公爵令嬢のRe.START

鮨海

文字の大きさ
上 下
27 / 32
第2章︙モスタニア連合国編

総ギルド戦7

しおりを挟む

「シアとサリーが意識を失った。おそらくトールギルドの連中はシア達を人質にとってリタイアするように脅迫する筈だ。今すぐ助けに行くぞ!」

試合会場の中にある崖の上で一連の様子を見ていたアレスは、暫くの間、突如豹変したシアの無類の強さに呆然としていたが、ハッと我に返ると合流していたアロとセイズに通達をする。
どうやってシアがあれほどの魔法を扱えたのかは疑問だが、今は総ギルド戦。少しの躊躇が敗因に繋がることになりかねない。
シアについては一応頭の片隅において、早速行動を開始するアレス達は、大きなクレーターの中央へと向かっていく。

「団長。アリス達とまだ合流できていませんが勝手に行動してもいいのでしょうか。まずはアリス達と合流して戦力を蓄えてから万全の状態で救出するべきです」

「そんな呑気なこと言っている間に奴らに回収されるわ。それに、アリス達も今頃事の様子に気づいて救出しようと動くはずだ」

もしそうだとしたら必然的に合流できるから大丈夫だとアレスが告げると、急に無言になり走るスピードを上げる。
同時にとある魔力を感知したセイズも表情が強張る。
そしてその様子を怪訝に見つめていたアロは嫌な予感がして、剣に魔力をため始める。

しばらくの間緊張した雰囲気の中、やっとシア達の所にたどり着いたアレス達は安堵した。


辺りに誰もいない事を確認し、シア達を安全な場所まで運ぼうとしたアレス達の目の前をとてつもない速さで迫ってきた矢が地面を突き刺す。


「……!!」

即座に身構える三人の前に、大勢の人達が現れた。
剣に盾、槍に魔法の杖を持った様々な冒険者たちが三人を囲んで追い詰めていく。

「……おい。これって俺達まんまと罠にはめられたってことだよな」

「……そういうこと」

互いに背中合わせになり戦闘準備に入ろうとするも、近くにいるシア達を傷つけかねないので攻撃はできない。
そうしてしばらくの間の膠着状態は突如終わりを告げる。

「久しぶり、アレス。お前ならやっぱり仲間を見捨てないで助けに来ると思ったよ」

ニヤニヤと笑いながら姿を現したのは、白髪で細身の冒険者だった。
背中には細身の身体では到底扱えそうにない大剣がある。

「お前と俺は別に久しぶりなんて言う関係じゃないと思うんだかな、そんなに仲良くなりたいならこいつ等をどうにかしてくれると助かる」

「残念ながらその頼みは承諾しかねる。あのキルケを倒したその女を今のうちに封じるべきだからな。後々目が覚めて戦う羽目になるなんてごめんだね」

気軽に言葉を交わす二人の間にはピリピリするほどの緊張感が漂っていた。

「それに、そういえばうちのギルド員がお前のギルドに入りたいと訪問したとき、ボロボロになって帰ってきたがあれはどういうことだ?」

「そんなの知らん。ヒュノ達に聞けよ。俺はなにもしとらんからな。…………じゃあ、お前は俺たちとやり合うことでいいってことだよな」

アレスが取り出した槍から火花が散り始める。そこに込められた膨大な魔力を警戒し一気に緊張が高まり始めた。

「今回も戦うことになるのか……とても残念だ」

そういいながらも今にも笑い声を上げそうな笑顔で大剣を抜くその男は、いかにも楽しそうな表情で口を開く。


「さあ、存分に楽しもうか」


直後、様々な魔法攻撃、そして冒険者が三人に向かって今にも打ち倒そうと突進してくる。


「アイスアロー」

しかし、たった一人の神がかった弓射撃により大半の冒険者が足止めをさせられる。

「インフェルノ」

全てを切り裂く剣から飛び出た青い炎が壁となり、魔法までもを燃やし尽くす。

三大ギルドの一つ、トールギルドの冒険者達に圧倒的な優勢を誇っていたアロとセイズも、シアとサリアスを回収しその場からすぐに離脱する。
アレスと彼が交戦を始めたのだ。
あまりにも激しい戦いから逃れる為に離脱した二人は、仕留めきれなかった冒険者の対処をしながらどうするか話し合う。

「……あの冒険者たち、私の予想より弱かった。トールギルドの剣士はそんなに弱いはずがないのに」

「えぇ。それに魔法使いたちも圧倒的に実力不足でした。インフェルノ一回ですべて防げるあたり、あの魔法使いたちの他にもまだ戦力があると考えていいでしょう」



「まさか……。取り敢えずはシアと副団長の手当てをしないとね」



そう言い冒険者の対処をアロに任せてシア達の手当をするセイズ達。
そこから少し離れた空き地でシュノたちは彼らと対峙していた。

「完全に動きを読まれたっす。アリス姉。こいつ等どうします?流石に相手してたらシア達の救出は断念しないといけないっす」

「そんなこと分かってるわよ!でも、ここで倒すか後で倒すかの二択しかないでしょう!シアと副団長があのキルケを倒したんだもの。私達も少しくらい戦果を上げないと……」

ヒュノを傍らに言い争うように言葉を交わす二人にの前には、十人ほどの冒険者が立ちはだかっている。

「俺達を倒すだってよぉ。お前らずいぶん生意気なこと言ってんじゃねえかよ」

「あんたは黙ってなさいよ。兄弟の話し合いに部外者が入っていいなんて許可した覚えはないけれど?ねえ、ウルクさん」

アリスが睨む視線の先にいる髪が逆立ったワイルドな風貌の男は、剣を抜きながらニヤリと笑う。

「今頃お前らの仲間の所にはなー、デイン団長が相手しているからよお。俺達も存分に戦えるってこった」

そう余裕の笑みを浮かべながら言葉を発する彼は、地面を蹴り上げアリス達の目前に迫る。

三大ギルドであるトールギルドとの交戦が各地で始まっていた。






しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。 王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

無才印の大聖女 〜聖印が歪だからと無能判定されたけど、実は規格外の実力者〜

Josse.T
ファンタジー
子爵令嬢のイナビル=ラピアクタは聖印判定の儀式にて、回復魔法が全く使えるようにならない「無才印」持ちと判定されてしまう。 しかし実はその「無才印」こそ、伝説の大聖女の生まれ変わりの証であった。 彼女は普通(前世基準)に聖女の力を振るっている内に周囲の度肝を抜いていき、果てはこの世界の常識までも覆し——

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

処理中です...