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アリシア

アリシア19

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 メリーさんの肉は、やはり焼くと独特の香りがした。これは、ラム肉と言うよりマトンだろう。これがダメだって人も居るくらいだしな。俺は気にならんが。ララは気になったようだ。
 「……マスター。メリーさんのお肉、焼くときは換気が重要。あと、フライパンで焼くときは焼いて出た脂は捨てた方がいい。その方が臭みがなくなる。」
 と、言うことは、脂身に独特な匂いがあるんだな。まあ、とりあえず、一口食べてみないと。
 こんがり焼き色のついたメリーさんの肉は、見るからに美味そうだった。
 ナイフで切り分け、ララと二人で味見をする。
 ……うん!美味い。ジューシーで独特の臭みもほとんどない。ララが言ったように、途中で脂を捨てたからかな?これなら、パン粉をまとわせて揚げるのもいいかも。……あっ。香草パン粉でもいいかもな。揚げ焼きにしてもいいだろう。
 「どうだ?ララ、メリーさんの肉、美味いか?」
 「……うん。焼き加減も最高にいい……と思う。」
 やはり、ララは元気がなかった。
 「どうした?ララ。元気ないな。任務で疲れたのか?」
 「んん……。任務は疲れたけれど……イリア達が羨ましいな……って思って……。」
 ……ああ。そうだったのか。ララは幼少期からパーティーメンバー以外は友達も居なかったって言ってたな。学校にも行けなかったって。単純に羨ましかったんだ。
 何か、勇気付けてあげられる言葉をかけてあげたいけど……上手く思い付かない。
 「なあ……ララ。ほら、今は俺も居るじゃないか?イリア達も居るし……。俺達、家族が居るだろ?」
 ララはそれを聞いて、少し微笑んでくれたが、そこから無言になった。
 重い雰囲気の中、料理を進める。メリーさんの肉の香草パン粉揚げが完成し、料理を持って二階に上がる事にした。

 「ああ……。やはり、主様の料理は最高ですね。」
 エリはナイフとフォークをちゃんと使い、上品に綺麗に食べながら言う。
 「しょうでしゅね……もぐもぐ。ヤマトしゃまの料理は……もぐもぐ。しゃいこうでっしゅ。」
 イリアはその外見から想像出来ない程、ワイルドに骨を手で持ってかぶりついている。
 「ちょっと、イリア。食べ方が汚いよ。食べかすが口の周りに付きまくってるし、口の中の飲み込んで話してよ。」
 「何を言っているのですか、アリシア?イリアお嬢様はアレだから可愛らしいのですよ??見て下さい。口についた食べかす。リスのように膨らんだ頬。ああ……なんと残念なお姿。あんなに可憐そうに見えるのに、残念。あのお姿こそ、イリアお嬢様なのですよ。」
 アリシアは普通の事を言い、ターニャさんは相変わらずイリアに対しては変わった事を言う。
 やはり、ララは取り残されている感じだった。
 「なあ、今回の任務はどうだったんだ?」
 俺はとりあえず、任務の事をイリア達に聞く事にした。これなら、ララも入れるだろう。
 「……変な任務……だった。一言で言えば……。」
 ララは直ぐに反応した。
 「ええ。そうですね。ララの言うとおり、変な任務だったと思います。」
 エリは考えながら言う。
 「変な任務って、どういう風に変だったんだ?」
 「そうですね。全てがおかしいと言っていいと思います。」
 俺の問いにターニャさんが答える。
 「しょうでしゅっね。わたしゅも、おうきゅうまじゅっつし。」
 「イリア。口の中の飲み込んで話してよ。何て言ってるか分からないよ。」
 イリアはアリシアに注意される。
 流石のイリアも言われた事に従い、口の中の物を飲み込んで話す。
 「私も、王宮魔術師として二十年以上働いていましたが、この用な事は初めてでした。これは、エリ達も同じだと思います。」
 「どういことだ?」
 「全てが奇妙だったのです。」
 「奇妙?」
 「はい。起こった事も奇妙ですし、こんな事が有り得るのか?それさえ疑問でした。」
 何だ?何があったんだ??
