上 下
55 / 201
ライバル出現?!前編

ライバル出現?!前編3

しおりを挟む
 「私達は6歳の時、出会いました。王立魔動学校初等部で。」
 「まどう学校?」
 「はい。魔動学校です。幼い頃から才能が見出された者が集められた学校です。そこでは、魔法や剣術などを学べます。ここで適性が見極められ、中等部からそれぞれの専門科目へ移ります。」
 そう言いえば、俺はこの世界の教育の仕組みをよく知らないな。
 「普通の子供は、どんな教育を受けるんだ?」
 頭を抱えていたターニャさんが復活し、この質問に答える。
 「住んでいる場所や国によっても違いますが、この国の一般の子供は、それぞれの村や町の学校に通います。地方の子供も才能が有れば、王立に通えますし、この国ならば、学費はどの学校も無料です。普通の学校に通っていても、実力が上がったり、才能を認められたら、王立へと編入しますね。その際の旅費や寮の家賃なども無料です。」
 何気に、実力主義だな。
 「ララはどうだったんだ?」
 片方の耳をモミモミされながら、ご満悦な表情を浮かべ、ララは答える。
 「……私は、国の事は知らない。私自身は、3歳からダンジョンや襲ってくるモンスターと戦っていた。だから、学校は行ってない。行かなくても……魔法も、剣術も聖剣が教えてくれる。普通の勉強は……おばあちゃんが教えてくれた。」
 ん?どういこと?
 「聖剣が教えてくれるって、どういことなんだ?」
 「……魔法は、頭に浮かぶ?それを唱えると……魔法が出来る。そして、剣術は慣れるまで扱い方を教えてくれるように、エクスカリバーが勝手に動いてくれる。」
 え?そうなの??
 「べ、便利なんだな。」
 「……そうでもない。何時も一人だし……。褒めてもくれない……。エクスカリバーが話し掛けてくれる訳でもない。動きが慣れたらエクスカリバーは自動で動いてくれなくなるし。魔法も詠唱文を覚えたら、浮かばなくなる。……それに、剣は重い。幼い私には大変だった。振り回される。……レベルアップして、ステータスの補助があっても、エクスカリバーは強くなるまで、ずっと重かった。10歳になるまで。これが、修行だったと私は……思ってた。」
 そうか……そうだよな。都合良く、勇者に剣術を教えてくれる先生がその街に居るとは限らないし、まして、ララの村は貧しくて、用心棒の冒険者を雇う事も出来なかったって言うしな。
 俺達のやりとりを見ながら、ターニャさんは頭を抱え言った。
 「ヤマト様。……もうそろそろ、ララ殿の耳を触るのは止めた方がいいと思います。」
 いや。俺も止めたいのだが……。
 俺が手を離すと、ララが手を掴んでもっと触ってくれとアピールするのだ……。ほら。
 俺は言われたように、止めて、手を離す。すると、ララの手が伸び、俺の手を掴んで、また耳へと持って行く。
 「ララ殿も、時と場所を考えて下さい!」
 ターニャさんが怒ったのが分かったのか、ララはシュンとしてうなだれた。
 可哀相に……。俺はそれを見て、耳を触ってやる。
 ララは喜んだが、ターニャさんは流石にキレた。
 「……ヤマト様。ララ殿がせがむからといって……ララ殿は、犬や猫のようなペットではないのです。あなたは、エルフの耳を触るという事がどんな事か分かっていない様子ですね!」
 え?弱点なだけじゃないの??最初にイリアのを触った時も少し怒られたけど?弱いからだけじゃないのか?
 「弱点ってだけじゃないの?」
 俺の間の抜けたような答えに、ターニャさんが今度はテーブルを叩き言う。
 「確かに、エルフは耳を触られる事に非常に弱い!とても、気持ち良いのです。しかしです!!それだけでは、ありません。エルフが自分の耳を触らせる相手は、恋人、妻や夫。それくらいにしか触らせない!!この意味が分かりますか?!」
 え?!ええ!!ということは!!俺がイリアやララ。そして、エリアスさんにしたことは、恋人にするような行為!?ってことは、ガルビンにも?!
 俺は一瞬にして、頭の中が真っ白になった。そして、思わず言葉がこぼれる。
 「……ガルビンのもか……?」
 「はい。今、王都では、ヤマト様の事、両刀使いだという噂が……。」
 ターニャさんの言葉を聞いて、俺はうなだれた。

