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確かなモノは闇の中……
確かなモノは闇の中……5(イリア編)
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闇夜は不安を更に大きくさせる。
もし……ヤマト様が本当に……。
いや、そんな事は絶対にない。
……そんな事が絶対にないって言い切れるの?
「うぅ……ヤマト様……。」
不安で押し潰されそうだ。一刻も早く、ヤマト様を見つけないと。
そんな中、何かが近寄ってくる足音が聞こえる。
モンスター?アンデッドが出るには、まだ早いはず。
「イ、イリア?!」
現れたのは、麗月を構えた、ヤマト様だった。
安心してか、一瞬に脱力する。
良かった……。ヤマト様、無事だった。
「ヤ、ヤマドざば~。よがっだ~。」
私は、ヤマト様の胸に飛び込んだ。
良かった。本当に良かった。
ヤマト様を連れて、家に帰る。その道中、色々と聞きたい事があった。しかし、肝心な言葉が出ない。当たり障りのない、普通の言葉は出るのに。
なんで、こんな森に来たのか?
なんで、いきなり走り去ったのか?
なんで、最近、様子がおかしかったのか?
あまりにも不自然過ぎる。口にしたい言葉が上手く喋れない。おかしい。何かが……。いや、全て……。
そう気がつくのが遅すぎた。
どこか見覚えのある夜空。月は無く、星の美しさが際立っている。
ヤマト様は、この美しい星を見に庭へ出たのだろうか?
「ヤマト様。どうなさったのですか?随分、昼間は暑くなりましたが、夜はまだ冷えますよ。」
ヤマト様が苦しい思いをするのは見ていられない。
「……綺麗だな。今日は月が出ていなんだな。」
やはり、この綺麗な星を見に庭へ来られたのだ。
「そうですね。綺麗です。月が出ていない分、星が綺麗に見えますね。」
「あの日も……新月で、星が綺麗だったよな。」
あの日?前にみんなでこの家に帰って来た時のことかな?それ以外に思い当たらない。
「……え?ああ……前に実家にみんなで挨拶に来た時ですか?」
しかし、ヤマト様の表情は『そうじゃない。』と物語っているようだ。
「もう、30年以上も前の話になるのか……。あんなに小さかったのに、俺達、大きくなったよな。お前、よく泣いてたな。あの時。」
あの時?なんの事を言っているのだろう?ヤマト様は??
そう思った瞬間、頭に痛みが走る。
「今考えれば、人間の俺に魔法なんて使えないよな。でも、イリア、一生懸命、教えてくれたな……。」
その頭の痛みは一瞬だった。しかし、その痛みが消え、全ての事を思い出した。いや、忘れる事はなかった事なのに、なぜ忘れていたか分からなかった。
混乱して、言葉が零れ落ちる。
「な、なんで……そんな。」
ヤマト様が、幼い頃の記憶を取り戻している?
ヤマト様が森に向かったのは、私と出会った場所を確かめるため??
「おじさんやおばさんも相変わらず、若いままだし、俺がまたこの世界に来るとは思わなかったよ。」
有り得ない。女王様が小さいヤマト様を守る為に施した魔法が解けた?そんなはずはない。でも……。
「なあ、イリア。俺はお前達に騙されていたのか?俺はお前達にハメられてこの世界に居るのか?お前やターニャさん、女王様は嘘をついているのか?」
混乱した私に、ヤマト様は言葉を矢継ぎ早に続ける。
なんで、ヤマト様はそんな事を思うのだろう?
確かに、私はヤマト様をハメてこの世界の住人にした。
でも、女王様やターニャは違う。
そう言葉にしようとしたけれど、声が出ない。その代わりになぜか涙が流れる。
「………。」
もう、自分が……自分自身が何が何だか分からなかった。
釈明しようとする言葉すら出ない。
なんで、涙なんて流れるの……。これじゃ、ヤマト様は勘違いしてしまうかもしれないのに……。
私の事は断罪されるかもしれないけれど、女王様やターニャは違う。
何とか言葉を……。
しかし、話そうとする度に、涙だけ零れ落ちる。
それを見た、ヤマト様は、悲壮感の漂う顔で私の隣を通り過ぎた。
私は、そんなヤマト様を引き留める事も出来なかった。
もし……ヤマト様が本当に……。
いや、そんな事は絶対にない。
……そんな事が絶対にないって言い切れるの?
