公爵令嬢のRe.START

鮨海

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第2章︙モスタニア連合国編

総ギルド戦4

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予想外の事態により、新しい作品を公開することになりました。
お立ち寄りいただけると嬉しいです。
こっちの作品を優先で書いていきますが、もう一つの作品も更新していくのでお願いいたしますm(_ _)m
そしていつも読んでくださりありがとうございます!!
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 ミルスギルド。

 三大ギルドの一つであり、武力中心のトールギルド、クリシュ様が団長であり治癒士中心のセインギルドに対して、ミルスギルドは主に魔法使いで構成されている。
 また、三大ギルドの特徴である三文字の名が使うことを許されたギルド。
 世界最大の魔法ギルドの一つと言われていて、魔法使いなら誰もが一度は入ってみたいと憧れるギルドである。

 最大規模の魔法ギルドというだけでも物凄いことだが、ミルスギルドの真価は別にあった。


 それは、【神級冒険者】であるキルケがギルド団長だということ。


 冒険者にはご段階のランクがあり、下級、中級、上級、超級、そして神級である。
 私が今在籍している中級冒険者は、主に冒険者になり数年くらい経つとなることが当たり前のランクだ。
 上級も、何年も冒険者をやってベテランになると自ずと上級になる道が開ける。
 勿論才能もある程度必要だが、普通の人であれば努力次第で上級まで到達することができるのだ。

 しかし超級からは話が変わってくる。

 努力だけでは超えられない……才能がある者だけがなることができるのだ。
 ギルド試験では超級から難易度を跳ね上げているため、大体の人は上級止まりなのだ。
 しかし、超級と言っても大きな街には一人くらい入ることが多い。
 サリアス副団長も私なら超級なんて余裕だと言ってくれたし、案外そんなに珍しいものではない。

 問題はここからだ。超級の中の冒険者で、ごく一握りの、いわば「最強」が神級冒険者になることができる。
 神級冒険者になるためのギルド試験は簡単。
 超級冒険者約百人に対し、自分だけで戦って勝つというあまりに理不尽な試験内容。
 勿論契約精霊とかは自分の戦力判定になるので問題はないが、ギルド員だろうとなんだろうと他の人が手を貸すことは許されていない。


 そしてあまりにも理不尽な試験を最速時間でクリアした天才怪物がキルケという人物だ。

 彼女は試験開始直後、広範囲殲滅魔法を三十重ねで叩き潰したらしい。
 勿論超級冒険者なのでぎりぎり防ぐことはできても、そこからが地獄の始まりだった。

 何十、何百もの火の槍、岩の槍が降り注ぎ、津波が出現し、空からはものすごい数の稲妻が舞い降り蹂躙を始めた。

 卓越した精密さの魔力効率、そして魔法構築。
 そして類まれなる戦いの申し子。
 何より膨大な魔力。

 彼女は正真正銘「最強」の一人だった。



「アイスシールド!」

 私達を襲う何百もの稲妻を防ぐため、私は咄嗟に広範囲に氷の壁を生成するが、すぐに罅が入りはじめる。

「皆散らばれ!」

 アレス団長の的確な指示で皆が動き出すなか、私はサリアス副団長と合流しキルケに向き直った。

「あら?…今のは氷の壁ですか?私の攻撃を咄嗟と言えどここまで防ぐなんて素晴らしい。貴女が何者か気になってきました」

「突然攻撃してくるなんて物騒ね。それも一人で攻めてくるなんて。貴方が負けたら三大ギルドの一つが陥落するという事がを分かっているのかしら?」

 挑発するようにサリアス副団長がそう言うと、キルケは冷たい瞳で私達を見つめた。

「あら、そんな事は分かっていますよ。私が負けることはあり得ないと分かっているから今ここにいるのですよ。そんなことも分からないなんて…」

 呆れたようにため息を付くキルケに、サリアス副団長が気に入らないというように肩を震わせる。

「ああ、それと仮面のあなた。この戦いが終わったら私のギルドに入る気はない?歓迎しますわよ。私はそこの女より実力はあると思いますよ」

 ガバッと振り向いたサリアス副団長が私をじっと見つめてくる。
 私がサリアス副団長を信頼しているという気持ち。けれど私がキルケの手をとってしまうかもしれないという不安に揺れ動いている瞳を見て、私はサリアス副団長から顔を背けキルケの方に視線を移した。



「私は貴方のギルドに加入する予定はありません」

 私はきっぱりと断りの文句をいれると、キルケは驚いたというように目を見開いた。

「あら?私のギルドは貴方がたのギルドより優れているはず。それを断るなんて……馬鹿な選択をしましたね」

 嘲笑うようにそういったキルケに怒ったサリアス副団長が詰め寄ろうとしたけど、私は手を上げてキルケに質問した。

「それは……私たちのギルドをコケにしている発言と捉えても宜しいでしょうか?すみません。余りに浅はかな質問で驚いてしまって」

「浅はか…?神級冒険者である私に名前も知らない冒険者風情がそんなことを言っていいと思って……」

「ああ、すみません。私よりがいっておいでですものね。浅はかとつい本音が出てしまいましたわ。心より謝罪申し上げます」

 私は元王妃教育を受けていたのだ。面倒な貴族たちの対処法なんて私の得意技。冒険者程度に口で負けるわけがない。 


 私は申し訳ないと頭を下げると、暫く黙り込んでいたキルケは魔力を放出しはじめる。

「そろそろおしゃべりにも飽きてきました。雑魚は私の引き立て役に徹してさっさと退場してもらわなくては」

「やれるものならやってみせなさい」

 何十もの魔法陣が生成され、一瞬で視界は閃光に包まれる。

「!………何故、無傷なのです?」

「貴方と戦うのは私だけではありませんのよ」

 私の隣にはサリアス副団長が二重でシールドを展開していた。

「………そうですか。では、いつまで耐えられるのか試してみましょうか、ね!」

 さらに激しく魔法攻撃が降り注ぐ。流石にすべてを防ぎきれないと判断した私は心の内に語りかける。

『ふーん、この女が相手なのか。少しは骨のあるやつがきてくれて嬉しいよ。良いよ、契約者。私も手伝ってあげる』

とある悪魔がキルケを遥かに超える精密さを秘めた魔法が私達を守る壁を生成する。



キルケとの魔法戦が幕を開けた。
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