11 / 28
新しい日々の始まり
新しい日々の始まり 4
しおりを挟む
「コーチから奪えば!そうしたら、もう1点追加だ!」
アタッキングサードからやっとの思いでかき出したボール。
俺の後ろには無人のゴール。
Bチームの選手達は獲物を見つけた野獣のように俺に向かって突っ込んでくる。
まあ、そうだな。俺以外、ゴールキーパーも含めて上がってるし、取られてゴールに向かって蹴られただけでも失点だ。
でも、冷静さを欠いた相手なんてかわすのは簡単。
ひらりと闘牛をかわすようにドリブルを進めたり、身体を左右にふるボディーフェイトで簡単にかわす。
はたまた、みんな、考え無しに突っ込んでくるからパスコースなんて幾つも出来る。視線を味方に向けキックフェインを一つするだけで簡単に抜ける。
剣術などをやっているせいもあるんからだろうか?身体の動きや視線にはかなり敏感に反応する。
サッカーに慣れてないせいでかなりオーバーにリアクションをするけど、もっと冷静になれるように教えないとな。剣術なんかでそれが出来るんだから、習得は早いだろう。
次々と簡単なフェイントでかわし、あっという間にペナルティーエリア前にやってきた。後はDF二人とキーパーだけ。後ろからはその他の選手が物凄い勢いで追いかけて来ている。イリアにでも言われているのだろう。諦めが悪い。良いことなんだろうけど、ただ、全員が俺に来るとは……。教える事は、多すぎるくらいあるな。
それにしても、流石にステータスの恩恵もあって足は速い。DF二人とキーパーを抜くまでに囲まれたらどうしようもないな。
距離も余裕で射程圏内だし。エルフは遠距離砲も好きだろう。
俺は右足を一閃した。
ハア、ハア……ハア。
サッカーの試合を途中で抜け出し、俺は全速力でエルヘイム城へたどり着く。
ちょっと疲れた……いや、強がった。滅茶苦茶、疲れた。
俺自身、ゲートの魔法なんて使えないし。イリアに頼んで使って貰っても良かったのだけれど、まだ試合中だったし。
城門前で両膝に手をついて、呼吸を整えていると、足音が聞こえた。
「あら、あら、まあまあ~。そんなに汗をかいて……。走って来たのですか?ヤマト君??お疲れ様です。これをどうぞ。」
「ありがとうございます。エターナさん。」
差し出された瓶を俺は受け取る。
瓶はキンキンに冷えており、口にしたドリンクはスッと体に馴染んでいく。
どうやら、冷やしたポーションだったようだ。
体力は一気に回復する。
「イリアはゲートで送ってくれなかったの~?」
「まだ、試合中でしたからね。監督で忙しいだろうし、良い運動になると思ったんですけど……予想より遠くて……。」
「あらあら、まあまあ~。無茶しちゃって。ヤマト君は、若いわね~。」
「エターナさんも変わらないじゃないですか?年齢。」
「あらあら。そうだったかしら?いけないわね。救護班長を辞めてから、小さい事は気にしなくなって……気がゆるんでいるのかしら??」
流石、見目麗しいエルフ。少し困ったような表情も絵になる。
ちなみに、エターナさんはイリア達と同じ王宮所属の救護班長だった人だ。エリが辞めた事で、どうせなら騎士団長と救護班長も辞めて、副長同士がそのまま昇格し、新しく組織した方が上手くいくだろうとの事で退役したのだ。
そしてまた、ちなみに、ハセンとエターナさんは退役を機に結婚している。
仲も良く、同じ王宮所属の長だったイリア達が結婚式に呼ばれていないという事は、この世界自体に結婚式というモノ自体がないのかもしれない。
「ヤマト君、息は整ったかしら?」
「はい。大丈夫です。お待たせしました。」
「よろしい。では、厨房へ向かいましょうか?早くしないと、ターニャちゃんが待っているわよ。」
「分かりました。急ぎましょう。」
俺達は、城の厨房へと急ぎ、足を向ける。
「ところで、ハセンはよくやっていたかしら?」
急ぎ足でも、やはり自分の夫の事は気になるのだろう。
「はい。ちゃんと指導して、監督してましたよ。」
それを聞いて、エターナさんは嬉しそうな顔をする。
ちゃんと監督してた。とか、言い方が少し変だったかな?
