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キス釣り編
キス釣り編1
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最近の雨は『風情』がない。誰かが言った。
ゲリラ豪雨だかなんだか……。
昔、縁側に座って、シトシト降る雨を見ながら、季節の変わりようを楽しめたのに、バケツをひっくり返したような雨が印象に残り過ぎる。
異常気象、温暖化の影響と言ってしまえばそれまでなんだろうが、雨を『愛でる』事より、雨は『怖い』と印象にしかならない。
そう、その言葉を聞いて納得した。昨日の夜は怖かった。
流れる車の音もかき消されるくらいの雨音と、唸り声を上げ続ける空は、夜の闇を何度も切り裂く閃光を放ち、怒号を纏い、その拳を振り下ろす。大気は歪められたように風を伴い、雨音に拍車をかける。
はっきり言って、台風より怖かった。
寝れなかった。
どうやら会社の皆も、そうだったらしい。
口々に「昨日の雨、怖かったな。」「大丈夫だった?」など言いながら、会社周りの清掃をする。風でゴミなどが散乱しているからだ。
空梅雨。と言っていた梅雨入りして最初の頃、今年は水不足になるのではないか?と心配していたけれど、梅雨中頃から降り出した雨は、ほぼ豪雨。そして、極めつけは昨日の雨である。
枯れようとしていたダムは、あっという間にその貯水量を満たした。水不足だけは解消されたようだった。
「こりゃあ、週末、キス釣りには行けんばい。」
島田社長はそう言いながら、がっくりと肩を落としてゴミを拾っていた。
「そうだね。これだけの雨の後だからね。ゴミもかなり浮いて、釣りにならないだろうね。」
ヨシさんも残念そうに言いながら、ゴミをビニール袋に入れる。
「そうなんですか?……残念です。」
楽しみにしていた僕も、二人に似た状態でゴミを集めていた。
今日は金曜日。一気に週末の予定は無くなってしまった。と思っていると、「たまにはゆっくりと釣具屋巡りでもするかね?安売りのチラシも入っていた事やし。」島田社長が言う。
それはいいね。とヨシさんは乗る気に笑って言った。
「瀬高はどぎゃんする?着いて来るね?」
やることが無くなった矢先、ありがたい誘いだった。釣具に興味もあるし、もっと見てみたいと思っていたし、二つ返事で着いて行く事にした。
「なら、明日の朝十時に会社ば出ようかね?熊本市内の方に足ば運ぶけん。」
はい。と頷き、掃除を済ませて、仕事を始めた。
ゲリラ豪雨だかなんだか……。
昔、縁側に座って、シトシト降る雨を見ながら、季節の変わりようを楽しめたのに、バケツをひっくり返したような雨が印象に残り過ぎる。
異常気象、温暖化の影響と言ってしまえばそれまでなんだろうが、雨を『愛でる』事より、雨は『怖い』と印象にしかならない。
そう、その言葉を聞いて納得した。昨日の夜は怖かった。
流れる車の音もかき消されるくらいの雨音と、唸り声を上げ続ける空は、夜の闇を何度も切り裂く閃光を放ち、怒号を纏い、その拳を振り下ろす。大気は歪められたように風を伴い、雨音に拍車をかける。
はっきり言って、台風より怖かった。
寝れなかった。
どうやら会社の皆も、そうだったらしい。
口々に「昨日の雨、怖かったな。」「大丈夫だった?」など言いながら、会社周りの清掃をする。風でゴミなどが散乱しているからだ。
空梅雨。と言っていた梅雨入りして最初の頃、今年は水不足になるのではないか?と心配していたけれど、梅雨中頃から降り出した雨は、ほぼ豪雨。そして、極めつけは昨日の雨である。
枯れようとしていたダムは、あっという間にその貯水量を満たした。水不足だけは解消されたようだった。
「こりゃあ、週末、キス釣りには行けんばい。」
島田社長はそう言いながら、がっくりと肩を落としてゴミを拾っていた。
「そうだね。これだけの雨の後だからね。ゴミもかなり浮いて、釣りにならないだろうね。」
ヨシさんも残念そうに言いながら、ゴミをビニール袋に入れる。
「そうなんですか?……残念です。」
楽しみにしていた僕も、二人に似た状態でゴミを集めていた。
今日は金曜日。一気に週末の予定は無くなってしまった。と思っていると、「たまにはゆっくりと釣具屋巡りでもするかね?安売りのチラシも入っていた事やし。」島田社長が言う。
それはいいね。とヨシさんは乗る気に笑って言った。
「瀬高はどぎゃんする?着いて来るね?」
やることが無くなった矢先、ありがたい誘いだった。釣具に興味もあるし、もっと見てみたいと思っていたし、二つ返事で着いて行く事にした。
「なら、明日の朝十時に会社ば出ようかね?熊本市内の方に足ば運ぶけん。」
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