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スライム、揚げてみます
スライム、揚げてみます7
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狭い部屋に五人、焼き菓子と紅茶を飲みながら話をする。そして、ララがイリアにたずねた。
「……イリアとターニャは、凄く仲が良いけど……何時から知り合いなの?」
おっ!それは俺も気になっていた。
「……そうですね。あれはまだ、魔動学校初等部に入学する前……初等部入学が六歳からだから……五歳になって直ぐだったと思います。」
「はい。そうです。私達は五歳でした。初等部入学直前に出会ったエリとは年季が違います。」
イリアの答えにターニャさんもそう答える。
前にエリと幼なじみって言っていたけど、エリよりターニャさんの方がイリアとの付き合いは長いのか。なんか言い方にトゲがあったけど。
「はぁ。何時もあんたは、この話題になるとそう言うね。ターニャ。一年くらい変わりはしないだろ?」
エリは少し呆れたように言う。確かに一年くらい、たいして違わないような気もするが……。
「何を言っているのですか?エリ??その一年が重要なのですよ?」
ターニャさんは珍しくムキになって続けざまに言う。
「一年という月日の中には、それはもう、大切でかけがえのない思い出が沢山出来るものです。それが有ると無いでは、全然違います。ええ。違いますとも。」
「……はあ。そうかい。そうかい。分かりました。分かりましたよ。オレにはその思い出は有りませんよ。なんなんだい?まったく。」
エリは、呆れたようにそう言った。
ララと俺は苦笑いをし、ララは更にターニャさんにたずねる。
「ターニャは……何で、イリアのメイドをしているの?」
「………それは…。」
ターニャさんの変わりにイリアの言葉が詰まる。
それを聞いて、ターニャさんは微笑み答えた。
「大丈夫ですよ。イリアお嬢様。ララやヤマト様は、もう家族ですし。それに、エリはその事を知っておりますから。」
「……そうですね。ターニャが良いのなら。」
ターニャさんは微笑んだまま頷いて、話始めた。
「私がイリアお嬢様のメイドをやっている理由は……イリアお嬢様に命だけではなく、尊厳を守って頂いたからです。」
尊厳?
「話は私とイリアお嬢様が出会った日に戻ります。私はその日、たまたま家の用事でセイラム周辺へやって来ていました。そして、私は父とケンカをし、宿泊していた施設から飛び出しました。そして、人気の無い場所で三人組の暴漢に襲われた。」
暴漢に……もしかして…。
俺と同じように、それを聞いて、ララも察したようだ。
「……私は運が良かった。服を剥ぎ取られ、多少の擦り傷は出来たものの、イリアお嬢様に助けて頂いたおかげで、事なきを得ました。それから、その時のご恩をお返しするために、数ヶ月間、自宅でメイドの基本を学び、イリアお嬢様に仕える事にした。ということなのです。」
ターニャさんは簡単に答えたが、重い沈黙が流れる。
それはそうだろう。なんて声を掛けていいか分からない。でも、実際は、かなりの恐ろしい思いをしたはずだ……。俺と同じく、この事実を知らなかったララも、何か言葉を探しているのかもしれない。そう思っていたら、ターニャさんが先に口を開いた。
「湿っぽいお話はこれくらいに致しましょう。ヤマト様。そろそろ冷やしているスライムもよろしいのではないですか?」
「あ、ああ。そうだな。もう、いいかもしれない。」
ターニャさんに即され、俺は溶かしたスライムの様子を見た。
冷蔵はただ冷えた液体。冷凍は氷になっただけだった。ただ、糖度は増しているようだ。液体はシロップとして使えて、氷はかき氷に使えるかもしれないが、俺の求める物とは違う。このスライムのもちっとした食感がどうしても欲しい。
ん~。温度が高すぎるのかもしれないな。チョコみたいに温度を高くし過ぎないようにして、湯せんしてみるか。
スライムをボールに入れて、かき混ぜながら湯せんする。しかし、高すぎる温度だとスライムは直ぐに液体化する。それなら、湯せんする温度をかなり下げてみた。すると。
お!?
スライムがじんわりと溶けて粘りっ気がある!!さっき、鍋で熱した時とは大違いだ。
いいぞ!これは、いい!!
粘りっ気のある液体になったスライムを、また二つの容器に分けて、冷蔵と冷凍に分けて、その日の実験は終わる事にした。
そして、翌日の朝。
冷蔵、冷凍とも自分の予想を超えた物が出来上がっていた。
冷蔵は、ツルンとモチモチの食感が強くなり。
冷凍は、外はシャリッとしているにも関わらず、中はモチッともしている。まさに新食感!!
