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出会い

出会い 4

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 足が短くて胴の長い犬に……あっ、これは柴犬だろう。これくらいは分かる。他にも、目玉がギョロっとした犬も居れば、毛がフサフサの猫もいる。
 僕は子犬や子猫を今まで見た事がほとんど無かった。あまり犬や猫に興味もなかったし、動物と言えば動物園の動物。ウサギ程度は触った事はあっても、ほとんど動物には触った事もなかった。
 親族にも犬や猫を飼っている家もなかったし、友達の家も飼ってはいなかった。
 僕はテレビで以外、久し振りに動く子犬や子猫をみたのだ。
 ……なんと、可愛い。こ、これはもしや天使?
 大袈裟だけれど、それくらい可愛く見えた。
 そして、人集りは店内にも広がっていた。
 どうやら、このショーウィンドウだけでは無く、店内には触れれる動物も居るようだった。
 僕もそのペットショップに当たり前のように吸い込まれるように入って行った。
 そして、僕は自分の目を疑った。
 そこだけ、スポットライトがあたり、周りはモノトーン。星が輝いては散り。輝いては散り。を繰り返す。今まで出会ったモノの中で、ダントツに輝いて見えた。
 顔の柄が白に茶色、黒などで両目を分けて囲むように綺麗に彩られており、耳も茶色や黒。身体も白をベースに茶色に黒。もふもふとした毛並み、子犬ならではのディテール。まさに、毛玉モンスター!!とても愛らしかった。
 他の子犬や子猫は自分のショーケースから出され、お客さんと触れ合っているのに、我関せずと言わんばかりに自分のショーケースの中で寝ている。
 最初はお客さんもその子犬に関心を持つのだが、その姿がお客さんにも分かったのか、その子犬のショーケースの前は眺めるだけで素通りだった。
 それでも、僕はどうしてもその子犬が気になり、書いてあるメモを読んだ。
 何々?パピヨン??パピヨンって犬種なのか……?全く分からん。今まで家で犬など飼った事がなかったし、興味もなかったし……。
 でも、触ってみたい!この子犬がどんな感触なのか……!!
 僕は店員さんを呼んで、この子犬を抱かせて貰う事にした。
 ……なんだ!?この感覚は?!
 触った瞬間……抱かせて貰った瞬間。もう、それは言葉にすれば何て言えばいいか……形容しがたい感情だった。
 抱き締めた瞬間に胸の奥が熱くなり、可愛らしく、暖かく、柔らかい。そんな見た目や手に触れた感触ではない。愛おしい。心の底からそう思った。
 こ、こんな気持ちは初めてだ!!
 抱き締めた子犬を少し離して顔を見つめた時、子犬と目が合う。そのつぶらな瞳は、何かを語っているようだった。本人?本犬?にすれば、『眠いんですけど?なにか?』と思っていたのかもしれない。
 しかし、僕はそのキョトンとした瞳の奥に吸い込まれる感じがした。
 この子だ!この子しかいない!!家に連れて帰る!!ただ、それだけを思ってしまった。もう、他の事は考えられなくなっていた。
 
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