 「……うん。あれは、おかしいと……思った。複数のダンジョンでモンスターが異常発生したの。」
 元勇者だったララがおかしいと思うくらいだから凄いのだろう。でも、イマイチ、ピンとこないな。
 「複数のダンジョンってどのくらいだ??」
 「そうでございますね……。王宮の兵士達が近衛以外に全て出払った。それくらい、複数のダンジョンで異常発生したのです。」
 は?それってどんだけ??
 「え?それってどのくらいだよ?!」
 「イリアお嬢様達にも任務として依頼が来るくらいですから、かなりのダンジョンのはずです……正確には分からないのですが……。この国だけでも、ダンジョンはかなりの数がございますし、次々と異常発生するダンジョンが増えた。そのような状態でした。」
 どういことだ?
 「……それに、それだけじゃなかった。モンスターの異常発生は、地上も地下も二階層で起きたの……。二階はどのダンジョンもあまり強いモンスターは居ない。それに、ちゃんと魔石やドロップアイテムを回収する時間が……あった。」
 「それって……かなりおかしくないか?」
 「……うん。おかしい。ダンジョンは普通、常にモンスターが次々と生まれ続けている訳ではないし……そんなに規則正しく生まれない。ある程度の数がダンジョンを徘徊し、倒されたら生まれる。そう言われているの。でも、数も異常。日数も異常。アイテムを回収出来る時間がちゃんとあるなんて有り得ない……。」
 「そして、それも、今日の夕方に突然終息したのです。他のダンジョンも全て。」
 「そんな事ってあるのか?」
 「……主様。普通では有り得ません。女王様は、神々の気まぐれだと言っておられましたが……神々の気まぐれでも異常です……いや。これ以上の事は言うのは止めましょう。嫌な予感しかしませんから。それに、悪い事ばかりではなかったのですよ。」
 ん?エリが何か言いかけたのは気になるが、悪い事ばかりではなかった?どういことだ??
 「それは、どういことだ?」
 「それはですね~。じゃじゃ~ん!」
 イリアが食い気味に何かを俺に見せる。
 「なんだ?これ??」
 紙に数字が書かれてる。
 「小切手ですよ。小切手。今回、メリーさんを大量に狩ったので、その魔石代などを合計した報酬ですよ~。凄くないですか??」
 えっと……一、十、百、千……おえ?!八千万エルフォン!?ええ!?
 「ふふふふ。凄いでしょ。ヤマト様。これで、新しいお店を大きくしたり、別に住宅をかまえたり、代金を払ったり出来ますよ~。どうですか?私達の事、見直したでしょ~。」
 「え?でも、この金って、お前達が頑張った金だろ?」
 「何をおっしゃっていらっしゃるのですか?主様。わたくし達は家族。ならば家族の為に使うのが当たり前ではありませんか?」
 「うん……。そう。家族だから、当たり前。」
 「そうですね。ヤマト様がご自由にお使い下さい。」
 エリやララ、ターニャさんも口々にそう言う。
 うお~~~ん。
 俺が感動したのは言うまでもない。
 
 そして、スプリンティア当日。
 前日の仕込みも終わり、俺達は家である人物が来るのを待っていた。
 そして、待ち人が家に到着する。
 「やあ。ヤマト君。おはよう。君に頼まれていた物を届けに来たよ。」
 「おはようございます。ヤマト様。」
 魔王様とイーシャさんだ。二人は大きな包みを抱えている。
 「おはようございます。魔王様、イーシャさん。朝早くから申し訳ありません。」
 「いやいや。いいよ。僕達もスプリンティアを楽しむつもりだったからね。はい。それより、頼まれていたものだよ。」
 俺は魔王様達から包みを受け取る。
 ふふふ。イリア達がスプリンティアに間に合って良かったぜ。
 「お~い。ちょっと荷物を取りに来てくれ~。」
 俺は二階にいる。イリア達を呼ぶ。
 「は~い。」
 みんな、あの狭い部屋から出てきた。
 「あ!魔王様!イーシャ姉さん、お久しぶり!!」
 魔王様とイーシャさんに気がついたアリシアはイーシャさんに抱きついた。
 「久しぶりです。アリシア。元気にしていましたか?」
 イーシャさんはアリシアを抱きしめ、頭を撫でる。
 「……五着要るって言われた時に、嫌な予感がしたんだよ。まさか……ウチの娘に手を出すとは……ヤマト君!!」
 魔王様は物凄いオーラを放つ。
 ま、まさか!俺、今日、死ぬ?!
