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真実は夢の中

真実は夢の中3

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 ハァハァハァ。
 どこだ?イリアは……。
 結構、走ったはずなのに……見つからない。
 僕は、昨日、イリアと出会った森を、さまよい走っていた。
 どこに、何があるかも分からないし……。
 一人だと、何か怖い。嫌だな……。
 そう思った瞬間、物陰から何か飛び出して来た。
 え!?野良犬!!
 いや!違う!!犬にしては大きいし!顔が二つもある!!い、犬じゃない!!
 「グルルルル!」
 し、しかも、怒ってる。
 や、やばい!逃げなくちゃ!!
 僕は、顔が二つある犬から逃げようとした。しかし、あっという間に追いつかれ、飛びかかってくる。
 ダメだ!!食べられちゃう!!
 「『ファイヤーボール』!!」
 そう思った瞬間、大きな石くらいの大きさの火の玉が、顔が二つある犬に直撃した。そして、顔が二つある犬は、吹き飛ばされ、炎に包まれた。
 「うぅぅぅ。ぐすん。ヤ、ヤマト。大丈夫?」
 しろまなこまで、涙で真っ赤にしたイリアが、そう言い立っていた。
 す、凄い!!倒しちゃったよ。イリア!!
 「イ、イリア!凄い!!凄いよ!!イリア!!!」
 「ふ、ふぇっ?」
 僕は、イリアを探しに来た事を忘れて、イリアに抱き付いた。

 僕は、イリアを一度、家へと連れて帰った。
 砂で、物凄く汚れていたから。一度、お風呂に入った方がいい。そう思ったから。
 そして、イリアの家が見えた頃、とてつもなく大きな人が、イリアの家の庭でテーブルを囲んで座っているのが見えた。
 「あ!女王様だ!!」
 イリアは、そう言い、駆け出した。
 え?女王様?!そんな、偉い人がなんで、イリアの家に??
 そう思いながら、僕もイリアに付いて走りだした。
 「お~。イリア。おかえり。」
 「うん!ただいま!!パパ、ママ。女王様、こんにちは!!」
 え?女王様への挨拶って、それでいいの?
 「ふぉふぉふぉっ。イリア。こんにちは。ひさしいのぅ。元気じゃったか?ヤマトよ。ちゃんと、イリアを探し出せたみたいじゃな。」
 え?なんで、女王様が僕の名前を?でも……この声、どこかで聞いた事あるような。
 「イリアや。すっかり、汚れてしまったようじゃな。ちと、待っておれ。今、綺麗にしてやるぞよ。『クリーン・ウォッシュ』」
 そう、女王様が言うと、イリアは服も体も綺麗になった。
 「ありがとう!女王様!!」
 え?なんで??どういうこと??
 「え?なんで、イリア、キレイになったの?!」
 僕の言葉に、イリアは首を傾げる。
 「なんで?って言われても……魔法だよ?」
 「魔法?何??それ??」
 「え?ヤマト、魔法知らないの??」
 「うん。知らないよ?」
 イリアはパァっと明るい表情になり、
 「女王様。杖借りていい?」
 「ふむ。よいぞよ。」
 「ありがと~。ヤマト!もう一回、森へ行こう。」
 そう言い、イリアは女王様から大きな杖を借り、僕の手を引いて、もう一度、森へと戻った。

