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最後の一時。そして…… ナナ編
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やってしまった。その一言。
ワタシは、予想通りというか、想像通りというか……。見事に太ってしまった。
重くなったせいで、散歩をするにも、足腰痛いし……。自業自得か……。ワタシは歩く事さえ困難になっていた。
ああ。また、ご主人さま達に迷惑をかけてしまった。
後悔先に立たず。とはまさにこの事か……。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
なので、ダイエットも頑張った。でも、歳には勝てず、ワタシはあまり動けなくなってしまった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
何度も謝るワタシ。そんなワタシをご主人さま達は献身的に介護してくれた。
お腹のマッサージに、足腰のマッサージ。汚れたお尻をきれいにしてくれたり、歩行の補助。夜は交代交代で一緒に寝てくれる。無性に怖くなっていた夜も安心出来て怖くなくなった。言っちゃ悪いのかもしれない。けど、ワタシは幸せを感じていた。ご主人さま達と近くなった。そんな感じがしたから……。
でも、時は止まってはくれない。時間が経つにつれて、体の調子は悪くなっていく。胸は痛いし。あんなに美味しかったご飯も食べる気がしなくなった。起きるのも辛い。ワタシ、もうそろそろ死んじゃうのかな?そんな考えが頭をよぎっていた。
ああ……。体が凄く怠くて思うように動いてくれない。
一度、死ぬって考えてから、気持ちも滅入ってしまったのかな?そのまま、目を閉じたら目覚めないのじゃないかと思ってしまう。夜、寝るのが更に怖くなっていた。
そして、そんなある日の事。ワタシはあと数日で死ぬ。その事がなぜか分かってしまった。不思議な感覚だった。
死期を悟ってしまったのは良いのだけれど、ほとんど寝たきりになってしまったワタシ。ご主人さま達には死ぬ所を見せたくない。ワタシの正直な気持ちだった。でも、それは出来ない。動く事もままならないし。動けたとしてもこの家から出る事など出来はしない。別れる事も当然辛かったけれど、介護してくれるご主人さま達の負担が減ると考えると気が楽にもなった。それと、二人目を身ごもっている奈々ご主人さまの負担を考えると、奈々ご主人さまが居ない日を見計らうのがベストだと思った。きっと、ご主人さまは凄く悲しむだろうな。色々な事を考えれるくらいに、なぜか頭の中はクリアだった。
そして、奈々ご主人さまが実家に帰って居ない日曜日。ワタシの最後の日がやってきた。体は凄く重い。動きたくない。このまま、目を閉じて逝ってしまったら楽なのだろう。そんな事を考えた。
でも、それではダメだ。ワタシは、ご主人さまに最後の挨拶を……別れの挨拶をしないといけない。ママやパパ。結衣お姉ちゃんはコウタご主人さまの所へ嫁いでいないけど、最後に安心してもらわないといけない。
最後は元気よく見せないといけない。ワタシは大丈夫だよ。って見せないといけない。天国へ行っても、大丈夫だからって安心させないといけない。
ワタシは全体力と気力を振り絞って歩く。そして、昔みたいに、ご飯をいっぱい食べて見せた。
よし!ママやパパは喜んでくれた。後は、ご主人さまが起きてきて、元気な姿を見せて逝くだけ。
そして、ご主人さまが起きてきた。
これで、最後。ご主人さまに挨拶をしに行かなくちゃ。
ワタシは最後の力を振り絞って、ご主人さまの元へ向かう。ご主人さまの顔を見ながら、一歩ずつ、一歩ずつ。
ワタシの大好きなご主人さま。
ワタシの愛したご主人さま。
優しいご主人さま。
ワタシのご主人さま……。
見つめる、ご主人さまの目からは涙が零れていた。
ご主人さまには分かってしまったんだ。ワタシとの日々が今日で終わるって事。
そっとのびる、ご主人さまの手。
優しく、優しく、ワタシを撫でる。
大好きな、この感触。
ワタシは、この感触を。
ワタシは、このぬくもりを。
ご主人さまと、ご主人さま達と過ごした日々をずっと忘れない。
本当は、死にたくないよ。ご主人さま……。
ずっと、ご主人さまと一緒に居たいよ。
次に産まれてくる子の遊び相手にもなってあげたい。
ずっと、ずっと、ご主人さまの側に……。
どんなに強がっても、思いは溢れてくる。
でも、でも……。それは、許されない。終わりの時が近づいているのが分かるから。
最後に、ワタシの思いを、気持ちをいっぱいのせて、伝えなくちゃ。
「ご主人さま。ありがとう。……ワタシ。ご主人さまと出会え…て、家族にしてもらえて、本当に嬉しかった。幸せだった。……大好きだよ。ご主人さま。」
