顔で大剣を抜くその男は、いかにも楽しそうな表情で口を開く。
「さあ、存分に楽しもうか」
直後、様々な魔法攻撃、そして冒険者が三人に向かって今にも打ち倒そうと突進してくる。
「アイスアロー」
しかし、たった一人の神がかった弓射撃により大半の冒険者が足止めをさせられる。
「インフェルノ」
全てを切り裂く剣から飛び出た青い炎が壁となり、魔法までもを燃やし尽くす。
三大ギルドの一つ、トールギルドの冒険者達に圧倒的な優勢を誇っていたアロとセイズも、シアとサリアスを回収しその場からすぐに離脱する。
アレスと彼が交戦を始めたのだ。
あまりにも激しい戦いから逃れる為に離脱した二人は、仕留めきれなかった冒険者の対処をしながらどうするか話し合う。
「……あの冒険者たち、私の予想より弱かった。トールギルドの剣士はそんなに弱いはずがないのに」
「えぇ。それに魔法使いたちも圧倒的に実力不足でした。インフェルノ一回ですべて防げるあたり、あの魔法使いたちの他にもまだ戦力があると考えていいでしょう」
「まさか……。取り敢えずはシアと副団長の手当てをしないとね」
そう言い冒険者の対処をアロに任せてシア達の手当をするセイズ達。
そこから少し離れた空き地でシュノたちは彼らと対峙していた。
「完全に動きを読まれたっす。アリス姉。こいつ等どうします?流石に相手してたらシア達の救出は断念しないといけないっす」
「そんなこと分かってるわよ!でも、ここで倒すか後で倒すかの二択しかないでしょう!シアと副団長があのキルケを倒したんだもの。私達も少しくらい戦果を上げないと……」
ヒュノを傍らに言い争うように言葉を交わす二人にの前には、十人ほどの冒険者が立ちはだかっている。
「俺達を倒すだってよぉ。お前らずいぶん生意気なこと言ってんじゃねえかよ」
「あんたは黙ってなさいよ。兄弟の話し合いに部外者が入っていいなんて許可した覚えはないけれど?ねえ、ウルクさん」
アリスが睨む視線の先にいる髪が逆立ったワイルドな風貌の男は、剣を抜きながらニヤリと笑う。
「今頃お前らの仲間の所にはなー、デイン団長が相手しているからよお。俺達も存分に戦えるってこった」
そう余裕の笑みを浮かべながら言葉を発する彼は、地面を蹴り上げアリス達の目前に迫る。
三大ギルドであるトールギルドとの交戦が各地で始まっていた。
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※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
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