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第1章︙聖女降臨編
お茶会の行方と私の決意
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「気持ち良く風が吹く空の下、ライオル様にご挨拶を申し上げます。お元気そうで何よりです。」
私が社交辞令であるライオル王子に挨拶をすると、ライオル王子はにこやかに微笑んだ。
「久しぶりだね、フェリシア。ごめんね。最近は忙しくて余り時間が取れなかったったんだ。」
…………聖女様といる時間はあるのに、婚約者の私といる時間はとることが出来ないのね。
私はライオル王子が嘘をついたことに傷つきながらも表情に出さず、ライオル王子との穏やかなお茶会が始まる。
「フェリシア。今日君を呼んだのは、来週の社交界パーティーの準備の衣装を決めるためなんだよ。君の要望も聞きたくてね」
…………そういえば、そんなものもあったわね。
社交界パーティーという重要な行事では、婚約者同士がお揃いになるような衣装にすることが大切なことだ。
お揃いで行くと婚約者との仲が円満ということを暗に周りに誇示できる。
つまり裏を返せばお揃いじゃないと仲が良くないと思われてしまうのだ。
いつもならライオル王子が私の衣装を選んでくれる筈なのに……………もう、そんなことはないのかもしれませんね。
私が寂しそうな表情で微笑むと、ライオル王子がハッとしたように口を開いた。
「君は……「ライオル王子!今日の祈祷が終わりました!はやくあの花園へ行きましょう!…………あ……フェリシア様もご一緒してたんですね。お久しぶりです。」
ライオル王子がなにか言おうとしていたようだけど、途中で聖女様が入ってきたことで何を言おうとしたのか分からなくなる。
聖女様はライオル王子に花園へ行こうと楽しそうに話す様子を見て、ライオル王子と私は動きを止めた。
私がまだ王妃教育も始まっていなかった小さい頃、ライオル王子と一緒に裏庭へ遊んでいたことがあった。
貴族令嬢、ましてや王族が裏庭に行くなんてあまり褒められた行為ではないけれど、あの頃の私達は裏庭に行っては秘密のお話をしたり、お菓子を持ってきて二人でこっそり食べて楽しんでいた。
翌年、私の五歳の誕生日に、ライオル王子が私に魔法で生成した白金色の綺麗な花をプレゼントしてくれたのだ。
その頃はライオル王子も五歳だったので、あまり上手に魔法を使えなくて所々歪んでいたけど、私は嬉しくてあの裏庭に植えていた。
その日から毎日欠かさず魔力をあげ、少しずつ時間が経つにつれより美しく、数も増えていった。
あの頃から十年経った今では立派な花畑になっていて、城の人達からは「白金の花園」と呼ばれるようになっている。
あそこには城の人達は気を遣ってか、基本私達だけしか立ち入らない。
私達だけの場所だった。
「あの白くて仄かに金色に輝いている花達を見て、私、凄い綺麗だなって思ったんですよ。何故かあそこには城の人達も案内してくれないので、昨日ライオル王子が連れて行ってくれると言ってくれて、凄い楽しみにしてたんですよ!」
「わかった。わかっから………ユイ。少し待っててくれないか。フェリシアと話すことがあるから談話室で待っていてくれ」
私がバッとライオル王子の方を振り返ると、ライオル王子は少し慌てたように聖女様に言い募った。
…………名前呼びだなんて。
聖女様と親密な関係になったと様々と見せつけられた私は、歯をぐっと食いしばって涙が出ないよう我慢していた。
………もう、知っていたことじゃないの。
心の底で醜い感情が立ち昇る。
私は今まで頑張ってきたのに。
沢山努力もして、優秀な王妃になろうと日々懸命に取り組んできたのに。
聖女様は何もしなくても手に入る物なのね。
「………リシア……………フェリシア!」
声がして私がハッとしたようにライオル王子の方を見ると、心配したライオル王子の顔が私を見つめていた。
「大丈夫か?……………フェリシア。君があの花園を大切にしていることは知っている。でも………今日だけでいいからユイ……聖女様に見せても良いか?」
「でも!っ…………あの花園は私達が今まで育ててきた努力の結晶です。他の人達は立ち入らないように配慮してくれていたのに、聖女様だけ入らせるんですか?…………私は反対します」
私はこれ以上聖女様に奪われないようにとライオル王子を説得した。
「あの花園はお前だけの場所ではないんだ。聖女様をお招きしたっていいだろう」
「なぜですか?そんなに聖女様の言うことを聞きたいんですか?………貴方にとって私のことは聖女様よりも下なんですか?」
段々と話し合いがヒートアップしていって、ついにライオル王子が一言、
「……………そうさ。聖女様は皆の希望だ。一番に優先するのは当たり前じゃないか。」
…………え?