 「えへへへ。魔王様、ボクの家族です。ボクにも家族が出来たんです。」
 アリシアは俺とイリアを引き寄せ、ララ達の所まで戻り、魔王様にそう言う。
 「……家族?まあ、ヤマト君にはその権利が……おや?アリシア、カラーコンタクトはどうしたんだい?」
 「うん。カラーコンタクトは外しました。ボクもちゃんと自分自身と向き合って生きていこうと思って……。」
 アリシアの言葉を聞いて、魔王様のオーラは一瞬で消えた。
 「……そうか。そうなんだね。ヤマト君、脅かせて申し訳なかった。アリシアを……娘をよろしく頼むよ。」
 魔王様はそう言い、俺に頭を下げた。
 「え!そんな、顔を上げて下さい。魔王様。」
 それを聞いて魔王様はゆっくりと顔を上げながら言う。
 「ヤマト君……娘を泣かせたら……分かっているだろうね?」
 鬼の形相だった事は言うまでもない。

 魔王様が帰宅後、俺達は出店へ向かう。
 「ねぇ……ヤマト君。これって何?」
 アリシアは歩きながら俺にたずねる。
 「ん?俺達の店って夏に新しくなるじゃないか?」
 「うん。」
 「そうしたら、新しい制服が要るだろ?」
 「え?そうなの??」
 「そうそう。せっかくだから、みんな同じ制服を着た方がいいの。」
 「で……この服なんだ。」
 アリシアは不満そうに言う。
 「いいではありませんか?私はこの服好きですし、憧れていましたよ。」
 「……うん。可愛い。」
 イリアは喜び、ララは気に入ったのか、その場でくるりと回ってみせる。
 うんうん。やはり俺の目に狂いはなかった。
 「……わたくしは……少し恥ずかしいです。わたくしなんかに……このような服は似合いません。」
 エリは戸惑っているようだ。
 「何言ってる。エリ、よく似合ってて可愛いぞ。」
 うん。実際、物凄く可愛い。
 「……主様。」
 あらら、赤くなって、立ち止まっちゃったよ。
 「私としては、着慣れていますが……露出が少し多いように思えます。」
 「そうか?これから、あたたかくなるからな。この方が涼しくて良いだろ?」
 「まあ……そう言われると納得するしかありません。」
 「寒くなったら、もう少しあたたかそうなメイド服を頼むよ。」
 そう。制服として俺はメイド服を採用したのだ。ターニャさんは日頃着ているから着慣れているな。
 まあ、ターニャさんが何時も着ているのより、露出は多いけどね。色は王道の白黒。パフスリーブに、スカートはかなり短い。フレンチスタイルだったかな?あまり露出を好まないエルフとしては抵抗があるだろう。ニーハイのソックスは用意したけど、アームカバーも必要かな??
 いや、暑くなるとパフスリーブをノースリーブにするのもありか?いっそのこと、和風スタイルというのも良いのでは!?
 んんん~。悩ましい……。
 そんな事を考えていると、あっという間に出店に着いた。
 ふむ。着いてしまったのなら、仕方がない……。このメイド服の最後の仕上げをせねばなるまい。
 「お~い。ちょっと集まってくれ~。」
 俺はみんなを集める。
 「何ですか?ヤマト様??」
 イリア達は一様に不思議そうな顔をする。
 「うぉっほん。諸君、今回の出店は今後、夏にオープンする我が新しい店の試金石になるだろう。諸君達の適性を判断する材料になる。」
 俺の言葉で少しピリッとした空気になる。
 「もちろん、ララは調理担当、イリアは調理を担当しないのは揺るぎないが、イリア、エリ、ターニャさん、アリシアの適性を判断する。エリとアリシアには少し調理を担当してもらうかもしれない。覚悟するように。」
 「「はい!」」
 うむ。なかなか、ノリがいい。
 「イリア、エリ、ターニャさん、アリシアには、ローテーションで接客とお客さんの誘導をやってもらう。いいな。」
 「「「「はい!!」」」」
 ふむ。気持ちがいい。
 「それでは、皆にこれを渡す。」
 そう言い、俺は皆にある物を渡した。
 「……ヤマト様。これは?」
 イリア達は珍しそうに見る。
 「うむ。ネコ耳だ。」
 俺は自信満々に言う。
