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新しい日々の始まり

新しい日々の始まり 9

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 あれは、イリア宅に世話になり初めて直ぐの事だった。
 女王様に呼び出され、一人で城へ向かった日。いきなり、こう切り出された。

 「ヤマトや。一緒に学校見学へ行くぞよ。付いてまいれ。」
 「へ?」
 
 俺が来て早々、女王様はそう言って玉座から腰を上げ、移動し始め、そして俺はあっという間に護衛の方に両脇を抱えられながら、馬車に乗せられる。
 
 「何ですか?いきなり??」

 女王様の向かいに座らされた俺は、やっとの事でたずねた。

 「いや~の。今日は魔導学校、高等部で特別授業があるのじゃよ。でな、妾、それに出席せねばならぬ。」

 え?だから、どうしたの??俺、関係なくない?

 「どうして、俺まで?」
 「それがな。今日、特別講義をする者が、急きょ体調を崩してしまってな。代わりの講師を探しておったのじゃよ。」
 「え?まかさ、俺がその講師?」
 「うむ。話が早くて助かるのう。」
 「なんで、俺なんです?」
 「今回の講義は、魔法の授業や剣術ではないのじゃ。いわゆる、課外授業というやつかの?商業ギルドの者がやってきて、色々と講義をしてくれるはずじゃったのじゃ。」
 「まあ、一応、店をやってはいますが、俺が講義出来る内容なんてないですよ?」
 「いや、あるじゃろ?料理が。」
 「俺…の、料理ですか?」
 「そうじゃ。おぬしの料理は唯一無二。その料理を見る事は、これから先の進路にも大きな影響があるじゃろ?」

 進路?魔導学校だったら、王宮魔導師とかになるんじゃ?

 「進路って。王宮で働くのではないのですか?魔導学校の生徒は??」
 「ん?そうではないぞよ?確かに王宮魔導師などになる者も大勢おるが、魔導大学や他の大学へ進む者もおれば、商業ギルドを通して働く者もおる。田舎へ帰り、家業を継ぐ者もおる。冒険者になる者もおるしの。道などいくらでもある。選んでよいのじゃ。その事を今日は教える予定じゃったのじゃよ。」

 そうだったのか……。でも、この世界って案外厳しかったよな。むいてないとか、センスがないとかだと必要なジョブやスキルが発現しないんだ。
 俺だって、前の世界で10年以上も料理人をしていたのに、ジョブは直ぐには発現しなかった。今思えば、この世界に体が順応しきれていなかった。って言うのもあるかもしれないけど。
 ……その事を踏まえて、女王様は可能性という物を教えたいのかもしれないな。

 「分かりました。出来るだけの事はやってみたいと思います。」

 その言葉を聞いて、女王様は微笑んだ。
 そして、俺は女王様の顔を見て思った。
 あれ?今、気が付いたのだけれど……女王様、少し痩せた??瞳がはっきりと見えるし、頬や顎の肉……いや、身長まで縮んでない?

 「うむ。すまぬの。ヤマトや。おぬしならそう言ってくれると思っておった。じゃから、ターニャには先に学校に赴いてもらって準備をしてもらっておる。思う存分、やってくれ。妾も、おぬしの講義が楽しみじゃ。おっと、忘れる所じゃった。ヤマトや。それとな……。ん?どうしたのじゃ??妾の事をマジマジと見つめて??」

 しまった。気になりすぎて、見過ぎたか。

 「いえ。何でもないです。それで、どうしたのですか?」
 「……まあ、よいか。それでじゃな。ヤマトや。おぬしに会わせたい者がおるのじゃ……。」

 そう言って、女王様に紹介されて、二人と知り合った。
 この世界では珍しい双子。
 優秀で既に魔導大学への進学が二人とも決まっていた事。
 詳しくは聞いていないが、二人には身寄りが居ない事。
 大学の学費は特待生なので免除。しかし、大学から寮はあるが有料になる事。
 そうなると、自ずと働いて賃金を得なければならない事。
 そこで白羽の矢が立ったのが、俺の店だ。
 ウチの店は新しい従業員が欲しい。
 新しい家には無駄に部屋が余っている。
 俺の店なら、イリア達も居るので安心して任せられる。
 女王様の紹介なら、人柄も問題ないだろう。
 実際に話してみて、いい性格だったし、気も合ったので、ウチに来てもらう事にした。
 最初は物凄く遠慮していた二人だったけど、今では兄とまで言って慕ってくれている。
 もちろん、学生の本分、勉学が疎かになってはいけない。サークル活動みたいな事もあるかもしれない。現に今、ローネはサッカーを始めたしな。
 二人には、自分のチャレンジしたいことを優勢してほしい。ウチの事は手の空いている時に手伝ってくれるくらいでいいんだ。
 これからどれくらいの月日を一緒に暮らして過ごしていくか分からないけど、二人の成長を見守っていけたらいいな。
 
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