あなたのお口に幸せを

ツ~

文字の大きさ
上 下
10 / 40
冥土の土産にパンケーキ

冥土の土産にパンケーキ編6

しおりを挟む
 閉店後、自宅。
 「直通爺ちゃんが養鶏場を始めた理由にはビックリしちゃったわよね~。」
 姉さんは風呂上がりのアイスを食べながら、料理を作っている僕の背中に語りかける。
 「うん。そうだね。まさか、静江婆ちゃんが卵が好きだから、美味い卵が食べさせたい。って理由だったとは思わなかったね。」
 やはり、豪快な人だった。お嫁さんが好きだからって始められるような職業でもないし、それをやり遂げてしまうのだから、凄い。
 「今日は何を作ってるの?」
 姉さんは、ひょっこりと屈んでいる僕の肩に手を乗せて見る。
 「あら!これは!?」
 「うん。パンケーキ。せっかくだからお店に出そうかと思って。」
 周りにはイチゴ、ベリー系のフルーツをたっぷりと散りばめ、ホイップクリームも沢山盛った。見た目にもなかなかのインパクトがある。インスタ映えしそうだ。
 二人で試食しながら、僕は口を開く。
 「これからは定期的、期間限定にパンケーキやスイーツの新メニューも出そうと思うんだ。」
 「静江婆ちゃんに食べて貰えるように?」
 やはり、姉さん。僕が思っている事が伝わる。僕は黙って頷いた。
 「うふふ。お姉ちゃんは凄く良いと思うな~。お姉ちゃん、京ちゃんのそんなところ大好きよ~。」
 実の姉に大好きと言われても嬉しくないけど、意見に賛同してもらえた事は嬉しかった。

 一週間後。
 新メニューに、パンケーキを載せた。
 そして、嬉しい事に、その二日後。静江婆ちゃんは源さんに連れられて食べに来てくれた。
 「京ちゃん。愛奈ちゃん。食べにきたば~い。」
 静江婆ちゃんかなり元気になったようだ。
 お年寄りとは思えないスピードでパンケーキを平らげ、満足そうに「また来るば~い。」と帰って行った。
 あっ、直通爺ちゃんと一緒に来店していた時と同じだ。
 もう、安心だ。
 僕と姉さんは顔を見合わせて微笑みあった。
 
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

短編集 wholesale(十把一絡げ)

よん
大衆娯楽
ジャンルごちゃ混ぜの短編集です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

相談室の心音さん

阪上克利
大衆娯楽
流産というつらい経験をした主人公の心音が職場に復帰した後に異動になったのは新しい部署の『相談室』だった。 『自分がこんな状態なのに人の相談なんてのっている場合じゃない』と悩むも、相談者の相談にのっているうちに少しずつ心が癒されていくのを感じる……。 このお話は大きな悲しみを乗り越えて前に進もうとする主人公、心音の再生の物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...