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おいかけて、マグロ丼
おいかけて、マグロ丼編11
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夜中、ふっと目が覚めた。少し、喉が渇いたのか?トイレなのか?覚醒し始めた身体を起こして、両方の欲求を満たすため、とりあえず、トイレに行き、キッチンへ水を飲みに向かった。
冷蔵庫を開けて水を取ると、階段を降りる足音が聞こえる。
姉さんだろうか?
そう考えていると、キッチンのドアが開いた。
あっ、大森さんだ。
「大森さん。どうしたんですか?」
トイレでは無いのは分かっている。二階にもトイレはあるし。わざわざ降りてくる必要はない。
「喉が渇いてしまって……。お水を頂けませんか?」
あ~。なるほど。お酒を飲んだ後とか喉が渇いたりするみたいだしね。遠慮しないで、飲んでくれていいのに……。
大森さんに椅子に座るようにすすめ、コップに水を注ぐ。そして、僕もコップを大森さんに渡して、対面側の椅子に座る。
「……ありがとうございます。」
大森さんは、いい飲みっぷりで水を飲み干す。
「もう一杯どうですか?」
「すみません。……いただきます。」
二杯目の水を少し飲んだところで、大森さんが口を開いた。
「すみませんでした。今日は、いっぱいご迷惑をおかけして……。」
大森さんは申し訳なさそうに、頭を下げる。
いや、謝るのはこっちの方だろう。お酒まで誘惑して飲ませ、ちゃんと寝れているのかも不安だ。
「いえ。こちらこそ、ご迷惑をおかけして……。ちゃんと姉さんの部屋で寝れていますか?」
「はい。お布団も引いていただいて……。さっきまでは、ぐっすりと言って良いほど寝れました。」
良かった。遅くまで姉さんが付き合わせていたかもしれないけど、ぐっすり寝れていたなら、それにこしたことはない。
「頭は痛くありませんか?」
あれほどの量のお酒を二人で飲んだのだから、頭も痛くなってないか心配だ。そう思い、冷蔵庫からウコンドリンクを取る。
飲む前に飲む、飲んだ後も飲む?だっけ??忘れたけれど……。
それを僕は大森さんに差し出した。
「あっ。ありがとうございます。」
大森さんはそれを受け取り飲んで言った。
「マスターや愛奈さん、お店に来店されるご近所の方、みんな、お優しいですよね……。」
僕や姉さんが優しいかは分からない。でも、近所の人はみんな優しい。困った事があれば助け合い、悲しい事があったら慰めてくれる。僕達、姉弟も随分と助けられた。
「近所の方々は優しいです。僕達も随分と助けられています。大森さんも、僕はお優しいと思います。」
大森さんは目を見開いてこちらを見たかと思ったら、俯いた。
『私、優しくなんかありません。』
そして、何かを言ったように聞こえたが、僕には上手く聞き取れなかった。
少しの時間、沈黙が流れる。
「マスターの好きな食べ物って何ですか?」
大森さんが、ポツリと口を開いた。
好きな食べ物……。久しぶりに聞かれた質問だった。
もう、思い出の食べ物になってしまった。好きな食べ物……。幼い頃に、誕生日によく母が作ってくれた、クリームコロッケ。それが僕の大好物だった。
「……クリームコロッケ。ですかね……。」
僕は曖昧に答えた。
「クリームコロッケ?ですか??」
「はい。クリームコロッケです。カニクリームでもコーンクリームでも……。クリームコロッケが大好きです。」
僕の今度はハッキリとした答えに大森さんはクスリと笑って言った。
「マスター。何か可愛いですね。」
大森さんにそう言われ、僕は顔が赤くなるのが分かった。それを、はぐらかすように笑い。
「僕。そろそら寝ますね。コップはそのまま置いといて大丈夫ですよ。」
そう言い。僕は席を立った。
「ありがとうございます。私も愛奈さんの部屋へ戻って寝ますね。……マスター。おやすみなさい。」
大森さんは微笑んでいた。
「大森さんも、おやすみなさい。」
僕は嬉しくなった。姉さん以外、久しぶりに『おやすみなさい』を聞けたし言えた。ただ、それだけ。でも、嬉しかった。
冷蔵庫を開けて水を取ると、階段を降りる足音が聞こえる。
姉さんだろうか?
