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スプリンティア
スプリンティア10
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アリシアが魔法を放つ。
しかし、その魔法は、左右、白黒の羽根が一枚、空から降ってくる魔法だった。
なんで、こんな時にそんな魔法?と思ったが、その羽根がメズに触れた時に、俺は更にショックを受ける事になる。
あれほど、勢い良く走り寄ってきていたメズの足は一瞬で凍ったように止まり、固まったまま倒れ込んだのだ。そして、地面に着くなり、跡形もなく魔石へと変わった。
え?何が起こった??
それすら分からない。理解が及ばないまま、戦闘は終わったのである。
そして、自分で目を突いたアリシアはこちらを見る。
そうだ!アリシアは自分で目を突いたんだ!
怪我してないか?
血は出てないか?
もしかして、自分の目と引き換えにした大魔法だったんじゃないか?!
俺は焦った。命は助かったが、アリシアの目が……視力が失われたら……そんな事を考え、動かない体の代わりに視線を動かし、アリシアの顔を見る。そして、違和感を感じた。
「……バンシー?」
俺から無意識に言葉が零れる。
そして、そんな俺の声を聞いて、少し悲しそうな表情を浮かべた、アリシア。その瞳はアメジストのように綺麗な紫色をし、輝いていた。
その日の夜。
アリシアは俺の家に居た。そして、テーブル越しのアリシアは押し黙ったままだ。
二人きりになるまでは、『私』が『ボク』に変わっていた事以外は、何時も通りに喋っていたのだが……。流石に、隠していた秘密がバレて話難いのだろう……。
俺としても、無意識とはいえ、ポロッと言葉が出てしまったから、どうする事も出来ない。後悔しても、後の祭りだ。
前にターニャさんに聞いた話だが、この世界では、ダークエルフ、ハーフエルフと言った肌の色で差別する事はないが、瞳の色で差別される。という。
イリアの『瞳の赤化』。
ララの『勇者の青い瞳』。
エリの『魔眼』。
ターニャさんの『血筋による瞳の色』。
そして、アリシアの『バンシー』。
他にも色々な瞳の色があるらしい。
ララやターニャさんの瞳の色は尊敬されるが、イリア達の瞳の色は違う。そして、一番、忌み嫌われているのが、アリシアの『バンシー』。何でアリシアが俺に嫌いにならないか?と聞いた意味がそれだけで分かった。
まあ、俺としては、瞳の色がどうだって言われても分からないし、関係はない。アリシアは結局、アリシアなのだ。本人に言わせると、簡単な話ではないのだろうが……。
だから、俺はあえて何も言わずに、アリシアから口を開くのを待った。アリシアが自分の中でちゃんと気持ちを整理して、話してくれるのを待った。その間、少しだけ俺は今日の事を思い返していた。
あの後、アリシアはカラコンを付け直し、みんなに回復魔法をかけてくれたり、ポーションで回復してくれ、俺達は無事にダンジョンを出る事ができた。
自分の目を刺したように見えた指は、カラコンを外すためだったんだな。正直、焦ったわ。
それに、みんな、気を失い、大怪我をしていたが、幸い致命傷になっておらず、奇跡的に俺達は全滅する事もなく、結果的には死傷者0でイレギュラーを乗り切ったのである。全て、アリシアのおかげだな。
いや~。それにしても、改めて、この世界の回復魔法やポーションは優秀なのだと思い知らされた。元の世界だったら、確実に長期入院が必要だっただろう。病気の事は分からないけど、怪我を治すだけなら、この世界の方が優れているな。そのおかげで、スプリンティアに参加出来るし、食材も揃ったから、いうことはない。
他のメンバーは気を失っていたから、アリシアがバンシーだということに気がつかず、最後は笑顔で別れた。ただ一つ気になるのが、キール達とクエンカ夫妻の表情は明らかに違っていた。その事かな……。
「あの……ね。」
そんな事を考えていると、アリシアが、意を決したように、静かに口を開いた。
しかし、その魔法は、左右、白黒の羽根が一枚、空から降ってくる魔法だった。
なんで、こんな時にそんな魔法?と思ったが、その羽根がメズに触れた時に、俺は更にショックを受ける事になる。
あれほど、勢い良く走り寄ってきていたメズの足は一瞬で凍ったように止まり、固まったまま倒れ込んだのだ。そして、地面に着くなり、跡形もなく魔石へと変わった。
え?何が起こった??
