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北国ダンジョンのある一時

北国ダンジョンのある一時3

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 あつつつつ。
 ここは?
 今までのダンジョンとは違う……。灯りもないから、薄暗い。ぼんやりと視界がある程度だ。真っ暗で無いことは救いなのかもしれない。
 それにしてもなんだ?体がベチャベチャに濡れてる。水場に落ちたということなのか?
 そ、そうだ!エリは無事か?
 俺は周りを見渡す。
 周りには、ホクホクグマの肉にシルバーフォックスの毛皮などが散乱していた。
 どうやら、バッグは破れてしまったらしい。
 そして、その脇にエリはうつ伏せで倒れていた。
 だ、大丈夫なのか?
 俺は慌てて、エリの元へ駆け寄る。
 ……良かった。服はベチャベチャだけど、顔が横を向いていたおかげで、呼吸もちゃんとしているし、パッと見た感じじゃ怪我もないようだ。
 「エリ。エリ、大丈夫か?」
 エリを抱きかかえ、声を掛ける。
 「……ん。あ……主様……。」
 よし。気がついたようだ。
 「良かった。エリ、怪我はないか?痛いところは??」
 「はい。大丈夫です。……ここは?」
 ダンジョン内である事は確かなのだろうが、魔原石を使った灯りはない。という事は、攻略されていない所に落ちた。と考えるべきなのだろうか?
 「俺にも分からないんだ。ダンジョン内だという事は変わりないのだろうけど……。」
 「そうですね。魔原石の灯りが無い事を考えると、未攻略の場所と考えるべきでしょうが……。」
 そう言い、エリは体を起こして、周りを見渡した。
 他に何かあるのだろうか?エリの言葉に違和感を覚える。
 「どの位の広さがあるのでしょうね?主様、少し探索してみましょう。」
 「そうだな。暗いから足元気をつけてな。」
 「ふふふ。やはり、主様はお優しいですわね。わたくしなんかに気を使って。」
 嬉しそうに、でも、少し影のあるような……そんな感じでエリはそう言って歩き始めた。

 探索するのに、時間はそんなに必要ではなかった。
 時間にすれば、30分程度だろう。そんなに広くはなかった。そして、俺達は落ちてきたであろう場所へ戻ってきた。
 そう。出口がなかったのである。
 ここが何回層であるか分からないし、落ちて来たのだから、階段があるはずなのに……それがない。ダンジョンには、必ず上り下りする為に階段が設置されていると聞いた。地形は時間が経つと修復されるが、浮遊石や灯りなど、人工的に設置された物も壊される事もないそうだ。
 階段が無ければ、落ちてきた穴から這い上がれるかも知れない。そう思い、元の場所へ戻ってきたが、穴は空いていなかった。
 そして、落石していた石も時間と共に消えていた。そう考えると、穴も時間で塞がったのか……。
 俺達は完全に閉じこめられてしまったようだ。
 「なあ、エリ。これは、どういう事だ?普通、ダンジョンなら階段なんかあるはずだろ?」
 「そうでございますね。普通に考えれば、未攻略の場所でも階段があるべきなのでございすが……。」
 エリはそう言い、しばらく考えて次の言葉を発した。
 「……主様。これは、神々の気まぐれだと思われますわ。」
 え?あの、神々の気まぐれ??『隻眼のワイバーン』のような??
 
 
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