 しばらくの沈黙。
 イリアとエリアスさんが幼なじみだと言うことは分かった。
 学校の仕組みも何となく分かった。
 俺がやってきた必殺技も封印しないといけない事も理解した。
 かなり気力がすり減ったけど、聞かないといけないことがある。
 それを俺はイリアに尋ねる。
 「イリア。話したくない事ならば、無理に話してくれなくていい。でも、よかったら、話せる範囲でも、かまわないから話してくれ。」
 俺の言葉にイリアは微笑みむ。
 「ありがとうございます。ヤマト様……。」
 イリアは少し考え、また口を開く。
 「まずは、私の事を少し話した方が良いですね。その方がヤマト様も分かりやすくなると思いますから……。ヤマト様も知っての通り、私は王宮魔術師として王宮に仕えておりました。王宮魔術師の勤めは、『神々の気まぐれ』の処理。ダンジョンのイレギュラー、ダンジョンから大量に発生し、ダンジョンから出たモンスターの討伐。などです。これは、勇者だったララ、王宮弓術隊のエリも同じような事を行います。」
 「『神々の気まぐれ』?」 
 不思議そうにしている俺にイリアは言う。
 「はい。『神々の気まぐれ』です。簡単に言うと神々の手で起こされた厄災ですね。ヤマト様の元の世界では神々は信仰の対象となられておられる事が多いと思われますが、この世界では信仰もされますが、畏怖されている方が多い。と言っていいと思われます。その、最たる理由が『海の王、リヴァイアサン。』『陸の王、ベヒモス。』『空の王、エンシェントドラゴン』の三大厄災です。それと、この前のララの件、覚えていらっしゃいますか?私が言葉を濁した時です。」
 「ああ。確か、聖剣を抜くと、村とかモンスターが襲って来やすくなるやつか?」
 「はい。そうです。あれも、『神々の気まぐれ』と言われています。ついでに言うと、勇者を選定するのも『神々の気まぐれ』だと言われています。聖剣を抜いた勇者が少しでも早く強くなるように、神々が起こしていると言われています。」
 何気に酷いな。『神々の気まぐれ』。それに、三大厄災?!リヴァイアサンも神々の仕業なのか?!てっきり魔王の仕業だと俺は勝手に思っていた。それに、ベヒモスとエンシェントドラゴン……。リヴァイアサン以外にもそんなモンスターが……。
 「神々の手で起こされた厄災って……。自然のものか、俺は魔王の仕業だと思ってた。」
 俺の言葉に、ララは首を横に振って言う。
  「……魔王様は、とてもよい方。エクスカリバー、グングニル、ヴァナルガンド……。三大厄災を封印出来る聖剣、聖槍、聖杖を作ってくれた。我々の為に……。それに、遠い昔に魔法を教えてくれたのも、魔王様……。」
 「魔王様は元々は神。我々をお助けになるために、天界を去り、この世界へ来られたらと言われています。今でも最北端にある、ディアネロ火山のふもとで農業を営んでおられます。」
 「農業?!魔王が農業?!」
 俺が信じられない様子ど言うと、イリアは少し笑って言う。
 「ふふ。おかしいですか?でも、事実なのです。我々もお会いしようと思えば、誰でも会いに行けますよ。」
 話を戻しますね。そう付け加え、イリアはまた話し始めた。
 「……二年前。私の居た王宮魔術師隊とエリの王宮弓術隊は『神々の気まぐれ』の処理にあたっていました。三大厄災には、遠く及ばないものの、『隻眼のワイバーン』と言う厄災に……。」
 イリアは『隻眼のワイバーン』と口にした瞬間、顔を曇らせ、エリアスさんも視線を落とす。
 「『隻眼のワイバーン』はとても強力なモンスターでした。今までに例のない感染性の毒を有していて……。そして、私は過ちを犯した……。」
 「あれは、過ちなんかじゃねえ!!」
 イリアの言葉にエリアスさんは声を荒げる。
 その声にイリアは首を横に振る。
 「……ヤマト様。私は人殺し……なんです。それも、一人や二人殺したのではなく、私の手では数え切れない程の……人の命を奪いました。」
 イリアは、思い出しているのだろう。そう言い、涙を零した。
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八
ファンタジー
 主人公のレンは、冒険者ギルドの中で最高ランクであるSランクパーティのメンバーであった。しかしある日突然、パーティリーダーであるギリュウという男に「いきなりで悪いが、レンにはこのパーティから抜けてもらう」と告げられ、パーティを脱退させられてしまう。怒りを覚えたレンはそのギルドを脱退し、別のギルドでまた1から冒険者稼業を始める。そしてそこで最強の《勇者》というスキルが開花し、ギリュウ達を見返すため、己を鍛えるため、レンの冒険譚が始まるのであった。

処理中です...