上 下
114 / 201
疾風の靴

疾風の靴5

しおりを挟む
 俺は一旦、家に帰り、そして、帰宅していたイリアに頼んで魔王様の所へ連れて行って貰うことにした。
 「やあ。ヤマト君。イリアちゃん、ララちゃん、エリちゃん。数日ぶりだね。今日はどうしたんだい?」
 魔王様は、雪の振る場所には合わない麦わら帽子をかぶり、タオルを首に巻いていた。どうやら、農作業をしていたようだ。
 「魔王様にお伺いしたいことがありまして。スライムとトードの養殖は可能ですか?あと、無理でしょうけど、ホクホクグマもなんです。」
 「ふむ。可能と言えば可能だね。ただ、ヤマト君が言うように、ホクホクグマは危険が多いから養殖には向かないだろう。ホクホクグマの肉は塊が大きいから、そんなに個数は必要ないだろ?だったら、僕の家の塔に呼び出して、イーシャに狩らせて、持って行かせる事にするよ。悪魔の実なんかと一緒に。」
 それは有り難い提案だ。ホクホクグマの件は解決。後はトード達だな。
 「既に、トードの養殖は僕がキミ達が帰った日から取り組んでいるよ。キミがフライドトードを開発してくれたから、トードの安定供給が必要になるだろうと思ってね。」
 流石、魔王様は仕事が早かった。先の先を見通しておられた。
 「トードはダンジョンを出れば色が変わるんだよ。野生では見たことがないかい?普通のトードは雄がそのまま色。雌が雄の濃い緑じゃなくて黄緑色に変わるんだよ。深緑が雄で黄緑色が雌なんだ。卵で繁殖するから養殖はそんなに難しくはないと思う。しかし、スライムはどうだろうね。マザースライムが飼えれば簡単なのだろうけど……。」
 「マザースライム?」
 「スライムの仲間で、色々なスライムを産み落とす事の出来る強力なスライムです。ヤマト様。バルドスの神殿の主でもあり、到底、飼育の出来るようなモンスターではありません。」
 イリアはそう俺に教えてくれる。
 「そう言う事だよ。ヤマト君。野生のスライムがどうやって繁殖しているか分かればね。養殖は出来るのだけれど……。彼らも細胞分裂で増える訳ではないからね。繁殖行動をしているはずさ。」
 魔王様がそう言い考えていると、ララが口を開いた。 
 「……野生のスライムにも雄と雌がいる。」
 「本当かい?ララちゃん??」
 ララはそう言い頷く。
 「……ダンジョンのスライムは……繁殖活動が不要だから雄雌の区別はない……けど、野生のスライムには繁殖活動が必要だから、雄と雌が……いる。雄には、コアに小さな角みたいなのが……生えている。雌には……それはない。」
 「凄いよ。ララ!お手柄だ!!」
 俺はララの頭を撫でてやる。すると、ララは嬉しそうにする。
 「それなら、野生のスライムを捕まえばよろしいのですか?」
 エリはそう言う。
 「……塔から、数匹、スライムを連れて来よう。そして、しばらく飼ってみることにしようか。塔を出れば、この世界で生命として認識されるからね。雄と雌に分かれるだろうし、それを観察すれば雄雌の区別もつくようになるだろう。」
 「出来るんですか?」
 「ああ。簡単さ。ただ、スライムは何を食べるんだい?」
 ダンジョンのモンスターは基本、食事を必要としないらしい。ダンジョンで死んだエルフなんかの肉を食べる事はあるらしいが、ダンジョンに生えているキノコや薬草、同種族、多種族間で争って食べる事はしないらしい。
 「……野生のスライムは雑食性。味も食べている物によって違う。動物や……モンスターを襲ってたべたり、死肉を食べるスライムは臭い。木の実や草を食べているスライムは薬草の味が……する。」
 流石、貧乏生活をしていた、元・勇者様。サバイバル食材の味は詳しい。
 ならば、果物を食べるスライムは甘いのだろうか?ダンジョンのスライムは、ほのかに甘く、上品な味だった。ほとんど何も食べないダンジョンのスライムがあんなに甘いなら、甘い果物を食べたらどうなるのたろうか?
 「すみませんが、魔王様。よろしければ、スライムには、果物を与えてみてくれませんか?料理に使った余りなんかでいいので。」
 「ほ~。ララちゃんの言うには、食べる物で味が変わると言う事だからね。果物だったら甘くなる。という考えだね。」
 「はい。」
 魔王様は話しが早い。まあ、俺の考えが簡単なのかもしれないが。
 「分かった。そうしよう。しばらく様子を見て出来そうならば、イーシャを遣いにやるよ。」
 「ありがとうございます。」
 魔王様にお礼を言い、俺達は家に戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...