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第2章︙モスタニア連合国編
中級冒険者シア
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誤字、文章の不備を指摘してくれた皆様、本当にありがとうございます!
なるべく無くなるよう努力していきます。
そしてお気に入り千人突破!!
本当にありがとうございます!
…………………………………………………………
「シアー!ちょっとこっち人手が足りないから手伝って頂戴!」
「はーい!今行きます!」
私が王都を出て行ってから半年が経った。
王都を出たばかりの私は、今まで貴族として生活をしてきたことが災いし、右も左も分からない状態だった。
公爵家から少しばかり持ってきた金貨も、偶々優しい商人の一行が私に一般的な貨幣価値を教えてくれなければ、早々に一文無しになっていたことだろう。
私は大きなバッグにグリモワールが封印されている本を持って、暫くの間村や街を転々として過ごしていた。
取り敢えずモスタニア連合国を目指して西の方へ進んでいったけれど、モスタニア連合国に行くには崖を越えなければならなかった。
この崖には丈夫な橋が作られていたたようだけれど、私が橋に辿り着く数日前、運悪く飛行型の超級魔物が通り壊されてしまったらしい。
崖の間は数百メートルにも及ぶので、橋の修繕にはとても時間がかかると聞かされた私は途方に暮れた。
モスタニア連合国に行くには橋の修繕を待つか、大きく迂回するかの二択で、橋の修繕には数ヶ月の時間が必要。更には迂回するにも数ヶ月かかる。
どちらにしろすぐに入国することは不可能と知った私は、橋の修繕が終わるのを待つことにした。
土魔法が得意な者たちがゴーレムを使って材料を運び、風属性が得意な者たちが空中に待機。職人たちを浮かせて作業を手伝っている。
私は初めてのその光景を見たときはとても驚いた。
貴族令嬢の魔力の使い方は、解毒、そして自分の魔法をいかに美しく魅せるということに使っていた。
「……まさか魔法をこんなに大胆な使い方をするなんて。」
ゴーレムたちが動き、木材や石材が空を飛び交う光景は、まるで小さな頃に呼んだお伽話のような楽しい世界だった。
………人々のために使う魔法。貴族達の使っていた魔法よりずっと綺麗で美しく見える。
『魔法は本来持ち主の為にあるものなんだ。だからこそ使い方は持ち主によって無限大であり可能性を秘めている。今まで縛られた魔力の使い方をしていた君も、いつかはこんな楽しい魔法が使えるようになるかもね』
周りに人がいて、今は本から出てこられないグリモワールは、私の頭に直接語りかけ、いろいろなことを教えてくれた。
グリモワールは近年の情報に疎く、教えてくれるのは何百年前の魔法や冒険譚だけど、私にはどれも新鮮な話で楽しいものだった。
『………ねえ、フェリシア。この橋が修繕されるまで暇でしょ?私に魔法を教わらない?』
ある日突然グリモワールから提案され、私は困惑した。
「魔法を教えてほしいのは事実だけど……実は私、魔力を上手く扱えないのです。」
私は公爵家の生まれだ。つまり普通の人より魔力量が多い。
そして運が良かったのか悪かったのか、私の魔力量は貴族の中でも突出して多かった。
国の象徴である王族を凌ぐ程に。
どうやら私は同じく魔力量が多かったお祖母様に似て生まれてしまったらしい。
小さい頃なんてよく魔力を暴走させて、両親から怒られていた私をよく慰めてくれたっけ。
それにお祖母様が私に魔力の扱い方を根気強く教えてくれたおかげで、ライオル王子と婚約する頃には魔力暴走の危険はなかった。
寿命で死んでしまうその時まで、私の心配をしてくれたお祖母様には感謝しかない。
……でも、あくまで私は魔力暴走の危険がない程度に制御できるようになっただけ。
貴族の使う魔法や生活魔法はもちろん使えるけれど、グリモワールが教えてくれる魔法は聞くだけでも難しそうなものばかり。
私は早々に無理だと諦めようとしたけれど、『基礎だけを教えるだけだから。できなければやめれば良い』と聞かなくて、結局魔法の特訓を始めることになった。
そうして月日は流れていき、私はついにモスタニア連合国へ辿り着いた。
「ご入国の理由は?」
「自分のやりたいことを見つけるために、心機一転、自由を謳歌するこの国にやってきました。」
「………そうですか。では、犯罪履歴を調べる水晶検査にご協力お願いします。」
門番が持ってきた透明な水晶に私は魔力を込めて手をかざすと、淡く青色に光り輝いた。
「………大丈夫ですね。では、ようこそ。モスタニア連合国へ。」
門番さんに通され、私はモスタニア連合国へ入国した。
エルフにドワーフ、獣人など、様々な種族が行き交っていて、とても活発な雰囲気でとても心地がいい。
私は軽快な足取りで街の中を歩き始めた。
「お嬢さん。どうやら迷子のようだけど、家はどこか分かるかい?」
見慣れない景色の中、新鮮な光景にはしゃいでいた私は、いつの間にか迷子になっていて。
おそらく裏路地と呼ばれる所に入ってしまった私は、数人の少年達に絡まれてしまった。
そして危うく連れ去られそうになった私を助けてくれたこの壮年の男性は、私に心配そうに声をかけてくる。
「………実は、今日ここに入国してきたばかりでして……見慣れぬ道で迷ってしまいました。」
私は少し恥ずかしそうに白状すると、男性は少し黙ったあと、私をじっと見て静かに口を開いた。
「…………お前、困ってるならうちに来るか?」
……え?