「うぅ……ヤマト様……。」
不安で押し潰されそうだ。一刻も早く、ヤマト様を見つけないと。
そんな中、何かが近寄ってくる足音が聞こえる。
モンスター?アンデッドが出るには、まだ早いはず。
「イ、イリア?!」
現れたのは、麗月を構えた、ヤマト様だった。
安心してか、一瞬に脱力する。
良かった……。ヤマト様、無事だった。
「ヤ、ヤマドざば~。よがっだ~。」
私は、ヤマト様の胸に飛び込んだ。
良かった。本当に良かった。
ヤマト様を連れて、家に帰る。その道中、色々と聞きたい事があった。しかし、肝心な言葉が出ない。当たり障りのない、普通の言葉は出るのに。
なんで、こんな森に来たのか?
なんで、いきなり走り去ったのか?
なんで、最近、様子がおかしかったのか?
あまりにも不自然過ぎる。口にしたい言葉が上手く喋れない。おかしい。何かが……。いや、全て……。
そう気がつくのが遅すぎた。
どこか見覚えのある夜空。月は無く、星の美しさが際立っている。
ヤマト様は、この美しい星を見に庭へ出たのだろうか?
「ヤマト様。どうなさったのですか?随分、昼間は暑くなりましたが、夜はまだ冷えますよ。」
ヤマト様が苦しい思いをするのは見ていられない。
「……綺麗だな。今日は月が出ていなんだな。」
やはり、この綺麗な星を見に庭へ来られたのだ。
「そうですね。綺麗です。月が出ていない分、星が綺麗に見えますね。」
「あの日も……新月で、星が綺麗だったよな。」
あの日?前にみんなでこの家に帰って来た時のことかな?それ以外に思い当たらない。
「……え?ああ……前に実家にみんなで挨拶に来た時ですか?」
しかし、ヤマト様の表情は『そうじゃない。』と物語っているようだ。
「もう、30年以上も前の話になるのか……。あんなに小さかったのに、俺達、大きくなったよな。お前、よく泣いてたな。あの時。」
あの時?なんの事を言っているのだろう?ヤマト様は??
そう思った瞬間、頭に痛みが走る。
「今考えれば、人間の俺に魔法なんて使えないよな。でも、イリア、一生懸命、教えてくれたな……。」
その頭の痛みは一瞬だった。しかし、その痛みが消え、全ての事を思い出した。いや、忘れる事はなかった事なのに、なぜ忘れていたか分からなかった。
混乱して、言葉が零れ落ちる。
「な、なんで……そんな。」
ヤマト様が、幼い頃の記憶を取り戻している?
ヤマト様が森に向かったのは、私と出会った場所を確かめるため??
「おじさんやおばさんも相変わらず、若いままだし、俺がまたこの世界に来るとは思わなかったよ。」
有り得ない。女王様が小さいヤマト様を守る為に施した魔法が解けた?そんなはずはない。でも……。
「なあ、イリア。俺はお前達に騙されていたのか?俺はお前達にハメられてこの世界に居るのか?お前やターニャさん、女王様は嘘をついているのか?」
混乱した私に、ヤマト様は言葉を矢継ぎ早に続ける。
なんで、ヤマト様はそんな事を思うのだろう?
確かに、私はヤマト様をハメてこの世界の住人にした。
でも、女王様やターニャは違う。
そう言葉にしようとしたけれど、声が出ない。その代わりになぜか涙が流れる。
「………。」
もう、自分が……自分自身が何が何だか分からなかった。
釈明しようとする言葉すら出ない。
なんで、涙なんて流れるの……。これじゃ、ヤマト様は勘違いしてしまうかもしれないのに……。
私の事は断罪されるかもしれないけれど、女王様やターニャは違う。
何とか言葉を……。
しかし、話そうとする度に、涙だけ零れ落ちる。
それを見た、ヤマト様は、悲壮感の漂う顔で私の隣を通り過ぎた。
私は、そんなヤマト様を引き留める事も出来なかった。
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