ご主人さまの手を、思いをのせて舐めた。
そして、ワタシは死んだ。
ワタシは、予想通りというか、想像通りというか……。見事に太ってしまった。
重くなったせいで、散歩をするにも、足腰痛いし……。自業自得か……。ワタシは歩く事さえ困難になっていた。
ああ。また、ご主人さま達に迷惑をかけてしまった。
後悔先に立たず。とはまさにこの事か……。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
なので、ダイエットも頑張った。でも、歳には勝てず、ワタシはあまり動けなくなってしまった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
何度も謝るワタシ。そんなワタシをご主人さま達は献身的に介護してくれた。
お腹のマッサージに、足腰のマッサージ。汚れたお尻をきれいにしてくれたり、歩行の補助。夜は交代交代で一緒に寝てくれる。無性に怖くなっていた夜も安心出来て怖くなくなった。言っちゃ悪いのかもしれない。けど、ワタシは幸せを感じていた。ご主人さま達と近くなった。そんな感じがしたから……。
でも、時は止まってはくれない。時間が経つにつれて、体の調子は悪くなっていく。胸は痛いし。あんなに美味しかったご飯も食べる気がしなくなった。起きるのも辛い。ワタシ、もうそろそろ死んじゃうのかな?そんな考えが頭をよぎっていた。
ああ……。体が凄く怠くて思うように動いてくれない。
一度、死ぬって考えてから、気持ちも滅入ってしまったのかな?そのまま、目を閉じたら目覚めないのじゃないかと思ってしまう。夜、寝るのが更に怖くなっていた。
そして、そんなある日の事。ワタシはあと数日で死ぬ。その事がなぜか分かってしまった。不思議な感覚だった。
死期を悟ってしまったのは良いのだけれど、ほとんど寝たきりになってしまったワタシ。ご主人さま達には死ぬ所を見せたくない。ワタシの正直な気持ちだった。でも、それは出来ない。動く事もままならないし。動けたとしてもこの家から出る事など出来はしない。別れる事も当然辛かったけれど、介護してくれるご主人さま達の負担が減ると考えると気が楽にもなった。それと、二人目を身ごもっている奈々ご主人さまの負担を考えると、奈々ご主人さまが居ない日を見計らうのがベストだと思った。きっと、ご主人さまは凄く悲しむだろうな。色々な事を考えれるくらいに、なぜか頭の中はクリアだった。
そして、奈々ご主人さまが実家に帰って居ない日曜日。ワタシの最後の日がやってきた。体は凄く重い。動きたくない。このまま、目を閉じて逝ってしまったら楽なのだろう。そんな事を考えた。
でも、それではダメだ。ワタシは、ご主人さまに最後の挨拶を……別れの挨拶をしないといけない。ママやパパ。結衣お姉ちゃんはコウタご主人さまの所へ嫁いでいないけど、最後に安心してもらわないといけない。
最後は元気よく見せないといけない。ワタシは大丈夫だよ。って見せないといけない。天国へ行っても、大丈夫だからって安心させないといけない。
ワタシは全体力と気力を振り絞って歩く。そして、昔みたいに、ご飯をいっぱい食べて見せた。
よし!ママやパパは喜んでくれた。後は、ご主人さまが起きてきて、元気な姿を見せて逝くだけ。
そして、ご主人さまが起きてきた。
これで、最後。ご主人さまに挨拶をしに行かなくちゃ。
ワタシは最後の力を振り絞って、ご主人さまの元へ向かう。ご主人さまの顔を見ながら、一歩ずつ、一歩ずつ。
ワタシの大好きなご主人さま。
ワタシの愛したご主人さま。
優しいご主人さま。
ワタシのご主人さま……。
見つめる、ご主人さまの目からは涙が零れていた。
ご主人さまには分かってしまったんだ。ワタシとの日々が今日で終わるって事。
そっとのびる、ご主人さまの手。
優しく、優しく、ワタシを撫でる。
大好きな、この感触。
ワタシは、この感触を。
ワタシは、このぬくもりを。
ご主人さまと、ご主人さま達と過ごした日々をずっと忘れない。
本当は、死にたくないよ。ご主人さま……。
ずっと、ご主人さまと一緒に居たいよ。
次に産まれてくる子の遊び相手にもなってあげたい。
ずっと、ずっと、ご主人さまの側に……。
どんなに強がっても、思いは溢れてくる。
でも、でも……。それは、許されない。終わりの時が近づいているのが分かるから。
最後に、ワタシの思いを、気持ちをいっぱいのせて、伝えなくちゃ。
「ご主人さま。ありがとう。……ワタシ。ご主人さまと出会え…て、家族にしてもらえて、本当に嬉しかった。幸せだった。……大好きだよ。ご主人さま。」
ご主人さまの手を、思いをのせて舐めた。
そして、ワタシは死んだ。
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