なるべく無くなるよう努力していきます。
そしてお気に入り千人突破!!
本当にありがとうございます!
…………………………………………………………
「シアー!ちょっとこっち人手が足りないから手伝って頂戴!」
「はーい!今行きます!」
私が王都を出て行ってから半年が経った。
王都を出たばかりの私は、今まで貴族として生活をしてきたことが災いし、右も左も分からない状態だった。
公爵家から少しばかり持ってきた金貨も、偶々優しい商人の一行が私に一般的な貨幣価値を教えてくれなければ、早々に一文無しになっていたことだろう。
私は大きなバッグにグリモワールが封印されている本を持って、暫くの間村や街を転々として過ごしていた。
取り敢えずモスタニア連合国を目指して西の方へ進んでいったけれど、モスタニア連合国に行くには崖を越えなければならなかった。
この崖には丈夫な橋が作られていたたようだけれど、私が橋に辿り着く数日前、運悪く飛行型の超級魔物が通り壊されてしまったらしい。
崖の間は数百メートルにも及ぶので、橋の修繕にはとても時間がかかると聞かされた私は途方に暮れた。
モスタニア連合国に行くには橋の修繕を待つか、大きく迂回するかの二択で、橋の修繕には数ヶ月の時間が必要。更には迂回するにも数ヶ月かかる。
どちらにしろすぐに入国することは不可能と知った私は、橋の修繕が終わるのを待つことにした。
土魔法が得意な者たちがゴーレムを使って材料を運び、風属性が得意な者たちが空中に待機。職人たちを浮かせて作業を手伝っている。
私は初めてのその光景を見たときはとても驚いた。
貴族令嬢の魔力の使い方は、解毒、そして自分の魔法をいかに美しく魅せるということに使っていた。
「……まさか魔法をこんなに大胆な使い方をするなんて。」
ゴーレムたちが動き、木材や石材が空を飛び交う光景は、まるで小さな頃に呼んだお伽話のような楽しい世界だった。
………人々のために使う魔法。貴族達の使っていた魔法よりずっと綺麗で美しく見える。
『魔法は本来持ち主の為にあるものなんだ。だからこそ使い方は持ち主によって無限大であり可能性を秘めている。今まで縛られた魔力の使い方をしていた君も、いつかはこんな楽しい魔法が使えるようになるかもね』
周りに人がいて、今は本から出てこられないグリモワールは、私の頭に直接語りかけ、いろいろなことを教えてくれた。
グリモワールは近年の情報に疎く、教えてくれるのは何百年前の魔法や冒険譚だけど、私にはどれも新鮮な話で楽しいものだった。
『………ねえ、フェリシア。この橋が修繕されるまで暇でしょ?私に魔法を教わらない?』
ある日突然グリモワールから提案され、私は困惑した。
「魔法を教えてほしいのは事実だけど……実は私、魔力を上手く扱えないのです。」
私は公爵家の生まれだ。つまり普通の人より魔力量が多い。
そして運が良かったのか悪かったのか、私の魔力量は貴族の中でも突出して多かった。
国の象徴である王族を凌ぐ程に。
どうやら私は同じく魔力量が多かったお祖母様に似て生まれてしまったらしい。
小さい頃なんてよく魔力を暴走させて、両親から怒られていた私をよく慰めてくれたっけ。
それにお祖母様が私に魔力の扱い方を根気強く教えてくれたおかげで、ライオル王子と婚約する頃には魔力暴走の危険はなかった。
寿命で死んでしまうその時まで、私の心配をしてくれたお祖母様には感謝しかない。
……でも、あくまで私は魔力暴走の危険がない程度に制御できるようになっただけ。
貴族の使う魔法や生活魔法はもちろん使えるけれど、グリモワールが教えてくれる魔法は聞くだけでも難しそうなものばかり。
私は早々に無理だと諦めようとしたけれど、『基礎だけを教えるだけだから。できなければやめれば良い』と聞かなくて、結局魔法の特訓を始めることになった。
そうして月日は流れていき、私はついにモスタニア連合国へ辿り着いた。
「ご入国の理由は?」
「自分のやりたいことを見つけるために、心機一転、自由を謳歌するこの国にやってきました。」
「………そうですか。では、犯罪履歴を調べる水晶検査にご協力お願いします。」
門番が持ってきた透明な水晶に私は魔力を込めて手をかざすと、淡く青色に光り輝いた。
「………大丈夫ですね。では、ようこそ。モスタニア連合国へ。」
門番さんに通され、私はモスタニア連合国へ入国した。
エルフにドワーフ、獣人など、様々な種族が行き交っていて、とても活発な雰囲気でとても心地がいい。
私は軽快な足取りで街の中を歩き始めた。
「お嬢さん。どうやら迷子のようだけど、家はどこか分かるかい?」
見慣れない景色の中、新鮮な光景にはしゃいでいた私は、いつの間にか迷子になっていて。
おそらく裏路地と呼ばれる所に入ってしまった私は、数人の少年達に絡まれてしまった。
そして危うく連れ去られそうになった私を助けてくれたこの壮年の男性は、私に心配そうに声をかけてくる。
「………実は、今日ここに入国してきたばかりでして……見慣れぬ道で迷ってしまいました。」
私は少し恥ずかしそうに白状すると、男性は少し黙ったあと、私をじっと見て静かに口を開いた。
「…………お前、困ってるならうちに来るか?」
……え?
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