キミを抱いて……

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はじめてのお給料

はじめてのお給料7

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 グランウルフとソーマはしばらく睨み合う。
 しびれを切らした、グランウルフは牽制と言わんばかりに火の玉を吐く。が、それをソーマは軽くあしらい、走り出す。
 自分を目掛けて走ってくるソーマにグランウルフは爪で反撃を試みるが、ソーマはそれを紙一重で交わし一太刀を浴せる。グランウルフは怒りと痛みで声を上げる。
 「グゴォ!」
 「案外、速くないね。」
 ソーマはそう言うと、連続でグランウルフに斬り掛かり次々と傷を負わせていく。
 「すごい……。」
 リースはソーマの姿に見惚れていた。
 グランウルフは怒り狂ったかのように、炎のブレスを撒き散らし、辺りを火の海に変え、ソーマを目掛けてあらん限りの炎を吐き出す。
 ソーマはそれをラグナ・クルナで一刀両断し、最後のトドメと言わんばかりに加速する。
 炎を斬られ、為すすべの無くなったグランウルフはソーマにより、呆気なく討たれ、その身体を倒した。
 ソーマはグランウルフが倒れたのを確認して、箱を一刀両断して言った。
 「レイナ!火事になっちゃうから、火消して。」
 「わかったわ!」
 そう言うとレイナは詠唱を始める。
 「……………ウォーターレイ!」
 空から無数の勢いのよい雨粒が大地を濡らし、瞬く間に炎は消し去った。
 「威力を弱めたから、消火には丁度良いわよね。」
 「いや!痛い!痛い!!レイナ!痛い!!強過ぎるよ!レイナ!!」
 レイナの放った魔法はもちろん火の海の中に居たソーマにも命中し、まだ、降り注ぐ雨粒の中、ソーマは切断した箱を両手な抱え走って戻ってくる。
 それを見たリースは歓喜に満ちた声で言う。
 「ソーマさん!凄いです!かっこ良かったです!!」
 知的と思っていたイメージはどこへやら……。興奮した様子でソーマを見るリースの目は明らかに恋する乙女の表現だった。それを見て、レイナは嫌な予感がした。
 「リースさん、グランウルフの剥ぎ取りはしなくていいんですか?」
 レイナはリースがソーマから目を離すように誘導する。
 「あっ!そうでした。魔獣の剥ぎ取りなんて初めてで……。こんな経験が生きているうちに出来るだなんて……。」
 リースはグランウルフの牙を剥ぎ取る。
 「やった!出来ました!!今回は剥ぎ取れました!本物です!!」
 リースは牙を持ち上げながらはしゃいでいる。
 それを、ソーマはニコニコとレイナは頬を引きつらせながら、笑っていた。
 
 夕刻前、三人は村へ戻り、村長へ報告に向かった。
 報告を受けたガウムは少し考えた後、口を開く。
 「魔獣といい、魔族の仕業なのかの……。いや、それは考えにくい……。とりあえず、この箱を持ってギルバート殿の所へ行ってみるわい。」
 三人は頷き、ガウムは続ける。
 「ご苦労様じゃったな。報酬は明日渡すから、明日寄りなさい。このグランウルフの牙もこちらで買い取るから、その金額もプラスするからの~。」
 「はい。分かりました。あと、一つお伺いしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」
 レイナはガウムにたずねる。
 「なにかね?わしが答えれる事なら何でも答えよう。」
 「ありがとうございます。宝玉についてお聞きしたいのですが。」
 ガウムは、なるほど。というような表現をした後に言う。
 「すまんの。レイナちゃん。わしはあまり力になれそうにない。聞いた話だと、ここより少し先に行った町『グランパ』に宝玉に詳しい者がおると聞いた事がある程度じゃ。」
 「グランパ……。ありがとうございます。なら、次はそこへ向かいたいと思います。」
 三人はガウムと少し雑談した後に別れ、それぞれの帰路についた。
 
 翌朝。
 ソーマとレイナが村長宅へ着いた時にはリースは既に村長宅に居た。
 今回の報酬じゃ。とガウムから貰ったのは、一人2000ルーク。それにグランウルフの牙代、一人5000ルーク。合計14000ルーク。
 大金だ。これだけあれば、グランパまでの宿代などに困る事はない。
 「これが、私達のはじめてのお給料?高過ぎない?」
 レイナはソーマを見る。
 「うん。高過ぎる。グランウルフの牙って、こんなに高いものだってのにもびっくり……。」
 二人は少しの間沈黙する。人間が『魔族狩り』をして富を得ようとした理由を直接肌で感じたからだ。今回は得ようとして得た訳ではないけれど、実際、手に入れてしまえば心は揺れ動くのかもしれない。
 それを見た、ガウムは口を開く。
 「二人共。大事なのは欲に飲む込まれない事じゃ。君達の旅の中では、このような事がまた起こるじゃろう。そして、このようにまた大金を手にする事もあるじゃろう。その時は切り替えなさい。そして、同時にギルバート殿の教えも思いだすとよい。」
 二人は頷き、ガウムにお礼を言って村を出ようとした、その時。後ろからリースが大きなバッグを背負い、駆け足で近寄ってくる。
 「はぁ、はぁ、はぁ。お二人とも、私も一緒に連れて行って頂けれませんか?お金の管理、アイテムの管理、サポート作業、私が全てやりますから。お願いします!」
 リースは目一杯頭を下げて二人にお願いする。
 「いいですよ。」
 「ダメです。」
 ソーマとレイナは同時に答え、その答えはバラバラだった。ソーマの答えを聞いて、レイナは頭を抱え、レイナの答えを聞いて、ソーマは不思議そうにする。
 リースはレイナの答えた聞かなかった事にし、ソーマの答えに喜びを見せ、ソーマからお金やアイテムを受け取りバッグの中にしまい、レイナにも「お荷物、お持ちします!」とお金やアイテムをばぱっと、ぶんどるように受け取りバッグにしまう。
 (ああ。こりゃ、ダメだ。)
 レイナは素早く諦めて先を急ぐ事にした。
 道中、レイナはリースになぜ自分達に着いて来ようかと思ったのか聞いた。
 リースは少し考えた後に口を開く。
 「レイナさんにごまかしても直ぐにバレてしまいそうなので……。言いますね。私、ソーマさんの事好きになっちゃいました。」
 てへっとして、舌をぺろりと出す。リース。
 (やはり、最初のイメージとは全く違うキャラだ!何が知的だ!ただの猫かぶりじゃねぇか!)
 レイナは、はらわたが煮えくりかえりそうな気分になった。
 「もちろん、レイナさんが正室なのはわきまえるつもりですよ?」
 リースはしれっと言う。
 「正室って!アナタ!!」
 「だって、この国は一夫多妻でもいい国じゃないですか?あの、ガウム村長ですら奥さん三人居ますよ??封印の巫女の守り人でも、それは例外ではないはずですぅ~。人の恋愛は自由なはずですよ~。」
 (コイツ!コイツ!!わざと私がムカつくように言ってやがる!!)
 レイナが怒りにぷるぷると震えていると、それをみていないふりをし、リースはソーマの横へ走って行った。
 レイナは自分の嫌な予感が的中したと、頭を抱え、天を仰いだ。
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