公爵令嬢のRe.START

鮨海

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第2章︙モスタニア連合国編

総ギルド戦2

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「皆さんこんにちは。柊木由依と申します。聖女という役割を務めさせていただいています。どうぞ宜しくお願いします!」

私の視線の先では、聖女様が晴れやかな笑顔で手を振っていた。

……なんで。

聖女様がまさかこのギルド戦を見に来るとは思わなかった。
聖女様は国がしっかりと保護しなければならない対象のはずなのに、なんでここにいるの。


……いや、そもそもどうやってここに来れたの?


ライオル王子の父であるアイク王は、わざわざギルド戦を盛り上げる為に国外にまで聖女様を連れ出すような人ではない。
国外に一歩でもでたら、もうそこは自分たちの領域ではないのだ。あまりにもリスクがありすぎるにも関わらず、今ここに聖女様がいるという現状に私は戦慄を隠せなかった。

「凄い!聖女様がいるわ!絵本に書いてあったとおり黒髪で黒目じゃない!それにしてもクリシュ様と全然似ていないのね……シア?どうしたの」


私が口を抑えて俯いていると、聖女様に釘付けだったアリスさんが私の異変に気づき心配して声をかけてくれる。

まだ数ヶ月。数ヶ月しか経っていないのにもう見つかるなんて。
いや、今逃げればまだ間に合う。一度部屋に戻って荷物の整理と……

……でも、仲間を見捨てるの?

せっかく出会った「公爵令嬢のフェリシア」じゃなくてありのままの「シア」を大切にしてくれる人達を、私は見捨てるの?

どうしよう。不味い。早く決めないと。

私の頭の中はもうぐちゃぐちゃで、意識が朦朧としてきた。

「ちょっと本当に大丈夫?フラフラしてるじゃないの!」

「………大丈夫です。ちょっと休めば……良くなりますから」

私はフラフラした足取りで人混みから抜け出すと、道の端で座り込んだ。
一旦落ち着かないと。まだ聖女様にバレたわけじゃないのだから大丈夫だ。
問題はこれからのギルド戦で姿を現してしまうと、絶対にバレてしまうだろう。
だからなにがなんでも姿を見られないようにしないと。
私は準備をするために立ち上がった。



「あの……シア?なんでそんな仮面をつけているの?あなたの顔は、別に人に見せられないほど醜いってわけじゃないでしょう?」

「いえ、少しばかり人前に顔を出すのが恥ずかしくなったので」

「そ、そう?ならいいけど…」

私はいつもよりきつくフードを締め、顔の上半分を隠す仮面を付けていた。
本当は顔全体が隠れる仮面にしようと思っていたけれど、被ってみたら暑苦しくて魔法発動に支障が出そうだったから断念した。
フードも被って髪も見えないし、流石に聖女様も口元だけでフェリシアと分かるわけないだろう。

「それでは次のギルド戦にいきましょう」


それから私達は順調に相手ギルドを撃破していった。私の準備のおかげか聖女様にはフェリシアだとバレている様子はなく、ギルド戦二日目は特に何も起こらず終了した。
私は即自分の部屋に戻ると仮面を取り、ベッドに飛び込んだ。

「大丈夫。まだバレていないわ」

明日でギルド戦も終盤を迎える。だからあと一日耐えれば聖女様もすぐにいなくなる筈。

「だから明日。明日だけでいいから……」

どうかバレないでください。


私はベッドに潜り込みそう念じ続けた。


翌朝。
私達がいつものように街の広場に集まると、ギルド戦司会者のクリシュ様がいつもの様に挨拶をしている。

……あれ?

昨日はあれだけ仲の良さそうに見えたクリシュ
様と聖女様が、今は一瞬とも目を合わせもしていない。
結局今日はクリシュ様だけが挨拶を述べ、聖女様の挨拶の場面はなかった。

「……おい、どういうことだよ」
「聖女様が挨拶しないなんて……ギルド戦をわざわざ見に来てくださったんだろ…」
「それにクリシュ様と一言も言葉をかわしていないな。昨日はあれだけ仲が良さそうに見えたのに……」

街の人達をざわつかせながらも幕を開けた三日目のギルド戦は、特に何事もなく進んでいった。

「あとは準決勝と決勝ですか。何もなければ良いのですが……」

昼食を食べながらも不安をこぼすアロさんも、やはり嫌な予感がしているらしい。
いつもなら穏やかな雰囲気の昼食も、これから準決勝と決勝がはじまるため、なにより聖女様達の異変を感じられたことで、少し緊張した雰囲気になっていた。

「大丈夫だから……」

もうすぐで終わるから。
私はテーブルの下で手を握りしめた。



「そして残るはあと四つのギルドとなりました!ここで大事なお知らせを持ってまいりました!」

準決勝が始まる直前、司会の人がクリシュ様に変わり、新ルールが宣言された。

「話し合ったところ、流石に三大ギルド相手に戦うと、他のギルドが負けてしまうのはほぼ確実だという結論が出ました。そんなの観客の皆様も見ていてつまらないではありませんか?
そこで!ここからはバトルロワイヤル形式に変更したいと思います!」

バトルロワイヤル。
つまりここからは他ギルド全てが敵だということ。
御前試合の様に一対一の戦いではないので、ここでは攻めるより自分たちの生き残りを優先するべきだ。
その点では、私の提案した作戦がピッタリなんだけれど、そのぶん守りきれないリスクもある。

「勿論三大ギルド全ては他のいかなるギルドとも協力するのは禁止とします。勿論三大ギルド同士での協力も規定違反とします。
他のギルドは三大ギルド以外で手を組むのはありなので、ぜひとも頑張ってくださいね!」


総ギルド戦、バトルロワイヤル決勝戦が開始された。



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