まあ、イリアに比べたら負けていた分、落ち着いてはいなかったけどね。
「うふふ~ぅ。それは、良かったわぁ。あの人も退役してから、大学の講師になったはいいのだけれど……イマイチ、ぼ~ぅ。としていたから、心配していたのよ。何か張り合いがない感じで……。でも、ここ1ヶ月はサッカーの指導を始めてから、少し生き生きしてきたのよ。これも、ヤマト君のおかげね。」
「いやいや。俺としても監督をやって貰える方が居て良かったですよ。それに、イリア達も久しぶりにハセンと競える事を喜んでましたよ。」
「うふふ。それは羨ましいわね。イリア達と私もまた競い合いたいわね。あの頃の熱は、なかなかに味わえないもの……。」
「それなら、エターナさんもサッカーを覚えますか?」
俺の提案にエターナさんは手をブンブンと振り。
「私は、運動が得意じゃないから~。サッカーは無理よ~。」
「運動出来なくても、監督は出来ますよ?イリアも運動は得意じゃないでしょ?」
俺なんかより、スキルのおかげで身体能力などは上だけど。
「あらあら?そうなの??……でも、せっかくのお誘いだけれど、私はサッカーはいいわ~。その代わり、こっちの方でターニャちゃんと競う事にするわぁ~。ハセンもその方が喜ぶだろうしぃ。」
エターナさんはそう言い、目的地である厨房の前に立ち止まり、指を指した。
アタッキングサードからやっとの思いでかき出したボール。
俺の後ろには無人のゴール。
Bチームの選手達は獲物を見つけた野獣のように俺に向かって突っ込んでくる。
まあ、そうだな。俺以外、ゴールキーパーも含めて上がってるし、取られてゴールに向かって蹴られただけでも失点だ。
でも、冷静さを欠いた相手なんてかわすのは簡単。
ひらりと闘牛をかわすようにドリブルを進めたり、身体を左右にふるボディーフェイトで簡単にかわす。
はたまた、みんな、考え無しに突っ込んでくるからパスコースなんて幾つも出来る。視線を味方に向けキックフェインを一つするだけで簡単に抜ける。
剣術などをやっているせいもあるんからだろうか?身体の動きや視線にはかなり敏感に反応する。
サッカーに慣れてないせいでかなりオーバーにリアクションをするけど、もっと冷静になれるように教えないとな。剣術なんかでそれが出来るんだから、習得は早いだろう。
次々と簡単なフェイントでかわし、あっという間にペナルティーエリア前にやってきた。後はDF二人とキーパーだけ。後ろからはその他の選手が物凄い勢いで追いかけて来ている。イリアにでも言われているのだろう。諦めが悪い。良いことなんだろうけど、ただ、全員が俺に来るとは……。教える事は、多すぎるくらいあるな。
それにしても、流石にステータスの恩恵もあって足は速い。DF二人とキーパーを抜くまでに囲まれたらどうしようもないな。
距離も余裕で射程圏内だし。エルフは遠距離砲も好きだろう。
俺は右足を一閃した。
ハア、ハア……ハア。
サッカーの試合を途中で抜け出し、俺は全速力でエルヘイム城へたどり着く。
ちょっと疲れた……いや、強がった。滅茶苦茶、疲れた。
俺自身、ゲートの魔法なんて使えないし。イリアに頼んで使って貰っても良かったのだけれど、まだ試合中だったし。
城門前で両膝に手をついて、呼吸を整えていると、足音が聞こえた。
「あら、あら、まあまあ~。そんなに汗をかいて……。走って来たのですか?ヤマト君??お疲れ様です。これをどうぞ。」
「ありがとうございます。エターナさん。」
差し出された瓶を俺は受け取る。
瓶はキンキンに冷えており、口にしたドリンクはスッと体に馴染んでいく。
どうやら、冷やしたポーションだったようだ。
体力は一気に回復する。
「イリアはゲートで送ってくれなかったの~?」
「まだ、試合中でしたからね。監督で忙しいだろうし、良い運動になると思ったんですけど……予想より遠くて……。」
「あらあら、まあまあ~。無茶しちゃって。ヤマト君は、若いわね~。」
「エターナさんも変わらないじゃないですか?年齢。」
「あらあら。そうだったかしら?いけないわね。救護班長を辞めてから、小さい事は気にしなくなって……気がゆるんでいるのかしら??」
流石、見目麗しいエルフ。少し困ったような表情も絵になる。
ちなみに、エターナさんはイリア達と同じ王宮所属の救護班長だった人だ。エリが辞めた事で、どうせなら騎士団長と救護班長も辞めて、副長同士がそのまま昇格し、新しく組織した方が上手くいくだろうとの事で退役したのだ。
そしてまた、ちなみに、ハセンとエターナさんは退役を機に結婚している。
仲も良く、同じ王宮所属の長だったイリア達が結婚式に呼ばれていないという事は、この世界自体に結婚式というモノ自体がないのかもしれない。
「ヤマト君、息は整ったかしら?」
「はい。大丈夫です。お待たせしました。」
「よろしい。では、厨房へ向かいましょうか?早くしないと、ターニャちゃんが待っているわよ。」
「分かりました。急ぎましょう。」
俺達は、城の厨房へと急ぎ、足を向ける。
「ところで、ハセンはよくやっていたかしら?」
急ぎ足でも、やはり自分の夫の事は気になるのだろう。
「はい。ちゃんと指導して、監督してましたよ。」
それを聞いて、エターナさんは嬉しそうな顔をする。
ちゃんと監督してた。とか、言い方が少し変だったかな?
まあ、イリアに比べたら負けていた分、落ち着いてはいなかったけどね。
「うふふ~ぅ。それは、良かったわぁ。あの人も退役してから、大学の講師になったはいいのだけれど……イマイチ、ぼ~ぅ。としていたから、心配していたのよ。何か張り合いがない感じで……。でも、ここ1ヶ月はサッカーの指導を始めてから、少し生き生きしてきたのよ。これも、ヤマト君のおかげね。」
「いやいや。俺としても監督をやって貰える方が居て良かったですよ。それに、イリア達も久しぶりにハセンと競える事を喜んでましたよ。」
「うふふ。それは羨ましいわね。イリア達と私もまた競い合いたいわね。あの頃の熱は、なかなかに味わえないもの……。」
「それなら、エターナさんもサッカーを覚えますか?」
俺の提案にエターナさんは手をブンブンと振り。
「私は、運動が得意じゃないから~。サッカーは無理よ~。」
「運動出来なくても、監督は出来ますよ?イリアも運動は得意じゃないでしょ?」
俺なんかより、スキルのおかげで身体能力などは上だけど。
「あらあら?そうなの??……でも、せっかくのお誘いだけれど、私はサッカーはいいわ~。その代わり、こっちの方でターニャちゃんと競う事にするわぁ~。ハセンもその方が喜ぶだろうしぃ。」
エターナさんはそう言い、目的地である厨房の前に立ち止まり、指を指した。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる