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冥土の土産にパンケーキ

冥土の土産にパンケーキ編1

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 年々、暑さは厳しくなる。猛暑日の記録が延びる中、昼間の蝉は鳴くのを躊躇っているのかあまり聞こえない。下手をしたら、夜の常夜灯のもとで鳴いているくらいだ。
 そんな外の暑さとは打って変わってクーラーの効いた店の中には、パン屋の景子さん、養鶏農家の源さん、テレビ取材以来、ウチの常連さんになった大森さんがカウンターでそれぞれアイスコーヒーを飲みながら話をしていた。
 暑いね。って話題から熱中症などの話題になり、大森さんの実家の犬が暑さでバテていると言う話になった時。
 「京ちゃん。愛奈ちゃん。ちょっと頼み事があるとばってん……。」
 源さんは無骨に延びた白髪混じりの髭を触りながら申し訳なさそうにこちらを見て言う。
 「どうしたんですか?源さん?」
 姉さんは不思議そうに源さんに聞き直した。
 「ウチの母ちゃんがね、この前テレビでありよったパンケーキってやつを食いたか~って言いよるんよ。ふわふわとした。パンケーキば。」
 「どんなパンケーキですか?」
 僕の質問に源さんは、ん~?と唸り首を傾げる。
 「こんなパンケーキですか?」
 思い出せない源さんに、隣で話を聞いていた大森さんは、自分のスマホを源さんに何枚か写真をスライドさせながら見せる。
 「そうそう。こげんかやつ。高さのあって、凄くふわふわな感じの。」
 源さんの一言で止められた写真に、僕達は大森さんのスマホを覗き込む。
 おお!ふわふわのパンケーキだ!!
 「わ~。これは美味しそうね。」
 景子さんはスマホの画面を見ながら瞳を輝かせ。
 「私もこの系のパンケーキはまだ食べたことないんですよね。」
 大森さんも興味があるようだ。
 「京ちゃん。これ、作れんやろか?暑さで最近、元気のなか母ちゃんに食べさせてやりたかとよ。」
 源さんは手を合わせて、この通り!と言わんようにお願いする。
  ふわふわのパンケーキか~。僕は顎に手をやって考える。どうしたら作れるんだろう?そんな事を考えていると、何を勘違いしたのか。
 「私もマスターの作ったパンケーキ食べてみたいです。」
 「私も京君の作ったパンケーキ食べたいわ。」
 「お姉ちゃんも、京ちゃんの作ったふわふわのパンケーキ食べてみたいわ~。」
 女性陣三人は援護射撃のように言葉を並べる。
 いや、作らない。って一言も言ってないし、何か僕が悪人ぽくなってない?少し納得いかなかったが、源さんには日頃お世話になっているし、ふわふわのパンケーキを作る事にした。
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