 「……え?ネコ耳??」
 アリシアは意味が分からない。と言うように首を傾げて言う。
 「正確に言うと、ネコ耳型のカチューシャだ。いや~。普通のメイド服さんのカチューシャにしようか、迷ったんだけどな。この世界、ネコ耳さん居ないだろ?コスプレとかも無いしさ、だから思い切ってネコ耳にしたわけよ~。絶対、お前達に似合うと思って~。魔王様にメイド服と一緒に作ってもらってたんだ~。ほらほら、はめてみてよ。」
 イリア達はお互いに見合い、おもむろにネコ耳を装着した。
 「……ど、どうですか?主様……わたくしに、このような物が、似合いになるとは……。」
 エリは照れながらこちらを見る。
 ふぁお~!!な、なんて破壊力だ……耳の長いエルフにネコ耳は似合うのか心配だったが……これは最高の組み合わせなのではないか?エリの褐色の肌と銀髪、それに合わせた銀色のネコ耳。スタイル抜群のエルフに似合わないわけがなかった。いや、エリは更に巨乳ちゃんだから……こりゃ、ナイスなチョイスだわ。ちゃんとエリ達の身体の傷の事も考えて魔王様に頼んだかいがあったわ~。
 「(ウッヒョ~!!これはたまらんですばい!!おいどん、こげん可愛らしかエルフば見たんは初めてじゃけんの~。やはり、こん男はただ者ではないさ~。なまらすげ~ど~。よし!やはり、おいどん、こやつに決めもうしたでごわす。」
 俺がエリに感心していると、どこからか変な聞き覚えのある声が聞こえた。
 俺は周りを見渡す。しかし、俺に話し掛けてきた人物は見当たらない。
 俺の空耳??
 まあ、いいか、それよりちゃんと褒めてあげないとな。
 「エリ!凄く似合ってるよ。とても可愛いぞ。写メに撮って永久的に残したい気分だよ。」
 「そ……そんな。嬉しいです。」
 ちなみにスマホはこの世界に持ってきてある。ズボンのポケットに入っていたから、でも、流石に充電切れで使う事は出来ないが。
 エリを褒めたら、皆も褒めないとな。
 「皆、凄く似合ってるよ。可愛い。」
 どうやら、その言葉で皆、納得したようだ。
 「よし!なら準備始めるぞ。」
 「分かりました。ヤマト様、でも少し待って下さい。」
 イリアは俺に少し待つように言う。
 ん?どうしたのだろう??トイレかな??
 「みんな、久しぶりにアレをやりましょう。」
 イリアはどうやら、何かをやりたいようだ。
 「アレ?……って何だい??」
 エリは不思議そうに首を傾げる。
 「あ~。もしかしたら、アレね。」
 アリシアはイリアのやりたい事が分かったようだ。そして、手を前に突き出し、一言、言う。
 「瞳の色で差別されない世界を。でしょ?」
 「はい!そうです。」
 イリアは満足げに笑い言う。
 「あ~。なるほどね。」
 「分かりましたわ。イリアお嬢様。」
 イリア、エリ、ターニャさん、アリシア、四人は一カ所に集まる。ララは一人ぼっちになった。
 それを見て、イリアはララに言う。
 「ララ!あなたもですよ!!」
 「え……でも……。私は……同じ学校ではない……。」
 ララは戸惑う。
 「何言ってんだい!ララ、オレ達はもう家族だろ?」
 エリはララにそう声を掛ける。
 「ええ。そうですよ。ララ。それに、もう私達は家族でもありますが、親友でもあります。」
 ターニャさんはにっこりと微笑んでララに言う。前までは勇者殿って言ってたのにな。やはり仲良くなってたんだな。
 「うんうん。ボク達はもう、親友で家族だよ。ララ。早くこっちにおいで。」
 アリシアもララに声を掛ける。
 俺はララの顔を見た。その瞳には、うっすらと光るモノが……。
 そして、ララは微笑み、駆け出す。イリア達の元へ。
 「ふふふ。やっと来ましたね。ララ。みんなが言うように、もう、私達は親友で家族なのですよ。運命共同体なのです。遠慮なんて要らないのですよ。」
 「そうそう。遠慮なんて要らないぜ。」
 「……うん。ありがとう。なら……一つ……やり方が分からない……。」
 イリアとエリ、ララの話し声が聞こえたと思ったら、今度は笑い声が聞こえた。そして、ターニャさんがララに何か耳打ちをした。
