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決められた運命
決められた運命 1
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ララが聖剣を抜いてから3日が経ち、その日から、カルム村の運命も変わってしまった。
穏やかだった村の雰囲気はあっという間に殺伐とした物になり、たまにしか襲って来なかったモンスターが昼夜問わず、襲ってくるようになったのだ。
この状況は非常にまずい。困窮している村では、魔石でモンスター除けの結界もはれず、モンスターを駆除出来る、冒険者も雇えない。
魔法の使えるエルフ、何とかモンスターに対抗出来ていたが、それも長くは続かないだろう。
しかも、300人程度と人口の少ない小さな村だ。昼夜問わず襲われると、休息もまともに取れず、疲労の色が目に見えて分かる。エレノアや村長が言葉を濁した理由はこの為だった。
一方、ララは、聖剣を抜いた直後から、気を失い、眠ったまま意識が戻らない状態だった。
抜いた者に、多大な力を与えるとされる聖剣は、岩から抜けたものの、他の者が鞘から聖剣を抜こうとしても、聖剣は鞘から抜ける事は無かった。それどころか、聖剣は大人数人で抱え上げないといけないくらい重く、使えない聖剣に村人は溜め息しか出ない状態だった。
そして、4日目の朝。
遂に、村の防衛が破綻する。今までにないようなモンスターの群れが、村へ攻め込んできたのだ。
「何だ!このモンスターの大群は!?」
「くそ!何で、魔法も使えねえモンスターが火なんて使えるんだよ!?」
「消火が間に合わせない!一旦、村の中央に……ぐわ!!」
「いや~!家が!!私達の家が!!!」
「家なんか、諦めろ!!また、建て直せばいい!!今は、命の事だけ考えるんだ!!!」
「若い男は、足止めだ!女、年寄りを守れ!!」
村のあちらこちらから、大声と悲鳴が聞こえ始める。
そして、ララ達の所にも、伝令が来る。
「婆様!早く、村の中央へ!!モンスターと火の手が迫ってる!!」
「……わしは、行けぬ。ララが居るからの。」
「若い者を数人、連れてくる!」
「いや、よい。わしらより、村の守りに行っておくれ。」
「しかし!」
「よいのじゃ……。これでも、少しはやれるからの。」
「……わかった。」
伝令を伝えに来た村人は何かを察したように、ララ達の家を後にした。
「ふう。……これでいいのじゃ。ララが死ねば、この騒動も治まるじゃろうて。すまんのぅ。ララや。ばあちゃんも一緒じゃから、許してやってくれよ。」
エレノアは眠ったままのララの髪を撫で、愁いに満ちた表情を浮かべ更に言う。
「……聖剣を抜いた日から、こうなる事は分かっておった。聖剣はモンスターを呼ぶ。長く生きておる者なら、その事は常識になっていると言ってよい……。しかし、何でじゃ。何でこの子なんじゃ……。ララはまだ、3歳なのじゃよ?この子は……。親の顔も知らぬ。贅沢も知らぬ。友という存在も知らず。恋というものも知らぬまま、その生を終えるのじゃ。神は、この子から親を奪って、未来を奪って……。自由を奪い、命まで奪うのか……。まだ、3歳なのじゃ!!この子が何をした!?わしの大事な孫が何をしたというのじゃ……!!」
エレノアは、身を震わせながら、大粒の涙を零し、ララの頭に手を置いたまま、撫でる事を止めなかった。
エレノアの悲しみとは裏腹に、相変わらず、家の外では、大声と悲鳴が止まない。
そして、村の中央部に近かったララの家にも遂にモンスターが押し寄せる。
「ギガ!グググガ!!」
ボロボロの剣を片手に持ったモンスター、ゴブリンが三匹、獣の皮で出来たドアを破り、中に入ってきた。
ゴブリンは、ララとエレノアを見るなり、醜悪な笑みを浮かべ、興奮状態になる。ターゲットを見つけたからだろう。
普段の野生ゴブリンなら、警戒して様子見をするだろうが、興奮状態のゴブリンは躊躇なく、ララ達を襲いに掛かる。
「すまぬの。ララ。こんな決断をした、ばあちゃんを許しておくれ。」
エレノアは、寝ているララに重なるように抱き付き、最後の時を待った。
しかし、ゴブリンの刃がエレノアの届こうとした時、抱き付いていたはずのララの感触がなくなる。
そして、届くはずだったゴブリンの刃はエレノアには届かなかった。代わりに、ゴブリンの血が辺りにまき散らされ、目の前にはゴブリンの首が転がった。
「どういう事じゃ……。」
エレノアは状況が掴めず、辺りを見渡す。
すると、そこには、自分の背丈より長い聖剣を振り回すララの姿が映り出された。
「……なんて……事じゃ。」
ララが聖剣を振り回す姿は異様だった。
体を何かに乗っ取られたように、聖剣がララの体を操っているかのように、一方的に聖剣が動いているように見えたのだ。
三匹のゴブリンはあっという間に片付けられる。
「……ララ?」
その光景を見て、エレノアはララに恐る恐る、声を掛ける。
そして、ララはその声に応えるように、エレノアの方を見て微笑んだ。
その瞳の色は完全に別人の色に変わっていた。薄いゴールドだった瞳は、青く輝く瞳に変わっていたのだ。変わっていたのは、瞳の色だけではない。白く美しかった肌は、更に美しさを増し、真珠のような艶と輝きを放っていた。その姿は、人と思えない程だった。