それすら分からない。理解が及ばないまま、戦闘は終わったのである。
そして、自分で目を突いたアリシアはこちらを見る。
そうだ!アリシアは自分で目を突いたんだ!
怪我してないか?
血は出てないか?
もしかして、自分の目と引き換えにした大魔法だったんじゃないか?!
俺は焦った。命は助かったが、アリシアの目が……視力が失われたら……そんな事を考え、動かない体の代わりに視線を動かし、アリシアの顔を見る。そして、違和感を感じた。
「……バンシー?」
俺から無意識に言葉が零れる。
そして、そんな俺の声を聞いて、少し悲しそうな表情を浮かべた、アリシア。その瞳はアメジストのように綺麗な紫色をし、輝いていた。
その日の夜。
アリシアは俺の家に居た。そして、テーブル越しのアリシアは押し黙ったままだ。
二人きりになるまでは、『私』が『ボク』に変わっていた事以外は、何時も通りに喋っていたのだが……。流石に、隠していた秘密がバレて話難いのだろう……。
俺としても、無意識とはいえ、ポロッと言葉が出てしまったから、どうする事も出来ない。後悔しても、後の祭りだ。
前にターニャさんに聞いた話だが、この世界では、ダークエルフ、ハーフエルフと言った肌の色で差別する事はないが、瞳の色で差別される。という。
イリアの『瞳の赤化』。
ララの『勇者の青い瞳』。
エリの『魔眼』。
ターニャさんの『血筋による瞳の色』。
そして、アリシアの『バンシー』。
他にも色々な瞳の色があるらしい。
ララやターニャさんの瞳の色は尊敬されるが、イリア達の瞳の色は違う。そして、一番、忌み嫌われているのが、アリシアの『バンシー』。何でアリシアが俺に嫌いにならないか?と聞いた意味がそれだけで分かった。
まあ、俺としては、瞳の色がどうだって言われても分からないし、関係はない。アリシアは結局、アリシアなのだ。本人に言わせると、簡単な話ではないのだろうが……。
だから、俺はあえて何も言わずに、アリシアから口を開くのを待った。アリシアが自分の中でちゃんと気持ちを整理して、話してくれるのを待った。その間、少しだけ俺は今日の事を思い返していた。
あの後、アリシアはカラコンを付け直し、みんなに回復魔法をかけてくれたり、ポーションで回復してくれ、俺達は無事にダンジョンを出る事ができた。
自分の目を刺したように見えた指は、カラコンを外すためだったんだな。正直、焦ったわ。
それに、みんな、気を失い、大怪我をしていたが、幸い致命傷になっておらず、奇跡的に俺達は全滅する事もなく、結果的には死傷者0でイレギュラーを乗り切ったのである。全て、アリシアのおかげだな。
いや~。それにしても、改めて、この世界の回復魔法やポーションは優秀なのだと思い知らされた。元の世界だったら、確実に長期入院が必要だっただろう。病気の事は分からないけど、怪我を治すだけなら、この世界の方が優れているな。そのおかげで、スプリンティアに参加出来るし、食材も揃ったから、いうことはない。
他のメンバーは気を失っていたから、アリシアがバンシーだということに気がつかず、最後は笑顔で別れた。ただ一つ気になるのが、キール達とクエンカ夫妻の表情は明らかに違っていた。その事かな……。
「あの……ね。」
そんな事を考えていると、アリシアが、意を決したように、静かに口を開いた。
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