釣りはじめました

ツ~

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メバリング編

メバリング編9

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 桟橋の下では魚を釣る事が出来なかったが、嬉しい再会があった。
 重松さん達と訪れた時にやってきた、白猫が僕らの元へやって来たのだ。
 にゃ~。
 ゴロゴロ。
 僕の足にすり寄ってくる。
 覚えていてくれたのかな?
 そんな言葉が頭を横切った。相変わらず、綺麗な毛並みは土や葉などでほとんど汚れている形跡はなかった。。案外、この白猫、どこかの家の猫なんじゃないか?と思う程だ。
 しかし、お腹は空いているのだろう。僕がワームを回収する度に見上げ『魚はまだかにゃ?』と言い出しそうな瞳で見つめてくる。
 これはご期待に応えなくてはなりますまい。
 パチャン、パチャンと音を立てる、明暗部にワームを投げ入れた。
 表層、中層を釣っても反応はない。そして、底の方を狙ってみると、やっとアタリがあった。
 あら?これはどこかで味わった事のあるようなアタリと引き。
 簡単に上がった。
 アジだ。しかも小さい。アジゴを少し大きくした感じ。
 もちろん、これはこの白猫にあげる事にする。
 白猫は美味しそうに食べ、次を催促するように鳴く。
 同じように、底の方を狙うと、また同じようなサイズのアジが釣れた。
 白猫はそれを同じように受け取り、食べて、今日はもう満足したのだろう。足早に去って行った。
 「猫も行ったし、しんちゃんの所に戻ってみようか?」
 ヨシさんの言葉に僕も「そうですね。」と答えて、僕達は島田社長の元へ戻る事にした。
 小さい堤防の先端で島田社長はロッドを降り続けていた。殺気をさっきよりみなぎらせながら。
 「しんちゃん、釣れた?」
 ヨシさんの問いかけに、島田社長は首だけを振って答える。
 この場所に来てもう数時間、水位もかなり下がり、干潮と言っていい時間。もう、諦めてもいいのでは?と心の中で思う。
 しかし、それでも島田社長は諦めない。一心不乱に釣りを続ける。
 そんな島田社長の姿を見て、僕達は自分達の道具を片付けて仮眠をとることにした。
 どれくらい寝たのだろう?トントンと車の窓を叩く音がする。
 島田社長は諦めて、車へ戻って来たようだ。
 しょぼんと肩を落とす島田社長。その姿からは「釣れました?」とか聞いてくれるなよ。というオーラがビンビンに出ていた。
 それをヨシさんも悟ったのか、何も言わずに僕達は帰路へついた。
 
 
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