 そして。
 「瞳の色で差別されない世界を。」
 「誇りを持てる世界を。」
 「自由に生きられる世界を。」
 「みんなが笑って幸せに暮らせる世界を。」
 「……美味しい物を皆が食べられ、幸せだと思える世界を。」
 「「「「「共につくろう。」」」」」
 お互い手を前に突き出し、重ねていく。そして、みんな、頷く。
 「ボクの想いを。」
 「私の想いを。」
 「わたくしの想いを。」
 「オレの想いを。」
 「……私の想いを。」
 「「「「「捧げます。」」」」」
 重ねられた手は、想いを遠くに飛ばすように高々と掲げられた。
 そして、皆、笑い合い。
 「いや~。ララ、お前の言葉、最高だったぜ。」
 エリはそう言い、ララの肩を抱く。
 「そうですね。今の……ララの言った事が私達の目標なのでしょう。美味しい物を食べれるのは幸せですし、食べられる事は幸せです。武功でどれだけ世間に私達の存在を知らしめても、実際はそんなに影響は無いのかもしれません。喜ぶのは助けた人や国のお偉いさん方だけでしょう。地域によっては、私達の活躍も歪曲され、都合の良いようになっている事もあるでしょうし、全ての人が笑顔になる訳ではありません。武功で立てた功績の裏には必ず、泣く人が居るのです。」
 イリアは思い当たる節があるのだろう。考えるように言う。
 「そうでございますね。イリアお嬢様。この世界には、貧富の差も根強く存在しています。王都だけを見れば、そのような事を感じる事は少ないですが、この王都を出てしまえば、それを感じずにはいられません。食べ物を当たり前に食べれる。そんな当たり前の事が当たり前でなくなってしまう。そう言う状況は改善しないといけないと思います。」
 ターニャさんは真剣に言う。
 「そうだよね。貧富の差以外にも、ボクみたいな子供も沢山いるだろうし、食べれる喜びを教えたいよね。って……あっ!もしかて、ボク達が……瞳の色が違うボク達が!ボク達がやることで!!食を通じて世界を変えられるかもしれないよ!!いや、これはボク達にしか出来ない事だよ!!ボク達がやる!世界は変えられるよ!!!」
 アリシアは異常にテンションが上がったようだった。
 「……うん。私達だから出来る事が……ある。勇者が結局、厄災を跳ね退けても……現状は一時の安らぎを得るだけで……何も変わらない。また、厄災はやってくる。この世界が……欲しているのは……本当はそんな事じゃない。もちろん、勇者が厄災を跳ね退けるのは大事。王宮の兵士達が国を民を守るのも大事。でも、そんな事じゃないの……。美味しい物を食べれば、全てが変えられる訳ではないけれど……何かは変わる。笑顔に……なれる。貧しい村にも何か特産品がある。お米でも小麦でも……お魚でもお肉でも……何でもいい。お金だって手には入る。……私達だから、出来る事なの。私達がやる事に意味があるの……。」
 ララは何かを確信したように言い、頷く。
 「そうだな。俺達が出来る事は小さい事なのかもしれないけど、今は俺達でしか出来ない事だ。食べた人を皆、笑顔にしよう。この世界に食べる楽しみを広げよう。何時か、俺達と同じように、思いを一緒にしてくれる人達が増えるだろう。そうすれば、世界は変わる。変える事が出来ると思う。だから、頑張って、皆を笑顔にしてやろうぜ。」
 何か、ここに来た当初とは、少し考え方が変わったような気がする。最初は揚げ物を……カロリーや塩分なんか気にせずに美味しい物を提供出来れば嬉しかったが、より一層、食べてくれた皆が笑顔になってくれる事が嬉しい。
 イリア達とは思いが今は少し違うのかもしれないけれど、きっと辿り着くゴールは一緒だと信じて、前に進もう。一緒に……。
 俺は少しの高揚感を感じ、スプリンティアを迎えた。これで、食べに来てくれた人達を笑顔に出来たら、こんなに幸せな事はない。
 さあ、スプリンティアの開幕だ!気合い入れていくぞ!! 
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