私はその言葉の意味を飲み込めなくて呆然としていたけれど、少しずつ頭が理解していくにつれ、私は笑いがこみ上げてきた。
「…………ハハッ」
皆聖女様のことばかり。誰も私なんて見ちゃいないんだわ。
………もう、終わりにしたい。
「分かりました。ライオル王子。私達、暫くは会わないほうがいいかもしれませんね。社交界パーティーの衣装は準備しなくて結構ですよ。
パーティーには聖女様とお行きになさったほうがライオル王子もよろしいでしょう。」
「フェリシア、待って……」
「それではご機嫌よう。さようなら。」
私はなるべく華やかに見えるような笑顔でライオル王子に最後の挨拶を伝えた。
私が社交辞令であるライオル王子に挨拶をすると、ライオル王子はにこやかに微笑んだ。
「久しぶりだね、フェリシア。ごめんね。最近は忙しくて余り時間が取れなかったったんだ。」
…………聖女様といる時間はあるのに、婚約者の私といる時間はとることが出来ないのね。
私はライオル王子が嘘をついたことに傷つきながらも表情に出さず、ライオル王子との穏やかなお茶会が始まる。
「フェリシア。今日君を呼んだのは、来週の社交界パーティーの準備の衣装を決めるためなんだよ。君の要望も聞きたくてね」
…………そういえば、そんなものもあったわね。
社交界パーティーという重要な行事では、婚約者同士がお揃いになるような衣装にすることが大切なことだ。
お揃いで行くと婚約者との仲が円満ということを暗に周りに誇示できる。
つまり裏を返せばお揃いじゃないと仲が良くないと思われてしまうのだ。
いつもならライオル王子が私の衣装を選んでくれる筈なのに……………もう、そんなことはないのかもしれませんね。
私が寂しそうな表情で微笑むと、ライオル王子がハッとしたように口を開いた。
「君は……「ライオル王子!今日の祈祷が終わりました!はやくあの花園へ行きましょう!…………あ……フェリシア様もご一緒してたんですね。お久しぶりです。」
ライオル王子がなにか言おうとしていたようだけど、途中で聖女様が入ってきたことで何を言おうとしたのか分からなくなる。
聖女様はライオル王子に花園へ行こうと楽しそうに話す様子を見て、ライオル王子と私は動きを止めた。
私がまだ王妃教育も始まっていなかった小さい頃、ライオル王子と一緒に裏庭へ遊んでいたことがあった。
貴族令嬢、ましてや王族が裏庭に行くなんてあまり褒められた行為ではないけれど、あの頃の私達は裏庭に行っては秘密のお話をしたり、お菓子を持ってきて二人でこっそり食べて楽しんでいた。
翌年、私の五歳の誕生日に、ライオル王子が私に魔法で生成した白金色の綺麗な花をプレゼントしてくれたのだ。
その頃はライオル王子も五歳だったので、あまり上手に魔法を使えなくて所々歪んでいたけど、私は嬉しくてあの裏庭に植えていた。
その日から毎日欠かさず魔力をあげ、少しずつ時間が経つにつれより美しく、数も増えていった。
あの頃から十年経った今では立派な花畑になっていて、城の人達からは「白金の花園」と呼ばれるようになっている。
あそこには城の人達は気を遣ってか、基本私達だけしか立ち入らない。
私達だけの場所だった。
「あの白くて仄かに金色に輝いている花達を見て、私、凄い綺麗だなって思ったんですよ。何故かあそこには城の人達も案内してくれないので、昨日ライオル王子が連れて行ってくれると言ってくれて、凄い楽しみにしてたんですよ!」
「わかった。わかっから………ユイ。少し待っててくれないか。フェリシアと話すことがあるから談話室で待っていてくれ」
私がバッとライオル王子の方を振り返ると、ライオル王子は少し慌てたように聖女様に言い募った。
…………名前呼びだなんて。
聖女様と親密な関係になったと様々と見せつけられた私は、歯をぐっと食いしばって涙が出ないよう我慢していた。
………もう、知っていたことじゃないの。
心の底で醜い感情が立ち昇る。
私は今まで頑張ってきたのに。
沢山努力もして、優秀な王妃になろうと日々懸命に取り組んできたのに。
聖女様は何もしなくても手に入る物なのね。
「………リシア……………フェリシア!」
声がして私がハッとしたようにライオル王子の方を見ると、心配したライオル王子の顔が私を見つめていた。
「大丈夫か?……………フェリシア。君があの花園を大切にしていることは知っている。でも………今日だけでいいからユイ……聖女様に見せても良いか?」
「でも!っ…………あの花園は私達が今まで育ててきた努力の結晶です。他の人達は立ち入らないように配慮してくれていたのに、聖女様だけ入らせるんですか?…………私は反対します」
私はこれ以上聖女様に奪われないようにとライオル王子を説得した。
「あの花園はお前だけの場所ではないんだ。聖女様をお招きしたっていいだろう」
「なぜですか?そんなに聖女様の言うことを聞きたいんですか?………貴方にとって私のことは聖女様よりも下なんですか?」
段々と話し合いがヒートアップしていって、ついにライオル王子が一言、
「……………そうさ。聖女様は皆の希望だ。一番に優先するのは当たり前じゃないか。」
…………え?
私はその言葉の意味を飲み込めなくて呆然としていたけれど、少しずつ頭が理解していくにつれ、私は笑いがこみ上げてきた。
「…………ハハッ」
皆聖女様のことばかり。誰も私なんて見ちゃいないんだわ。
………もう、終わりにしたい。
「分かりました。ライオル王子。私達、暫くは会わないほうがいいかもしれませんね。社交界パーティーの衣装は準備しなくて結構ですよ。
パーティーには聖女様とお行きになさったほうがライオル王子もよろしいでしょう。」
「フェリシア、待って……」
「それではご機嫌よう。さようなら。」
私はなるべく華やかに見えるような笑顔でライオル王子に最後の挨拶を伝えた。
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