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初めての別れ ナナ編

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 あの、糞雌犬……若返ってない??いや!若返っている!!ワタシよりも随分、若いじゃない!!若いどころじゃない!成犬になって直ぐくらいの若さじゃないの?!鮮やかな毛並みに若さがみなぎっているわ!!ど、どういう事?!ワタシ達って若返れるの?!
 ワタシの視線に、あの糞雌犬は気が付いたらしく、ワタシに話し掛けてきた。
 「あら、ナナさん。お元気??」
 なんで?声もかなり若いんですけど?どういう事?でも、何て白々しいのかしら?相変わらず!ワタシはアンタのせいで、何時も機嫌が悪いっての!!知ってるでしょ?!
 疑問よりも先に怒りがこみ上げてくる。
 「はあ?何が、お元気??よ!アンタ、ワタシにケンカ売ってんの?」
 ワタシはこの糞雌犬以外には、こんな言葉使いも苛立ちも、怒りもしない。ワタシは、この犬が嫌いだ。世界で一番、嫌いだ。どんな汚い言葉でも、出てきてしまう。
 そんなワタシを見てか、相変わらず、やれやれ。とすかした態度をとる糞雌犬。本当に腹が立つ!
 何時ものように、これはケンカかしら?そう思った時、あの雌犬は予想外な言葉を口にした。
 「ごめんなさいね。ナナさん。」
 ……え?何?謝った?この糞雌犬が??え??何で、この犬が謝っているの?今まで、一度も謝ったりしなかったくせに。
 ワタシの思考が追い付く前に、もう一度、あの糞雌犬は謝罪の言葉を口にした。
 「ごめんなさいね。謝って許される事ではないと分かっているけれど……謝らせてちょうだい。」
 ど、どういう事??なぜか怒りは落ち着き、疑問の方へと切り替わった。今までの事が嘘のように。

 「私、死んじゃったの。てへぺろ☆」
 な、何が、てへぺろだ!!
 若返った糞雌犬……いや、マロンさんは、ワタシの怒りがおさまったのを感じたのか、状況をかえりみずにおどけて見せた。さっきまで神妙な顔つきだったのに。
 「いや~。若返るって良いわよ~。体が凄く軽いの。歩くのに、足も痛くないし。もう、死ぬ間際なんて、重くて辛くて苦しかったけど……心まで、ウキウキするわね。」
 訳の分からない事をマロンさんは言い続ける。
 何が何だか、分からない。死んだ?え??どういう事??マロンさんは今、目の前に居るのだけれど??確かに少し透けて見えるけれど……。
 「し、死んだって、どういう事?」
 「んん~?そのまま意味だけれど??私、死んだのよ。何ヶ月か前に。ほら?触ってみなさいよ。感触ないから。それに、ご主人さま達を見て。私に気が付いてないでしょ?」
 た、確かにそうだ……。ご主人さま達はワタシに視線を送ったり、撫でたりするのに、マロンさんには触れようともしないし、見向きもしない。
 おかしい……し、しかし、偶然って事もある。なので、恐る恐る、マロンさんに触れてみる。
 げ!!手がすり抜けた!!マロンさんの体を手がすり抜けた!!って事は、このマロンさんは本当に死んだの?これって、幽霊って事?!
 そ、そうか!そ、そうなると、奈々ご主人さまに元気が無かったのもうなずけるし、マロンさんの臭いが薄まっていたのに説明がつく……。
 な、なら、何で成仏してないの?!も、もしかして、ワタシに復讐するため!!ケンカばかりしてたから?!
 「ワ、ワタシに復讐するために、成仏しないの!?」
 ワタシは混乱して、思った事をそのまま口にした。
 少しの沈黙がワタシ達の間に流れた。それを壊すように、マロンさんは真面目に口を開いた。
 「私には、復讐される覚えは有るけれど、復讐する覚えは無いわ。最初に言ったでしょ?ごめんなさいって。」
 え?本当に謝りに来たの?すかした態度だと何時も思ってたから、そう思っただけで、申し訳ないと思った態度だったって事??
 「な、なら、何を謝りに来たのよ?!何で、成仏してないのよ!!お母さんが昔、言ってたわよ!!早く成仏しないと、悪霊になっちゃうって!!」
 もう、訳が分からない。こっちが謝らないといけない事だってある。思いっ切り噛み付いた事だってあるし。あまりの出来事に思考はこんがらがる。
 「アナタのご主人さまを奪うような事をしたことよ。」
 マロンさんはぺこりと深く頭を下げた。
 
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