イリア達も、その美味さに驚愕する。
「な!なんですか?!このスライムの食感は!!」
「……美味しすぎる。これにフルーツが入っていたら……。もう……。」
「凄いですわ。わたくし、主様の力量に改めて感服致しました。これは、売れるに違いありませんわ。」
スライムは、新たな看板メニューの一つになった。
ひんやりモチモチ食感のスライムバー。フルーツや黒蜜を掛けた数々のスライムは爆発的な売れ行きを記録した。揚げ物処『大和』は大繁盛だ。
「……イリアとターニャは、凄く仲が良いけど……何時から知り合いなの?」
おっ!それは俺も気になっていた。
「……そうですね。あれはまだ、魔動学校初等部に入学する前……初等部入学が六歳からだから……五歳になって直ぐだったと思います。」
「はい。そうです。私達は五歳でした。初等部入学直前に出会ったエリとは年季が違います。」
イリアの答えにターニャさんもそう答える。
前にエリと幼なじみって言っていたけど、エリよりターニャさんの方がイリアとの付き合いは長いのか。なんか言い方にトゲがあったけど。
「はぁ。何時もあんたは、この話題になるとそう言うね。ターニャ。一年くらい変わりはしないだろ?」
エリは少し呆れたように言う。確かに一年くらい、たいして違わないような気もするが……。
「何を言っているのですか?エリ??その一年が重要なのですよ?」
ターニャさんは珍しくムキになって続けざまに言う。
「一年という月日の中には、それはもう、大切でかけがえのない思い出が沢山出来るものです。それが有ると無いでは、全然違います。ええ。違いますとも。」
「……はあ。そうかい。そうかい。分かりました。分かりましたよ。オレにはその思い出は有りませんよ。なんなんだい?まったく。」
エリは、呆れたようにそう言った。
ララと俺は苦笑いをし、ララは更にターニャさんにたずねる。
「ターニャは……何で、イリアのメイドをしているの?」
「………それは…。」
ターニャさんの変わりにイリアの言葉が詰まる。
それを聞いて、ターニャさんは微笑み答えた。
「大丈夫ですよ。イリアお嬢様。ララやヤマト様は、もう家族ですし。それに、エリはその事を知っておりますから。」
「……そうですね。ターニャが良いのなら。」
ターニャさんは微笑んだまま頷いて、話始めた。
「私がイリアお嬢様のメイドをやっている理由は……イリアお嬢様に命だけではなく、尊厳を守って頂いたからです。」
尊厳?
「話は私とイリアお嬢様が出会った日に戻ります。私はその日、たまたま家の用事でセイラム周辺へやって来ていました。そして、私は父とケンカをし、宿泊していた施設から飛び出しました。そして、人気の無い場所で三人組の暴漢に襲われた。」
暴漢に……もしかして…。
俺と同じように、それを聞いて、ララも察したようだ。
「……私は運が良かった。服を剥ぎ取られ、多少の擦り傷は出来たものの、イリアお嬢様に助けて頂いたおかげで、事なきを得ました。それから、その時のご恩をお返しするために、数ヶ月間、自宅でメイドの基本を学び、イリアお嬢様に仕える事にした。ということなのです。」
ターニャさんは簡単に答えたが、重い沈黙が流れる。
それはそうだろう。なんて声を掛けていいか分からない。でも、実際は、かなりの恐ろしい思いをしたはずだ……。俺と同じく、この事実を知らなかったララも、何か言葉を探しているのかもしれない。そう思っていたら、ターニャさんが先に口を開いた。
「湿っぽいお話はこれくらいに致しましょう。ヤマト様。そろそろ冷やしているスライムもよろしいのではないですか?」
「あ、ああ。そうだな。もう、いいかもしれない。」
ターニャさんに即され、俺は溶かしたスライムの様子を見た。
冷蔵はただ冷えた液体。冷凍は氷になっただけだった。ただ、糖度は増しているようだ。液体はシロップとして使えて、氷はかき氷に使えるかもしれないが、俺の求める物とは違う。このスライムのもちっとした食感がどうしても欲しい。
ん~。温度が高すぎるのかもしれないな。チョコみたいに温度を高くし過ぎないようにして、湯せんしてみるか。
スライムをボールに入れて、かき混ぜながら湯せんする。しかし、高すぎる温度だとスライムは直ぐに液体化する。それなら、湯せんする温度をかなり下げてみた。すると。
お!?
スライムがじんわりと溶けて粘りっ気がある!!さっき、鍋で熱した時とは大違いだ。
いいぞ!これは、いい!!
粘りっ気のある液体になったスライムを、また二つの容器に分けて、冷蔵と冷凍に分けて、その日の実験は終わる事にした。
そして、翌日の朝。
冷蔵、冷凍とも自分の予想を超えた物が出来上がっていた。
冷蔵は、ツルンとモチモチの食感が強くなり。
冷凍は、外はシャリッとしているにも関わらず、中はモチッともしている。まさに新食感!!
イリア達も、その美味さに驚愕する。
「な!なんですか?!このスライムの食感は!!」
「……美味しすぎる。これにフルーツが入っていたら……。もう……。」
「凄いですわ。わたくし、主様の力量に改めて感服致しました。これは、売れるに違いありませんわ。」
スライムは、新たな看板メニューの一つになった。
ひんやりモチモチ食感のスライムバー。フルーツや黒蜜を掛けた数々のスライムは爆発的な売れ行きを記録した。揚げ物処『大和』は大繁盛だ。
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