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決闘

決闘4

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 「そうですね。魔術士が相手の正面を向いて魔法を放つ事はよくあります。しかしです。超至近距離に立ち、正面に構えて放つ事は、ほとんどありません。あるとすれば、自身が危険な目にあっている時くらいです。ましてや相手が最後の力を振り絞り、踏み込んで来るかもしれない。そんな距離を自ら歩み寄り、放つなんて事は、普通ならばしない。愚行と言っていい。魔術師は基本、遠距離砲です。わざわざ、自ら死地に足を踏み入れる事はしなくていい。それに、スティングは今日の装備を見て分かるように、騎士ではないのです。スティングは魔術士。手には、剣ではなく杖。そんな男が、騎士のように、フルプレートメイルを装備して俊敏に動けるはずもありません。そして、これも重要な事です。『ウィンド・ボルケーノ』には弱点があります。それをスティングは知らなかった。」
 「なんと!弱点とな?」
 女王様は驚く。俺も聞いてびっくりした。
 「はい。『ウィンド・ボルケーノ』には、他の風魔法にはない弱点があります。火山が噴火するように激しい波をうち、威力が高く、射程距離、範囲も広いのであまり知られていませんが。」
 「して、その弱点とは?」
 「簡単です。『ウィンド・ボルケーノ』は発動時に、渦を巻き放たれます。そして、その渦の中心に台風の目のようなものが出来るのです。」
 「台風の目とな?!」
 そう。台風の目だ。台風の目と言えば想像はつくだろう。
 「はい。台風の目です。普通なら……距離を取っているならば、何の問題もないのです。その中心部を狙われる前に、暴風が波をうって、吹き荒れます。中心部を狙うのも意味を成さなくなります。まあ、例外は存在しますが……。」
 え?何の例外?例外って存在するの??まあ、今はそれを聞いている時ではないか。
 「しかし、至近距離なら問題があるのです。台風の目は隙だらけだ。」
 「ほう。しかし、至近距離だからと言って避けられる場合もあるじゃろ?」
 女王様は、俺がイリアから秘策を授かった時と同じ質問をした。
 俺も思ったんだ。避けられる場合もあるんじゃないか?って。
 「そうですね。『もし』ですが。スティングが油断していなければ、避けられたかもしれません。スティングが、半身の体制だったら避けられたかもしれません。スティングが、魔導士らしく、軽装ならば避けられたかもしれません。スティングが『ウィンド・ボルケーノ』の弱点を知っていたら。『ウィンド・ボルケーノ』以外の魔法を使ってきたら。というのはあります。そして、スティングがヤマト様の『スキル』を知っていたら、違ったでしょう。」
 それを聞いて、女王様は納得したようだ。
 そう。全てはイリアの計画通り、予定通りだったのだ。
 実際、ララと最終日に訓練した時、ララにヒットしたのは、最初の一回だけ。それも、正確には、かすっただけ。ララは、『ウインド・ボルケーノ』の弱点を知っていた。「至近距離で『ウインド・ボルケーノ』を放って下さい。」
とイリアに言われた時に気が付いたのだろう。俺の『石ツブテ』を見たことがなかった事を考慮してもこの結果だった。それに、『必中』を重ねがけしているにも関わらず、ララは二度目からは、簡単に避けた。『必中』も万能ではないのだ。と思い知ったよ。今回の相手が、スティングだったから良かった。と言うのもあるのかもしれない。
 まあ、戦った、とうの本人である俺は、戦いが終わるまでハラハラしたけどね。ララにはかすっただけだったし。
 「スティングの『性格』『癖』それが、少なかったヤマト様の勝率を上げた。もちろん、ヤマト様の『石ツブテ』の能力をスティングが知らなかった。その事も大きかったです。『石ツブテ』はとても優秀なスキルですからね。」
 イリアは最後に、俺を持ち上げた。
 「流石、イリアじゃ。このような時は、本当に役に立つの~。」
 「お褒めにあずかり光栄です。」
 イリアは一度席を立ち、女王様に一礼をした。

 そういえば、気になっていた事が幾つかあるんだ。
 俺は、女王様に聞いてみる事にした。
 「女王様。女王様は何で、俺とスティングを戦わせようと、思われたのですか?」
 女王様は優雅に紅茶を飲みながら答える。
 「ふむ。強いて言うなら、ララノアのためかのぉ。妾も女じゃ。スティングの元へ行ってしまっては、ララノアが幸せにはなれぬ。と思ったからじゃ。ただでさえ、リヴァイアサン討伐に人生を捧げてきたんじゃ。討伐後くらい、幸せになってもらいたいじゃろ?」
 そりゃそうだ。ララは全てを捧げてきた。それなら、これからは幸せであって欲しい。
 「そうですね。ララには幸せになってもらいたいですね。」
 「ん?おぬしは何を言っておる?おぬしが幸せにするんじゃよ?」
 え?俺??
 「俺がですか?」
 「うむ。おぬしじゃ。ほれ、ララノアを見てみろ。イリア達と話しておるが、チラチラとおぬしを見ておろう。あれは完璧に、おぬしに『ホの字』じゃ。」
 ええ?!『ホの字』って何時の言葉よ。それに、俺はララに惚れられる程の事もしていない。
 「まあ、よかろう?それより、夜も食べて行くじゃろう?妾はな、ビフカツというのが気になっておるのじゃ。勝ったのじゃ。カツという言葉の入った物を食べようぞ。」
 え?なに?この流れ??俺が作る流れ??
 「それなら、チキンカツもありますよ!女王様!!」
 「……ピチョンパ……エビカツもある。」
 イリアとララが追い討ちをかける。
 「なんと!!チキンカツとエビカツとな!?」
 女王様は、そう言い、細い目を輝かせ、俺を見た。
 もう、こうなったら仕方ない。宴っていうくらいだから、張り切りますか。
 俺は、トンカツにビフカツ、チキンカツなど揚げ物を揚げまくった。
 
 
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