そう考えていると、キッチンのドアが開いた。
あっ、大森さんだ。
「大森さん。どうしたんですか?」
トイレでは無いのは分かっている。二階にもトイレはあるし。わざわざ降りてくる必要はない。
「喉が渇いてしまって……。お水を頂けませんか?」
あ~。なるほど。お酒を飲んだ後とか喉が渇いたりするみたいだしね。遠慮しないで、飲んでくれていいのに……。
大森さんに椅子に座るようにすすめ、コップに水を注ぐ。そして、僕もコップを大森さんに渡して、対面側の椅子に座る。
「……ありがとうございます。」
大森さんは、いい飲みっぷりで水を飲み干す。
「もう一杯どうですか?」
「すみません。……いただきます。」
二杯目の水を少し飲んだところで、大森さんが口を開いた。
「すみませんでした。今日は、いっぱいご迷惑をおかけして……。」
大森さんは申し訳なさそうに、頭を下げる。
いや、謝るのはこっちの方だろう。お酒まで誘惑して飲ませ、ちゃんと寝れているのかも不安だ。
「いえ。こちらこそ、ご迷惑をおかけして……。ちゃんと姉さんの部屋で寝れていますか?」
「はい。お布団も引いていただいて……。さっきまでは、ぐっすりと言って良いほど寝れました。」
良かった。遅くまで姉さんが付き合わせていたかもしれないけど、ぐっすり寝れていたなら、それにこしたことはない。
「頭は痛くありませんか?」
あれほどの量のお酒を二人で飲んだのだから、頭も痛くなってないか心配だ。そう思い、冷蔵庫からウコンドリンクを取る。
飲む前に飲む、飲んだ後も飲む?だっけ??忘れたけれど……。
それを僕は大森さんに差し出した。
「あっ。ありがとうございます。」
大森さんはそれを受け取り飲んで言った。
「マスターや愛奈さん、お店に来店されるご近所の方、みんな、お優しいですよね……。」
僕や姉さんが優しいかは分からない。でも、近所の人はみんな優しい。困った事があれば助け合い、悲しい事があったら慰めてくれる。僕達、姉弟も随分と助けられた。
「近所の方々は優しいです。僕達も随分と助けられています。大森さんも、僕はお優しいと思います。」
大森さんは目を見開いてこちらを見たかと思ったら、俯いた。
『私、優しくなんかありません。』
そして、何かを言ったように聞こえたが、僕には上手く聞き取れなかった。
少しの時間、沈黙が流れる。
「マスターの好きな食べ物って何ですか?」
大森さんが、ポツリと口を開いた。
好きな食べ物……。久しぶりに聞かれた質問だった。
もう、思い出の食べ物になってしまった。好きな食べ物……。幼い頃に、誕生日によく母が作ってくれた、クリームコロッケ。それが僕の大好物だった。
「……クリームコロッケ。ですかね……。」
僕は曖昧に答えた。
「クリームコロッケ?ですか??」
「はい。クリームコロッケです。カニクリームでもコーンクリームでも……。クリームコロッケが大好きです。」
僕の今度はハッキリとした答えに大森さんはクスリと笑って言った。
「マスター。何か可愛いですね。」
大森さんにそう言われ、僕は顔が赤くなるのが分かった。それを、はぐらかすように笑い。
「僕。そろそら寝ますね。コップはそのまま置いといて大丈夫ですよ。」
そう言い。僕は席を立った。
「ありがとうございます。私も愛奈さんの部屋へ戻って寝ますね。……マスター。おやすみなさい。」
大森さんは微笑んでいた。
「大森さんも、おやすみなさい。」
僕は嬉しくなった。姉さん以外、久しぶりに『おやすみなさい』を聞けたし言えた。ただ、それだけ。でも、嬉しかった。
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