穏やかだった村の雰囲気はあっという間に殺伐とした物になり、たまにしか襲って来なかったモンスターが昼夜問わず、襲ってくるようになったのだ。
この状況は非常にまずい。困窮している村では、魔石でモンスター除けの結界もはれず、モンスターを駆除出来る、冒険者も雇えない。
魔法の使えるエルフ、何とかモンスターに対抗出来ていたが、それも長くは続かないだろう。
しかも、300人程度と人口の少ない小さな村だ。昼夜問わず襲われると、休息もまともに取れず、疲労の色が目に見えて分かる。エレノアや村長が言葉を濁した理由はこの為だった。
一方、ララは、聖剣を抜いた直後から、気を失い、眠ったまま意識が戻らない状態だった。
抜いた者に、多大な力を与えるとされる聖剣は、岩から抜けたものの、他の者が鞘から聖剣を抜こうとしても、聖剣は鞘から抜ける事は無かった。それどころか、聖剣は大人数人で抱え上げないといけないくらい重く、使えない聖剣に村人は溜め息しか出ない状態だった。
そして、4日目の朝。
遂に、村の防衛が破綻する。今までにないようなモンスターの群れが、村へ攻め込んできたのだ。
「何だ!このモンスターの大群は!?」
「くそ!何で、魔法も使えねえモンスターが火なんて使えるんだよ!?」
「消火が間に合わせない!一旦、村の中央に……ぐわ!!」
「いや~!家が!!私達の家が!!!」
「家なんか、諦めろ!!また、建て直せばいい!!今は、命の事だけ考えるんだ!!!」
「若い男は、足止めだ!女、年寄りを守れ!!」
村のあちらこちらから、大声と悲鳴が聞こえ始める。
そして、ララ達の所にも、伝令が来る。
「婆様!早く、村の中央へ!!モンスターと火の手が迫ってる!!」
「……わしは、行けぬ。ララが居るからの。」
「若い者を数人、連れてくる!」
「いや、よい。わしらより、村の守りに行っておくれ。」
「しかし!」
「よいのじゃ……。これでも、少しはやれるからの。」
「……わかった。」
伝令を伝えに来た村人は何かを察したように、ララ達の家を後にした。
「ふう。……これでいいのじゃ。ララが死ねば、この騒動も治まるじゃろうて。すまんのぅ。ララや。ばあちゃんも一緒じゃから、許してやってくれよ。」
エレノアは眠ったままのララの髪を撫で、愁いに満ちた表情を浮かべ更に言う。
「……聖剣を抜いた日から、こうなる事は分かっておった。聖剣はモンスターを呼ぶ。長く生きておる者なら、その事は常識になっていると言ってよい……。しかし、何でじゃ。何でこの子なんじゃ……。ララはまだ、3歳なのじゃよ?この子は……。親の顔も知らぬ。贅沢も知らぬ。友という存在も知らず。恋というものも知らぬまま、その生を終えるのじゃ。神は、この子から親を奪って、未来を奪って……。自由を奪い、命まで奪うのか……。まだ、3歳なのじゃ!!この子が何をした!?わしの大事な孫が何をしたというのじゃ……!!」
エレノアは、身を震わせながら、大粒の涙を零し、ララの頭に手を置いたまま、撫でる事を止めなかった。
エレノアの悲しみとは裏腹に、相変わらず、家の外では、大声と悲鳴が止まない。
そして、村の中央部に近かったララの家にも遂にモンスターが押し寄せる。
「ギガ!グググガ!!」
ボロボロの剣を片手に持ったモンスター、ゴブリンが三匹、獣の皮で出来たドアを破り、中に入ってきた。
ゴブリンは、ララとエレノアを見るなり、醜悪な笑みを浮かべ、興奮状態になる。ターゲットを見つけたからだろう。
普段の野生ゴブリンなら、警戒して様子見をするだろうが、興奮状態のゴブリンは躊躇なく、ララ達を襲いに掛かる。
「すまぬの。ララ。こんな決断をした、ばあちゃんを許しておくれ。」
エレノアは、寝ているララに重なるように抱き付き、最後の時を待った。
しかし、ゴブリンの刃がエレノアの届こうとした時、抱き付いていたはずのララの感触がなくなる。
そして、届くはずだったゴブリンの刃はエレノアには届かなかった。代わりに、ゴブリンの血が辺りにまき散らされ、目の前にはゴブリンの首が転がった。
「どういう事じゃ……。」
エレノアは状況が掴めず、辺りを見渡す。
すると、そこには、自分の背丈より長い聖剣を振り回すララの姿が映り出された。
「……なんて……事じゃ。」
ララが聖剣を振り回す姿は異様だった。
体を何かに乗っ取られたように、聖剣がララの体を操っているかのように、一方的に聖剣が動いているように見えたのだ。
三匹のゴブリンはあっという間に片付けられる。
「……ララ?」
その光景を見て、エレノアはララに恐る恐る、声を掛ける。
そして、ララはその声に応えるように、エレノアの方を見て微笑んだ。
その瞳の色は完全に別人の色に変わっていた。薄いゴールドだった瞳は、青く輝く瞳に変わっていたのだ。変わっていたのは、瞳の色だけではない。白く美しかった肌は、更に美しさを増し、真珠のような艶と輝きを放っていた。その姿は、人と思えない程だった。
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