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クエスト 山神様討伐

クエスト 山神様討伐 7

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 「もう、分かってるだろ?賢人様よ。文字通り、子供達はグレゴールの糧になったんだよ。」
 「そ……そんな事、許されるはずないでしょ!?あなた、今、何て言ったか分かってるの!?」
 「ああ。分かってるさ。糧だ。言い換えれば餌だな。」
 
 怒りのあまりに震えているナルとは違い、何も感じない。当然の事のようにアルステンは言い放った。そして。

 「もう、めんどくせえ。時間もそろそろいい頃合いだろう。おい。グレゴール。あの女二人を食え。」
 
 そう言い、アルステンとエルステンは背中を見せ、この場を後にする。

 「待て!くそやろう!!話はまだ終わってない!逃げるな!!止まれよ!!!アルステン!!!!」

 日頃、言わない言葉や大声でナルはアルステンを罵るような勢いで叫ぶ。しかし、アルステンは振り返る事もしない。

 「『ホーリーアロー』!!」

 ナルは振り返らず進むアルステンに光の矢を放つ。
 しかし、グレゴールが飛躍しアルステンに迫る、その魔法を弾いた。

 「えっ?!」

 魔法が弾かれた事にナルは驚き、その瞬間にグレゴールはまた飛躍し一気にナルの目の前に現れた。
 そして、鋭い爪でナルに襲い掛かる。
 あまりの速さに、ナルは障壁を張れない。
 やられる!そう、ナルが思った瞬間。

 「……『サンダーバインド』。」

 ララが唱えた雷の鎖がグレゴールを捕らえる。

 「……ナル。落ち着いて、早く後方へ。」
 「あ、ありがとう!ララ。」

 ララに礼を言い、ナルはララの後方へ避難した。
 ナルが逃げたのと同時にグレゴールは雷の鎖を断ち切る。

 「どういうこと?魔法が効かないの??」
 「……『サンダーバインド』で少し動きを封じられたから……全く効かないわけじゃないだろうけど……効き難いと思う。」

 ララはエクスカリバーを構え、ナルは呪文を次々と詠唱し、ララに付与してていく。

 「『プロテクト』。『スピード』。『アタック』。」
 「……ありがとう。」

 強化魔法を付与されたララは、グレゴールに斬りかかる。
 グレゴールはそれを爪で返り撃つが、強化されているララの攻撃を防ぎきれない。
 そして、グレゴールの片手をララは切り落とした。
 バチャン!っと水風船が落ちて破けるような音がする。それは、肉塊になったはずの腕が落ちる音とは明らかに違っていた。
 ララはその事に驚き、グレゴールから距離を取る。
 落ちた片腕は、スライムが再生するようにグレゴールに吸収された。そして、グレゴールの腕は再生する。

 「あれは、スライムなの??熊型の……。」
 「……そうかもしれ……ない。アルステンは……スライムか熊か……言葉を濁していたけれど……スライムだと思って……対応した方がいいかもしれないね。それなら……魔法が効き難いのも……頷ける。コアを……探さないと。」
 「そうね。スライムだと考えて処理しましょう。どうするの?ララ。」
 「……ん。考えは……ない。とりあえず、切り刻んでみる。」

 ララは駆け出し、グレゴールに再び斬りかかる。
 それをグレゴールは迎え撃つが、力の差は歴然だった。
 ララはグレゴールを切り刻む。しかし、コアは見つからない。
 水風船の弾けるような不自然な音が嫌に耳につき、時間だけが過ぎていく。
 この村までやってきた道のりと、時間も深夜、睡眠もとれなかった状態で流石のララも息を上げ始めていた。
 グレゴールの体をいくら切り刻んでも、決定打にはならない。肝心な急所である、頭や首、心臓の部分にはグレゴールの抵抗もあり、剣は届いていない。このままだと、ジリ貧でララの体力が尽きてしまう。回復魔法で回復は出来てもこの状態が続くのはかなり危険だ。
 それに、一刻も早くアルステンに追いつかねばならない。
 もう、静観している余裕もない。ナルは状態を更に把握する。
 グレゴールは魔法が効きにくいという、スライムの特性を持っている。そのくせに、野生の熊のような、鋭い爪、牙を持ち、モンスターのような異常な俊敏性と怪力を持っている。
 スライムなら半透明でコアが確認出来るのだが、グレゴールは体毛の変わりに体毛と同じような色を持っている。コアの位置がその色で分からなくなっていた。
 ナルは攻撃魔法はさほど得意ではない。支援、回復魔法に特化した魔術師。仮に杖で殴打する事は出来ても、ナルの力では普通のスライムを殴殺出来る力もない。そもそも、スライムを殴殺、圧殺する事自体が難しい。コアに関係なく、潰すしかないのだから、スライム自体を丸ごと殴殺出来る技か、ハンマーなどの巨大な武器。圧殺出来るような、重力系の魔法が使えないと無理な話だ。
 グレゴールを丸ごと圧殺出来る魔法はララでも難しいだろう。
 ナルに出来る事は、ララがコアを発見し、護身用に持っている短剣でコアを破壊するくらいだ。
 しかし、まだその前に出来る事があった事をナルは思い出した。
 
 「『ライトバインド』!」

 そう。グレゴールには少しの間だが、束縛魔法が通用したのだ。
 一瞬、グレゴールは捕縛され、そのすきに、ララは飛び、グレゴールの頭を切り落とし、頭を切り刻む。
 すると、その破片の隙間から、コアらしき物が姿を現した。

 「それが、きっとコアだよ!任せて!!」
 「……うん。」

 ナルは短剣を抜き、グレゴールが再生する前に素早く投擲する。
 見事に投擲した短剣はグレゴールのコアを貫いた。
 その瞬間、グレゴールの断末魔の叫びが響き、頭を無くしたグレゴールの体はスライムのように力を無くし、液体に変わったのだった。 
 
 「……やった。流石、ナル。」
 「えへへへ。投擲には自信あるのよね。それより、大丈夫?ララ??」
 「うん。……大丈夫。少し疲れたけど……早く、アルステン達を追わないと……。」
 「そうだね。急ぎましょう。」

 ララ達は駆け出した。しかし、それを見計らったかのように、突然の爆発音と振動が辺りを包み始めた。

 「ちょ!?何よ?!何が起こってるの?
!」
 「………爆発?……ハメられた……?」

 あっという間に爆発音はララ達に近づき飲み込んでしまった。
 
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