 「ほら、ヤマト見て。これが、『ファイアーボール』だよ。」 
 イリアは、その小さな体に不釣り合いな大きさの杖を持ち、小さな炎の玉を放ち、誇らしげに俺に向かって言う。
 「わわ!本当に、火の玉が出るだ!!・・・・・って本当に凄いね!!」
 「えへへへへ。そう?やっぱり、私って凄い?凄い??」
 イリアは、ふふん!と鼻を鳴らしそうな勢いで胸をはった。
 「僕にも出来るかな?」
 「ふふふ。どうだろ~。でも、ヤマトならきっと出来るよ!」
 僕はイリアから杖を受け取り。教えて貰った呪文を唱える。
 「『我が求めるは炎……』あれ?続きはなんだったけ?」
 「あははは。ちゃんと覚えないと、魔法を使うなんて出来ないよ?仕方ないなぁ~。いい?もう一度、教えるよ。」
 イリアは楽しそうだ。なかなか、魔法を出せなかった僕に何度も教えてくれた。
 でも、結局、僕は魔法を出す事が出来なかった。
 「残念だったね。ヤマト。」
 落ち込んでいる僕に、イリアは優しく声を掛けてくれる。
 「……うん。やっぱり、イリアは凄いね。あんなに簡単に魔法を出せるんだもん。」
 イリアは火の他に水や風の魔法も僕に見せてくれた。
 「……そんなに、凄くないよ。」
 さっきは、凄く喜んでいたのに、今度は落ち込んでいるように見えた。
 「え?凄いよ?」
 僕の言葉に、イリアは首を横に振る。
 「魔法がいっぱい使えたって、良いことなんて、一つもないよ。魔法なんて、みんな使えるようになるし。それに、魔法がいっぱい使えるのだって……この目のおかげだって言うし……。」
 それのどこがいけないのだろう?
  「目のおかげ?」
 「うん。あのね……私のこの目。大悪党のしるしなんだって。」
 今日、男の子が言ってた事か。
 「この真っ赤な瞳は、大悪党のしるし。この世界で、災いを起こして、みんなに迷惑をかけるんだって。私と同じ目の人が、昔、いっぱい、いっぱいの人を殺して、沢山、悪い事をしたらしいの。その人は、いっぱいの魔法を使えて……。グスン。」
 イリアは今日の事を思い出したのだろう。泣き出した。
 「私……パパやママにも、いっぱい迷惑かけてる。私の目が真っ赤だから。近所の人達は、嫌な目で私達を見るし……近所の子は、私を仲間外れにしてイジメるの。私は何も悪くないのに……。何もしてないのに。ねぇ。ヤマト。私、生まれてこなければ良かったのかな?そうしたら、パパやママにも迷惑をかけなくて良かったんだろうし。みんなにイジメられる事もなかった……。」
 イリアはそう言ったきり、下を向いた。
 僕には、何が悪いのか分からなかった。イリアはこんなに良い子なのに。こんなに可愛いのに。イリアのお父さんやお母さんだって、凄く優しい。
 それに、僕はイリアに出会えて良かったと思う。イリアに出会わなければ、僕は森の中でずっと迷子だっただろうし……何より、イリアはキレイだ。姿形がキレイって事じゃなくて、なんか……こう、キレイに見えるんだ。
 「あのね。イリア。イリアのお父さんもお母さんも、迷惑だなんて、思っていないと思うよ。きっと、生まれてきてくれて、ありがとう。って思っていると思う。」
 「……なんで?なんで、そう思うの?」
 「なんでって。……イリアを見る目が、凄く優しいからかな?迷惑だと思ってたら、あんなに優しい目は出来ないと思うんだ。それに、僕は、イリアに出会えて良かったと思ってるよ?」
 「……え?」
 照れくさいけど、思った事は、『大切』だ。と思った事は、ちゃんと伝えなさい。って母さんも言ってたし。
 「他の人が、どう思ってるかは、僕には分からないよ。でも……僕は、イリアのその、宝石みたいにキラキラと輝いている赤色の瞳、好きだな。可愛いし、綺麗だ。」
 「ふぇっ!!」
 イリアは僕の言葉を聞いて赤くなった。
 「それに、他の人……イリアと同じ目をした人が昔に何をしたかって、関係ないよ。イリアは、イリアだ。イリアがこれから、どう歩んで行くのかには関係ないよ。魔法が凄いって良いことじゃない。いっぱい使えるって良いことじゃない。もし、その人の事が気になるなら、イリアがその人やった事を塗り替えるくらいに、良いことをやればいいよ。瞳が赤い人は、とても凄い!!に変えてやればいいよ。無責任だけど、僕は、イリアには、それが出来るって思ってる。みんなを見返してやろうよ。イリア。」
 「うぅぅぅ~。ヤマト~~。」
 イリアは泣き出して、僕に抱きついてきた。
 ちょっと、自分で何を言っているか、途中で分からなくなっちゃったけど……。結果オーライだね。
 イリアが泣き止むのを待って、僕達はイリアの家に帰った。
 
  
 
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